著者
持田 徹 嶋倉 一實 堅田 兼史 佐古井 智紀 長野 克則
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.72, pp.107-116, 1999-01-25
参考文献数
14
被引用文献数
5

暑い環境では,平均皮膚温とともにぬれ面積率が人の生理的状態をよく表すと言われている.本論文では被験者を用いた実験を行い,一定の温熱感を示した時の平均皮膚温とぬれ面積率の関係を調べた.その結果,等しい暑さの度合いを申告した時,平均皮膚温とぬれ面積率はそれぞれ一定値をとらず,湿度の高低によって,異なる値を示すことがわかった.すなわち,湿度が高いほど平均皮膚温は低く,ぬれ面積率は大きな値となり,一方,湿度が低いほど平均皮膚温は高く,ぬれ面積率は小さい値を示し,それらがある一定の関係を有することがわかった.そして,等しい暑熱感を示した五つの環境における微係数を求めたところ,微係数はいずれもマイナスの値を示し,かつ,その絶対値は高湿域では小さく,低湿域になるに従い微係数の絶対値は大きい結果となった.このことは等暖感線が湿り空気線図上で曲線になることを意味している.
著者
持田 徹 BERGLUND L. G. 堅田 兼史 佐古井 智紀 長野 克則 嶋倉 一實 吉野 博
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.72, pp.67-74, 1999-01-25
参考文献数
19
被引用文献数
8

体感温に及ぼす湿度の影響をみるために被験者実験を行い,その結果と人体の熱平衡式から算出される等温感線の特徴について検討した.椅座・裸体状態で実験を行い,"少し暖かい"と"暑い"と申告した時の,平均皮膚温とぬれ面積率の関係を観察した.その結果,温感申告値が等しい時,高湿・中湿・低湿環境で平均皮膚温とぬれ面積率はそれぞれ独自の値をとり,かつ,両者が一定の関係をもって変化していることを知った.この特性を熱平衡式に組み込んで得られる等温感線は,湿り空気線図上で微係数がいずれもマイナス値を示し,高湿ほどその微係数が大きく,低湿に移行するに従って微係数が小さい曲線となり,体感温に及ぼす湿度の影響が一定でないことがわかった.
著者
持田 徹
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.261-267, 1982-10-15 (Released:2010-07-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

人体に関する平均対流熱伝達率を生理特性の配慮のもとに, 熱および物質伝達論に基づく工学手法により理論的に導いた. まず環境との間の熱平衡から裸体と対流熱伝達的に等価な円筒直径として18cmを得, この円筒に Hilpert と Oosthuizen らの無次元式を適用して, 人体に関する平均対流熱伝達率の式: hc=3√270V2+23〔Kcal/m2h℃〕(0.1≦V≦3.0〔m/s〕) を定めた. 本式の特徴は自然対流と強制対流を同時に考慮し, 特に低風速域における自然対流の影響を評価している点にある. さらに, 着衣状態は裸体円筒に衣服を着せた取り扱いをし, 最終的に求められた熱伝達率の検討と過去の提案式との比較も行った.
著者
佐古井 智紀 持田 徹 桒原 浩平
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.107-118, 2010

著者らは WBGT の特性を検討した既往研究において,皮膚の飽和度合と湿球温度 <i>T</sub>w</sub></i>,黒色グローブ温度 <i>T<sub>gB</sub></i>,気温 <i>T<sub>a</sub></i> を用いて人体の熱平衡式を記述し,皮膚温 <i>T<sub>sk</sub></i> を <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の線形式で表す理論式を得た.ただし,皮膚の飽和度合を用いた式では,<i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の按分比は皮膚の飽和度合の影響を受けず,発汗が <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の按分比に及ぼす影響を把握できない.本論文では,皮膚の飽和度合に代わって,ぬれ率と <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> を用いて人体の熱平衡式を記述し,皮膚温 <i>T<sub>sk</sub></i> を <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の線形式で表す熱平衡理論式(WBGT 理論式)を導出,その特性を考察した.日射がある屋外で,着衣の日射吸収率が黒色グローブ温度計の日射吸収率と異なる場合に,湿球温度 <i>T<sub>w</sub></i> と黒色グローブ温度 <i>T<sub>gB</sub></i>,乾球温度 <i>T<sub>a</sub></i> から推定される皮膚温に 7℃程度の違いが生じ得ることが判った.着衣と黒色グローブ温度計の日射吸収率の差を的確に考慮するため,日射の影響を反映した人体の作用温度を表す上での黒色グローブ温度 <i>T<sub>gB</sub></i> と灰色グローブ温度 <i>T<sub>gG</sub></i> の按分比を導き,その結果から <i>T<sub>w</sub></i>, <i>T<sub>gB</sub></i>, <i>T<sub>gG</sub></i>, <i>T<sub>a</sub></i> の 4 者によって皮膚温を表現する新しい WBGT 理論式を示した.<br>
著者
持田 徹 堀越 哲美 落藤 澄 嶋倉 一實
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.48, pp.39-47, 1992-02-25 (Released:2017-09-05)
被引用文献数
1

人体と環境との間の熱平衡式を基礎にして,温熱指標を作成しようとする時,蒸汗放熱量の表現がその全体像を決めると言っても過言ではない.本論文では,まず蒸汗放熱の表示式の特徴と,それらが熱平衡式の中で果たす役割について考察した.次に,生理実験の結果から,一定の平均皮膚温の下で,ぬれ面積率の値がある範囲内で変化することを確認し,このような挙動を示すぬれ面積率を考慮した場合,等平均皮膚温線は,湿り空気線図上で曲線を描くことを導いた.さらに,平均皮膚温ごとに,取り得るぬれ面積率の最大値と最小値を,実験データと理論的な検討から決定し,ぬれ面積率の特性曲線を定めた.そして,この特性曲線を基に,新しいタイプの温熱指標となる,等平均皮膚温線群を提案した.
著者
松島 潤治 大西 晴夫 西村 聡子 持田 徹
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.58, pp.153-162, 1995-06-25 (Released:2017-09-05)
参考文献数
22

