著者
田中 直義 木村 小百合 木内 幹 鈴木 あゆ野 村松 芳多子 三星 沙織
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.167-174, 2012-04-15 (Released:2012-05-31)
参考文献数
33
被引用文献数
2

糸引き納豆は醗酵後の冷蔵中ににおいが変化してゆくことが知られており,品質の変化が早く生鮮飲食品並みの消費期限が設けられている.冷蔵中における主要なにおい物質の変化を以下の方法で検討した.(1) 購入直後の市販納豆および1週間冷蔵庫中で保存した市販納豆から臭い物質を連続水蒸気蒸留抽出によりエーテルに抽出し,濃縮した.得られたエーテル濃縮液をガスクロマトグラフ-におい嗅ぎ法で分析したが,試料間の差異が大きかったのでエーテル濃縮液を10の指数関数的に希釈することにより,主要な臭い物質を検索した.その結果,主要なにおい物質として2-メチルプロパン酸エチル,2-メチル酪酸エチル,3-メチル酪酸エチルなどの低分子脂肪酸エステル,2,5-ジメチルピラジン,トリメチルピラジンなどのピラジン類,酢酸,2-メチルプロパン酸,2- or/and 3-メチル酪酸などの低分子脂肪酸,およびエタノールが検出できた.1週間冷蔵中で保存するとそれらの物質の中で,低分子脂肪酸エステルのにおいは弱く,ピラジン類と低分子脂肪酸は強くなる傾向にあった.(2) 醗酵終了直後および冷蔵日数の異なる納豆からにおい物質をSPME法で抽出・濃縮し,ガスクロマトグラフで分析し,主要なにおい物質の変化を測定した.冷蔵日数が長くなるにつれて主要なにおい物質の中で,低分子脂肪酸エステルは減少,ピラジン類と酢酸以外の低分子脂肪酸は増加する傾向にあった.以上の結果から,冷蔵中のにおいの変化は,脂肪酸エステル類が減少し,ピラジン類および酢酸以外の低分子脂肪酸類が増加することによるものと推定した.
著者
田中 直義 木村 小百合 木内 幹 鈴木 あゆ野 村松 芳多子 三星 沙織
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.167-174, 2012 (Released:2013-10-08)

糸引き納豆は醗酵後の冷蔵中ににおいが変化してゆくことが知られており,品質の変化が早く生鮮飲食品並みの消費期限が設けられている。冷蔵中における主要なにおい物質の変化を以下の方法で検討した。(1)購入直後の市販納豆および1週間冷蔵庫中で保存した市販納豆から臭い物質を連続水蒸気蒸留抽出によりエーテルに抽出し,濃縮した。得られたエーテル濃縮液をガスクロマトグラフ-におい嗅ぎ法で分析したが,試料間の差異が大きかったのでエーテル濃縮液を10の指数関数的に希釈することにより,主要な臭い物質を検索した。その結果,主要なにおい物質として2-メチルプロパン酸エチル,2-メチル酪酸エチル,3-メチル酪酸エチルなどの低分子脂肪酸エステル,2,5-ジメチルピラジン,トリメチルピラジンなどのピラジン類,酢酸,2-メチルプロパン酸,2-or/and3-メチル酪酸などの低分子脂肪酸およびエタノールが検出できた。1週間冷蔵中で保存するとそれらの物質の中で,低分子脂肪酸エステルのにおいは弱く,ピラジン類と低分子脂肪酸は強くなる傾向にあった。(2)醗酵終了直後および冷蔵日数の異なる納豆からにおい物質をSPME法で抽出・濃縮し,ガスクロマトグラフで分析し,主要なにおい物質の変化を測定した。冷蔵日数が長くなるにつれて主要なにおい物質の中で,低分子脂肪酸エステルは減少,ピラジン類と酢酸以外の低分子脂肪酸は増加する傾向にあった。以上の結果から,冷蔵中のにおいの変化は,脂肪酸エステル類が減少し,ピラジン類および酢酸以外の低分子脂肪酸類が増加することによるものと推定した。
著者
勝股 理恵 二木 美保 北澤 みどり 高橋 沙織 吉田 育恵 蜷川 紀子 枳穀 豊 木内 幹
出版者
防菌防黴研究会
雑誌
防菌防黴 = Journal of antibacterial and antifungal agents (ISSN:03855201)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.349-356, 2004-07-10
参考文献数
14

