著者
松田 亮三
出版者
日本医療経済学会
雑誌
日本医療経済学会会報 (ISSN:13449176)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.41-52, 2017 (Released:2017-03-10)

よりよき政策形成につながるような政策分析は、いかになされるべきであろうか?本論文は、政策研究という領域の概念とその類型、特に実証主義的研究とポスト実証主義的研究を概観し、さまざまな政策分析の潮流 ―― 政策への助言、民主制への貢献、難しい問題への折り合いの発見、批判―とそれがもつ政治的性格についての議論を紹介した。それをふまえて、日本での医療政策分析のあり方を検討する重要性を指摘した。
著者
松嶋 紀子 森田 徳子 尾方 希 佐伯 圭吾 松田 亮三 車谷 典男
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.674-681, 2003-01-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

Objectives: To investigate the diurnal rhythm of live births labored spontaneously, and the effects of obstetric intervention on birth time distributions.Methods: The data of live births tabulated by time (one-hour intervals), date and birthplace throughout Japan between 1981 and 1998 were obtained with permission from the former Ministry of Health and Welfare. Together with an investigation of hourly birth numbers by place in each year, an annual transition of hourly birth rates in medical institutions and the diurnal rhythm of birth numbers in maternity homes and at home were analyzed using regression analysis.Results: In every calendar year studied the hourly live birth numbers at hospitals showed a singlepeak distribution pattern with maximum values at 13:00-15:00. The annual transition of hourly birth rates showed a 10% (birth numbers base) decrease in the 11:00-13:00 period in 1998 as compared with that in 1981, while there was a corresponding increase of 8% in the 13:00-15:00 period. Hourly birth numbers at clinics showed a double-peak distribution pattern with maximum values during the 11:00-12:00 and 14:00-15:00 periods in early 1980, while a single-peak distribution with a maximum value during the 13:00-15:00 period appeared in 1989 and has remained thereafter. Hourly birth rates (birth numbers base) increased by over 6% in the 13:00-15:00 and 17:00-20:00 periods over the past 18 years, while they decreased by 10% in the 9:00-13:00 period. The results at maternity homes were clearly different from those at hospitals and clinics. The live birth numbers totaled for the 18 years showed a double-phase distribution with a maximum value in the 6:00-7:00 period and a minimum value in the 19:00-20:00 period. The best-fit regression model for the obtained data was a sine curve with a maximum value at 6:00 (coefficient of determination 0.97). Hourly distributions of live births at home also fitted best to a sine curve with the maximum value again at 6:00 (coefficient of determination 0.95).Conclusions: The results suggested that the timing of spontaneous live births follows a circadian rhythm and that obstetric intervention affects time distributions of live births by shifting over 10% of births during the night and early morning to a working day service time (9:00-17:00).
著者
松田 亮三
出版者
日本医療福祉政策学会
雑誌
医療福祉政策研究 (ISSN:24336858)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.29-37, 2020 (Released:2020-06-09)

「働き方改革」は、労働者の生活・労働の質の向上を目的としつつも、成長政策の一部としての人材政策としての意味付けがより濃くなってきている。医療部門においては、特に医師の「働き方改革」が推進されている。この改革は結果的には医師労働力供給の変更をもたらすため、それが医療供給の質・アクセスの保障に向けた取り組みと整合的となることが要請される。このため、長年労働時間規制の枠外とされ、長時間労働が常態化している医師労働の再編をいかに行うかは、複雑な要因を扱わねばならない政策上の難問となっている。本稿では、これまでの医師需給に関わ る先行研究をもとに、医師の「働き方改革」と医療供給との関わりを分析する枠組みを提示した。その枠組みには、住民の健康医療上の必要、医療労働過程の編成、必要労働、労働力供給が含まれている。医師労働力供給には、国内政策、国際移動、職業生活志向の変化を折り込み検討する必要がある。
著者
松田 亮三
出版者
日本医療経済学会
雑誌
日本医療経済学会会報 (ISSN:13449176)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.17-27, 2016-03-01

医療機構を集合的行為と共通の目的によって舵取りしていく過程を、医療機構の統治のあり方(ガバナンス)の問題と位置づけ、皆保険体制成立後の1970年代を中心に日本における医療供給についての統治のあり方を検討した。そこでは、価格の定められた拡大規制の緩やかな市場と多様なアクターが関与するネットワーク調整が認められた。
著者
松田 亮三
出版者
日本医療経済学会
雑誌
日本医療経済学会会報 (ISSN:13449176)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-12, 2014-12-01

医療機構へのグローバル化の影響は医薬品等の限定的な範囲でもっぱら議論されてきた。しかし、メディカル・ツーリズムの急激な台頭や包括的自由貿易協定の拡大にあるように、各国医療機構・体制へのグローバル市場の影響はより深くまた大きくなっていく趨勢にある。本論文はグローバル化が医療政策にどのような影響をもたらすか、各国の医療機構・政策がどのような課題に直面しているか、について概観した。まず、グローバル化を地球規模の相互依存性が増大する過程として把握した上で、その過程において福祉国家は動揺しつつも、基本的には存続しており、医療はその重要な構成部分であり続けていることを指摘した。次いで、グローバル化の医療への影響を、金融、労働、医薬品、医療サービス、知識・情報、理念について検討し、それらの多様で複雑な影響を考察した。最後に、グローバル化の中で特に競争の激化や国際的規制環境の変化により、グローバルな議論と圧力をふまえつつ各国の医療政策を形成することがより強く求められるようになってきている点を指摘した。
著者
近藤 克則 吉井 清子 末盛 慶 竹田 徳則 村田 千代栄 遠藤 秀紀 尾島 俊之 平井 寛 斉藤 嘉孝 中出 美代 松田 亮三 相田 潤
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,介護予防に向けて,心理的因子や社会経済的因子の影響を明らかにする社会疫学の重要性を検討することである.(1)理論研究では,多くの文献をもとに社会疫学の重要性を検討した.(2)大規模調査(回収数39,765,回収率60.8%)を実施した.(3)横断分析では,健診や医療受診,うつなどと,社会経済的因子の関連が見られること,(4)コホート(追跡)研究では,社会経済的因子が,認知症発症や要介護認定,死亡の予測因子であることを明らかにした.本研究により,社会疫学研究が,介護予防においても重要であることを明らかにした.