著者
大中 忠勝
出版者
Japan Society of Physiological Anthropology
雑誌
The Annals of physiological anthropology (ISSN:02878429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-10, 1993-01-01 (Released:2008-02-08)
参考文献数
17
被引用文献数
7 13

Exposure to ultraviolet radiation (UVR) occurs from both natural and artificial sources. The main natural source is the sun. On the other hand, artificial UVR sources are widely used in industry and also used in hospitals, Iaboratories, etc. because of their germicidal properties. They are even used for cosmetic purposes. UVR can be classified into three regions according to its wavelength : as UVA (320-400nm), UVB (320-280nm) and UVC (280-200nm). The UVC has the greatest health effect on humans among the three. The sun radiates a wide range of spectrum of electromagnetic radiation including the UVR, however the radiation below 290 nm in wavelength does hot reach the surface of the earth for effective absorption by the strato-spheric ozone layer. As a result, UVR from a natural source consists of only UVA and a part of UVB. On the other hand, artificial UVR sources include UVC region and have serious effects on the human body, especially on the skin and eyes.
著者
高崎 裕治 永井 由美子 井上 馨 真木 誠 大中 忠勝 栃原 裕
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.99-106, 2011-11
被引用文献数
3

冬季における高年者の入浴習慣について,札幌,秋田,大阪,福岡の4地域における特徴を比較し,入浴事故死亡率の地域差に関連する要因を検討するため,質問紙による調査を実施した.高年者の半数以上は何らかの治療を受けており,特に高血圧症の治療を受けている者がいずれの地域においても最も多かった.札幌より大阪や福岡の高年者の方が冬季の浴室を寒いと感じていた.暖房器具として,脱衣場所ではストーブがよく使用され,浴室では暖房乾燥機が専用のものとして使用されていた.脱衣場所や浴室に暖房器具を設置していない者は,その必要性を感じていなかった.ロジスティック回帰分析を行うと,入浴事故死亡率が低い札幌での冬季の入浴習慣として,入浴回数が少なく,浴室への滞在時間や浴槽に浸かる時間が短く,入浴中はあまり寒さを感じていないという傾向が示された.同様な入浴習慣を形成できれば,致命的な入浴事故を防ぐために有効と思われる.
著者
野中 麻由 戸渡(上野) 智子 大中 忠勝
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.91-97, 2009-11
参考文献数
17
被引用文献数
1

被験者は21〜24歳の健康な女子学生18名とし、夏期と冬期に上下温度差がある温熱環境(上方が暖かく、下方が涼しい状態)に曝露した。平均皮膚温が温熱的中性域(33℃〜34℃)に保たれる条件で、中立的な温冷感、快適感が得られる「平均皮膚温と身体各部位の皮膚温の差」の範囲を検討した。夏期において中立的な温冷感、快適感が得られる平均皮膚温と身体各部位の皮膚温の差はそれぞれ2.3℃、2.7℃以内となった。同様に、冬期において中立的な温冷感、快適感が得られる平均皮膚温と身体各部位の皮膚温の差はそれぞれ3.1℃、3.2℃以内となった。また、冬期よりも夏期の方が、皮膚温の分布が小さくても寒さや不快感を訴える傾向にあった。
著者
田中 正敏 徳留 省悟 大中 忠勝 藤井 幸雄
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.119-127, 1988-12-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
30

東京都監察医務院の記録による1978年より1982年までの5年間の凍死症例は83件であり, 検案数に対する割合は平均0.29%である.40, 50歳代の男子が多く, 浮浪者なども含め無職ないし職業不詳の場合が男子全体の80%以上を示している.発生は1, 2, 12月の3か月で全体の80%近くを占めている.ほとんどの症例は気温11℃以下において発生し, 屋外では気温0~5℃での発生が多い.酩酊状態の場合には, 屋外で気温15~19℃といった場合にも発生がみられる.症例の75%は屋外における発生であり, わけても酩酊し路上での発生が多い.剖検時の血中アルコール濃度は1.5~2.4mg/mlの中等度酩酊が多いが, 40, 50歳代では2.5mg/ml以上の強度酩酊の場合が多い.剖検時の臓器所見としてアルコールによるとみられる肝障害も多くみられた.ローレル指数も一般に小さく, 栄養状態の劣っている者が多く, 都市型低体温症の場合には低栄養とむすびつきやすい.
著者
高崎 裕治 大中 忠勝 栃原 裕 永井 由美子 伊藤 宏充 吉竹 史郎
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-34, 2006-05
被引用文献数
4

