- 著者
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中島 格
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.117, no.11, pp.1367-1375, 2014-11-20 (Released:2014-12-19)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
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喉頭の機能は大きく発声・呼吸・嚥下・下気道保護に分けることができる. この中で, 下気道保護の役割としては, 誤嚥や異物侵入に対して, 反射的に声門を閉鎖する喉頭反射が知られる. 生体の免疫現象は, 液性免疫 (免疫グロブリン) や細胞性免疫が知られるが, 気道や消化管には粘膜で発現する局所免疫が存在する. 局所粘膜免疫の特徴は, 1) 微生物などの外来抗原が体内へ侵入するのを粘膜局所で阻止する, 2) 局所で産生された免疫グロブリン, 主に分泌型 IgA が中心的役割を担っている, 等である. 著者は下気道保護としての「喉頭の粘膜局所免疫」に注目し, 喉頭でも粘膜内で分泌型 IgA が活発に産生され, 特に声帯と仮声帯に挟まれた喉頭室を中心に, 局所免疫が活発に作動することを明らかにした. 一方, 喉頭癌の最大の危険因子である喫煙の影響を検討する目的で, 摘出喉頭粘膜の線毛上皮から扁平上皮化生への変化を画像解析装置で解析した. 上皮化生の程度は, 刺激に暴露する前庭部, 仮声帯に著しく, 喫煙者ほど上皮化生率が高くなっていた. 本来分泌上皮で覆われる喉頭室粘膜でも, 喫煙者では部分的に上皮化生部分が観察された. 移行部を増殖因子などによって免疫組織学的に観察すると, 粘膜が肥厚した部分では基底部に増殖活性を有する細胞が増え, 細胞配列の乱れ, 異型細胞さらには上皮内がんの発生を予想させた. したがって, 危険度の高さから言えば喉頭癌こそ, 喫煙者に特異的ながんといえる. 喉頭癌の治療は, 早期がんなら放射線やレーザー, 進行がんでは手術と放射線治療の組み合わせが行われてきた. その結果, 治療成績は頭頸部癌の中でも極めて高く,「喉頭癌は治るがんの代表」と言っても過言ではない. 今後の課題は, 音声機能を保存した治療の確立で, 動注化学療法の導入や, 手術療法の工夫がなされ, 今後さらに発展することが期待されている.