著者
岩切 一幸 高橋 正也 外山 みどり 平田 衛 久永 直見
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.12-20, 2007 (Released:2007-02-16)
参考文献数
23
被引用文献数
23 17

高齢者介護施設における介護機器の使用状況とその問題点:岩切一幸ほか.独立行政法人労働安全衛生総合研究所―近年,介護者の筋骨格系障害が急速に増加している.この対策としては,介護機器の使用が必要と考えられることから,現在の高齢者介護施設における介護機器の使用状況と問題点・要望を把握することを目的としたアンケート調査を実施した.調査では,特別養護老人ホーム2施設と介護老人保健施設1施設を対象に,事業所調査票と個人調査票を配布した.解析対象者は,平均年齢32.2歳の介護福祉士およびケアワーカーの81名(女性63名,男性18名)とした.施設の平均入所者数は70.0名,平均要介護度は3.6であった.3施設とも車いすと高さ可変式ベッドは必要数確保されており,常に使用されていた.しかし,床走行式リフト,天井走行式リフト,スライディングボードの導入数は少なく,それぞれの使用割合も14.8%,16.0%,23.5%と低かった.特に使用割合の低かったリフトの問題点は,乗り降りに手間がかかる,落下の危険性を感じるであった.その他にも,機器の問題点や改良への要望があげられた.介護者は,約9割の者が介護動作に関する教育や訓練を受けていたにも関わらず,移乗作業での腰部負担は大きいと訴えていた.このことから,筋骨格系障害の予防策としては,欧米のような介護機器の使用が必要と考えられた.また,そのためには,使い勝手を考慮した機器の改良も必要と考えられた. (産衛誌2007; 49: 12-20)
著者
岩切 一幸 外山 みどり 高橋 正也 木口 昌子 平田 衛 樋口 重和 北原 照代 垰田 和史 久永 直見
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.255-265, 2008 (Released:2009-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

本稿では,介護労働において安全衛生上大きな問題となっている介護者の腰痛を取り上げ,その発生状況や予防対策を紹介するとともに,著者らが作成した「介護者のための腰痛予防マニュアル~安全な移乗のために~」を解説する.このマニュアルは,介護機器を活用する際の参考資料として厚生労働省通達の「職場における腰痛発生状況の分析について」で引用されており,介護機器を利用した介護者の腰痛予防教育などに利用できる.
著者
平田 衛 熊谷 信二 田渕 武夫 田井中 秀嗣 安藤 剛 織田 肇
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.190-201, 1999-11-20
被引用文献数
11

小規模事業所における産業保健サービスの実態を明らかにするために,大阪市に隣接する市の一部地域765の小規模事業所から回収された質問紙(回収率69.3%)を解析した.1∼4人事業所は358(46.8%),5∼9人事業所は203(26.5%),10∼29人事業所は163(21.3%),30∼49人事業所は41(5.4%)であり,主な業種は,製造業(374, 48.9%),卸小売飲食業(153, 20.0%),サービス業(132, 17.3%),建設業(72, 9.4%)であった.健康診断は47.7%でおこなわれ,それを実施しない理由は「時間がない」(不実施事業所の33.3%),「従業員が受診を望まない」(28.1%)であった.健康増進活動は29.2%の事業所でおこなわれていた.小規模事業所が望む産業保健活動として,健康診断(59.0%),健康増進(36.5%),メンタルヘルス対策(25.9%),労使への情報提供(25.5%)が挙げられた.財政的支援および経済的誘導策が各々46.4%,28.8%の小規模事業所から希望があった.地域産業保健センターはあまり知られていない(8.2%)が,健康診断(48.4%),情報サービス(37.5%),作業方法の評価および改善の助言(19.8%),環境測定(12.4%)の希望があった.