著者
市田 行信 吉川 郷主 平井 寛 近藤 克則 小林 愼太郎
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.24, no.Special_Issue, pp.S277-S282, 2005 (Released:2007-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

This paper investigates linkage between social capital and individual health using multilevel analysis. Data for the analysis is based on 9,248 people over 65 years old living in 28 school districts in Chita peninsula. Results show that school-district-level contextual effects are found for average income and social capital. Importantly, it is argued that without adopting a multilevel approach, the debate on linkage between individual health and social capital cannot be adequately addressed.
著者
斉藤 雅茂 近藤 克則 尾島 俊之 平井 寛 JAGES グループ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.95-105, 2015 (Released:2015-06-12)
参考文献数
54
被引用文献数
11

目的 社会的孤立や孤立死の問題への関心は高い一方で,孤立状態の操作的定義に関する根拠は蓄積されていない。社会的孤立が健康の社会的決定要因の 1 つであることを考慮し,健康リスクが高まる交流の乏しさ(頻度)があるのかを明らかにすることを目的にした。方法 2003年10月に愛知県下 6 市町村における要介護認定を受けていない高齢者14,804人を対象にした AGES(Aichi Gerontological Evaluation Study,愛知老年学的評価研究)プロジェクトのデータの一部を用いた(回収率=50.4%)。性別・年齢が不明な人を除き,調査時点で歩行・入浴・排泄が自立であった12,085人について分析した。要介護認定・賦課データに基づいて,調査時点から2013年10月時点までの約10年間を追跡し,要介護状態(全認定および要介護 2 以上)への移行,認知症の発症と死亡状況を把握した。社会的孤立の指標には,別居家族・親族および友人と会う頻度と手紙・電話・メールなどで連絡を取り合う頻度を用いた。1 か月を4.3週と換算してすべての交流頻度を加算後,「月 1 回未満」から「毎日頻繁(週に 9 回以上)」群に分類した。結果 Cox 比例ハザードモデルの結果,調査時点での性別・年齢や同居者の有無,治療疾患の有無等を調整したうえでも,毎日頻繁群と比べて,月 1 回未満群では,1.37(95%CI:1.16–1.61)倍要介護 2 以上に,1.45(95%CI:1.21–1.74)倍認知症に,1.34(95%CI:1.16–1.55)倍早期死亡に至りやすいということが示された。月 1~週 1 回未満群でも同様に,いずれの健康指標とも有意な関連が認められたが,週 1 回以上の群では有意な関連は消失した。なお,調査後 1 年以内に従属変数のイベントが発生したケースを除外しても結果は大きく変わらなかった。同居者以外との交流頻度が月 1 回未満を孤立の基準とすると,高齢者の7.4%(男性で10.2%,女性で4.7%)が該当し,週 1 回未満を含めると15.8%(男性で21.2%,女性で10.6%)が該当した。結論 同居者以外との対面・非対面交流をあわせて週に 1 回未満という状態までがその後の要介護状態や認知症と関連し,月 1 回未満になると早期死亡とも密接に関連する交流の乏しさであることから,これらが社会的孤立の妥当な操作的定義であることが示唆された。
著者
近藤 克則 芦田 登代 平井 寛 三澤 仁平 鈴木 佳代
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.19-30, 2012 (Released:2012-04-28)
参考文献数
28
被引用文献数
12 11

日本の高齢者における等価所得・教育年数と死亡,要介護認定,健康寿命の喪失(死亡または要介護認定)との関連を明らかにすることを目的とした。協力を得られた6自治体に居住する高齢者14,652人(平均年齢71.0歳)を4年(1,461日)間追跡し,要介護認定および死亡データを得た。Cox比例ハザードモデルを用い,死亡,要介護認定,健康寿命の喪失をエンドポイントに等価所得・教育年数(共に5区分)を同時投入して年齢調整済みハザード比(HR)を男女別に求めた。その結果,男性では,最高所得層に比べ最低所得層でHR1.55-1.75,最長教育年数に比べ最短教育年数層ではHR1.45-1.97の統計学的にも有意な健康格差を認めた。一方,女性では,所得で0.92-1.22,教育年数で1.00-1.35と有意な健康格差は認めなかった。等価所得と教育年数の2つの社会経済指標と用いた健康指標(死亡,要介護認定,健康寿命の喪失)とで,健康格差の大きさも関連の程度も異なっていた。日本の高齢男性には,統計学的に有意な健康格差を認めたが,女性では認めなかった。これは健康格差が(少)ない社会・集団がありうる可能性を示唆しており,所見の再現性の検証や健康格差のモニタリング,生成機序の解明などが望まれる。
著者
市田 行信 吉川 郷主 平井 寛 近藤 克則 小林 愼太郎
出版者
THE ASSOCIATION OF RURAL PLANNING
雑誌
農村計画学会誌 = Journal of Rural Planning Association (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.277-282, 2005-11-30
参考文献数
15
被引用文献数
4 2

