著者
山澤 一誠 八木 康史 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.698-707, 1996-05-25
被引用文献数
200

ロボットをナビゲーションするには, ロボットの周囲の環境がどのような状況にあるかをセンサ情報から知る必要がある. 本論文では, 双曲面ミラーを用いた全方位視覚系(HyperOmni Vision)を提案し, その特徴と, HyperOmni Visionを用いた視覚誘導方法について述べる. 従来の全方位視覚系では, 光学系の特性が中心射影でなかったため独自の視覚情報の獲得方法が必要だった. しかし双曲面ミラーを用いた全方位視覚系は, 全方位の視野をもち, かつ中心射影の光学的特性ももつため, 一般のカメラで直接とった画像などに変換できる. そのため処理に応じた画像に変換でき, 独自の手法だけでなく従来の画像処理技術も利用できる利点がある. ここではHyperOmni Visionの構成, 特徴と光学系の特性, またHyperOmni Visionを用いた移動ロボットシステムとそのロボットのテンプレートマッチングによる移動量推定, 障害物検出について報告する.
著者
佐藤 僚太 波部 斉 満上 育久 佐竹 聡 鷲見 和彦 八木 康史
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.920-931, 2016-12-15 (Released:2017-01-20)
参考文献数
15
被引用文献数
4

公共空間内を往来する歩行者の属性や行動目的などを推定する技術は,施設の利用状況を自動的に観測し,各人物に最適な情報提供を行う情報環境の構築に貢献できる.その際には,どの人物同士が共に行動しているのかを推定し,歩行者をグループとして扱う技術が求められる.歩行者のグループを検出するには,2人の歩行者間の歩行軌跡や注意の向きの関係を手がかりとする手法が多く用いられる.これらの手法は,観測データ全体から特徴量を抽出して識別しており,歩行者グループは常にグループらしい動きをすること前提としている.しかし,実空間での歩行者グループは各個人の興味の対象の違いや障害物を回避する道筋の違いなどから常にグループらしい行動をする訳ではない.これによって,これまでの手法ではグループ検出が困難となる事例が見られる.本研究では,歩行データの時系列分割とマルチプル・インスタンス・ラーニング(MIL)によって,行動中の短時間に存在するグループらしい振る舞いを検出する手法を提案する.提案手法では,歩行データを時系列分割し,各時間区間の特徴量をMILを用いて別々に識別する.MILは教師あり学習の一種であり,複数の要素データの集合であるバッグ内に,少なくとも1つの正の要素データがあるかどうかを識別する.上記の時系列分割によって,時間区間の一部にグループらしい特徴があればそれを検出することができる.実験では,グループ動作を模擬したデータと,実際のショッピングモールで取得したデータを利用し,提案手法の有効性を確認した.
著者
角野 皓平 向川 康博 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.1930-1937, 2007-08-01
被引用文献数
4

物体表面の反射特性を表す双方向反射率分布関数を密に計測するためには,様々な角度から照明した場合の反射光を様々な角度から計測する必要があるため,膨大な時間が必要であった.本研究では,楕円鏡とプロジェクタを組み合わせることで,高速に反射率を計測する手法を提案する.楕円鏡の一方の焦点に試料を配置し,もう一方の焦点にカメラとプロジェクタをハーフミラーを用いて配置する.これにより,投影画像を変えるだけで光源方向を自由に制御できる.また,試料のあらゆる角度への反射光は,カメラで一度に計測できるため,高速な反射率計測が可能となる.実際に計測装置を試作し,異方性反射特性をもつベルベットとサテンの反射率を計測したところ,光源のサンプリング間隔をそれぞれ1度とした場合でも,約50分で計測できた.
著者
岩井 儀雄 八木 康史 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.44-55, 1997-01-25
参考文献数
16
被引用文献数
58

単眼動画像からの構造・運動推定問題は剛体で単純な形状であれば可能であるが, 関節物体などは解析的に問題を解くのが困難で形状モデルを用いた方法がよく研究されている.特に, 関節物体の一つである手の運動推定は, 手話理解や人工現実感のような応用が期待できる. 手の動作を認識する研究の中で, 手話理解のようなカのフィードバックを必要としないインタフェースでは, 手に何もつけない状態の方が有効である. 本研究では非接触で手の3次元運動と位置を復元する方法を提案する. 非接触の入力装置としては単眼のカメラを用いて, 手形状モデルを生成し, 時系列画像から手の特徴抽出および対応付けを行う. 対応付けの結果より得られた特徴点の軌跡から手の3次元運動を求め, その後, 獲得した手形状モデルを用いてモデルマッチングの手法で指の位置を推定する.
著者
川崎 洋 清水 雅夫 高松 淳 田中 正行 中澤 篤志 延原 章平 古川 亮 労 世紅 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.328, pp.145-152, 2008-11-20

