著者
佐藤 公則 梅野 博仁 千年 俊一 中島 格
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.132-140, 2011 (Released:2011-04-28)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

正常成人では睡眠中の嚥下の頻度は減少していた.その頻度は睡眠stageに関係しており,睡眠が深くなるに従い嚥下の頻度が低くなっていた.また長時間嚥下が行われていなかった.このことから睡眠中は咽頭食道のクリアランスが低下していることが示唆された.しかし,若年成人では嚥下後吸気で再開する頻度は低く,このことは気道防御に有利であると考えられた.閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者でも睡眠中の嚥下の頻度は減少していたが,88%の嚥下はrespiratory electroencephalographic arousalとともに起こることが特徴であった.70%の嚥下は嚥下後,呼吸は吸気で再開しており嚥下に関連した呼吸のパターンは特異的であった.CPAP療法は睡眠時の無呼吸・低呼吸と睡眠構築を改善させるだけではなく,睡眠中の嚥下と嚥下に関連した呼吸動態も改善させていた.
著者
佐藤 公則 栗田 卓 佐藤 公宣 千年 俊一 梅野 博仁
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.301-309, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
55

1)ヒト声帯の黄斑は,声帯振動のために必須である声帯粘膜の細胞外マトリックスの代謝に関与し,ヒト固有の声帯粘膜の層構造を維持していることが示唆されている.2)ヒト声帯の黄斑は,ヒト声帯の成長・発達・老化に関与していることが示唆されている.3)ヒト声帯の黄斑には,声帯の線維芽細胞とは異なった間質細胞,すなわち細胞突起をもち,ビタミンAを貯蔵した脂肪滴を細胞質にもつ声帯星細胞が密に分布している.4)ヒト声帯黄斑は幹細胞ニッチであり,黄斑内の細胞は組織幹細胞であることが示唆されている.5)ヒト声帯の細胞と細胞外マトリックスの研究は,喉頭,特に声帯の生理学・病理学・病態生理学の基礎的研究になるばかりでなく,組織工学,再生医療の基礎的研究として臨床に寄与する.
著者
栗田 卓 千年 俊一 佐藤 公則 坂崎 友 深堀 光緒子 末吉 慎太郎 梅野 博仁 中島 格
出版者
THE JAPAN LARYNGOLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.69-74, 2014-12-01 (Released:2015-07-22)
参考文献数
13
被引用文献数
3

Human papilloma virus (HPV) types 6 and 11 are thought to infect the basal cells of the squamous epithelium. These infections cause laryngeal papillomatosis and condyloma acuminatum in the uterine cervix, which manifest the same pathological phenotype. The site of predilection is the junction of the stratified squamous epithelium and simple columnar epithelium (SCJ), however, the morphological characteristics of the epithelial junction in the larynx differ from that in the uterine cervix. Therefore, these observations suggest that the developmental mechanism of underlying the onset of laryngeal papilloma differs from that of condyloma acuminatum. The newborn larynx, which is infected by HPV in case of juvenile-onset laryngeal papillomatosis, has no SCJ in the supraglottic regions. This suggests that HPV infects the laryngeal epithelium with or without SCJ. Moreover, the immaturity of the epithelia in the newborn larynx allows HPV to easily infect the tissue.In investigations of adult larynges, the basal cells of the squamous epithelium and stratified ciliated epithelium in the larynx express p63, an epithelial stem cell marker. Integrin-α6 is, the receptor for HPV, is positive in the stratified ciliated epithelium and lower half of the squamous epithelium. These findings indicate that HPV is able to infect the squamous epithelium and stratified ciliated epithelium and that both infection with HPV in epithelial stem cells and stratification of epithelial cell layer are necessary for the development of laryngeal papilloma.
著者
栗田 卓 梅野 博仁 千年 俊一 上田 祥久 三橋 亮太 中島 格
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.192-200, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
43
被引用文献数
7

喉頭乳頭腫への望ましい臨床的対応を明確にすることを目的とし, 喉頭乳頭腫60例の統計学的検討を行った. 各症例は発症年齢で若年発症型と成人発症型に, 発生様式で単発型と多発型に分類した. 性別は成人発症型で有意に男性が多かった. 発生様式は若年発症型では多発型, 成人発症型では単発型の症例が有意に多かった. 乳頭腫が最も高頻度に発生していた部位は声帯であった. 乳頭腫の再発率に関して発症年齢で比較すると, 全症例の解析では, 成人発症型に比して若年発症型の再発率が有意に高かった. しかし, 発生様式別の層別解析では, 単発型と多発型ともに若年発症型と成人発症型の再発率に有意差や傾向を認めなかった. 再発率に関して発生様式で比較すると, 全症例の解析では単発型に比して多発型の再発率が有意に高かった. 発症年齢別の層別解析では, 若年発症型では多発型は単発型に比して再発率が高い傾向があり, 成人発症型では, 多発型は単発型に比して再発率が有意に高かった. 治療は CO2 レーザー蒸散術が最も多く行われていた. 補助療法としてインターフェロンや cidofovir の局注が行われていた. 乳頭腫の悪性化例は3例であった. 乳頭腫への初治療から悪性化までの期間は3~40年と幅があり, 発症から悪性化までの期間に傾向はみられなかった. 今回の検討から, 発症年齢にかかわらず多発型の症例では再発に留意すべきと考えられた. 再発や悪性化の観点から喉頭乳頭腫に対しては長期間の経過観察が望ましい.
著者
梅野 博仁 宮嶋 義巳 森 一功 中島 格
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.1442-1449, 1997-12-20
参考文献数
20
被引用文献数
16 9

