著者
坂本 修一 鈴木 陽一 天野 成昭 小澤 賢司 近藤 公久 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.842-849, 1998-12-01
被引用文献数
62

単語了解度試験用の単語リストの構築にあたって, 日常会話の聴き取りも含めた音声聴取能力をより正確に評価することを目指すには, 単語の難易度を統制することが望ましい。また, 補聴器適合の評価などの臨床応用を考えたときには, 限定された単語数で, 音韻バランスがよく取れた単語リストを作成することが実用上重要である。本論文では, 難易度の指標として親密度を用いてこれを統制し, また語頭の音韻バランスだけではなく, 語中の音韻バランスも考慮した単語了解度試験用単語リストの作成手法を提案する。また, 実際にこの方法を用いて, 親密度を4段階にパラメータ化して統制した単語リストの構築を行った。この単語リストは, 1枚50単語からなり, 各親密度段階について各20枚, 計80枚のリストから構成されている。更に, リストの妥当性を確認するための聴取実験を行った結果, 単語了解度が親密度を変えることによって系統的に変化することが示された。
著者
川浦 淳一 鈴木 陽一 浅野 太 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.756-766, 1989-10-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3

本論文では、ヘッドホン再生によってラウドスピーカ再生時の音場を模擬する手法について述べる。ヘッドホン再生条件と、ラウドスピーカ再生条件の比較から、頭部が静止している状態の静的な頭部伝達関数と、聴取者が頭部を動かすことによって生じる頭部伝達関数の動的な変化の2点について、ディジタル信号処理などの手法により補償を行った。静的な頭部伝達だけの補償によって、ヘッドホン再生によっても、頭外の水平面内任意方向への音像定位が実現できたが、正面付近のラウドスピーカを模擬した場合には前後の誤判定が増加する、頭内定位が起き易いなどの問題が生じた。静的な頭部伝達関数に加えて、伝達関数の動的な変化を模擬すると、前後の誤判定が減少し、頭内定位も減少するなど、より自然な音像定位が実現された。また、頭部回転に伴う動的な音源位置情報は、静的な伝達関数からの音源位置情報に比べて、少なくとも同程度の重みを持つものであることが示唆された。
著者
安倍 幸次 小澤 賢司 鈴木 陽一 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.793-804, 2000-12-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
1

視覚情報が環境音知覚に及ぼす影響について調べることを目的とし, 刺激音を指示する際に, 対応する映像も同時に指示して評価実験を行った。その結果から各刺激の因子得点を求め, 以前に行った音のみを指示した実験から得た因子得点と比較することにより, 視覚情報が環境音の評価に及ぼす影響を検討した。その結果, 音の明るさ因子を除く各因子について, 映像の付加による影響が見られた。各因子ごとにその影響について検討したところ, 映像を手掛かりとして音場・音源を認識することにより, その音に対して元々抱いていたイメージが与られることが, 実際に提示された刺激音の評価に影響を及ぼしていることが明らかとなった。また, 映像と音情報との整合性や映像の動きが聴覚的な評価に影響を及ぼすことが示された。
著者
金 海永 鈴木 陽一 高根 昭一 小澤 賢司 曽根 敏夫
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.455-460, 1999-06-30 (Released:2017-02-01)
参考文献数
17

It has been shown that HRTFs (Head Related Transfer Functions) are important cues for judging the absolute auditory distance of a single sound image when the sound source is close to the listener. In order to investigate the role of HRTFs in auditory distance perception more generally, not only the absolute distance of a single sound image but also the relative distances among multiple sound images should be considered. From this point of view, two kinds of psychoacoustical experiments on absolute and relative distance perception were conducted with the same source signals for stimuli. Comparison of the results of the two experiments showed that while the absolutely judged distance of a sound image increases with the actual distance of sound source up to around 1.2 m, the results of the relative auditory distance perception showed that the perceived distance significantly increases up to 2〜3 m. This difference may be attributable to some perceptual information stored in a short-term memory provided by the comparison of auditory distances between multiple sound images, which could offer an additional cue in relative distance perception, and it may be effective to improve the resolution of the distance perception of sound images at longer distance than the limitation in absolute distance perception.
著者
安倍 幸司 小澤 賢司 鈴木 陽一 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.343-350, 1998-05-01
被引用文献数
25