浴槽死亡事故の地域差に影響する因子を検討するにあたり,本研究の目的は日本の各地域における入浴実態を比較してその差異を明かにすることである.質問紙による調査を全国11の地域(札幌,秋田,仙台,北千葉,南千葉,静岡,富山,大阪,広島,福岡,鹿児島)で実施した.各地域で約30戸の戸建て住宅を対象に,質問紙を夏と冬の2回配付した.建築後の経過年数,住宅の設備や温冷感,入浴行為等について質問を行った.その結果,以下のような入浴実態やその地域差が認められた.すなわち,保温性や断熱性という観点からは比較的新しい住宅や北日本の住宅が優れていること,予期に反して冬期に南日本の人たちの方が北日本の人たちよりも浴室を寒く感じていることなどである.また,入浴頻度,時間や最初に入力する人にも地域差が見られた.各地域の入浴実態と浴槽事故死亡率には関連がありそうであるが,さらに検討が必要である.
著者
洪 玉珠 市川 憲良 鎌田 元康 石渡 博 坂上 恭助 炭田 和宏 大中 忠勝 坊垣 和明 田中 正敏
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.43-59, 1991-02-25
被引用文献数
7

快適なシャワ設備の設計用資料を得ることを目的とした,シャワヘッドをハンガに掛けた状態でのシャワ実験と,入浴時の洗体を想定したハンドシャワでの適温・適流量を求めるとともに,その時の浴槽内の適温を探る実験を行った.また,近年の自動ふろがま(風呂釜)の普及にともない出現した追いだきの方式から,強制循環・半強制循環・高温差し湯の三つを選定して種々の条件で運転し,入浴時追いだきの快適条件を探る実験を行った.これら3種類の実験で得られた結果から,適温・適流量および湯温・湯流量の許容変動幅に関する第一段階の設計目標値を提案するとともに,入浴しながら追いだきを行った場合の,現状機器での問題点を明らかにした.
著者
大中 忠勝 都築 和代 栃原 裕
出版者
国立公衆衛生院
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究は高齢者において、1)生理・心理機能の変動を指標とした寒冷暴露後の暖房や暑熱暴露後の冷房の快適条件を求める研究と2)生理・心理反応から寝室の快適な温熱条件を求める研究の2つから成り立っている。1)寒冷暴露後の暖房や暑熱暴露後の冷房の快適温度条件63〜73歳の女子高齢者8名(高齢群)と19〜27女子若年者9名(若年群)を対象に、寒冷および暑熱曝露後の快適温度を被検者が快適となるように室温を制御する方法で調査した。高齢者の暑熱および常温暴露後の快適温度条件は若年者と異ならないものの(24〜25℃)、寒冷暴露後では高齢者はやや高い温度を好む傾向にあり、時間経過に伴っても変化が無かった。また、高齢者では快適とする範囲は大きく、温熱環境を正確に把握できない場合も見られた。これらの結果は、高齢者の居住温熱環境の設定、改善には高齢者以外の関与が不可欠である場合があることを示唆するものである。2)生理・心理反応に基づく寝室の快適な温熱条件高齢者の睡眠に及ぼす室温の影響を調べるため、年齢67〜82歳の高齢者20名の睡眠中の体動を冬季(1〜2月)と夏期(7〜8月)において、各被検者の住居で測定した。同事に室温、寝床内温度を測定した。夏季においては、年齢20〜21歳の若年者20名についても同様の測定を行った。睡眠中の体動と室温との関係について検討し、以下の結果を得た。1)測定期間中の室温は冬季8℃、夏季28℃前後であり、両季節ともは睡眠に好適とされる温度範囲外であった。2)寝床内温度は、夏季は室温と正の相関関係にあり、室温よりやや高い値であった。一方、冬季は電気毛布等の使用により、10〜40℃の間の広い範囲に分布していた。3)夏季での体動数は高齢者において若年者より有意に高い値であった。4)高齢者の冬季での体動数は夏季より有意に低い値であった。5)夏季での体動数は室温と有意な正の相関関係にあり、特に高齢者では室温26℃付近で体動数が増加する傾向にあった。一方、若年者では高齢者よりやや高い室温で体動数は増加した。以上より、高齢者では睡眠は快適とされる環境温度域においても、若年者と比較し体動が多く、さらに夏季の睡眠において体動数が増加する環境温度は高齢者で低く、高温環境は高齢者の睡眠により強い影響を与えていることが示唆された。
著者
都築 和代 飯塚 幸子 光辻 佐枝子 池田 麻子 富田 純子 栃原 裕 大中 忠勝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.429-438, 2001-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
18
被引用文献数
3