1971年1月から1996年7月までの26年間に久留米大学耳鼻咽喉科で治療した腺様嚢胞癌54症例 (一次例44例, 二次例10例) の臨床統計を行った. 原発部位は口腔13例, 口唇1例, 鼻腔11例, 副鼻腔3例, 顎下腺8例, 耳下腺5例, 上咽頭3例, 中咽頭3例, 外耳道3例, その他4例 (眼窩2例, 涙嚢1例, 気管1例) であった. 性差は男性19例, 女性35例と女性に多く, 平均年齢は男性60.8歳, 女性57.5歳であった. 全症例の5年生存率は72%, 10年生存率53%, 15年生存率46%であり, 諸家らの報告と大差はなく, 原発部位別の治療成績に有意差はみられなかった. 病悩期間は1日から13年4カ月までであり, 平均病悩期間は1年5カ月であった. 病悩期間が長い程, 生存率が低下した. 腺様嚢胞癌に対してSzantoらの組織grade分類を行うと諸家らの報告と同様にsolid patternを多く含むgradeでは転移を来しやすく, 予後も不良であった.<BR>死因の解析では, 原病死17症例中遠隔死が10例と最も多く, その10例中8例が肺転移であった. 原発巣死は5例で, 原発巣死全例が癌の頭蓋内浸潤で死亡していた. 頸部リンパ節転移に対しては頸部郭清術で十分制御可能であり, 頸部リンパ節死した症例はなかった. また, 腺様嚢胞癌は従来, 放射線感受性が低いといわれていたが, 術後に放射線療法を行った群が手術単独群より有意に良好な生存率が得られた.
著者
梅野 博仁 濱川 幸世 権藤 久次郎 白水 英貴 吉田 義一 中島 格
出版者
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.285-288, 2002 (Released:2007-10-25)
参考文献数
5
被引用文献数
5 3

成人10名にカプサイシンを10-6 mol/mlに溶解させた蒸留水を口腔内に噴霧し,噴霧前と噴霧後の唾液中に含まれるサブスタンスP(以下SPと省略)の濃度を測定した。同様に,成人10名にカプサイシンを1枚につき6×10-8 mol程度含有した市販のガムを使用して,ガムを噛む前と噛んだ後の唾液中SPの濃度も測定した。その結果,カプサイシン投与後,ガムを噛んだ後,ともに有意な唾液中のSPの上昇を認めた。同様に筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病,眼咽頭型筋ジストロフィー症,ギランバレー症候群,脊髄小脳変性症患者でも,カプサイシン投与でSPが有意に上昇した。したがって,カプサイシン入りガムを噛むことで咀嚼・嚥下の訓練になり,さらに唾液中のSPが上昇することで嚥下反射が起こりやすくなることが期待できる。嚥下訓練にカプサイシン入りガムを用いるのは有用と考えられた。
著者
梅野 博仁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.9, pp.1193-1196, 2017-09-20 (Released:2017-10-03)
参考文献数
7
被引用文献数
2
著者
梅野 博仁 千年 俊一 前田 明輝 上田 祥久 松田 洋一 栗田 卓 末吉 慎太郎 中島 格
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.95-102, 2010-10-30 (Released:2010-12-10)
参考文献数
15
被引用文献数
4

喉頭外傷新鮮症例56例の検討を行った。医原性喉頭内損傷症例は除外した。性別は男性39例,女性17例,年齢は6歳から77歳までで,中央値は30.5歳であった。喉頭外傷の原因はスポーツ事故15例,交通事故13例,過失11例,自殺企図9例,労働災害7例,喧嘩1例であった。新鮮症例の内訳は開放性損傷8例,鈍的損傷44例,化学熱傷3例,熱傷1例であった。鈍的損傷についてはTroneらの重症度分類の問題点を挙げ,治療指針となる新しい重症度分類を提案した。
著者
森 一功 梅野 博仁
出版者
日本喉頭科学会
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.78-82, 2002-12-01 (Released:2012-09-24)
参考文献数
10

Various controversial problems have been pointed out for the treatment modality for patients with cicatricious stenosis of the larynx as follows : 1) successive change of the autografted mucosa and/or skin, 2) timing of complete closure of the tracheostoma, 3) influence of puberty upon the air-way, and 4) influence of puberty upon vocal functions. Thirty-six patients more than 15-year-old and 23 patienets less than 15-year-old, both with cicatricious stenosis of the larynx, were retrospectively reviewed in this study. As a result, following conclusions were obtained.1) Autografted mucosa/skin can be alive accompanying prominent cicatricious change below the grafted mucosa/skin, suggesting this histopathological change may bring re-stenosis of the air-way. 2) The trachestoma should be closed preferably after puberty, especially for patients undergoing posterior cricoid split (PCS) maneuver. For patients without PCS complete closure in childhood may cause no serious problem. 3) Patients treated their stenosis in childhood may have no restenosis of the air-way even in adulthood. 4) Patient with laryngeal stenosis may experience voice change at puberty as like ordinary children.