本研究では, 環境音の知覚を探ることを目的として, 従来の研究で用いられてきた「音色を表現する評価語」に加え, 「音を聞いた際に人がいだく感情を表現する評価語」と「音の持つ情報に関する評価語」を用いた評価実験を行った。実験は, 66種類の刺激音と, 39種の評価語対を用い, SD法により行った。実験結果を因子分析した結果, 第一〜第三因子として, 「美的」, 「明るさ」, 「量的」という音色の3因子に相当する因子が得られた。また, それらとは独立に, 「音の定位情報に関する因子」, 「音源情報に関する因子」, 「音の存在意義に関する因子」, 「懐古・郷愁因子」が得られた。更に, 人が音を聞いた際にいだく感情は, 音の美的因子と相関があることが分かった。
著者
播摩 敏雄 曽根 敏夫
出版者
The Institute of Noise Control Engineering of Japan
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.365-372, 2003-10-01

バイク用ヘルメットの装着が, バイク運転者による警笛音, 車輌の接近音などの到来方向に対する判断にどのような影響を及ぼすかを聴取実験によって調べた。ヘルメットは, 両耳を覆い, 音を遮断し, ヘルメット全体の振動を通して内部に音を伝えるため, 音源の認識や方向を誤らせる要因となる。聴取実験の結果は, 音源が被験者の前方にある場合に判定がやや良く, 側方や後方にある場合は判定が困難になる。また, ヘルメット装着時の方向判断は, 低い周波数帯域 (0.25, 0.5kHz) の音では, 遮音の影響よりもヘルメット内での反射や共振が方向定位に影響を与える。高い周波数帯域 (4, 8kHz) では, ヘルメット自体の遮音量が大きいことから, ラウドネスの低下が方向定位に強く関与していることが示された。
著者
曽根 敏夫 城戸 健一 二村 忠元
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.320-326, 1962-11-30
被引用文献数
40 7

We subjectively evaluate the acoustics of rooms and the qualities of acoustical instruments by evaluating musical sounds, speech sounds, and others passing through them. In such a case we had expressed the evaluations by some descriptive adjectives such as "rich", "clear", "resound" and so forth. But there are a variety of expressions to describe the impression of such sounds, and it is uncertain what and how many adjectives we should use. Judging from the number of physical factors influencing those sounds, we expected that it is possible to select a limited number of adjectives sufficiently evaluating those sounds and made two experiments. The first experiment was made from the standpoint of room acoustics. 15 differentlyconditioned sounds made with a reverberation equipment were rated on 21 seven-category scales defined by polar-opposite adjectives. As a result of factor analysis of the intercorrelation between scales by the centroid method, four nearly orthogonal factors were extracted; (1) the aesthetic or lyric factor, (2) the one expressing "volume" and "extent", (3) the one expressing "brightness" and suchlike, (4) the one expressing "softness" and suchlike. The secound experiment was made by varying the lowest resonance of a dynamic loudspeaker by means of a simulator. The ratings were made by the Scheffe's method for pair comparison, and the result proved consistent with the first one.
著者
川浦 淳一 鈴木 陽一 浅野 太 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.756-766, 1989-10-01
被引用文献数
30

