著者
安川 洵 槇原 靖 八児 正次 村形 駿樹 亀田 佳一 細井 利憲 久保 雅洋 八木 康史
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.9, pp.445-456, 2023-09-01

近年,我が国では脳卒中患者が増加しており,その後遺症の一つに片麻痺症状による歩行障害が挙げられる.日常生活に支障のない歩行レベルであるかの判断指標の一つにバランス能力指標Berg Balance Scale (BBS)がある.ただし約20分の評価を専門家が行い,評価者の主観が影響する点が課題であった.本研究では,属人性を排した効率的なバランス能力評価実現のために,対象者の歩行計測のみで簡便かつ自動的にBBSを推定するシステムを開発した.まず1台のRGBDセンサを用いて対象者の歩行を撮影し,見守り者がいる場合は,対象者と介助者の領域を分離する.次に歩幅,つま先向き,立脚時間,歩行速度など計23種類の特徴量を抽出する.最後にLasso回帰モデルを用いてBBSを推定する.実験では94件の脳卒中患者の歩行動画と専門家が付与したBBSのデータセットを用いた.BBSの推定は,平均絶対誤差4.97 ± 4.31点で,従来手法より誤差が小さく,臨床的に許容可能な誤差範囲内であることを確認した.処理時間は見守り無しパタン(シーケンス長515 ± 504 frame)で47 ± 52 s,見守り有りパタン(764 ± 465 frame)で62 ± 32 sであった.従来の評価時間を短縮し,提案手法の有用性を示した.
著者
槇原 靖 村松 大吾 八木 康史
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.318-328, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
48
被引用文献数
4

人の歩き方(歩容)には,年齢・性別・感情・健康状態といった様々な情報が含まれている.中でも,人の歩き方の個性に基づいて個人を認証する歩容認証が注目を集めている.歩容認証は,ほかのバイオメトリクスとは異なり,カメラから遠く離れた人物の無意識の歩行に対しても適用可能であるため,科学捜査などへの応用が期待される.本稿では,歩容認証の基本的な特徴表現などを紹介するとともに,近年の深層学習を取り入れた手法も紹介する.更に,歩容認証手法の科学捜査への応用事例についても紹介し,最後に,今後の歩行認証技術の展望を述べる.
著者
廖 若辰 守脇 幸佑 槇原 靖 村松 大吾 武村 紀子 八木 康史
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:21888701)
巻号頁・発行日
vol.2019-CVIM-218, no.17, pp.1-6, 2019-08-28

体組成は健康状況を把握するための重要な指標である.体脂肪率や体水分率,筋肉量などを把握することにより,肥満や生活習慣病の予防や改善が可能になり,現代社会における健康維持のためにその必要が増しつつある.市販の体組成計の多くは,生体電気インピーダンス分析法を用いるものが多く,正確な結果を出せる一方,設備が高価という問題点がある.また一人ずつしか計測できないため,多人数を効率よく計測するには不向きである.そこで,本研究では,多人数を効率よく計測するための,歩行映像解析による体組成推定を試みる.具体的には,歩行映像から抽出するシルエットに基づく特徴表現である歩容エネルギー画像 (Gait energy image, GEI) を入力,各体組成の値を出力とする畳み込みニューラルネットワーク (Convolutional neural network,CNN) を構成し,被験者の歩行映像から抽出した GEI と市販の体組成計で計測した体組成の値の組を学習データとして,ネットワークパラメタを学習する.ここで,体組成を計測できる被験者数には限りがあることから,CNN を適切に学習することが困難となる.そこで,まず,大規模歩行映像データベースから抽出した GEI を入力,同データベースから抽出可能な,体組成と関連性のありそうな歩容個性 (腕振りの大きさや歩幅) を出力とする CNN を事前学習する.次に,事前学習されたパラメタを持つ中間層までのネットワークに対して,いくかの層を追加した,即ち,構造的に成長させたネットワークの出力に体組成値を設定し,ネットワークのファインチューニングを行うことで,限られた体組成の学習データからでも効果的に学習可能なことを示す.実験では,体組成の学習データのみを用いた,サポートベクター回帰や CNN による推定手法と比較して,提案手法が高い精度を得られることを確認した.
著者
岩間晴之 村松大吾 槇原靖 八木康史
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.3, pp.1-10, 2013-03-07

