著者
沖野 哲也 後川 潤 的場 久美子 大山 文男
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.71-78, 2004-09-01
参考文献数
26

中国から輸入された食用ドジョウに寄生する蠕虫類の調査を行った。その結果,線虫類の幼虫3種(Spiroxys japonica, Gnathostoma hispidum, Contracaecum sp.)と成虫1種(Pseudocapillaria tomentosa),吸虫類のメタセルカリア6種(Massaliatrema misgurni, Exorchis oviformis, Metacercaria hasegawai a, Metorchis orientalis, Encyclometra japonica, Echinostomatidae gen. sp.)と成虫1種(Allocreadium gotoi),条虫類の成虫1種(Paracaryophyllaeus gotoi),鉤頭虫類の成虫1種(Pallisentis sp.)の計13種を検出した。これらのうち,M. misgurniは国内に定着するおそれがあり注意を要する。
著者
大沼 学 ZHAO Chen 浅川 満彦 長嶺 隆 桑名 貴
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-31, 2012-03-01
参考文献数
15

ヤンバルクイナ(<I>Gallirallus okinawae</I>)の消化管内寄生虫2種についてDuplex real-time PCR assayを開発した。本法はヤンバルクイナ由来のDNAの影響を受けずに2種を同時に検出できることを確認した。また,寄生虫卵1個分のDNA量も検出でき,糞便にも応用可能であった。本法はヤンバルクイナ飼育個体群を対象として寄生虫検査を糞便サンプルで実施する場合に特に有用な手法である。
著者
遠藤 秀紀
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.29-32, 2013-03-01

コモドオオトカゲの保全の問題点をコモド村で検討した。観光業は1990年代以降,村の経済構造を変化させているが,新たな施策は村民の豊かさには結びついていない。コモドオオトカゲと住民の関係は,人間と家畜に一定の被害を出しながらも,伝統的に良好に築かれてきた。危険なコモドオオトカゲはこれまでも人々の安全な日常を阻害し,いまも害しているが,高床式住居のような建築方式や漁撈のような伝統的生活様式によって,村民とオオトカゲの調和した関係が維持されている。新しい保全理念や観光化の推進は,部分的に住民を漁撈から土産物販売へと移行させが,村民と地域社会は経済的に豊かになったわけではない。コモドオオトカゲにまつわる過度の観光化を注視する必要がある。
著者
柳井 徳磨 杉山 誠 平田 暁大 酒井 洋樹 柵木 利昭 吉川 泰弘
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-10, 2003-03-01
参考文献数
43
被引用文献数
1 or 0

動物園動物および野生動物の感染症をモニターすることは,動物の損失を食止めるために極めて重要であり,野生動物の保護管理,家畜衛生,人獣共通感染症の防止に大きく寄与する。そのため,我々は野生動物の疾病コントロールに有用な最新の情報を共有する目的で,ワークショップ「動物園および野生動物の感染症2002」を企画し,情報交換を試みた。今回,現在,最も緊急性の高い感染症,あるいは注意を喚起したい感染症として,動物園動物におけるクラミジア症(鳥類,ヘラジカ),サル類におけるエルシニア症,爬虫類におけるクリプトスポリジウム症および動物園および野生動物における海綿状脳症について取り上げた。その他,今後,我が国で問題になりうる幾つかの感染症についても概説した。動物園動物および野生動物の感染症コントロールを目的とした野生動物医学会内でのネットワーク形成,さらに公的な野生動物感染症研究センターの設立が望まれる。
著者
中谷 裕美子 岡野 司 大沼 学 吉川 堯 齊藤 雄太 田中 暁子 福田 真 中田 勝士 國吉 沙和子 長嶺 隆
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.71-74, 2013-06-01

沖縄島やんばる地域における広東住血線虫はクマネズミなどで寄生が確認されているものの,在来のケナガネズミなどにおける感染状況や病原性は不明であった。本症例はケナガネズミが広東住血線虫感染により死亡した初の報告事例であり,病原性が明らかとなった。これは人獣共通感染症である広東住血線虫症が,人のみならず野生動物にも悪影響を及ぼし,特に希少野生動物の多いやんばる地域においては大きな脅威となる可能性があることを示している。
著者
岡野 司 大沼 学 長嶺 隆 中谷 裕美子
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.157-160, 2012-12-01

交通事故で死亡した2頭の野生ケナガネズミ(<I>Diplothrix legata</I>)を沖縄県国頭村で2011年9月に得た。剖検時に,肉眼的なサルコシストが舌,咬筋,横隔膜および外腹斜筋などの骨格筋で多数認められた。寄生のある横紋筋の組織学的観察では,特に炎症反応はみられなかった。サルコシストから抽出したDNAのシークエンスにより,1,797塩基の18S rRNA(GenBank accession number AB691780)および1,441塩基の28S rRNA(GenBank accession number AB691781)の肉胞子虫の遺伝子を得た。これは南西諸島固有の希少種であるケナガネズミにおける肉胞子虫感染の初記録である。
著者
山本 かおり 河村 篤紀 坪田 敏男 釣賀 一二三 小松 武志 村瀬 哲磨 喜多 功 工藤 忠明
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.103-108, 2002-09-01

本研究では,飼育条件下のニホンツキノワグマにおいてDNAフィンガープリント法による父子判定の有用性を検討した。制限酵素Hinf Iおよび(GATA)_4プローブを用いたDNAフィンガープリントはニホンツキノワグマの個体識別および父子判定に有用であることが示された。1995年から1997年の間に11頭の母グマから生まれた13頭の子グマと22頭の父親候補の雄グマについて父子判定を行った結果,7頭の雄グマが父親と判定された。特に2頭の雄グマが8頭の子グマの父親と判定された。本研究では,飼育条件下において雌グマが多くの雄グマとの交尾の機会をもっても,ある特定の雄の繁殖成功が高くなることが示された。
著者
久保 正仁 半田 ゆかり 柳井 徳磨 鑪 雅哉 服部 正策 倉石 武 伊藤 圭子
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-90, 2012-06-01
被引用文献数
1 or 0

2010年3月に前庭障害を呈したアマミノクロウサギ(<I>Pentalagus furnessi</I>)の雌成獣が保護され,保護されてから6日後に死亡した。病理検査の結果,右耳において慢性化膿性中耳炎・内耳炎が認められ,これによって前庭障害が生じたものと考えられた。
著者
久保 正仁 中嶋 朋美 本田 拓摩 河内 淑恵 伊藤 結 服部 正策 倉石 武
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.65-70, 2013-06-01

野生アマミノクロウサギ(<I>Pentalagus furnessi</I>)においてどのような自然発生病変がみられるかを調べるために, 2003年8月から2012年3月にかけて剖検され,ホルマリン固定されたアマミノクロウサギの臓器131頭分について病理組織学的な解析を行った。雌成獣1頭においてトキソプラズマ症が疑われる全身性の原虫感染症が,雄幼獣1頭においてグラム陰性桿菌感染による化膿性気管支肺炎および線維素性心外膜炎が認められ,これらが死因と考えられた。その他,類脂質肺炎と思われる泡沫状マクロファージの肺胞内集簇,限局性の真菌性肺炎,限局性の化膿性肉芽腫性肺炎,肺膿瘍,腎膿瘍など,様々な所見がみられた。なかでも泡沫状マクロファージの肺胞内集簇は113例のうち43例と高率に認められた。本研究では野生アマミノクロウサギでみられる自然発生病変の一端が明らかとなったが,十分な結果とは言い難い。今後は全ての死亡個体について病理学的モニタリングを実施できる体制の整備が望まれる。