本論文では、ヘッドホン再生によってラウドスピーカ再生時の音場を模擬する手法について述べる。ヘッドホン再生条件と、ラウドスピーカ再生条件の比較から、頭部が静止している状態の静的な頭部伝達関数と、聴取者が頭部を動かすことによって生じる頭部伝達関数の動的な変化の2点について、ディジタル信号処理などの手法により補償を行った。静的な頭部伝達だけの補償によって、ヘッドホン再生によっても、頭外の水平面内任意方向への音像定位が実現できたが、正面付近のラウドスピーカを模擬した場合には前後の誤判定が増加する、頭内定位が起き易いなどの問題が生じた。静的な頭部伝達関数に加えて、伝達関数の動的な変化を模擬すると、前後の誤判定が減少し、頭内定位も減少するなど、より自然な音像定位が実現された。また、頭部回転に伴う動的な音源位置情報は、静的な伝達関数からの音源位置情報に比べて、少なくとも同程度の重みを持つものであることが示唆された。
著者
坂本 修一 天野 成昭 鈴木 陽一 近藤 公久 小澤 賢司 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.351-357, 2004-07-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
2

親密度と音韻バランスを統制した単語リストを用いた単語了解度試験を実施し,モーラ位置ごとの正答率に及ぼす親密度の影響を調査した。その結果,試験語が実単語であることを被験者に教示しない場合でも,単語了解度に親密度の影響が見られ,更に,第1モーラの正答率は,低親密度単語では単音節明瞭度と同程度であるのに対し,高親密度単語では単音節明瞭度より高くなることが示された。本結果は,非単語の回答を許すような聴取実験を行う際にも,親密度が結果に影響を及ぼすため,試験単語の親密度の統制が必要であることを示唆する。
著者
広根 万里雄 曽根 敏夫 二村 忠元
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.487-495, 1975-08-01 (Released:2017-06-02)

A theory of the excitation of a clarinet was proposed in case that no performer's lips were applied to the reed of the instrument, by assuming the interaction between the air column and the reed and considering the vibration of reed as a bending vibration of beam. The results of calculation were compared with those of experiment on a model clarinet specially prepared in order to make both experimental condition and theoretical assumption coincide. In Section 2, the method of calculation of the resonance frequency of reed itself is shown ; the calculation was based on the assumption that the reed vibration is well represented by one-dimensional bending vibration of beam. Section 3 depicts the equation (Eq. (14)) of motion of the reed of instrument and the wave equation (Eq. (13)) of air column. These equations were solved simultaneously and from the results of analysis the frequency equation was obtained, which gave the dependence of the excited frequency (including higher order modes) on the physical blowing condition of the instrument. In Section 4, an example of the excited frequency calculated from the frequency equation is first shown (Fig. 7) based on presumable values of the material constants for a standard reed, together with the resonance frequency of the reed. Next, for confirming the above mentioned theoretical results, calculation was performed for the excitation of an instrument with metal reeds of precisely defined material constants and geometrical form. Table 4 and Figs. 8 and 9 show the observed and calculated results of the excited frequency of the model clarinet mentioned above as a function of the pipe length. And for comparison, the resonance frequency of reed itself calculated by the method described in Section 2 is presented in the same table and figures, in which it is shown that the results of calculation and experiment coincide satisfactorily well. It was also made clear that the excited frequency of the clarinet without application of performer's lips is deviated to some extent from the resonance frequency of reed, and that the change of excited frequency due to the pipe length is nearly proportional to the resonance frequency of the air column. In this case, the change of excited frequency was small compared with that of resonance frequency of the air column, and there existed a frequency region in which the clarinet was difficult or perfectly not to be excited according to a certain relation existing between the resonance frequency of reed and that of air column (See Figs. 8 and 9).
著者
安倍 幸司 小澤 賢司 鈴木 陽一 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.343-350, 1998-05-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
12

