著者
山添 和明 宮本 修治 彦坂 洋子 北川 幸治 渡邊 一弘 酒井 洋樹 工藤 忠明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.611-617, 2007-06-25
参考文献数
35
被引用文献数
1 5

犬の肉球欠損に対する代用物として犬の培養肉球の作成を試み,表皮形態の形成過程の観察に加え,基底膜の構成成分のうち細胞接着分子であるα_6インテグリンと,細胞外マトリクスであるラミニン,4および7型コラーゲンの発現を経時的に検索した.培養肉球表皮は気相下培養5日目において肉眼的に容易に識別される程度の厚さとなったが,7日目には表皮には多くの雛襞が見られ,10および14日目には収縮した.組織学的には気相下培養1日目においてケラチノサイトは4あるいは5層に増加し,基底層への分化が認められた.その後5日目までに顆粒層と厚い角質層がそれぞれ認められ,少なくとも14日目まではその形態は維持された.一方,α_6インテグリンは気相下培養後1日目において真皮-表皮間に元の肉球組織とほぼ同程度の強さで発現した.ラミニンと4型コラーゲンはそれぞれ5および10日目に真皮一表皮間に断続的に発現し,14日目には元の肉球組織とほぼ同様の蛍光強度となった.7型コラーゲンは2日目において真皮-表皮間に断続的に発現したが,14日目時点においても連続性は認められなかった.これより,基底膜におけるアンカリングフィブリルの形成が不完全であると考えられたが,元の肉球組織に類似した犬の培養肉球が作成されたことが示唆された.
著者
山本 かおり 河村 篤紀 坪田 敏男 釣賀 一二三 小松 武志 村瀬 哲磨 喜多 功 工藤 忠明
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.103-108, 2002-09-01

本研究では,飼育条件下のニホンツキノワグマにおいてDNAフィンガープリント法による父子判定の有用性を検討した。制限酵素Hinf Iおよび(GATA)_4プローブを用いたDNAフィンガープリントはニホンツキノワグマの個体識別および父子判定に有用であることが示された。1995年から1997年の間に11頭の母グマから生まれた13頭の子グマと22頭の父親候補の雄グマについて父子判定を行った結果,7頭の雄グマが父親と判定された。特に2頭の雄グマが8頭の子グマの父親と判定された。本研究では,飼育条件下において雌グマが多くの雄グマとの交尾の機会をもっても,ある特定の雄の繁殖成功が高くなることが示された。
著者
橋本 晃 工藤 忠明 奥田 恭之
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.403-412, 1988-12-25

ウサギ12羽(日本白種色8羽,ダッチ種4羽)を用い,超音波画像診断法による妊娠の経過における胎子及び胎盤の発育過程を観察し,併せてそれらの画像所見と肉眼的所見との比較も行った。胎包は妊娠8日目に,ほゞ円形のエコーフリーの嚢胞様画像として比較的容易に描出された。9日目には,胎芽に由来する点状エコーが胎包内に描出され,妊娠の確定診断が可能となった。胎子の四肢,肋骨弓及び胃を示す画像は,それぞれ妊娠14日目,17日目及び20日目から描出できた。心臓拍動は14日目からリアルタイム画像で明瞭に観察された。胎動は16日目からわずかに認められ,20日目頃から活発となった。頭蓋骨の画像には,化骨に由来する音響陰影が23日目頃から観察できた。28日目頃には,脊椎や肋骨も明瞭に描出され,胎子の開口動作も頻繁に認められた。一方,胎盤は最初,胎包腔内へ隆起する小エコーとして描出され,胎盤が発達するにつれて,円盤状ないし半円形の均質なエコーあるいは内部が低エコーの短冊状のエコーとして観察された。今回の検索成績から,超音波画像診断法は,ウサギの妊娠経過に伴って変化する胎子及び胎盤の観察に有用なことが明らかにされた。正常妊娠ウサギで観察された種々の画像所見は,妊娠中に生ずる胎子及び胎盤の病的変化を診断するための指標として利用できると思われた。
著者
山添 和明 日比野 千里 工藤 忠明 柳井 徳磨
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.739-745, 1994-08-15
被引用文献数
2

ハトに実験的上腕骨骨幹骨折を作製し, 骨セメント注入法とプレート固定法の併用が骨折の治癒機転に及ほす影響を検討するとともに, 飛翔能力の回復についての観察も行った. その結果, 骨セメント注入法あるいはプレート固定法単独では術後2週目以内に単純X線所見で全例再骨折を認めたが, 併用法では全例に再骨折を認めず, 術後6週目以降ほぼ正常な飛翔が可能であった. マイクロアンギオグラムおよび組織学的検査から骨セメントによる内仮骨形成の阻害が観察されたが, 血液供給は術後2週目ですでに回復しており皮質壊死像も認められなかった. また骨セメントが皮質骨折端間に高度に残存した場合皮質がつながらず, 海綿骨様化が認められた. しかし飛翔能力が早期に回復したことからプレートと骨セメントが骨折部の変位を防止する良好な支持体になると考えられた.