著者
長谷川 聡 市橋 則明 松村 葵 宮坂 淳介 伊藤 太祐 吉岡 佑二 新井 隆三 柿木 良介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.86-87, 2014-04-20 (Released:2017-06-28)

本研究では健常者と肩関節拘縮症例における上肢拳上時の肩甲帯の運動パターンとリハビリテーションによる変化を検証した。健常肩においては,多少のばらつきはみられるものの,肩甲骨の運動パターン,肩甲骨周囲筋の筋活動パターンは一定の傾向が得られた。上肢拳上30°〜120°の区間では,肩甲骨の上方回旋運動はほぼ直線的な角度増大を示すことがわかった。そのスムーズな角度変化を導くためには,僧帽筋上部,僧帽筋下部,前鋸筋の筋活動量のバランスが必要で,上肢拳上初期から約110°付近までは3筋がパラレルに活動量を増加させ,拳上終盤においては僧帽筋上部の活動量増加が止まり,僧帽筋下部と前鋸筋の活動量を増加させる必要があることが明らかとなった。肩関節拘縮症例では,上肢拳上による肩甲骨の運動パターンは多様であり,一定の傾向はみられなかったため,代表的な症例の経過を示した。
著者
長谷川 聡 大島 洋平 宮坂 淳介 伊藤 太祐 吉岡 佑二 玉木 彰 陳 豊史 伊達 洋至 柿木 良介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.De0029, 2012

【はじめに、目的】 生体肺移植は,健康な二人の提供者(ドナー)がそれぞれの肺の一部を提供し,これらを患者(レシピエント)の両肺として移植する手術である.生体肺移植ドナーは肺の一部をレシピエントに提供することで呼吸機能が低下することは知られているが,手術における呼吸器合併症の発症や術後の呼吸機能,運動耐容能および健康関連QOLの中期的経過に関する報告は世界的にもあまりみられない.本研究の目的は,生体肺移植ドナーが手術を受けることによる術後の呼吸機能および身体機能,生活の質に与える影響を明らかにし,本手術施行におけるドナーの予後を検証することである.【方法】 2008年6月から2010年12月までの期間に当院で施行された生体肺移植術におけるドナー28名(男性9名、女性19名)を対象とした.尚,全症例に対して,術前後のリハビリテーションを実施した.術後の短期成績として,術後呼吸器合併症の発症を検証した.さらに,呼吸機能の評価として,術前, 3ヶ月,6ヶ月に努力性肺活量(以下FVC),1秒量(以下FEV1),肺拡散能(DLCO)を測定した.また,術前,術後1週,3ヶ月における6分間歩行距離(以下6MWD),および咳嗽時疼痛をNumerical Rating Scale (NRS)を用いて測定し,術後経過を検証した.手術における健康関連QOLに与える影響を検証するために,術前,術後3ヶ月,6ヶ月にMOS 36-item Short Form Health Survey (SF-36)を用いてQOL評価を行なった.測定値の各評価時期における平均値を算出するとともに,反復測定一元配置分散分析およびScheffe's法による多重比較検定を用い,各時期における平均値の比較を行なった.統計学的有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には口頭および文章にて本研究の主旨および方法に関するインフォームド・コンセントを行い,署名と同意を得ている.本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,京都大学医学部医の倫理委員会の承認を得ている.【結果】 術後呼吸器合併症(肺炎・無気肺)の発生症例は無かった.FVCは,術後3ヶ月,6ヶ月においてそれぞれ術前の79.4±6.4%,86.1±7.0%の回復であった.FEV1は,術後3ヶ月,6ヶ月においてそれぞれ術前の81.8±7.8%,85.7±9.7%の回復であった.DLCOは,術後3ヶ月,6ヶ月においてそれぞれ術前の80.0±1.0%,85.2±9.7%の回復であった.