This paper investigates linkage between social capital and individual health using multilevel analysis. Data for the analysis is based on 9,248 people over 65 years old living in 28 school districts in Chita peninsula. Results show that school-district-level contextual effects are found for average income and social capital. Importantly, it is argued that without adopting a multilevel approach, the debate on linkage between individual health and social capital cannot be adequately addressed.
著者
平井 寛 近藤 克則 尾島 俊之 村田 千代栄
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.501-512, 2009 (Released:2014-06-13)
参考文献数
37
被引用文献数
15

目的 本研究では,地域在住高齢者9,702人を 3 年間追跡し,要介護認定のリスク要因の検討を行った。方法 2003年10月,東海地方の介護保険者 5 市町の協力を得て,各市町に居住する65歳以上で要介護認定を受けていない高齢者24,374人を対象とした自記式アンケート郵送回収調査を行った。調査回答者は12,031人(回収率49.4%)であった。このうち,性別,年齢を回答していない者(n=1387),歩行,入浴,排泄が自立していないまたは無回答の者(n=905),2003年10月31日までに要介護状態になった者,死亡した者(n=37)を除いた9,702人を分析対象とし2006年10月まで 3 年間追跡した。 目的変数(エンドポイント)は要介護認定とした。説明変数として年齢,家族構成,等価所得,教育年数,治療中の疾病の有無,内服薬数,転倒,咀嚼力,BMI,聴力障害,視力障害,排泄障害,老研式活動能力指標,うつ,主観的健康感,飲酒,喫煙,一日当たりの平均歩行時間,外出頻度,友人との交流,社会的サポート,会参加,就労,家事への従事を用いた。 Cox 比例ハザード回帰分析を用いて,要介護認定についてのハザード比を求めた。分析は男女別に行った。分析にはすべて SPSS 12.0J for Windows の Cox 比例ハザード回帰を用いた。結果 3 年の追跡期間中の死亡は520人,要介護認定838人,重度要介護認定380人であった。転出等による追跡打ち切りが103人であった。男女共通して要支援以上の要介護認定の高いリスクと関連していることが示されたのは,年齢高い,治療中の疾病あり,服薬数多い,一年間の転倒歴あり,咀嚼力低い,排泄障害あり,生活機能低い,主観的健康感よくない,うつ状態,歩行時間30分未満,外出頻度少ない,友人と会う頻度月 1 回未満,自主的会参加なし,仕事していない,家事していないこと,であった。結論 要介護に認定に関連するリスク要因を明らかにした。これらに着目した介護予防プログラムの開発が必要である。
著者
平井 寛 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.505-516, 2022-07-15 (Released:2022-07-13)
参考文献数
28

目的 介護予防の重点分野の1つ「閉じこもり」は,外出頻度が週に1回未満の者とされることが多い。しかし質問文に外出の定義がない場合,外出しても外出と認識せず,頻度を少なく回答し閉じこもりと判定される可能性がある。本研究では,高齢者対象の質問紙調査において,外出の定義の有無による閉じこもり割合,要介護リスクの違いを明らかにする。また,目的別の外出頻度を用いて,週1回以上外出しているにもかかわらず閉じこもりとなる「外出頻度回答の矛盾」に外出の定義の有無が関連しているかどうかを検討した。方法 愛知県の4介護保険者A~D在住の自立高齢者に対し2006~2007年に行った自記式調査の回答者10,802人を対象とした。全般的な外出頻度を尋ねる際,保険者Dのみ「屋外に出れば外出とします」という定義を示した。また全4保険者で,買い物等5種類の目的別外出頻度を尋ねた。全般的な外出頻度で週1回未満の者を「全般的閉じこもり」,目的別外出頻度いずれかで週1回以上の者を「目的別非閉じこもり」とした。「全般的閉じこもり」について,約10年間の要介護認定ハザード比(Hazard Ratio, HR)の違いを検討した。「目的別非閉じこもり」かつ「全般的閉じこもり」の者を「外出頻度回答に矛盾がある者」とし,発生割合,発生に関連する要因のPrevalence Ratio(PR)を算出した。結果 全般的閉じこもりの粗割合は保険者ABCでは11.7%であったのに対し,定義を示した保険者Dでは2.8%であった。保険者ABCに対し,保険者Dの全般的閉じこもりは要介護認定を受けるHRが有意に高かった(HR=1.56)。目的別非閉じこもりであるにもかかわらず全般的閉じこもりという矛盾回答は保険者ABCで10.2%,保険者Dで2.2%みられた。矛盾回答の発生に正の関連を示したのは女性,高い年齢,配偶者・子世代との同居,教育年数が短いこと,主観的健康感がよくないこと,うつ,島嶼部の居住者であることであった。外出の定義を示した保険者Dでは有意に矛盾が発生しにくかった(PR=0.29)。結論 外出の定義の有無により閉じこもり割合,要介護リスクに違いがみられた。外出の定義がないことは外出頻度回答の矛盾発生に有意に関連していた。閉じこもりを把握するために外出頻度を尋ねる際には外出の定義を示すことが望ましい。
著者
熊谷 賢太 杉 薫 円城寺 由久 坂田 隆夫 川瀬 綾香 酒井 毅 手塚 尚紀 中江 武志 高見 光央 野呂 眞人 池田 隆徳 平井 寛則
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.114-119, 2002