A questionnaire survey was conducted to investigate the thermal environment experienced by young children in both summer and winter. The questionnaire consisted of two parts; the basic and the fact-finding questionnaires. The first part was designed to reveal the detailed characteristics of environmental preferences for both young children and their mothers as well as mothers' behavior regarding thermoregulation and their living environments. The second part sought information regarding the measurement of room temperatures, the activities, clothing and mothers' thermal sensations at home. The second part including the measurement of room temperature was conducted four times (9-10 AM, 1-2 PM, 5-6 PM, 8-10 PM) on a chosen day in winter as well as in summer.The results are as follows.1) Over 90% of the case, use of the heating and cooling equipment depended on the mother's thermal sensation in winter, while, 50% of the case, mother's thermal sensation led the behavioral thermal regulation at home in summer. The choice of children's clothing depended on weather (80%), mother' s thermal sensation (40%), and room temperature (20%).2) The field survey showed that the average ambient air temperatures in the dwelling where mothers and their children lived were 18°C in winter and 28°C in summer.3) The young children's clothing was one or two pieces fewer than mothers' both in summer and winter. The average clothing insulation for mothers was estimated to be 0.35 clo and 1.05 clo in summer and winter respectively, while the clothing insulation for children was estimated to be 0.1 clo and 0.3 clo less than that for mothers in summer and winter respectively.4) The relationship between ambient air temperatures and the mothers' thermal sensations was good in both winter and summer. The neutral temperatures for mothers that were determined from respective liner regression were 16°C and 26°C in winter and summer respectively. The other neutral temperatures determined by mothers' clothing insulation were 21°C and 27 °C in winter and summer respectively.
著者
高崎 裕治 大中 忠勝 栃原 裕 永井 由美子 伊藤 宏充 吉竹 史郎
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.65-71, 2010 (Released:2018-03-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2

パイロットスタディとして大阪と秋田で冬期に入浴と排泄の模擬行動を観察し,高齢者におけるヒートショックの状況を検討した.さらに,全国調査で収集した室内温熱環境の資料を用いて,浴室とトイレの暖房設備等と気温の関係,居間との気温差,高齢者の温冷感を検討した.パイロットスタディでは寒冷地において居間と他の部屋の気温差が大きく,居間から浴室やトイレに移動したときに大きな血圧上昇を示すものがいた.全国調査の資料より,居間と浴室やトイレとの気温差は夕方8時前後に最大となった.同じ温冷感であるにもかかわらず,浴室やトイレでの実際の気温は居間の気温よりも低かった.高齢者は身体にストレスを受けているが,浴室やトイレの寒さには寛大であるように思われる.居間と浴室の気温差は浴室での死亡率と相関する傾向にある.
著者
田中 正敏 徳留 省悟 大中 忠勝 藤井 幸雄
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.119-127, 1988