呼吸機能は,術後3ヶ月において有意に低下しており,術後6ヶ月経過しても完全には回復しなかった.術後3ヶ月における6MWDは,術前の101.2±7.7%まで回復し,咳嗽時疼痛はNRSで0.4±1.1とほぼ消失し,術前と比較して統計学的な差を認めなかった.QOLに関しては,SF-36の下位尺度は,術後3ヶ月では十分に改善せず,術後6ヶ月では,全項目で国民標準値を超えていたが,術前の得点にまでには改善しない項目がみられた.【考察】 呼吸機能は術後6ヶ月の時点においても術前と比較して機能低下は残存するものの,切除肺区画量から算出される予測機能低下よりもはるかに良好な値であった.運動耐容能は術後1週で,呼吸機能の回復よりも高い回復率を示し,術後早期から良好であり,さらに術後3ヶ月の時点で術前レベルに回復することが明らかとなった.これらの結果より,ドナーは少なくとも術後3ケ月経過すれば,呼吸機能低下の残存に関わらず,運動耐容能の結果からも術前の生活レベルには復帰できるが,健康関連QOLの観点からみるとまだ不十分であり,6ヶ月経過してもQOLの改善は完全ではないことが示唆された.本研究の結果より,術前後のリハビリテーションを実施した生体肺移植術ドナーは,術後呼吸器合併症を発症することなく,安全に術前の運動耐容能を取り戻すことが出来るが,健康関連QOLは術後半年経過しても完全には回復しておらず,継続的かつ包括的な治療介入が必要であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 生体肺移植手術は,脳死肺移植手術とともに,難治性の呼吸器疾患患者の生命予後を改善する非常に有用な先端医療であり,本邦においても今後様々な施設において手術施行例が増加すると思われる.レシピエントに対するリハビリテーションにおける臨床研究は,無論,重要であるが,ドナーに関しても,臨床研究を進めるとともに,手術における身体機能やQOLへの影響を検証し,我々理学療法士がエビデンスに基づき適切に介入していく必要がある.本研究はこのような新たな視点を示した点で意義深く,重要な研究である.
著者
南角 学 柿木 良介 西川 徹 松田 秀一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0526, 2014 (Released:2014-05-09)

【目的】臨床場面において,臼蓋形成不全によって股関節痛を伴う股関節疾患に対して,大腿骨と臼蓋の安定化を図りながら,動作の改善を目指すことは多い。臼蓋形成不全による骨形態の変化は,大腿骨と臼蓋の構造的な安定性の破綻をきたすとともに股関節の安定性に関わるその他の因子の機能にも影響を及ぼす。特に,股関節周囲筋の筋出力や筋張力によって大腿骨頭に加わる力の大きさや方向が変化することで股関節の安定性に関与することから,これらのメカニズムを考慮しながら理学療法を展開していくことは重要である。しかし,臼蓋形成不全と股関節の安定化機構に関わる股関節周囲筋の関連性を検討した報告はなく,不明な点が多い。そこで,本研究の目的は,変形性股関節症患者における臼蓋形成不全と股関節周期筋の筋萎縮の関連性を明らかとすることとした。【方法】対象は片側の変形性股関節症患者44名(男性6名,女性38名)とした。測定項目は股関節周囲筋の筋断面積,脚長差,Central-edge angle(以下,CE角)とし,測定には当院整形外科医の処方により撮影されたCT画像と股関節正面のX画像を用いた。股関節周囲筋の筋断面積の測定は,Raschらの方法に従い,仙腸関節最下端での水平断におけるCT画像を採用し,画像解析ソフト(TeraRecon社製)を用いて各筋群の筋断面積の測定を行った。対象は梨状筋,腸腰筋,中殿筋,大殿筋とし,得られた筋断面積から患健比(患側筋断面積/健側筋断面積×100%)を算出した。また,股関節正面のX画像から,小転子先端から涙痕先端までの距離を計測し脚長差を算出するとともに臼蓋形成不全の評価としてCE角も算出した。その他の運動機能の評価として,IsoForceGT330(OG技研社製)にて膝関節伸展筋力を計測し,トルク体重比を算出した。