本研究では, 環境音の知覚を探ることを目的として, 従来の研究で用いられてきた「音色を表現する評価語」に加え, 「音を聞いた際に人がいだく感情を表現する評価語」と「音の持つ情報に関する評価語」を用いた評価実験を行った。実験は, 66種類の刺激音と, 39種の評価語対を用い, SD法により行った。実験結果を因子分析した結果, 第一〜第三因子として, 「美的」, 「明るさ」, 「量的」という音色の3因子に相当する因子が得られた。また, それらとは独立に, 「音の定位情報に関する因子」, 「音源情報に関する因子」, 「音の存在意義に関する因子」, 「懐古・郷愁因子」が得られた。更に, 人が音を聞いた際にいだく感情は, 音の美的因子と相関があることが分かった。
著者
小倉 正樹 川瀬 哲明 鈴木 陽一 曽根 敏夫 高坂 知節
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.259, pp.23-28, 1999-08-26
被引用文献数
1

左右差の無い聴力閾値正常者に対しランダム化最尤適応法を用いて単耳および両耳ピッチ比較実験を施行した。この結果から単耳・両耳の周波数弁別閾、両耳の等ピッチ周波数の差を求めた。個人差はあるが全例で4kHz以上の高周波域において周波数弁別閾は増大傾向を示した。等ピッチ周波数の左右差は4例中2例で高周波域での増大を示した。これらの結果は、高周波域では周波数情報として場所情報が卓越するという説に合致するものと考えられた。
著者
陳 国躍 安倍 正人 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.851-859, 1999-06-25
参考文献数
23
被引用文献数
10

騒音の能動制御 (Active Noise Control : ANC) を広い空間で実現するためには, 複数の打消しスピーカ及びエラーセンサが必要となり, また, 騒音源が複数存在する場合には, 複数の参照センサを必要とする. そのため, 音響伝達系は複雑になり, 能動制御の性能が劣化する. 本論文では, このような多入力多制御点のANCシステムの複雑な音響伝達系における性能劣化の原因を, 周波数領域での評価法を用いて検討する. その結果, 入力多制御点のANCシステムにおいては, 複数のスピーカから放射された打消し音が, 空間で混じり合うこと(カプリング)と, 参照信号間に相関があることにより, 適応アルゴ.リズムの収束速度が遅くなり, また, 計算誤差が大きく, 打消し量が小さくなることを明らかにする. 更に, 検討結果をもとに, 適応アルゴリズムの収束速度についていくつかの改善法を提案する.
著者
安倍 幸次 小澤 賢司 鈴木 陽一 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.793-804, 2000-12-01
被引用文献数
10

視覚情報が環境音知覚に及ぼす影響について調べることを目的とし, 刺激音を指示する際に, 対応する映像も同時に指示して評価実験を行った。その結果から各刺激の因子得点を求め, 以前に行った音のみを指示した実験から得た因子得点と比較することにより, 視覚情報が環境音の評価に及ぼす影響を検討した。その結果, 音の明るさ因子を除く各因子について, 映像の付加による影響が見られた。各因子ごとにその影響について検討したところ, 映像を手掛かりとして音場・音源を認識することにより, その音に対して元々抱いていたイメージが与られることが, 実際に提示された刺激音の評価に影響を及ぼしていることが明らかとなった。また, 映像と音情報との整合性や映像の動きが聴覚的な評価に影響を及ぼすことが示された。
著者
浅野 太 鈴木 陽一 曽根 敏夫 林 哲也 佐竹 充章 大山 健二 小林 俊光 高坂 知節
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.373-379, 1991-06-01
被引用文献数
28

単一のディジタルフィルタを用いて、入力のスペクトルの変化に追従し、出力信号を装用者の聴野内に収めるよう増幅特性が変化する補聴方式を提案する。更に、ディジタルシグナルプロセッサを用いて本方式を実時間で実現するシステムの構築法を述べる。また、システムの評価を行うため、模擬難聴耳3例、感音系難聴耳2例に対し、単音節明瞭度試験を行った結果についても報告する。この評価実験から、特に、健聴耳に比べて聴野の狭い感音系の難聴者に対し、本システムによる聴野の拡大の効果が示された。