東京都監察医務院の記録による1978年より1982年までの5年間の凍死症例は83件であり, 検案数に対する割合は平均0.29%である.40, 50歳代の男子が多く, 浮浪者なども含め無職ないし職業不詳の場合が男子全体の80%以上を示している.<BR>発生は1, 2, 12月の3か月で全体の80%近くを占めている.ほとんどの症例は気温11℃以下において発生し, 屋外では気温0~5℃での発生が多い.酩酊状態の場合には, 屋外で気温15~19℃といった場合にも発生がみられる.症例の75%は屋外における発生であり, わけても酩酊し路上での発生が多い.<BR>剖検時の血中アルコール濃度は1.5~2.4mg/m<I>l</I>の中等度酩酊が多いが, 40, 50歳代では2.5mg/m<I>l</I>以上の強度酩酊の場合が多い.剖検時の臓器所見としてアルコールによるとみられる肝障害も多くみられた.ローレル指数も一般に小さく, 栄養状態の劣っている者が多く, 都市型低体温症の場合には低栄養とむすびつきやすい.
著者
大中 忠勝 野中 麻由
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.93-98, 2011-11
被引用文献数
1

20名の青年女子(21.3±0.6歳)を被験者とし、自己申告に基づき暑がり(HS群:12名)と非暑がり(NS群:8名)の2群に分けた。被験者は26℃(60%RH)の前室で20分間安静を保った後、28℃、30℃、32℃(50%RH)のいずれかの温度に設定された曝露室で60分間過ごした。実験中、身体7か所の皮膚温、舌下温、衣内湿度が測定され、同時に温冷感、快適感の申告が記録された。28℃への曝露60分目の平均皮膚温は、HS群33.6℃、NS群33.2℃であり、群間に有意差(P<0.01)が認められた。HS群は発汗量が多く、発汗開始時期も早い頃向にあったが、群間に有意差は見られなかった。両群とも、平均皮膚温と快適感の間に有意な相関関係が認められ、HS群の回帰直線の傾きはNS群より大きかった。HS群は平均皮膚温の上昇に伴い、温熱的不快感を生じさせやすい頃向にあることが示された。
著者
野中 麻由 大中 忠勝
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.34, pp.187-188, 2010-11-22

非冷え性者との比較により、室温22℃(PMV=-1)および24℃(PMV=-0.5)における冷え性者の皮膚温や温冷感の違いを検討した。被験者は健康な女子学生16名とし、自己申告及びアンケートにより冷え性グループ9名と、非冷え性グループ7名に分けた。24℃曝露では、非冷え性グループが冷え性グループに比べ、有意に寒し順に申告した。22℃曝露では、冷え性グループと非冷え性グループの温冷感申告値の差が小さかった。22℃曝露では、非冷え性グループに比べ冷え性グノトプの平均皮膚温と体幹部の皮膚温が高かった。冷え性グループの高い皮膚温が、非冷え性グループに比べ涼しい環境で涼しさを感じない原因の1つであることが示唆された。
著者
大中 忠勝
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-6, 2013-05

本研究の目的は暑がりと自己申告した者の家庭での夏期における温熱環境の実態を調査し、その環境での生理・心理反応を明らかにすることである。被験者の家庭での温熱環境調査が夏期に行われた。被験者は21歳から23歳の若年女性20名であり、自己申告により暑がり10名と非暑がり10名に分けた。被験者の家庭の温度、湿度を2分間隔で1週間にわたり記録した。在宅中は約1時間ごとに身体7部位の皮膚温(前額、胸、前腕、手背、大腿、下腿、足背)を放射温度計により測定した。同時に温冷感、快適感、着衣状況を記録した。室温と温冷感との間に有意な相関関係が認められ、暑がり群の回帰直線の回帰係数(傾き)は、非暑がり群より有意に小さかった(P<0.01)。暑がり群では室温30.2℃で「やや汗をかいている」と申告し、非暑がり群が同じ申告を行った室温より0.5℃、有意に低かった(P<0.05)。室温の希望度において、このままでよい」と申告した時の室温は、暑がり群27.9℃、非暑がり群28.5℃であり、両群間に有意差が認められた(P<0.01)。部屋で着用していた衣服は暑がり群0.27クロ、非暑がり群0.25クロであり、群間に有意差は認められなかった。暑がり群は、暑さに敏感であり、より涼しい温熱環境で快適さを得ており、夏季に薄着である状況下でさえエアコンを使用し、快適な温熱環境を得る傾向があった。
著者
大中 忠勝
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