さらに,臼蓋形成不全の診断基準値に準じてCE角が20°未満(臼蓋形成不全症例:以下,A群)と20°以上(以下,B群)の2群に分け,各測定項目の比較を行った。統計処理は,両群間の比較には対応のないt検定とMann-WhitneyのU検定を用いた。さらに,臼蓋形成不全の有無を目的変数,両群間で有意差を認めた項目を説明変数としたロジスティック重回帰分析を行い,統計学的有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は京都大学医学部の倫理委員会の承認を受け,対象者には本研究の主旨ならびに目的を説明し研究への参加に対する同意を得て実施した。【結果】A群は24名(年齢:61.1±8.6歳,BMI:22.0±3.6kg/m2),B群は20名(年齢:65.9±10.7歳,BMI:23.0±3.0kg/m2)であり,年齢とBMIについては両群間で有意差を認めなかった。A群の梨状筋は60.8±14.5%,腸腰筋は62.2±10.5%,中殿筋は65.0±12.7%,B群の梨状筋は83.1±13.6%,腸腰筋は83.2±12.7%,中殿筋は84.6±8.3%であり,これらの筋についてはB群と比較してA群で有意に低い値を示した。一方,大殿筋(A群:76.3±11.0%,B群:83.1±8.4%)と膝関節伸展筋力(A群:1.31±0.56Nm/kg,B群:1.28±0.62Nm/kg)に関しては,両群間で有意差を認めなかった。また,A群の脚長差(23.9±9.9mm)は,B群(8.3±5.5mm)と比較して有意に大きい値を示した。さらに,ロジスティック重回帰分析の結果より,変形性股関節症患者の臼蓋形成不全と関連する因子として,脚長差と腸腰筋の筋萎縮が有意な項目として選択された。【考察】腸腰筋や梨状筋などの股関節の深部にある筋群は,それぞれの筋機能のバランスを保つことによって臼蓋と大腿骨頭の適合性すなわち股関節の安定化に寄与すること報告されている。また,中殿筋の後部線維は筋線維方向が頚体角と同等であることから股関節を求心位に保持する機能があることも報告されている。本研究の結果より,臼蓋形成不全症例では脚長差が大きく,大殿筋や膝関節伸展筋よりも股関節の安定性に関わる腸腰筋,梨状筋,中殿筋により顕著な筋萎縮を認めた。さらに,重回帰分析の結果より,臼蓋形成不全の影響を最も受けやすい筋は腸腰筋であることが明らかとなった。腸腰筋は大腿骨頭を前方から押さえることで臼蓋と大腿骨頭の安定性を向上させる作用があることから,臼蓋形成不全が大きい症例では股関節の前方への安定化がより欠如している可能性があり,これらのことを考慮した介入が必要であると考えられた。【理学療法研究としての意義】本研究の結果より,変形性股関節症患者の臼蓋形成不全は股関節の安定性に関与する筋群の萎縮と関連することが明らかとなり,理学療法において効果的なアプローチ方法を立案していくための一助となると考えられる。
著者
田仲 陽子 南角 学 吉岡 佑二 秋山 治彦 柿木 良介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101562, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】これまでに、変形性股関節症の股関節の変性は骨盤アライメントの異常と相互に関連しており、この骨盤アライメントの異常は歩行を中心とした運動機能に影響するという報告がなされてきている。そのため、変形性股関節症患者のリハビリテーションにおいては、骨盤アライメントに対する評価や介入が重要となる。また、変形性股関節症患者の運動機能の向上を図るための効果的な介入を行うためには、骨盤アライメントと股関節周囲筋との関連性をより詳細に検討することが必要と考えられるが、これらの関連を検討した報告は少ない。そこで、本研究の目的は、末期の変形性股関節症患者の股関節周囲筋の筋萎縮を定量的に評価し、骨盤アライメントとの関連性を明らかにすることとする。【方法】末期の片側変形性股関節症と診断された32名(男性3名、女性29名、年齢63.8±9.7歳、身長153.0±7.0cm、体重53.5±10.6kg、BMI22.8±4.0kg/m²)を対象とした。