著者
稲津 美穂子 四津 里英 玉木 毅 的野 多加志 加藤 康幸 林 利彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.988-991, 2015-12-01

要約 21歳,女性.東アフリカ・ウガンダ共和国に2週間滞在した.帰国から10日後,右母趾爪郭の疼痛,皮疹に気づいた.右母趾爪郭に径5mm大の緊満性の黄白調小結節が1か所あり,粟粒大の黒色点が透見された.臨床所見,スナノミ症の流行地への渡航歴より,スナノミ症を疑い摘出した.実体顕微鏡にて虫体,虫卵の充満した卵巣が確認され,虫体はTunga penetransと同定された.当院では,2009年10月〜2013年10月の4年間に,自験例を含め計6例のスナノミ症患者が受診している.グローバル化に伴い,日本でも今後症例数の増加が予想される.
著者
林 利彦
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.113-120, 1986-06-15 (Released:2016-09-02)
被引用文献数
4 4

ハヤトビバエ科のハエ類は食糞性・食腐性で, 人類親和性のものが多く知られている。しかし日本において報告されている種は少ない。著者は日本産のハヤトビバエ類を調べ, 人間の生活している環境内で世代が繰り返されたり, 家畜の糞などと密接な関係をもった種を本論文において扱った。また倉橋・三原(1983・1984学会発表)は2種の海岸性ハヤトビバエの大量発生による不快害虫化を報告している。そのため海岸に生息する4種も本論文に含めた。以上の結果から, 37種と3種群を人類親和性および衛生上重要と認め, 検索表を付した。
著者
林 利彦 中山 恒友
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第62回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2010 (Released:2010-10-12)

フサヒゲフンコバエLeptocera caenosa (Rondani)はヒト親和性の強いハエであり, ヒトの活動と共に世界中に分布を広げた種と考えられている. この種はしばしばヒトの生活環境内で大量発生することが知られている. カナダでは汚水槽の汚泥より大発生の報告があり, 日本でも北海道でマンション等から13件の大量発生の報告がなされている. 我々は栃木県宇都宮市の食品工場で本種の大量発生の事例に遭遇した. トラップによる調査で, 2009年4月からハエの大量発生が確認され, その後約1ヶ月で発生が終息した. この工場では外部からの昆虫侵入に対して対策がなされており, 多数のハエが侵入してくることは考えられず, 内部に発生源があるのは確実と思われたが, 工場での調査でその発生源を見つけることができなかった. 工場には1階から3階までに食品製造所があるが, ハエが見られたのは1階製造所のみであった. 北海道での事例では発生場所のほとんどが床下の排水管の破損による汚泥からの発生とされているが, 本事例でも床下からの発生が疑われた. 今回の大量発生に際し, トラップでは多数捕獲されていたにもかかわらず, 従業員等は目視で確認していなかったという. このハエはヒト親和性が強いにもかかわらず, 生息環境は屋根裏や床下等人目に付きにくい場所であるためにあまりポピュラーな種ではない. 本種の形態や発生状況等を紹介する. キーワード:フサヒゲフンコバエ, 大量発生, 食品工場, 栃木県.
著者
林 利彦 大和 雅之 水野 一乗 今村 保忠
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

生体の器官・組織のインフラストラクチャーはコラーゲンの傾斜構造で骨格が形成されている。血管壁では血管の内皮からコラーゲンについてはIV型コラーゲン、V型コラーゲン、III型コラーゲン、I型コラーゲンの傾斜になっている。細胞の種類についても、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、線維芽細胞の傾斜がある。コラーゲンの傾斜構造に沿って、異なる細胞が配置されていることが多細胞系の機能発現・恒常性維持に関係する可能性がある。本年度はIV型コラーゲンゲルを培養基質として、ラット肝星細胞(初代細胞)、ヒト大動脈平滑筋細胞、ヒト腎糸球体メサンジウム細胞、継代したラット肝星細胞の挙動を検討した。比較にI型コラーゲンゲル等を用いた。星細胞はI型コラーゲンゲル上では二極性を示し、IV型コラーゲンゲル上では細胞は星形の形態を示した。IV型コラーゲンゲルにおいては細胞は互いに突起の先端同士で、接合しており、生体内での形態と類似していた。細胞はIV型コラーゲンゲル上では増殖しなかった。培養皿上で継代培養したラット肝星細胞は培養の早期から増殖能を発揮する。このように変化し、ミオフィブロブラスト様になった星細胞はIV型コラーゲンゲル上では増殖が抑制された。肝臓星細胞と共通の性質を有するといわれる血管平滑筋細胞、腎糸球体メサンジウム細胞でも同様にIV型コラーゲンゲル上では、細胞の形態、細胞間の接合および増殖の抑制が見られた。血管内皮細胞はIV型コラーゲンゲルに接着はするものの伸展は殆ど見られなかった。IV型コラーゲンゲルは細胞基質として特異の特徴を有し、生体内での細胞分化に重要な役割を果たしている可能性がはじめて示された。
著者
林 利彦 都野 展子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.357-359, 1998
被引用文献数
2

