著者
新井 陽子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.815-822, 2004-09-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
20
被引用文献数
6 6

1940年代に分離された日本の狂犬病ウイルス株の中から高免株と, 小松川株の核タンパク (N) 遺伝子1,353全塩基の配列を決定した. 従来より研究されてきた日本の諸ウイルス株と世界で分離, 研究されてきたリッサウイルス 140株 (128株の遺伝子型1と12株の他の遺伝子型) の関係を知る目的で系統樹解析を行った. その結果狂犬病ウイルスは少なくとも12のクラスターに分けられた. 高免株および西ヶ原株は, ヨーロッパ, 中近東, アフリカからなる最も広い地域の分離株で形成されるクラスターに属した. さらに, これら2株は中国でヒトから分離された北京株由来の3aG (中国のワクチン株) と同じクラスターを形成した. 一方, 小松川株は北極, カナダ, ロシアから分離されたウイルスのクラスターに属し, 特にバイカル湖地域のsteppe fox, ハバロフスク地域のraccoon dogから分離されたウイルスと同じクラスターを形成した. これらの結果と史実から, 1940年代に分離された日本の狂犬病ウイルスは中国およびロシア由来のウイルスが伝播してきたと推測された.
著者
亀岡 智美 齋藤 梓 友田 明美 八木 淳子 岩垂 喜貴 井野 敬子 酒井 佐枝子 飛鳥井 望 新井 陽子 成澤 知子 田中 英三郎 山本 沙弥加 高田 紗英子 浅野 恭子 島 ゆみ 中島 淳 竹腰 友子 西村 悠哉 三宅 和佳子 野坂 祐子 小平 雅基 市川 佳世子 岩切 昌宏 瀧野 揚三
出版者
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、欧米で子どものPTSDへの第一選択治療として推奨されているTF-CBT(Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy)の我が国における効果検証に取り組んだ。兵庫県こころのケアセンターと被害者支援都民センターにおいて実施した無作為化比較試験が終了し、先行研究と同様に、わが国においてもTF-CBTの有効性が検証された。結果については、論文にまとめ、報告する予定である。その他の研究分担機関においても、TF-CBTの終了例が蓄積された。TF-CBT実施前後のMRI画像分析については、福井大学子どものこころの発達研究センターで7例を分析した。
著者
矢部 貞雄 中山 幹男 山田 堅一郎 北野 忠彦 新井 陽子 堀本 泰介 増田 剛太 見藤 歩 田代 眞人
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 : 日本伝染病学会機関誌 : the journal of the Japanese Association for Infectious Diseases (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.1160-1169, 1996-11-20
参考文献数
17
被引用文献数
7 14

1985年から1995年にかけて, 主に東南アジアからの入・帰国者でデングウイルス感染が疑われる症例について, 血清学的診断及びRT-PCRによるデングウイルス遺伝子の同定を行い, 輸入感染症としてのデングウイルス感染の重要性を検討した. デング熱を疑われて検査依頼のあった不明熱患者は173例であった. その内77例がデングウイルス2型抗原に対してペア血清によるHI抗体価の有意上昇, あるいは単一血清で320倍以上のHI抗体価を示したことから, デングウイルス感染と診断された. 一方, ペア血清で4倍以上の抗体価の上昇が認められた15例については, 3例で回復期の抗体価が80倍以下, また12例では回復期が160倍と低かったため, いずれもデングウイルス感染が疑われたが確定診断は不可能であった. 患者の旅行・滞在先の地域別では, タイが39名と最も多く, 続いてフィリピン15名, インド13名, インドネシア9名であった.<BR>HI試験では, デング患者血清は日本脳炎ウイルス (JEV) 抗原との問に異常に高い交差反応が見られたが, IgM-Capture ELISA法ではこのような交差を認めなかった. 一方, JEV感染患者血清ではデングウイルス2型に対するHI試験での交差はほとんど認められず, デングウイルス感染備のJEV抗原に対するHI交差反応は一方向的なものであることが明らかとなった. またデング熱患者血清について, デングウイルス1~4型のE~NS2領域に対する各プライマーを用いてRT-PCRを行ったところ, 第三病日以内の血清3例からデングウイルス1型の遺伝子が, また第4病日の血清1例からデングウイルス2型の遺伝子が検出された.