股関節周囲筋の筋断面積と骨盤アライメントの測定には、当院整形外科の処方により放射線技師が撮影したCT画像と静止立位における全脊柱のレントゲン画像を用いた。股関節周囲筋の筋断面積の測定は、Raschらの方法に従い仙腸関節最下端での水平断におけるCT画像を採用し、画像解析ソフト(TeraRecon社製)を用いて各筋群の筋断面積の測定を行った。対象筋群は腸骨筋、大腰筋、腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)、大殿筋、中殿筋、小殿筋とし、得られた筋断面積から求めた患健比(患側筋断面積/健側筋断面積)×100(%)を筋萎縮率と定義した。また、骨盤アライメントとして、静止立位における全脊柱のレントゲン画像から、土井口らの方法に従って骨盤傾斜角(仙骨岬角と恥骨結合上縁を結んだ線と仙骨岬角から垂直におろした線の成す角)を測定した。さらに、先行研究の健常者の骨盤傾斜角の平均値(26.6度)に基づいて骨盤前傾群と骨盤後傾群の2群に分けた。統計処理には、各筋群の患側と健側の筋断面積の比較には対応のないt検定を、骨盤前傾群と骨盤後傾群の各筋の萎縮率の比較には、マンホイットニーのU検定を用い、統計学的有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は京都大学医学部の倫理委員会の承認を受け、対象者には本研究の主旨ならびに目的を説明し研究への参加に対する同意を得て実施した。【結果】骨盤傾斜角測定の結果、骨盤前傾群は15名(骨盤傾斜角19.4±4.3度)、骨盤後傾群は17名(骨盤傾斜角34.1±5.0度)であった。各筋の筋断面積測定の結果、全ての筋群において患側は健側に比べて有意に低値を示した。また、筋萎縮率については、腸腰筋が骨盤前傾群で63.0±14.3%(患側676.9±152.8mm²、健側1103.0±251.5mm²)、骨盤後傾群で75.4±16.7%(患側836.1±282.5mm²、健側1105.4±242.9mm²)であり、腸骨筋が骨盤前傾群で60.7±20.8%(患側435.6±134.0mm²、健側743.7±152.7mm²)、骨盤後傾群で75.9±19.5%(患側588.8±187.8mm²、健側783.0±163.5mm²)と、骨盤前傾群が骨盤後傾群に比べ有意に低値を示した。大腰筋、大殿筋、中殿筋、小殿筋の筋萎縮率は2群間に有意差を認めなかった。【考察】本研究の結果より、変形性股関節症患者の骨盤傾斜角に関連していた筋は腸腰筋と腸骨筋のみであり、大腰筋や殿筋群には骨盤アライメントの影響を認めなかった。先行研究において、骨盤後傾位のほうが骨盤前傾位よりも股関節屈曲筋力を発揮しやすいことが報告されている。これらの先行研究を考慮すると、過度な骨盤前傾位を呈している変形性股関節症患者では、静止立位時や動作時において腸腰筋の筋活動が得られにくく、患側の腸腰筋の筋萎縮が顕著に生じていたと考えられる。また、大腰筋に関しては第2腰椎に起始部を持ち姿勢保持に働く筋とされており、静止立位時の骨盤前後傾に対しどちらも正中位に保持しようとする方向に働くと考えられ、大腰筋の筋萎縮率は骨盤前傾群と骨盤後傾群の間に差を認めなかったものと思われる。今後の課題として、変形性股関節症患者に対し腸腰筋に着目したトレーニングを施行することが、立位姿勢や運動機能の改善に有効であるかを検討していく必要があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】これまで、変形性股関節症患者の骨盤アライメントの異常については多く報告されてきた。しかし、骨盤アライメントと股関節周囲筋の関連性について詳細に検討した報告は少なく、骨盤アライメントの改善に有効とされる介入内容は不明瞭であった。本研究の結果より、骨盤アライメントと腸腰筋の筋萎縮に関連があることが明らかとなった。この結果は、変形性股関節症患者の姿勢改善や運動機能向上に対し効果的なトレーニング方法を立案する際の一助となると考えられる。
著者
