著者
大類 真嗣 田中 英三郎 前田 正治 八木 淳子 近藤 克則 野村 恭子 伊藤 弘人 大平 哲也 井上 彰臣 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.101-110, 2020-02-15 (Released:2020-02-22)
参考文献数
27

大震災の支援に当たった専門家による研究成果と経験に基づき,災害時のメンタルヘルスと自殺予防に資する留意点についてまとめた。支援の対象と支援方法の重点は,被災からの時期・段階によって変化する。とくに被災による避難時と避難指示解除時はともに留意が必要である。対象のセグメンテーションを行い,必要な支援を必要なタイミングで届ける必要がある。真に支援が必要な対象やテーマは表出されない場合があることに留意する。震災後に生まれた子どもや母親の被害,高齢者の認知症リスクも増えることが観察されている。被災者だけではなく,その支援を行う自治体職員や保健医療福祉職員のメンタルヘルスにも配慮する必要がある。避難地区だけでなく避難指示解除地区においても自殺率が高いという知見も得られている。教育や就労支援,社会的役割やサポートまで,総合的・長期的な支援が必要で,保健医療関係者だけではない分野横断的なネットワークの構築が平時から必要である。危機的な状況であるほど,なじんだ手段しか使えない。平時からの教育・訓練・ネットワーク化で被害の緩和を図っていく必要がある。
著者
亀岡 智美 齋藤 梓 友田 明美 八木 淳子 岩垂 喜貴 井野 敬子 酒井 佐枝子 飛鳥井 望 新井 陽子 成澤 知子 田中 英三郎 山本 沙弥加 高田 紗英子 浅野 恭子 島 ゆみ 中島 淳 竹腰 友子 西村 悠哉 三宅 和佳子 野坂 祐子 小平 雅基 市川 佳世子 岩切 昌宏 瀧野 揚三
出版者
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、欧米で子どものPTSDへの第一選択治療として推奨されているTF-CBT(Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy)の我が国における効果検証に取り組んだ。兵庫県こころのケアセンターと被害者支援都民センターにおいて実施した無作為化比較試験が終了し、先行研究と同様に、わが国においてもTF-CBTの有効性が検証された。結果については、論文にまとめ、報告する予定である。その他の研究分担機関においても、TF-CBTの終了例が蓄積された。TF-CBT実施前後のMRI画像分析については、福井大学子どものこころの発達研究センターで7例を分析した。
著者
浅野 恭子 亀岡 智美 田中 英三郎
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.748-757, 2016

<p>いまや施設は被虐待体験のある子どもが大半をしめるという状況になっているが, 子どもが示すさまざまなトラウマ症状が理解できないため, 支援者も子ども自身も無力感と孤立無援感を強める事態となっている。本稿では, 児童福祉システムにトラウマインフォームド・ケアを取り入れるため, 大阪府児童相談所が継続的に取り組んできた児童心理司研修の実践とその成果を検証するためのアンケート調査の結果を報告する。継続研修により, 児童心理司の意識と行動に有意な変化が見られたことから, 子どもにとって安全で持続可能な支援システム構築のためには, 段階的な児童心理司育成と継続的研修が必要と考えられる。</p>
著者
入道 優子 白石 紀江 中田 麻理菜 酒井 香名 紙名 祝子 熊谷 仁人 田中 英三郎
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.723-728, 2018-11-10 (Released:2019-01-01)
参考文献数
17

【目的】2008年度から特定保健指導を実施し、その効果を示してきた。しかし、担当する保健師に関わらず同様の指導効果が認められるか否かは明らかでない。本研究の目的は、保健師間の指導効果差の有無を検証することとした。【対象】2012~2015年度に初めて特定保健指導の積極的支援を受けたA事業所の男性職員で次年度の健康診断を受診している233名(経験年数6~15年の保健師5名が担当)。【方法】全体並びに保健師別の腹囲・体重・BMIを特定保健指導受診年度と次年度の健康診断結果で比較した(Wilcoxon符合付順位和検定)。次に、保健師間で腹囲・体重・BMIの変化量を比較した(Kruskal-Wallis検定)。【結果】保健師別対象者の背景因子に差はなかった。対象者全体の次年度の健康診断結果は、腹囲・体重・BMIのすべてに有意な減少が認められた。次に、保健師別の次年度の健康診断結果は、腹囲・体重・BMIのすべてに有意な減少が認められた。一方、腹囲(p=0.622)・体重(p=0.511)・BMI(p=0.378)の変化量に保健師間で差はなかった。【考察】保健指導の手順書の作成や指導資料の統一、職場内OJTの実施などにより、指導内容の標準化を図っていることは大きな要因であると思われる。また、保健師の経験年数が6~15年であり、これまでの職務経験により得られた結果であるとも考えられ、経験年数が短い保健師や他職種においても同等の結果が得られるか検証する必要がある。保健指導効果を上げるために、今後も技術向上と質の確保に取り組みたい。【結論】今回の結果により、保健師に関わらず同等の指導効果が認められていると示唆された。