温熱環境の快適性・省エネルギー性の向上を図るうえで,着衣の影響の評価は重要である.本研究では,着衣量の差による断熱性の違いが人体の部位別温熱特性に及ぼす影響の実測を行い,下記の結果を得た.着衣量の増加による皮膚温の上昇は,下たい(腿)部・足背部の末しょう(梢)部において顕著であり,人体から環境への顕熱(対流+放射)放熱量の減少は,胸部・腹部の大幹部において顕著であった.またこれらの結果を,代謝量を1metとして2-nodeモデルの理論値と比べたところ,全身の平均皮膚温・顕熱放熱量について,定性的には比較的良い一致を示したが,定量的には若干の差異が生じた.
著者
近藤 基 持田 徹 桑原 浩平 長野 克則
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.81, pp.1-9, 2001-04-25 (Released:2017-09-05)
参考文献数
6

快適な都市空間づくりが主要なテーマとなってきた現在,都市の熱環境が人の温冷感に及ぼす影響を正しく評価することも重要である.その評価のための温熱指標確立のための要素は種々であるが,屋外環境では,特に,日射の影響が地物での反射も含めて大きい.そこで,本研究では,多重放射を考慮して,日射と建物など地物の影響を組み入れた平均放射温度の導出を試み,その評価法として提案する.また,多重放射の影響については,射度と本研究で定義するIncidence Factorにより考慮し,それぞれによる平均放射温度を導出し,その特性について検討する.
著者
持田 徹 堀越 哲美 嶋倉 一實 稗田 哲也 津田 紘
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.49, pp.35-46, 1992

走行中の乗用車内の熱環境と,運転者の生理心理反応の実状を把握するため,冬期に北海道で実験を行い,熱的快適性に関し下記の結果を得た.足元にヒータの吹出し口がある場合,脚部付近の気温が胸や頭部付近より高く,一方,無暖房時の気温の垂直分布は,床から天井に向かって高くなっていた.各部位の皮膚温も,暖房時には下腿(たい)や足が,前腕や大腿より高温であったが,無暖房の時には足が最低であった.平均皮膚温は発車から,約30分でほぼ定値に達し,定常走行時の平均皮膚温と温冷感・快適感は,窓を通しての運転者への直達日射がない時は,両者の間に一定の相関関係がみられたが,日射のある場合には,必ずしも一定の関係はみられなかった.
著者
持田 徹 垣鍔 直 堀越 哲美 桑原 浩平 窪田 英樹 松原 斎樹 くわ原 浩平
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

世界の二大指標であるISO-7730のPMV指標と,ASHRAE(米国暖冷房空調学会)の基準であるSET^*指標の長所・短所を整理した。そして,平均皮膚温およびぬれ面積率と心理量の関係を,熱伝達論および人体の温熱生理特性から検討し,椅座の被験者実験の結果から,新しい温冷感の評価法を提案した(持田・桑原・窪田・長野)。また,屋外における夏服と冬服の着用実験から,著者らが提案した日射の影響を組み込んだSET^*が屋外においても適用可能であることを確認すると共に,屋外熱環境評価のための新しい温熱指標として予想温冷感ETSを開発した。札幌・名古屋での温冷感・快適感申告データから,SET^*の温冷感中立域・快適域を決定した(桑原・堀越・持田)。汗による水分吸収により着衣の電気抵抗が変化すると考え,着衣面の電気抵抗を測定することにより吸汗量を推定する方法を実験により検討した。また同方法を用い,軽装時において,冬期と夏期に40℃に曝露したときの胸部,上腕部,大腿部の局所の放熱過程を測定した結果,皮膚面の受熱量は着衣の表面温度が低下し始めてから,冬期の実測では約10分,夏期の実測では約6分遅れて低下することを確かめた。(垣鍔)。さらに,人体と環境との対流熱交換量を正確に算定するために,椅座・立位時の対流に関与しない面積(非対流伝熱面積)の実測を行った。姿勢による部位別の対流伝熱面積の違いを明確にし,対流伝熱面積を考慮した立位と椅座時の平均皮膚温算出用の重み係数を提案した。全体表面積に比し,対流伝熱面積が小さいほどHardy-DuBoisの平均皮膚温との差が大きいという姿勢に依存する特性を示した(松原)。
著者
松永 和彦 持田 徹
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.40-48, 2003
参考文献数
19

自動車用の評価指標として用いられている等価温度の分析を行っている。本報告では、身体の内部から環境までの熱移動を系統的に考えることにより、新たに等価温度を導いた。等価温度は、その定義式の中に人体の対流熱伝達率、放射熱伝達率、着衣量などがパラメータとして表示されており、Madsenらの等価温度において、定数値と扱われている3つの項に掛かる係数の内部構造を明らかにしている。内臓、骨、筋肉、血液などをマクロにみた、体心から皮膚表面までの相当熱抵抗の取りうる範囲を、体心温、皮膚温、気温、湿度、活動量の組み合わせを考えて検討した。その結果、この等価温度式では、風速が変化した場合、Madsenの等価温度式では気温の項は、実際よりも影響が小さく、平均放射温の項は、実際よりも影響が大きくなることを確認している。等価温度の適用範囲、有効性を検討した結果、暖房環境で使用する限結果的には大きな差が無いことを確認している。
著者
持田 徹
出版者
北海道大学衛生工学会
雑誌
衛生工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.1, pp.399-403, 1993-11-01