人工環境への非適応者としての「暑がり」の特徴を調査するために、実験室実験とフィールド調査を行った。1)実験室実験20名の青年女子(21.3±0.6歳)を被験者とし、自己申告に基づき暑がり(HS群: 12名)と非暑がり(NS群: 8名)の2群に分けた。被験者は26℃(60% RH)の前室で20分間安静を保った後、28℃、30℃、32℃(50% RH)のいずれかの温度に設定された曝露室で60分間過ごした。実験中、身体7か所の皮膚温、舌下温、衣内湿度が測定され、同時に温冷感、快適感の申告が記録された。28℃への曝露60分目の平均皮膚温は、HS群33.6℃、NS群33.2℃であり、群間に有意差(P<0.01)が認められた。HS群は発汗量が多く、発汗開始時期も早い傾向にあったが、群間に有意差は見られなかった。両群とも、平均皮膚温と快適感の間に有意な相関関係が認められ、HS群の回帰直線の傾きはNS群より大きかった。HS群は平均皮膚温の上昇に伴い、温熱的不快感を生じさせやすい傾向にあることが示された。2)フィールド調査本研究の目的は「暑がり」が生活する住居の温熱環境とその状況での生理・心理反応をあきらかにすることであった。被験者は暑がり10名(以下HS群)、非暑がり10名(NS群)の青年女子であり、彼女らの自宅(もっとも長い時間を過ごす部屋)において調査が行われた。調査は7月から8月にかけて行った。気温、気湿は2分間間隔で1週間にわたり記録した。自宅に滞在時には、約1時間間隔で身体7か所(前額、胸、前腕、手背、大腿、下腿、足背)の皮膚温が放射温度計により測定された。同時に温冷感、快適感、着衣量が記録された。温熱的中立(暑くも寒くもない)を申告したときの室温はHS群27.2℃、NS群28.3℃であった。平均皮膚温と室温の間には両群とも有意な直線関係が認められたが、中立温感が得られると考えられる平均皮膚温34℃が得られた室温はHS群31.2℃、NS群28.7℃であった。被験者が発汗を感じたときの室温はHS群30.2℃、NS群30.7℃であり、両群間に有意差が認められた。室内での着衣量はHS群0.27clo、NS群0.25cloであり、群間に有意差は認められなかった。HS群の被験者は暑さに敏感であり、涼しい環境を好む傾向にあることが示された。また、エアコンを使用して快適環境を構築する傾向にあることも示唆された。
著者
森田 健 大中 忠勝 上野 智子 山本 昭子
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

ヒトの生体機能が季節により変動することはよく知られているが、原因がはっきりしている例は少ない。また、生体リズムの季節変動についても報告が少ない。季節により生体リズムが変化する機序としては、日長の変化によるリズム同調の変化が考えられる。このことから本研究では、緯度が異なる3地域(高・中・低緯度)及び季節(春・夏・秋・冬)において人々が日常生活の中で受ける光の量及び質の違いを把握し、ヒトはその環境にどのように適応しているのかという環境適応能の観点から分析を行った。その結果、自然の光環境が気候や季節及び緯度により大きく異なることが明らかになった一方、被験者の受光量や活動量は季節や緯度との関係性は低く、むしろ個人の生活スタイルや過ごす場所に依存している可能性も示唆された。しかし生体リズムの指標となるメラトニンリズムには、季節変動及び地域差における特徴が明確に表れた。特に中緯度:日本の秋において、高いメラトニン分泌量及び位相後退の特異的季節変動が認められたが、これが外部の光刺激変化によるのか、また冬に備える内分泌機能の働きによるものなのなど、その原因を明確にすることはできなかった。本研究における調査は、フィールド調査であり、生体リズムに影響する様々な因子の厳密な制御は行っていない。しかし、日常生活における実際の光環境下で確認した本成果は、今後の光環境計画を考える上での基礎的知見を提供するものと考えている。