キノコ類より発生した日本産フンコバエ科(改称)7種を記録した。日本においてフンコバエ類がキノコより発生した例は従来知られておらず, 今回が初めての記録である。フンコバエ類と発生したキノコ種は以下のとおりである。アシマダラオオフンコバエ, 新称Crumomyia annulus (Walker), キララタケ;ヤマトオオフンコバエ, 改称(マダラオオハヤトビバエ)C. nipponica (Richards), アミガサタケ;アシジロツヤホソフンコバエ, 新称Minilimosina (Svarciella) furculisterna (Deeming), キララタケ;モリフンコバエ, 新称Paralimosina japonica Hayashi, アミガサタケ;ヒメフンコバエ, 改称(ヒメハヤトビバエ)Spelobia luteilabris (Rondani), キララタケ・ヒトヨタケ・オオイチョウタケ・シカタケ;ホソカドマルフンコバエ, 改称(ホソカドマルハヤトビバエ)Terrilimosina longipexa Marshall, キララタケ;コガタカドマルフンコバエ, 改称(コガタカドマルハヤトビバエ)T. nana Hayashi, キララタケ。なお本科の科名には従来ハヤトビバエ科という和名が使われてきたが, 飛翔力が非常に弱い本科には実体に合わないので, 英名Lesser dung flyにちなみ, フンコバエ科という和名を新たに提唱した。
著者
小林 利彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.12, pp.1743-1744, 2011-12-01 (Released:2011-12-01)
参考文献数
1
被引用文献数
3 3

In the 1990s, drug companies focused their resources on chemistry-based proprietary blockbuster compounds (small molecules) for chronic diseases that could bring in several billion dollars in a short period of time. Since then, the focus has turned to biologics (proteins/high MW molecules) such as anticancer agents, antibodies, and so on. Vaccines, in contrast, are a rather slow-growing market, administered only a few times per patient, low priced, and often undifferentiated. Due to the influenza scares of recent years, the above view has changed remarkably. According to some analysts, the annual growth of the current $2.2bn vaccine market will become almost 10 percent over the next 5 years. In 2009, Pfizer (US), in an effort to boost their small vaccine-related business, purchased Wyeth (US). In October 2010, Johnson & Johnson announced they were buying Crucell (Germany), the only vaccine maker who had remained independent. GSK (UK) holds the top spot in the vaccine market with a 25% share. Pfizer (US), Merck (US), Novartis (Switzerland), and Sanofi-Aventis (France) are next, while Johnson & Johnson has moved into the 6th position by purchasing Crucell. There is of course an essential therapeutic need for vaccines, however, why are major pharmaceutical companies now investing a significant amount of resources in the vaccine business? Vaccine development may take more time than that of small molecules, but they are less risky from an intellectual property standpoint, and complicated manufacturing processes create a high barrier to follow-on biologics/biosimilars. Also in Japan, since the recent influenza scares, there has been acceleration in movement and cooperation among industry and government, including lawmakers.
著者
林 利彦
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.31-54, 1994
被引用文献数
1

文部省海外学術調査で, パキスタン(1988年)とネパール(1992年)におけるハヤトビバエ相を調査する機会を得た.人糞との係わりの強いParalimosina属について調べた結果, 14種を見いだした.その内, 6種が新種であった.また, P. japonica Hayashiがネパールより初めて見いだされ, P. altimontana (Rohacek)及びP. marshalli Rohacek et Pappの雌が初めて発見された.新種は以下の通りである : P. albipes Hayashi, sp. nov. (ネパール);P. biloba Hayashi, sp. nov. (ネパール);P. cavata Hayashi, sp. nov. (パキスタン, ネパール);P. confusa Hayashi, sp. nov. (ネパール);P. megaloba Hayashi, sp. nov. (パキスタン, ネパール);P. similis Hayashi, sp. nov. (ネパール).なお, P. eximia種群は本属中特異なグループであり, 非常に複雑であるため, 充分時間をかけて再検討する必要があり本論文中には含めなかった.
著者
林 利彦
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.61-64, 1989
被引用文献数
1 1

著者は1988年7〜9月にかけてパキスタンのハヤトビバエ類の調査を行った.今回Opalimosina属を調べた結果, パキスタンから1新種, 2新記録種を発見したので報告する.本属は従来この地域からは知られていなかった.