著者
下條 信輔 シャイア クリスチャン ニジャワン ロミ シャムズ ラダン 神谷 之康 渡辺 克巳 岡田 美苗 柏野 牧夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.219-225, 2001-03-01
参考文献数
24
被引用文献数
9

聴覚刺激による視知覚の変容に関する三つの新しい発見を概説する。第1に, 視覚的な時間分解能は, 音が付随すると, 視聴覚刺激の時間系列及び遅延に依存して, 向上もしくは低下する。第2に, 単一の視覚フラッシュは, 複数の音と共に提示されると, 複数のフラッシュとして知覚されることがある。第3に, 互いに近づくように動く二つの物体からなる多義的な運動パタンは, それと同期していない音が鳴っても, あるいは音がなくても, 二つの物体が交差してまっすぐ動いていくように知覚されるが, 二つの物体が重なった時点に同期して音が鳴ると, それらの物体が衝突して反発するように知覚される。これらの発見に基づいた著者らの主張は, 従来信じられてきた視覚優位性に反して, 聴覚が強力な過渡的信号を与える場合には特に, 聴覚が視覚を変化させるというものである。
著者
柏野 牧夫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.558-560, 2015-05-15

閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)は,相互的な対人関係の障害,意思伝達の障害,狭く偏った興味や反復的な行動を中核症状とする発達障害の一種である.ASD当事者の困りごとには,選択的聴取困難や感覚過敏など,基本的な感覚特性の特殊性に由来するものも多い.現在,ASDにおける感覚特性の詳細な分析から,その生物学的メカニズムの解明が進められている.一例として,ASD当事者がしばしば訴える選択的聴取困難の原因を調べた研究を紹介する.今後,ASDの診断,治療,支援において,臨床と基礎研究,さらに情報系技術が密接に連携していく必要がある.
著者
渡辺謙 大石悠貴 柏野牧夫
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013-MUS-99, no.57, pp.1-4, 2013-05-04

これまで、多くの研究で音楽が人間に与える影響が調べられ、自律神経活動や呼吸が計測されてきた.しかし、音楽の各パラメータがどのように影響を与えるかはまだわかっていない.そこで、本研究では音のパラメータの中でもテンポに着目し、音のテンポと呼吸数の組み合わせが自律神経系に与える影響について調べた.本研究では、二つの実験を行い、それぞれ18名の健常者が参加した.実験条件として、音のテンポは60BPM,80BPM、呼吸数は15CPM,20CPMの全組み合わせ4条件で各5分間の実験を行った.音刺激は、単純なドラム音を用いて、呼吸はメトロノームを用いて統制した.実験中に、心電図と呼吸を計測し、自律神経活動の指標として平均心拍数と心拍の変動成分を解析した.結果として、20CPMで呼吸をしながら、80BPMのテンポの音を聴く条件のみで、交感神経活動が増加し、平均心拍数の増加が見られた.他の条件では平均心拍数の変化は見られなかった.本研究から、交感神経活動の顕著な増加には、交感神経中枢であるRVLMの一定以上の発火率と、音と呼吸リズムの同期という二つの条件が必要な可能性が示唆された.結論として、音楽が生体の交感神経活動に影響を与えるには、音楽のテンポと呼吸数の組み合わせが重要な要因になると考えられる.
著者
藤崎 和香 柏野 牧夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.759-767, 2001-12-01
被引用文献数
6 5

音高知覚には基底膜振動のピーク位置(場所情報)と聴神経の発火の周期性(時間情報)の両方の情報が関わっている。音楽経験や絶対音感の有無によってこれらの情報の利用に違いが見られるかを場所情報と時間情報を独立に操作した刺激を用いて検討した。主に場所情報により音高知覚が生じ時間情報はあいまいである刺激として狭帯域雑音, 時間情報のみ利用可能な刺激として反復リプル雑音, 両情報が利用可能な刺激として純音を用いた。実験の結果, クロマの同定には時間情報, ハイトの同定には場所情報が主要な役割を果たしていることが示された。また, 絶対音感保持者は時間情報を有効に利用して音名の同定を行っていることが明らかになった。
著者
野村 理朗 近藤 洋史 柏野 牧夫
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.40-40, 2007

衝動性の特徴は、即時的な報酬をもとめ中長期的なリスクを犯してしまうことと、行動の制御が不十分であることの二つに大別される。本研究では、後者のメカニズムに焦点をあて、Go/Nogo課題において衝動性の指標となる反応遂行エラー(commission error)、課題遂行時の脳活動、さらにはセロトニン2A受容体遺伝子多型性を指標とし、行動の制御プロセスにかかわる機能的連関について検証した。実験の結果、同遺伝子多型のサブタイプであるAA接合型をもつ被験者の誤答数が他タイプのものと比較して多いこと、さらにはfMRIにより、同タイプにおける前頭前野腹外側部の過活性化が確認された。その一方で、脳内報酬系の回路に存在する視床下部、線条体などの諸領域におけるタイプ間の差異は見出されず、以上のことから衝動的行動は、報酬への感受性、すなわち脳内報酬系の機能不全に起因するものではなく、抑制系統の問題によって生じうるという可能性が示唆された。