岡 徹 奥平 修三 中川 拓也 古川 泰三 柿木 良介
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.29, 2011

【はじめに】キーンベック病は比較的珍しく、特に若年者スポーツ選手では稀である。今回、我々は硬式高校男子テニス選手に生じたキーンベック病に対し、血管柄骨移植を施行した1例を経験したので報告する。【説明と同意】本研究の目的、結果の取り扱いなど十分な説明を行い、データの使用および発表の同意を確認後に署名を得た。【症例紹介】16歳男性、高校硬式テニス部所属(県内ベスト4レベル)。試合中に片手フォアハンドでボールを強打したところ急に痛みが出現する。その後、腫脹と疼痛のためにテニス困難となり、Lichtman分類Stage_III_b(X線像で月状骨に圧潰像、舟状骨が掌側に回旋)のキーンベック病と診断される。発症から2ヵ月後に手術となる。【理学・画像所見】手背側に腫脹、リスター結節部周囲の圧痛と運動時痛を認めた。X線上では月状骨の硬化像と圧潰を認め、MRI(T1)上では月状骨の低信号を確認した。【手術所見】橈骨遠位背面から血管柄付きの骨を骨膜、軟骨組織とともに採取した。次に、病巣部位である月状骨の壊死部を背側よりドリリングと掻爬を加え、その間隙に移植骨を挿入した。移植後は有頭骨と舟状骨を鋼線で固定した。【評価項目】疼痛(NRS)、握力、手関節可動域および手関節機能評価表(Mayo Modified Wrist Score以下:MMWS)の各評価を術前、術後4ヵ月、5、6および8ヵ月で評価した。【理学療法】術後4ヵ月間の手関節ギプス固定後に抜釘した。その直後より、手関節ROM練習、筋力強化練習を開始した。筋力強化練習(股・体幹・肩甲帯強化)、ストレッチ指導、およびスポーツ動作指導を実施した。【結果】疼痛は、術前NRSが7/10で術後4ヵ月より軽減し術後6ヵ月で0/10と消失した。握力は術前18_kg_が術後5ヵ月で30_kg_(健側比75%)まで改善した。手関節ROMは術前で掌屈10°、背屈30°、橈屈15°、尺屈40°が、術後8ヵ月では掌屈35°、背屈70°、橈屈20°、尺屈45°と拡大した。MMWSは術前10点が、術後6ヵ月で90点まで回復した。術後5ヵ月からテニス競技復帰をした。掌屈のROM制限は残存するが、右手関節の不安定感、疼痛なくスポーツ活動(テニス)を行っている。【考察】。本疾患の発生要因については、いまだ解明されていない。しかし、テニス競技による手関節への外力で月状骨に局所的な応力が集中していることは推察できる。術後は長期間の固定による手機能(特にROM低下、筋力低下)の回復を積極的に行った。その後は、手関節の局所機能の回復とともに、上肢に限局したストレスがかからないような身体機能の再構築(肩甲骨や体幹・股関節の機能向上)やフォーム指導およびラケットの再検討などをおこなった。本症例は、術後6ヵ月から公式試合に復帰をした。掌屈のROM制限は残存するがテニス動作では橈尺屈が特に重要で現在のROMでテニスが可能であった。右手関節の不安定感、疼痛なくスポーツ活動(テニス)を行っており、今後も再発しないよう身体面のチェックや現場のコーチと密な連絡をとっていくことが重要である。【理学療法の意義】キーンベック病に対する理学療法の報告はほとんどないため、症例報告として症例の治療経過や理学療法プログラムおよび評価項目など検討していく必要があると考える。
著者
南角 学 西川 徹 秋山 治彦 柿木 良介
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100545-48100545, 2013

