著者
廣川 美子 阪口 明弘 日色 真帆 小倉 繁太郎 伊藤 泰行 山下 享子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

高級土壁の展示場といわれる角屋、土壁の塗りたて当初の色を再現するために、1992年2月の測定値と2000年2月の測定値の比較を行い、変化の方向と変化量を考察した。Lab表色系により色差を求めているが、L値について新旧で変化の大きい土壁は黄大津磨きと赤大津磨きであり、共にL値の高い方に変化している。C値については黄大津磨きと大阪土の変化が大きく共にC値の低い方に変化している。a値とb値について変化が大きいのは、a値は江州白の赤と大阪土であり、共にa値の低い方に変化、b値は赤大津磨き、黄大津磨き、大阪土であり、すべてb値の低い方に変化している。色差が最も大きいのは扇の間西側廊下の赤大津磨きと馬の間縁側の江州白の赤であった。聚楽土と漆喰壁の色差は少なかった。文化財壁の復元作業においては色合わせが重要な役割をもつ。今回文化財壁を形成している土、砂、すさのような粉末状の試料の色の数値化に伴う側色技術およびコンピュータを用いた色合わせを検討した。粉体の分光特性はその充填密度、厚さ、入射光を照射する側の試料面の状態に強く依存するので、充填作業に個人差がでにくいよう開発したセル厚可変の石英窓板付き粉末セルと精度よく散乱光のみを検知する正反射トラップ付き大型積分球の組み合わせ用いた拡散反射測定によってこの問題点を解決した。この測定法で得た可視スペクトルをもとにCCM(コンピュータカラーマッチング)を行った結果、目標色との色差が1.0未満の良好な結果を得た。関西には聚楽土、大阪土、浅黄土、九条土、桃山土等の色土が豊富であったが、特に利休が茶室に用いた聚楽土には格別な思い入れがある。その聚楽土を地質学的に知るために、その採集地の地層の成り立ちを調べることにした。聚楽土は平安京跡付近の地下の泥層を掘ったものである。考古学では平安京の地盤と考えている。京都盆地北部の平原は賀茂川や天神川などの扇状地でできている。扇状地礫層の上には厚さ1m程度の泥層が堆積している。その形成過程を知るために、各地の扇状地の泥層を採集している段階である。
著者
坂本 勝比古 鈴木 成文 日色 真帆
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究年報 (ISSN:09161864)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.147-157, 1994

この研究は,日本で有数な住宅地として発展を遂げた大阪・神戸間の地域を対象として,それがどのように発展してきたかを,多くの資料や地域の調査を行なうことによって明らかにすることを目的としている。まず,この地域が住宅地として発展した第1の理由は,大阪湾に臨んで北に山を負う恵まれた地形で,住宅地として最適な自然条件を備えていたこと,日本で2番目という大阪・神戸間の鉄道の開通(1874年)があり,さらに1905年に阪神電鉄,1919年に阪急電鉄が開通するなど,大都市間を結ぷ交通機関が整備されたこと,この沿線に私鉄が住宅地経営を積極的に行ない,郊外住宅地の発展に大きく貢献することとなった。また,大正時代には,芦屋市・西宮市で土地区画整理事業が盛んに行なわれ,宅地の供給が促進された。さらに民間土地会社の住宅地経営も計画され,現在の夙川,芦屋の六麓荘などが開かれている。これらの住宅地開発は,大都市の工業化が進み,空気の汚染や住環境の悪化によって,郊外住宅地が注目されるようになったものであるが,その状況は必ずしも良好な住宅地経営ぱかりではなかった。関西で優れた住宅地経営を目指した好例として,日本建築協会が大正11年(1922)に開催した住宅博覧会があり,このような動きに刺激されて,阪急電鉄では,新伊丹住宅地(1935),武庫之荘住宅地(1937)が,いずれも放射状の軸線を持つ住宅地経営で,良好な住環境を持つ住宅地が形成された。阪神間のなかで,住吉・御影地域(旧住吉村・御影町)も早くから住宅地として注目され,特に大邸宅が多く建てられた。なお,戦前に建てられた阪神間の中流住宅の意匠を見ると,和風要素を取り入れたものがかなり多く,これは関西人の住宅に対する考え方に,保守的な見方をする者が多かったからと言える。
著者
近藤 公夫 王 敏 日色 真帆 三上 晴久 廣川 美子 川村 政美
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