ジャムの加工工程中に生成するフルフラールによるAspergillus flavus IAM2872に対する生育阻止効果について調べた。1.糖濃度約50%の13種類のジャムを試作して性状を検討した結果、pHは3.05-3.50で平均3.26、糖濃度は48.4-51.6%で平均50.4%、水分活性は0.949-0.963で平均0.954であった。ジャムの間に大きな差は見られなかった。2.試作したジャムのフルフラール含量は、0.05μl/g(リンゴジャム)-9.3μl/g(レモンマーマレード)であった。3.ジャム平板においてIAM2872の生育が良かったのは、チェリージャム、カシス、イチゴ、オレンジマーマレード、ラズベリー、ブルーベリー、ミックスジャムであった。生育が悪かったのは、アンズジャムで30日間まったく生育しなかった。コロニーの中心部は多くの場合青緑色をしているが、白桃、リンゴジャム、レモンマーマレードでは菌糸が透明でジャムの色と見分けるのは可能だが困難であった。また、クランベリージャムではそれを見分けるのも困難であり、いずれも鮮明に見るのがむずかしかった。4.フルフラール添加時におけるIAM2872の生育は、クランベリージャムではフルフラール0.10μl/g添加で、チェリー、ラズベリージャムでは0.20μl/gで、リンゴジャムでは0.25μl/gで、30日間完全に阻止された。以上の結果、フルフラールは低濃度で、ジャムの腐敗の原因となるIAM2872の生育を抑えることができ、ジャムの日持ち向上剤として利用できるものであることが明らかとなった。
著者
三星 沙織 田中 直義 村橋 鮎美 村松 芳多子 木内 幹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.528-538, 2007-12-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

ミャンマーには伝統的な大豆醗酵食品でペーポ(Pe pok, またはペーガピ,Peegapi)と呼ばれる,農家が小規模で製造している一種の納豆がある.我が国にはない,新しい納豆の生産に適した菌株を取得するためにミャンマー東北部で現地調査を実施しペーポの採集を行った.(1)採集したペーポ試料29点の食塩濃度は0.14-13.7%であった.食塩濃度3%未満が11点,3%以上6%未満が8点,6%以上9%未満が5点,9%以上12%未満2点で,12%以上は3点であった.(2)試料から197株を分離し,137株をBacillus subtilisと同定した.そのうち42株を蒸煮大豆に生育したコロニーの糸引きから納豆菌として選別した.(3)分離菌の最適生育温度は,33℃が1株,35℃が1株,37℃が5株,39℃が9株,41℃が19株,43℃が6株,45℃が1株であり,温度域に幅があった.(4)小規模の納豆製造を行って,我が国の糸引納豆にも適する株として10株を選別した.それらの株で製造した納豆は,我が国の納豆に類似した性質を有するものもあったが,臭いまたは糸引き,苦味などの改良が必要なものもあった.これらは,さらに製造法を検討することによって現存する我が国の納豆とは異なる新しい納豆を製造する菌株として使用できる可能性がある.

1 0 0 0 OA 納豆菌の開発

著者
木内 幹 村松 芳多子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.12-15, 1999-06-30 (Released:2011-01-31)
参考文献数
11
著者
木内 幹 田中 直義 村橋 鮎美 三星 沙織
出版者
共立女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

醗酵食品の嗜好性に対する食文化の一端を明らかにすることを目的として、東南アジア各地で大豆醗酵食品の製造・利用方法を調査し、試料中の風味物質を分析した。食品中に存在する細菌のフロラを解析して、それらの風味物質が生産される過程を推測し、応用の可能性を検討した。調査地は、カンボジア東北部(平成18年2月)、ミャンマー・シャン州東北部(18年10月)、ラオス北部(19年10月)であった。カンボジアには「シエン」と称される大豆醗酵食品が製造・利用されている。シエンは醗酵させた大豆を高濃度の食塩水に入れて1週間以上熟成させる方法で製造される調味料である。これまでの文献にシエンの報告は認められない。ミャンマーには「ペーポ」と、ラオスには「トゥアナオ」と称される大豆醗酵食品が製造されている。いずれも醗酵させた大豆に食塩とトウガラシを主成分とする調味料を添加し、熟成させることで製造されている。調査と分析により、カンボジアとラオスとの間に製造、利用方法に大きな差異のあることが明らかになった。今後は、この地域を詳細に調査したい。ペーポから分離された細菌を用いて新規糸引き納豆の開発を行った。採集した試料29点から同定によりBacillus subtilisを得て、そのうちの42株を蒸煮大豆に生育したコロニーの糸引きから納豆菌として選別した。分離菌の生育最適温度は33℃〜45℃まで広範囲であった。納豆製造試験で10株を選別した。それらの菌株を用いてわが国の納豆は異なる軟らかい納豆などを作ることができた。カンボジアのシエンから134株を分離してスクリーニングを行い、さらに納豆の製造試験を行って10株を選抜した。Bergey's Manual of Systematic Bacteriology第2巻に準拠した同定の結果、白色を呈しコロニー表面がしわ状で、好気性有胞子桿菌であり、それらはいずれもBacillus subtilisであった。
著者
田中 直義 木村 小百合 木内 幹 鈴木 あゆ野 村松 芳多子 三星 沙織
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.167-174, 2012-04-15
被引用文献数
1

