著者
栗原 久
出版者
東京福祉大学・大学院
雑誌
東京福祉大学・大学院紀要 = Bulletin of Tokyo University and Graduate School of Social Welfare (ISSN:18837565)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.109-125, 2016-03

カフェインはメチルキサンチン類に分類され、アデノシン受容体のブロックを介して、中枢神経系や末梢神経系に作用する。カフェインは単独ではなく、いわゆるエナジードリンク(energy drink)や鎮咳去痰薬の配合成分としたり、あるいはアルコール、交感神経刺激薬などと同時摂取されたりする機会が多い。本総説は、日常生活の中での嗜好品として、あるいは医薬品中の成分として摂取されているカフェインについて、その効果を報告した論文を総括し、過剰摂取による有害効果をもたらすことなく、安全に使用するための注意点を考察する。健常人では、1回摂取量が200 mg以内、1日摂取量が500 mg以内、激しい運動を行う場合はその2時間以上前にカフェイン単回摂取量が約200 mgまでであれば、安全性の問題は生じていない。エネルギー飲料(典型例では、2,000 mLボトル中に、カフェイン300~320 mg、タウリン4,000 mg、グルクロン酪酸2,400 mg含有)、あるいはカフェイン 200 mg未満+アルコール摂取量が0.65 g/kg (2単位)未満の摂取なら、カフェインの有害作用はほとんど認められていない。これら複数のデータの総括から、より安全性を考慮すると、成人での1日摂取量を300 mg (5 mg/kg)以内にとどめて摂取することが、カフェイン関連問題を生じることなく、その有益効果を受けることができるといえよう。
著者
田所 作太郎 栗原 久
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.229-238, 1990 (Released:2007-02-20)
参考文献数
52
被引用文献数
24 25

It has been well-known that a chronic abuse of amphetamines induces schizophrenia-like psychotic symptoms, namely amphetamine psychosis. When amphetamines are repeatedly administered to rodents, a reverse tolerance (behavioral sensitization) to the ambulationincreasing and/or stereotypy-producing effect is observed. The process of the reverse tolerance is affected by various factors. A clear reverse tolerance is produced when optimal doses of the drug (2 mg/kg, s.c. for mice, and 0.5 ?? 1 mg/kg, s.c., for rats) is administered at intervals of longer than 1 day rather than a shorter interval. Furthermore, the animal has to be put into a freely mobile situation during the presence of the acute drug effect. A cross reverse tolerance is observed between certain types of drugs that show an ambulation-increasing effect, although the potencies are different among the drugs. A reverse tolerance to the stereotypy (in particular sniffing and head-bobbing)producing effect is also observed when comparatively higher doses of methamphetamine are repeatedly administered. The process is qualitatively identical with the reverse tolerance to the ambulation-increasing effect produced by the repeated administration of comparatively smaller doses. The reverse-tolerance, once established, to both ambulation-increasing and stereotypy-producing effects is almost irreversible even with various treatments such as repeated post-treatment with antipsychotics. The characteristics of reverse tolerance to methamphetamine in animals might be closely correlated to the amphetamine psychosis in humans. It is also necessary to search for a method that effectively reduces the established reverse tolerance to amphetamines.
著者
栗原 久
出版者
東京福祉大学・大学院
雑誌
東京福祉大学・大学院紀要 = Bulletin of Tokyo University and Graduate School of Social Welfare (ISSN:18837565)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.5-17, 2016-10

コーヒー/カフェイン摂取と精神運動機能について、これまでの知見を総括した。カフェインの摂取は覚醒度や注意・集中力の維持や有酸素運動の向上に有益で、その有効性は50 mg (コーヒー換算で1杯)以上で現れる。カフェイン200 mg以上を常習的に摂取している人の一部では、カフェイン摂取の急激な中断後、カフェイン効果の逆の症状で特徴づけられる頭痛、眠気、倦怠感、意欲低下といった離脱症状が出現するが、いずれの症状もマイルドで、短時間で消失する。また、カフェイン摂取量を緩徐に減らしていけば、離脱症状の出現を回避できる。もちろん、カフェインの依存性は、覚せい剤、コカイン、ヘロインなどの依存・乱用性薬物より軽微で、カフェイン乱用とするほどの問題は生じない。カフェインの精神運動刺激作用は睡眠に悪影響を及ぼすことは確かである。この知見は、カフェイン摂取量の減少で睡眠の改善(睡眠潜時の短縮、深睡眠の増加)が図られ、交代勤務や夜間の長距離運転、時差ぼけ時のような集中力の維持が求められる状況では、コーヒー/カフェイン摂取は有益性を発揮することを示唆している。睡眠に及ぼすカフェインの影響についての個人差には、遺伝的背景があることが報告されている。
著者
猪瀬 武則 山根 栄次 栗原 久 阿部 信太郎 山岡 道男 淺野 忠克 山田 秀和
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