日本の文化史に1000年前の金色堂に見られる黄金よりも、500年前の銀閣に銀をもって蔽った漆のたたずまいを好ましいかに思う今日の心象、その心象が形成された風景の源流を三内丸山以来の伝統に考えるのは是か非か。あえて日本の赤をめぐる景観の源流として三内丸山の風景をとりあげ、そこに出土した赤漆の色に「日本の赤と中国の赤」に関する調査研究の拡大と深化に係わる発展的な端緒を求めたいと考える。おそらく今日の科学をもってすれば什器に見られる彩文の赤漆について、あるいは同様に出土している黒漆などに関しても、その原色を解明して三内丸山の文化に迫る可能性は考えられよう。そこから四季の自然に恵まれ秋季の紅葉があざやかな東北日本にあって、今も日本民族の心象に伝わる縄文文化に投影された赤の風景を、その植生に見られる景観の変化から考え得るとも思われる。さらには重ねて司馬遼太郎氏がこの地を北のまほろばと記した秋色を思えば、日本の赤についての源流を縄文時代の赤漆と山野の紅葉から妄想した次第について、ひとつの心象的な風景へと思いを致さざる得ない。4000年前以上もの太古に三内丸山社会が見せた情景、遠近の人々を集めた祭祀のにわに赤が演じた風景とは何であったのか。それは後世の神前に舞う乙女達の白衣紅裳とは果たして連なるものか、あるいは東アジア文化に如何なる位置を占め、それは如何なる変遷を経て今日の伝統文化と結ばれ得るのか。それは自然科学から考古学そして歴史学から文化人類学、それぞれの検討を総合した上に新しい展開を今後に期待させる課題に連なるであろう。
著者
日色 真帆 原 広司 門内 輝行
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.59, no.466, pp.65-74, 1994
被引用文献数
18 3

Protocols taken from the experiments in Shibuya's ground level and Ginza's underground level are analyzed using eight types of codes as follows : view(V), signage(S), guide(G) and memory(M) information; A-plan(Ap) and B-plan(Bp); lostness(?) and finding(!). Two types of protocol sequences, finding(!, [V S G M], Ap) and lostness(?, [V S G M], Bp), are identified. The results show that as a problem solving, wayfinding in above situations has shallow and simple planning process. However, plenty of environmental information can be acquired, and in case of getting lost, "way out" behavior, stated as B-plan, can be executed. Unspoken process is also discussed.
著者
小嶋 一浩 日色 真帆
出版者
東京理科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

シーンのネットワークを、特に立体化した都市空間の特性を表す表現法とするために、他の表現法と並行して具体的な対象に適応しつつ検討した。ここでいうシーンのネットワークは、対象地を撮影したビデオ画像をコンピュータを利用して編集し、動きにつれ展開するシーンを網状につなぎ合わせたもので、一部をコンピュータ内に実現し、その概念モデルを模型として実現した。この他に比較に用いた表現法は、雑誌等の印刷メディアに掲載された写真と文章による表現、コンピュータを利用して合成や変形を加えた写真や組写真、ビデオで撮影し編集した数分の映像である。いずれも対象空間の特性をできるだけ表すように表現したものである。対象とした都市空間は、東京の東急文化村(渋谷)、フロムファーストビル(表参道)、代官山ヒルサイドテラス、銀座4丁目交差点、地下鉄乃木坂駅入口周辺、渋谷宮下公園十陸橋、池袋メトロポリタンプラザの合計7箇所であるその結果、都市空間の特性によって有効となる表現法が異なることがわかった。中でもシーンのネットワークは、立体的な視線のやり取りを含んだ複雑な空間の表現に有効であった。さらに、人の動線と相互にやり取りされる視線との絡み合った結節点を複数含んだ都市空間では、ネットワークが特徴的なねじれを示すことがわかり、そのような場合に中間のシーンを省略して簡潔にする方法を探った これらを通して、シーンのネットワークを空間デザインの方法として展開する可能性が示唆された シーンのネットワークをコンピュータ上で実現するには、オーサリングツールを用いて空間体験者がシーンの中で次の場面を選択しながら仮想空間を移動する方法に可能性があることが確認された。その完全な実現は今後の課題となっている。