【目的】人工股関節置換術(以下,THA)術後早期の理学療法では,術後の合併症の予防に取り組みながら,より効率的に股関節機能や運動機能の向上に図ることが重要となる.近年,股関節の深部外旋筋群は股関節の安定性に関与することが報告されており,股関節外旋筋に対するトレーニングが注目されている.しかし,股関節外旋筋のトレーニングがTHA術後早期の股関節外転筋および歩行能力の回復に与える影響を検討した報告は見当たらない.本研究の目的は,股関節外旋筋の筋力トレーニングがTHA術後早期における股関節機能および歩行能力の向上に有用であるかどうかを検討することである.【方法】対象は片側変形性股関節症で初回THAを施行された28 名とした.さらに,当院のプロトコール通りに術後の理学療法を行った14 名(以下,Control群)と,通常の理学療法に加えて股関節外旋筋に対するトレーニングを実施した14 名(以下,Ex群)に無作為に分類した.股関節外旋筋のトレーニングは,腹臥位で股関節屈曲0°・膝関節屈曲90°での股関節外旋運動,仰臥位と側臥位での股関節軽度屈曲位からの股関節外旋運動とし,術後1 週間は自動介助,術後2 週目からは自動運動,術後3 〜4 週間は低負荷でのトレーニングを行った.評価時期は術前と術後4 週とし,測定項目は術側の股関節痛,術側の股関節屈曲と外転の関節可動域,術側の下肢筋力(股関節外転筋力,股関節外旋筋力,膝関節伸展筋力),Timed up and go test(以下,TUG)とした.股関節痛は,日本整形外科学会の股関節判定基準の股関節痛の点数を用いた.股関節外転筋力と股関節外旋筋力は徒手筋力計(日本MEDIX社製),膝関節伸展筋力はIsoforce GT-330(OG技研社製)にて等尺性筋力を測定し,股関節外転筋と膝関節伸展筋の筋力値はトルク体重比(Nm/kg),股関節外旋筋力は体重比(N/kg)にて算出した.統計処理は,各測定項目の術前と術後の比較には,対応のあるt検定とMann-WhitneyのU検定を用い,統計学的有意基準は5%未満とした.【説明と同意】本研究は京都大学医学部の倫理委員会の承認を受け,各対象者には本研究の趣旨ならびに目的を詳細に説明し,研究への参加に対する同意を得て実施した.【結果】年齢(Ex群60.5±6.4歳,Control群60.8±7.5歳)と身体特性(Ex群:身長154.8±5.5cm,体重55.9±6.4kg,Control群:身長153.7 ± 9.4cm,体重52.2 ± 9.9kg)および術前の運動機能に関しては,両群間で有意差を認めなかった.Ex群の股関節外転筋力は術前0.63 ± 0.15 Nm/kg,術後0.72 ± 0.12 Nm/kgで術後に有意に高い値を示した.一方, Control群の股関節外転筋力は,術前0.60 ± 0.14 Nm/kg,術後0.58 ± 0.14 Nm/kgであり,術前と術後で有意差を認めなかった.股関節外旋筋力については,Ex群が術前1.05 ± 0.27 N/kg,術後1.05 ± 0.25 N/kgで有意差を認めなかったのに対して, Control群では術前0.97 ± 0.35 N/kgよりも術後0.78 ± 0.39 N/kgに有意に低下していた.また,TUGに関しては,Ex群のTUGは術前8.50 ± 1.67 秒,術後7.62 ± 1.08 秒で術前と比較して術後に有意に低い値を示したが,Control群で術前8.25 ± 2.07 秒,術後8.61 ± 1.46 秒で術前と術後で有意差を認めなかった.股関節痛および股関節屈曲と外転の関節可動域は,両群ともに術前と比較して術後で有意に改善していた.【考察】股関節深部外旋筋は,臼蓋に対して大腿骨頭を求心位に保持することから股関節の安定性に関与すると考えられている.本研究においては,股関節外旋筋に対するトレーニングを実施したことにより,臼蓋と大腿骨頭の安定性が得られ,より効率に股関節外転筋群による筋力発揮が可能となったために股関節外転筋力が術前よりも14.3%向上したと考えられた.さらに,股関節外旋筋のトレーニングを行うことで股関節外転筋力が術前よりも向上したことから,THA術後早期での歩行能力も同時に改善したと考えられた.今後の課題として,THA術後早期の運動機能の向上が術後中期および長期的な運動機能の回復過程に及ぼす影響を検討していく必要性があると考えられた.【理学療法研究としての意義】本研究の結果より,THA術後早期における運動機能の向上に対して股関節外旋筋のトレーニングが有用であることが示され,理学療法研究として意義があると考えられる.