- 著者
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鈴木 啓太
横山 正典
吉田 成朗
望月 崇由
布引 純史
鳴海 拓志
谷川 智洋
廣瀬 通孝
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.1, pp.52-60, 2018-01-15
本研究では,カスタマーセンタや,遠隔授業などの遠隔コミュニケーションにおいて,対話相手との同調的な感情表出を支援するビデオチャットシステムを提案する.他者の表情を模倣する「ミラーリング」は,他者と友好な関係を築くうえで有効である.しかし,継続的な感情の表出と抑制には本人の意識的な努力を必要とする場合があり,感情労働による消耗を助長させる恐れがある.他方,遠隔コミュニケーションにおいては,ビデオチャットのような情報メディアを介する段階でコミュニケーションに関する要素に情報的変調を加え,感情表出を補助することで対話者間の共感を深めて,コミュニケーションを拡張することができると考えた.本研究では,表情認識センサによって取得した自身の表情と同調するように,対話相手の表情を画像処理によって変化させることで,疑似的なミラーリングを発生させる.提案システムを用いた評価実験として,表情変形が施される模倣者と,自身の表情と同調した表情変形を観測する被模倣者のペアで会話してもらった.その結果,模倣者と被模倣者の両者に対して,会話の円滑さや,共感度の指標が向上することが示唆された.疑似的なミラーリングの効果が,被模倣者だけでなく,模倣者に対しても影響していることが分かった.