糸引き納豆は醗酵後の冷蔵中ににおいが変化してゆくことが知られており,品質の変化が早く生鮮飲食品並みの消費期限が設けられている.冷蔵中における主要なにおい物質の変化を以下の方法で検討した.<BR>(1) 購入直後の市販納豆および1週間冷蔵庫中で保存した市販納豆から臭い物質を連続水蒸気蒸留抽出によりエーテルに抽出し,濃縮した.得られたエーテル濃縮液をガスクロマトグラフ-におい嗅ぎ法で分析したが,試料間の差異が大きかったのでエーテル濃縮液を10の指数関数的に希釈することにより,主要な臭い物質を検索した.その結果,主要なにおい物質として2-メチルプロパン酸エチル,2-メチル酪酸エチル,3-メチル酪酸エチルなどの低分子脂肪酸エステル,2,5-ジメチルピラジン,トリメチルピラジンなどのピラジン類,酢酸,2-メチルプロパン酸,2- or/and 3-メチル酪酸などの低分子脂肪酸,およびエタノールが検出できた.1週間冷蔵中で保存するとそれらの物質の中で,低分子脂肪酸エステルのにおいは弱く,ピラジン類と低分子脂肪酸は強くなる傾向にあった.<BR>(2) 醗酵終了直後および冷蔵日数の異なる納豆からにおい物質をSPME法で抽出・濃縮し,ガスクロマトグラフで分析し,主要なにおい物質の変化を測定した.冷蔵日数が長くなるにつれて主要なにおい物質の中で,低分子脂肪酸エステルは減少,ピラジン類と酢酸以外の低分子脂肪酸は増加する傾向にあった.以上の結果から,冷蔵中のにおいの変化は,脂肪酸エステル類が減少し,ピラジン類および酢酸以外の低分子脂肪酸類が増加することによるものと推定した.
著者
〓橋 沙織 勝股 理恵 吉澤 久美 八巻 桃子 大迫 美由紀 村上 満利子 毛利 さやか 佐藤 みずき 目黒 寛子 久保倉 寛子 広瀬 佳苗 田中 直義 渡辺 杉夫 木内 幹
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.454-461, 2005
被引用文献数
5 1

1. 中国雲南省の淡豆〓から分離した細菌でわが国の糸引納豆を製造した結果, 撹拌すると豆の形が完全に崩れてしまうほど軟らかい納豆を製造することができる菌, KFP843を見いだした. 同定の結果, KFP843株は<i>Bacillus subtilis</i>に属する菌であった.<br>2. <i>B. subtilis</i> KFP843の納豆製造には2種類の温度プログラムを用いたが, KFP843株の最適生育温度である43℃を初発温度とする製造プログラムが適しており, 製造した納豆の硬さは, 市販納豆の硬さを100%とすると, それは約40%の硬さに仕上がった.<br>3. ホルモール窒素は市販納豆のそれが0.94%であったのに対し, 本菌株で製造した納豆は0.28ないし0.38%であった. また糸引きは市販納豆よりもやや弱く, 相対粘度は市販納豆のそれが2.06であったのに対し, 1.10ないし1.21であった.<br>4. 官能検査では, 菌の被り, 豆の割れ・つぶれ, 硬さの項目で市販納豆に比べて有意に良い評価 (p<0.05) であった. 市販納豆に比べて有意に (p<0.05) 糸引きは弱いが, 豆が軟らかいという評価を得た.