著者
ラッシラ エルッキ・T 隅田 学
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.375-383, 2021 (Released:2022-01-06)
参考文献数
17

This research examines Super Science High Schools (SSH) as sites for gifted education. These schools represent the only government program in Japanese formal education explicitly aiming to foster the development of excellence in STEM subjects. Interview data with teachers from 3 SSH schools and a representative of a prefectural board of education, and annual reports of the schools and publications by JST (Japan Science and Technology Agency), are analyzed through the concept of educational capital of the actiotope-model. Results show the strengths of the program being in 1) the social educational capital in the form of strong network of cooperative institutions, and key personnel within and beyond the schools and 2) cultural educational capital that enables paying special attention to selected students. Infrastructural and economic educational capital help create learning opportunities, but the rigidity of the system and cultural ideas on ‘proper education’ can hinder the creation of individual learning pathways needed to achieve excellence. This relates to how teachers need to negotiate their ideas of meritocracy and equal outcomes with expectations to aim for excellence. Didactic educational capital concerning teachers’ competencies on guiding research activities and STEAM activities can be seen as key development areas.
著者
ラッシラ エルッキ・T 隅田 学
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.25-28, 2020-12-13 (Released:2020-12-09)
参考文献数
9

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)は、全国で行われる公教育の文脈において、高い興味関心や優れた能力を持つ生徒の個性や才能を伸長する理数系人材育成の一つの日本型教育モデルである。本研究では才能を個人と環境の組みわせとして定義する「行動環境場(actiotope)モデル」と「教育資本(educational capital)」のアイデアをベースとし、SSHの可能性を議論する。質的研究アプローチを採用し、SSH2校において計10名の教員にインタビューを行い、研究開発実施報告書等を資料として補完しながら分析を行った。その結果、これまであまり議論されていないSSHのインパクトとして、1)連携機関等とのネットワークと校内キーパーソンによる「社会的教育資本(social educational capital)」と2)公教育において意欲や能力の高い生徒に焦点を当てて教育支援をすることへの理解が広がる「文化資本(cultural capital)」へのインパクトが明らかとなった。予想に反し、「インフラ・経済資本(infrastructural and economic capital)」のインパクトが大きいようには見られず、「教育方法的教育資本(didactic educational capital)」のインパクトは曖昧で、才能についての共通認識はなく、課題研究の指導力が不十分と考える教員が多かった。
著者
山岡 武邦 松本 伸示 隅田 学
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.25-34, 2015

本研究は,中学校理科授業における生徒の誤答に対する教師の対応発問と生徒の期待に関する分析を行うことで,指導法への示唆を導出することを目的とした。具体的には,第3回国際数学・理科教育調査の第2段階調査(TIMSS-R)ビデオスタディ95時間分の国内中学校理科授業における生徒の誤答に対する教師の対応発問を分析した。分析結果を踏まえた質問紙を作成し,2013年9月から10月に,県内公立中等教育学校1校で中学校1から3年生451人を対象に調査を実施した。その結果,次の3点が明らかとなった。(1)教師は,別の生徒を指名するよりも,誤答を述べた生徒で対応する傾向があること,(2)1年生は情緒的対応を期待する傾向があること,(3)3年生は認知的対応を期待する傾向があること。以上より,中学校段階では,学年が上がるにつれて情緒的対応から認知的対応へと移行させる支援を意識しながら中学1年で「ヒント」,中学2・3年で「説明」,中学3年で「同じ発問」という対応を行い,自力で答えさせる指導をすることが効果的であると考えられる。
著者
窪 航平 隅田 学 掛水 高志
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.63-66, 2021

<p>本研究は高等学校化学において,物質量に関する科学理解の形成を促進する理科授業を開発することを目指し,まず今回,予備調査として理科教員志望大学生83名を対象に物質量に関する簡単な問題及び定義に関する設問,身の回りにあるある数をワンセットとして考えているような単位概念に関わる設問をからなる3つのセクションの調査をGoogle フォームで実施した.その結果,基本的な問題では90%を超える正答率が得られた.物質量の定義に関わる自由記述形式の設問に対する回答と正答率が90%を下回った問題を総合的に分析した結果,粒子数が体積に影響するという誤概念を形成している学生がいること,基本的な定義を知っているにもかかわらず,それらの活用に問題があることがわかった.また,身の回りにあるある数をワンセットとして考えているものの例としては「クラス,卵,足,パック,カートン,ケース,チーム」などの表現が見られ,それらが単位概念の例として大学生にとって身近である事がわかった.</p>
著者
隅田 学
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.111-120, 1995-06-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
41

The purpose of this study is to investigate the effects of students' prejudice on performance in practical work on pendulum motion. In this study, 142 subjects ranging from kindergartners up to undergraduate students responded to interviews, utilizing actual objects and employing the Prediction-Observation-Explanation Method. Subjects were first asked to predict how far the pendulum bob will swing. Then, doing the actual experiment, they observed the phenomenon. Finally they were asked to explain various matters concerning pendulum motion. The following results were obtained from the investigation: 1) With regard to practical work concerning pendulum motion, adding the pole to the setup was found effective in inducing falsification among the notion that the starting point is lower than the final point. (2) Subjects who had exposure to school science tend to congregate on providing specific and scientific types of responses in practical work, while those who had no exposure gave random responses. (3) The ability to extract a scientific conclusion from practical work depends on the subjects' prior scientific knowledge on the matter. In the final section of this paper, the implications of these results for science education are briefly discussed.
著者
日置 洋平 隅田 学 中山 迅
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.55-60, 2000-12-09 (Released:2017-11-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

In this study, we investigated elementary student's understanding about dissolving. 21 G5 students and 21 G6 students were interviewed using"Contradiction -Explanation Method." The results were as follows. The onotological presupposition that unsupported objects fall downwards, was crucial base of student's understanding about dissolving. Subjects showed five types of conceptual integration of their ontological reasoning with scientific reasoning. Furthermore, the development trajectory was proposed in knowledge acquisition about the uniformity of solution. Finally, the implications of these results for science education were briefly discussed.
著者
隅田 学
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.69-72, 2003
参考文献数
10

教育実習生による小学校理科授業を事例に,フィリピンで利用可能な英語字幕入り授業ビデオ・リソースを開発し,フィリピンの国立大学の学生を対象に,ビデオ・リソースを活用した理科授業に関するワークショップを開催した。そして,ビデオの理科授業について自由討論を行い,彼らの理科授業観を探り,フィリピンの大学生の理科授業観を日本の大学生(教育実習生)の理科授業観と比較することを試みた。その結果,フィリピンの大学生の方が日本の大学生よりも授業に対する見方が具体的で多様であることがわかった。そして,日本において近年提案されている理科授業観察の観点や評価の観点を紹介しながら,ビデオ・リソースの利用可能性について考察を行った。
著者
杉本 ひとみ 隅田 学 V マンザーノ 稲垣 成哲 中山 迅
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-16, 2001
参考文献数
10

本研究では, フィリピンにおける小学5年生と中学2年生を対象として, 描画法を用い科学者の絵を描かせることで, 彼らがどのようなサイエンス・イメージを持っているのかを検討した。その結果, 次のような特徴が見られた。 (1)白衣を着た科学者像はあまり多くなかった。 (2)女性科学者像が多く, 特に女子児童・生徒によって多く描かれた。 (3)科学者の研究分野像は, 小学校では生物分野, 中学校では化学分野が多かった。 (4)科学者が研究に使っている器具については, 試験管とパソコンをイメージする児童・生徒の割合が高かった。