近年,歩容に基づく人物認証技術の犯罪捜査応用が注目を集め,実際に活用されはじめている.監視カメラ映像で観測された犯人の歩容特徴から対象人物を鑑定するためには,当該分野の専門的知識及びスキルが必要となるため,従来の犯罪捜査においては,歩容認証を専門とする研究者などの歩容の専門家にそれを依頼してきた.しかし,より迅速かつ効率的な犯罪捜査を行うためには,歩容の専門家ではない犯罪捜査員が,手元で即時に人物鑑定結果を得ることが望ましい.そこで本研究では,そのような歩容の非専門家による使用を前提とした,世界初の歩容に基づく人物鑑定システムを構築した.本システムは,最先端の歩容認証技術が実装されているだけでなく,GUIに基づく簡易な操作インタフェースを備え,非専門家であっても,専門家と同様の人物鑑定結果を,簡易な操作手順によって得ることができるよう設計されている.実験では,一人の歩容の専門家及び10人の非専門家を被験者とし,本システムによる模擬鑑定実験を行った.結果として,非専門家が行った合計50組の鑑定のうち,46組の鑑定で専門家と同様の結果を得ることができ,本システムの有用性を確認することができた.
著者
万波 秀年 槇原 靖 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1373-1382, 2009-08-01
被引用文献数
6

本論文では歩容における性別・年齢の分類を決定し,その分類に現れる歩容特徴の解析を行う.まず全25台のカメラからなる多視点同期歩容撮影システムを構築し,広い年齢層の被験者の歩容を撮影することで大規模歩容データベースを構築した.性別,年齢それぞれに関して識別実験を行い,その結果に基づき,性別・年齢識別に適した分類として,子供,成人男性,成人女性,高齢者という四つのクラスを求めた.それらのクラス,及び特定の2クラスに対して,観測方向による識別性能への影響を実験を通して確認した.また,各観測方向においてクラスに特有な特徴がどの部位に現れるかを解析した.結果として,コンピュータビジョンの観点から次のような知見が得られた.(1)クラスを象徴する歩容特徴はクラスによって異なり,またそれがよく観測できる方向も異なる.(2)そのため,識別するクラスによっては,真横といった典型的に用いられる観測方向より効果的な観測方向が存在する.
著者
森島 繁生 八木 康史 中村 哲 伊勢 史郎 向川 康博 槇原 靖 間下 以大 近藤 一晃 榎本 成悟 川本 真一 四倉 達夫 池田 雄介 前島 謙宣 久保 尋之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.250-268, 2011-03-01

映像コンテンツの全く新しい実現形態として,観客自身が映画等の登場人物となり,時には友人や家族と一緒にこの作品を鑑賞することによって,自身がストーリーへ深く没入し,かつてない感動を覚えたり,時にはヒロイズムに浸ることを実現可能とする技術「ダイブイントゥザムービー」について本稿で解説する.この実現には,観客に全く負担をかけることなく本人そっくりの個性を有する登場人物を自動生成する技術と,自ら映像中のストーリーに参加しているという感覚を満足するためのキャラクタ合成のクオリティ,映像シーンの環境に没入していると錯覚させる高品質な映像・音響再現技術及びその収録技術が,観客の感動の強さを決定する重要な要素となる.2005年の愛・地球博にて実証実験を行った「フユーチャーキャスト」に端を発するこの技術は,ハードウェアの進歩と2007年にスタートした文部科学省の支援による科学技術振興調整費プロジェクトの実施によって,格段の進歩を遂げた.その結果,様々なバリエーションの観客の個性を全自動・短時間でストレスなくモデル化することが可能となり,また作品の中でリアルタイム合成されるキャラクタの顔と全身,声に各入の個性を忠実に反映することが可能となった.また,同時に役者が感じた音場・視点で1人称的にコンテンツへの没入感を体感することを可能にするシステムを同時に実現した.
著者
杉浦 一成 槇原 靖 八木 康史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.42, pp.187-194, 2007-05-15
被引用文献数
2

本研究では、全方位カメラから得られる複数方向の歩容画像を用いた個人認証手法を提案する。最初に背景差分により全方位画像列からシルエットを抽出する。それをパノラマ展開し、時空間の歩容シルエットボリューム(GSV)を得る。次に GSV から算出した歩行周期に基づいてフーリエ解析を行い、周波数領域特徴を抽出する。また全方位カメラを用いることによる観測方向の変化を利用して、複数の基準方向を設定し、各基準方向と歩行周期を基に複数方向の特徴を抽出する。認証時には、入力と辞書シーケンスに対する同一方向同士の特徴間距離を算出し、それらを統合して照合を行う。最後に15人の被験者の5方向を含むシーケンスに対して個人認証実験を行い、本手法の有効性を確認した。We propose a method of gait identification based on multi-view gait images using an omnidirectional camera. We first transform omnidirectional silhouette images into panoramic ones and obtain a spatio-temporal gait silhouette volume (GSV). Next, we extract frequency-domain features by Fourier analysis based on gait periods estimated by autocorrelation of the GSVs. Because the omnidirectional camera provides a change of observation views, multi-view features can be extracted from parts of GSV corresponding to basis views. In an identification phase, distance between a probe and a gallery feature of the same view is calculated, and then these for all views are integrated for matching. Experiments of gait identification including 15 subjects from 5 views demonstrate the effectiveness of the proposed method.