症例は25歳男性.突然死の家族歴あり.繰り返す失神の精査目的に入院.標準12誘導心電図では下壁誘導と側胸部誘導に0.2mVのST上昇と下壁誘導でQRS終末にnotchを認めた.Holter心電図で最短R-R間隔が200msで最大15連発の非持続性心室頻拍が認められた.エドロフォニウム投与下の右室流出路からの2連早期刺激で血行動態破綻を来す多形性心室頻拍が誘発された.各種検査で器質的心疾患を認めなかったが,失神の既往がありICD植込みを行った.ICD植込み後の失神時心内心電図記録で心室細動が確認された,植込み後約2年の観察期間中Brugada様の心電図特徴(右胸部誘導のST上昇,不完全右脚ブロック)は認められなかったが,pilsicainide負荷によりV2誘導でcoved typeのST上昇が生じNa channelの障害が示唆された.典型的心電図特微を示さず注意すべきBrugada症候群の一亜型と考えられたので報告する.
著者
竹田 徳則 近藤 克則 平井 寛 村田 千代栄
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.55-65, 2007-02-15

要旨:本研究の目的は,作業療法による認知症予防の手がかりを得ることである.対象は,65歳以上の地域在住高齢者で5年後にも要介護状態になかった健康寿命保持群2,110名と認知症で要介護状態となった230名である.5年間認知症にならずに健康寿命を保持している状態を予測するオッズ比を求めた.その結果,例えば趣味「あり」(オッズ比:2.27),主観的健康感「よい」(2.00),うつ「なし」(1.91),IADL「自立」(2.56)などが,健診「受診」(1.71),歩行「30分以上」(1.54)のオッズ比よりも大きかった.健康行動よりも,心理・社会面の望ましい状態を保持することが認知症予防には重要である可能性が示された.
著者
平井 寛
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Special_Issue, pp.201-206, 2010-02-28 (Released:2011-03-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1 4

The purpose of this study was to examine whether the salon program for elderly can improve individual level social capital indicators corresponding to measures of social networks, religious group involvement, social support, social trust and social norm. The salon program started in 2007. We had before-and-after survey in 2006 and 2008. We analyzed 1606 samples who participated in these surveys. Some of individual-level social capital indicators were improved in Salon program participants compared with non-participants. These results suggest that our intervention program can enhance individual-level social capital.
著者
近藤 克則 吉井 清子 末盛 慶 竹田 徳則 村田 千代栄 遠藤 秀紀 尾島 俊之 平井 寛 斉藤 嘉孝 中出 美代 松田 亮三 相田 潤
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,介護予防に向けて,心理的因子や社会経済的因子の影響を明らかにする社会疫学の重要性を検討することである.(1)理論研究では,多くの文献をもとに社会疫学の重要性を検討した.(2)大規模調査(回収数39,765,回収率60.8%)を実施した.(3)横断分析では,健診や医療受診,うつなどと,社会経済的因子の関連が見られること,(4)コホート(追跡)研究では,社会経済的因子が,認知症発症や要介護認定,死亡の予測因子であることを明らかにした.本研究により,社会疫学研究が,介護予防においても重要であることを明らかにした.