著者
村井 大介
巻号頁・発行日
2012-03-26

名古屋大学博士学位論文 学位の種類 : 博士(情報科学)(課程) 学位授与年月日:平成24年3月26日
著者
村井 大介
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.67-87, 2014-11-28 (Released:2016-11-15)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本研究の目的は,高等学校社会科が地理歴史科と公民科に分化した事象を事例にしながら,カリキュラム史上の出来事の意味と機能を教師のライフストーリーから明らかにすることである。 先ず,高等学校社会科が分化した際の言説を分析し,国際化を背景に歴史・地理教育が重視され,地理歴史科と公民科に分化したことと,こうした動きの中で教師には社会科としての総合性よりも,学問領域に接続する専門性が求められたことを明らかにした。 その上で,四半世紀を経て教師がこの事象をどのように意味づけ,影響を如何に受け止めてきたかを教師のライフストーリーから分析した。社会科分化の際に教師だった世代は,自身の専門分野からこの事象を意味づけていたが,分化以前の社会科の免許状を持つが故に専門外と考える科目も担当せざるを得なくなっていた。一方,社会科分化後に教職に就いた世代は,免許状取得の際に地理歴史科・公民科というカテゴリーを重視するが,教職経験を積む中で社会科の枠組みを意識せざるを得ない状況に直面していた。 以上のように,教科の専門性を高めることを意図して行われた高等学校社会科の分化は,地理歴史科・公民科というカテゴリーによって専門化した教科アイデンティティを創出する一方で,教員の配置や免許状,「世界史」の必修化といった問題と絡みながら,かえって教師が専門性を発揮し難くなるという逆機能を有していた。
著者
山崎 準二 高谷 哲也 三品 陽平 濱田 博文 田中 里佳 高野 和子 高野 貴大 朝倉 雅史 山内 絵美理 村井 大介 長谷川 哲也 栗原 崚
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「省察」それ自体が問い直されぬまま教師の専門性の中核を成す絶対的理念と化す傾向にある今日、大学における教員養成の「省察」言説を相対化し、不可視化された問題状況を明らかにするために、現代日本の大学における教員養成を方向づけてきた「省察」言説とはいかなるものか、またこの「省察」言説が隆盛する中で展開される学びの実態と問題はいかなるものか、という本研究の核心をなす2つの学術的「問い」に応えるため、教師教育における言説の特徴の解明、「省察」が重視される学術的・実践的原理の解明、「省察」による学びの実態把握、そして教員養成における「省察」のあり方の検討、という4つの研究課題に取り組むものである。
著者
村井 大介
出版者
全国社会科教育学会
雑誌
社会科研究 (ISSN:0289856X)
巻号頁・発行日
no.81, pp.27-38, 2014-11-30

本研究の目的は,ライフストーリーの聴き取りを通して,地理歴史科を担当する教師の歴史教育観(歴史を教える際の教育観)の特徴とその形成要因を明らかにすることである。本研究では,5名の教師のライフストーリーの事例を分析し,他の教師も参照し得る点として以下のことを明らかにした。第一に,各教師の歴史教育観の特徴をかたちづくる基盤には,(1)社会科教育としての一貫性を重視するか否か,(2)歴史教育観を授業に如何に反映させるか,(3)生徒や社会への働きかけをどこまで意識するか,という3つのことがあることを明らかにした。第二に,歴史教育観の形成要因となる重要な選択肢として,(1)出会った生徒たちの状況に応える歴史教育観を形成しようとするか否か,(2)現在の社会事象を意識した歴史教育観を形成しようとするか否か,(3)修得してきた学問の知見を活かした歴史教育観を形成しようとするか否か,(4)自発的に研究会に参加して知見を得るか,(5)学習指導要領の改訂をどのように捉えるか,という5つのことがあることを明らかにした。