価値多元社会における多面的多角的見方を育成する経済教育カリキュラムの開発研究である。研究を進める上で、「カリキュラム班」と「金融リテラシー班」の二つに分けた。カリキュラム班では、「価値多元社会における多面的多角的見方」の原理研究と海外のカリキュラム調査を試みた。金融リテラシー班は、中学生の金融リテラシー調査結果をもとに、経済的見方の有無にかかわらず一定の経済知識はあることが明確となった。カリキュラム班で明らかにした多面的多角的見方育成の原理と、リテラシー調査班で明らかにした中学生の現状の一端を説明する。前者に関しては、第一に、多面的多角的見方育成のための原理として、(1)一元的な経済学教授から多元的な経済学教授へ、(2)政策決定学習などでの経済論争を基礎とした既得観念との差異を対象化する学習、(3)経済学の合意・不合意を前提としたカリキュラム教材の構成を、(4)行動経済学などの成果を基にした感情などを踏まえた意思決定モデルの精緻化を提起した。また、カリキュラム教材としては、米国では、問題基盤経済学、経済学の倫理的基礎付け教授などのカリキュラム教材によって、英国からはビジネス教育のカリキュラム教材にそのモデルを見いだした。後者のリテラシー班では、稀少性などの経済基本概念がきわめて弱く、福利などの知識が弱かった。財の種類、収益が高い貯蓄商品、複利計算、株と債券の違い、投資家の収益(配当)、分散投資などは、米国に比しても高く、半数以上は把握していた。日米の差異は、文化的背景も考えられるが、カリキュラムや教材を含め、多面的内容構成に課題を投げかけている。
著者
栗原 久
出版者
東京福祉大学・大学院
雑誌
東京福祉大学・大学院紀要 (ISSN:18837565)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.3-13, 2017-10-25

コーヒー/カフェイン摂取と神経変性疾患との関連について総括した。複数の疫学研究によって、中程度のコーヒー/カフェイン摂取を生涯にわたって続けている高齢者では、年齢に応じた生理的な認知機能低下が軽微であり、特に、80歳以上の女性において顕著であることが示されている。それらの研究では、生涯のコーヒー摂取量とアルツハイマー病の発症リスクとの間には逆相関関係(摂取量が多いほど発症リスクが低い)がみられるという好ましい効果を指摘している報告が少なくないものの、結果については相違点が大きく、しかも大規模コホートを対象とした前向き調査が行われていないので、確実という結論には至っていない。パーキンソン病に関しても、発症リスクとコーヒー摂取量との逆相関関係を示す疫学調査がある。その関係には用量-効果相関性があり、効果の信頼性を高めている。動物実験でも、コーヒー中のカフェインがパーキンソン病の予防に有効性の高い成分であると示唆されている。さらに、コーヒー摂取による神経保護作用の機序について明確になっているわけではないが、コーヒー摂取が脳卒中リスクを低減する可能性が示されている。コーヒーに含まれるカフェインは、アデノシンA2A受容体に対するアンタゴニストとして作用することは知られているが、コーヒー中の他の成分が脳血管系、脳神経細胞、炎症などに作用している可能性もあり、今後の検討結果が待たれる。
著者
栗原 久
出版者
信州大学教育学部
雑誌
信州大学教育学部紀要 (ISSN:03737381)
巻号頁・発行日
no.112, pp.13-23, 2004-08

信州大学教育学部紀要 112:13-23(2004)
著者
栗原 久
出版者
東京福祉大学・大学院
雑誌
東京福祉大学・大学院紀要 = Bulletin of Tokyo University and Graduate School of Social Welfare (ISSN:18837565)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.155-167, 2014-03

赤城山は群馬県(上毛野国:かみつけのくに)を代表する山であり、古くから信仰の対象であった。そのため、赤城山にまつわる伝説が数多くある。伝説の中には根拠が定かでないものも含まれているが、地域に根ざした何らかの理由を秘めている可能性がある。本論文で取り上げた伝説は、赤城山の神、龍神・大蛇と水、地名、地形、気象、および下毛野国(栃木県)、常陸国(茨城県)、上総国(千葉県)や会津国(福島県西部)といった他地域との連携・争いなどである。これらの伝説は、古代(古墳時代)から近世(江戸時代)の長年にわたる、赤城山麓の人々の生活や歴史上の出来事に由来しているものと考えられる。
著者
栗原 久
出版者
東京福祉大学・大学院
雑誌
東京福祉大学・大学院紀要 = Bulletin of Tokyo University and Graduate School of Social Welfare (ISSN:18837565)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.3-13, 2017-10

妊娠初期に起こる悪心、嘔吐、食欲不振はコーヒー/カフェイン摂取の減少につながる。従って、妊娠が気づいた妊婦は、カフェイン摂取量の増加を起こす可能性は低い。これまでの報告を総括すると、1日当たり200mg以下のカフェイン摂取は、生殖や出産前症状を誘発・悪化するとの証拠は見当たらない。従って、妊娠中のカフェイン摂取量は、この範囲内に留めるべきである。一方、小児では、1日当たり5 mg/kg以上で不安や離脱症状のリスクが高まる可能性がある。
著者
栗原 久
出版者
朝日新聞社
雑誌
科学朝日 (ISSN:03684741)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.p30-34, 1987-11
著者
守 巧 栗原 久
出版者
こども教育宝仙大学
雑誌
こども教育宝仙大学紀要 = Bulletin of Hosen College of Childhood Education
巻号頁・発行日
vol.11, pp.43-51, 2020-03-04

In this study, smoking and the health conditions were assessed in the first- and second-grade students in B University in A prefecture. The smoking rate of this research subjects was higher, and the levels of health conditions, such as respiratory symptoms, skin and eye, impulsiveness, lie scale and schizophrenics, were lower as compared to the standard levels. In addition, the percentiles of many symptom were comparatively higher in the smoking groups than the non-smoking groups. These results suggest that smoking is not only harmful for the various items of health, but also related to the mental activities characterized with comparatively lower self- appealing and flexibility of thinking, and higher impulsiveness. It is also considered that an increase in the mental symptoms may be related to the start of smoking at juvenile age.