IEEE Computer Society主催,Computer Vision and Pattern Recognition会議が,6月22日〜28日,米国アラスカ州アンカレッジにおいて開催された.その概要を参加者9名が分担して報告する.
著者
安川 洵 槇原 靖 八児 正次 村形 駿樹 亀田 佳一 細井 利憲 久保 雅洋 八木 康史
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.9, pp.445-456, 2023-09-01

近年,我が国では脳卒中患者が増加しており,その後遺症の一つに片麻痺症状による歩行障害が挙げられる.日常生活に支障のない歩行レベルであるかの判断指標の一つにバランス能力指標Berg Balance Scale (BBS)がある.ただし約20分の評価を専門家が行い,評価者の主観が影響する点が課題であった.本研究では,属人性を排した効率的なバランス能力評価実現のために,対象者の歩行計測のみで簡便かつ自動的にBBSを推定するシステムを開発した.まず1台のRGBDセンサを用いて対象者の歩行を撮影し,見守り者がいる場合は,対象者と介助者の領域を分離する.次に歩幅,つま先向き,立脚時間,歩行速度など計23種類の特徴量を抽出する.最後にLasso回帰モデルを用いてBBSを推定する.実験では94件の脳卒中患者の歩行動画と専門家が付与したBBSのデータセットを用いた.BBSの推定は,平均絶対誤差4.97 ± 4.31点で,従来手法より誤差が小さく,臨床的に許容可能な誤差範囲内であることを確認した.処理時間は見守り無しパタン(シーケンス長515 ± 504 frame)で47 ± 52 s,見守り有りパタン(764 ± 465 frame)で62 ± 32 sであった.従来の評価時間を短縮し,提案手法の有用性を示した.
著者
山野 広大 村松 大吾 武村 紀子 八木 康史
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.12, pp.146-155, 2022-12-01

本論文では人物の歩行時の特徴(歩容特徴)を用いた年齢推定手法を提案する.歩容特徴に基づく年齢推定においては,自由に歩行している人物の歩容が対象となるため,撮影角度の違いに対する頑健性が求められる.複数の撮影角度からの歩容特徴を学習に利用することで,頑健性を強めることができるが,学習に用いられる歩容特徴の撮影角度と一致しない撮影角度の歩行人物に対しては,推定精度は大幅に劣化する.そこで,本論文では,学習に含まれない撮影角度の歩容特徴の推定精度を改善する手法として,撮影角度抑制学習を用いた年齢推定を提案する.撮影角度抑制学習とは,撮影角度の影響を抑制する副課題のもとで主課題の学習を行うものである.高精度な角度分類器を用いた制約項を考慮しつつ主課題用の特徴空間を構築することで撮影角度の影響を抑制する.提案手法は,歩容公開データベースを用いて,複数の設定で評価を行った.その結果,提案手法は,学習に用いられていない撮影角度の年齢推定において大幅な精度改善を実現した.
著者
槇原 靖 村松 大吾 八木 康史
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.318-328, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
48
被引用文献数
4

人の歩き方(歩容)には,年齢・性別・感情・健康状態といった様々な情報が含まれている.中でも,人の歩き方の個性に基づいて個人を認証する歩容認証が注目を集めている.歩容認証は,ほかのバイオメトリクスとは異なり,カメラから遠く離れた人物の無意識の歩行に対しても適用可能であるため,科学捜査などへの応用が期待される.本稿では,歩容認証の基本的な特徴表現などを紹介するとともに,近年の深層学習を取り入れた手法も紹介する.更に,歩容認証手法の科学捜査への応用事例についても紹介し,最後に,今後の歩行認証技術の展望を述べる.
著者
廖 若辰 守脇 幸佑 槇原 靖 村松 大吾 武村 紀子 八木 康史
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:21888701)
巻号頁・発行日
vol.2019-CVIM-218, no.17, pp.1-6, 2019-08-28

体組成は健康状況を把握するための重要な指標である.体脂肪率や体水分率,筋肉量などを把握することにより,肥満や生活習慣病の予防や改善が可能になり,現代社会における健康維持のためにその必要が増しつつある.市販の体組成計の多くは,生体電気インピーダンス分析法を用いるものが多く,正確な結果を出せる一方,設備が高価という問題点がある.また一人ずつしか計測できないため,多人数を効率よく計測するには不向きである.そこで,本研究では,多人数を効率よく計測するための,歩行映像解析による体組成推定を試みる.具体的には,歩行映像から抽出するシルエットに基づく特徴表現である歩容エネルギー画像 (Gait energy image, GEI) を入力,各体組成の値を出力とする畳み込みニューラルネットワーク (Convolutional neural network,CNN) を構成し,被験者の歩行映像から抽出した GEI と市販の体組成計で計測した体組成の値の組を学習データとして,ネットワークパラメタを学習する.ここで,体組成を計測できる被験者数には限りがあることから,CNN を適切に学習することが困難となる.そこで,まず,大規模歩行映像データベースから抽出した GEI を入力,同データベースから抽出可能な,体組成と関連性のありそうな歩容個性 (腕振りの大きさや歩幅) を出力とする CNN を事前学習する.次に,事前学習されたパラメタを持つ中間層までのネットワークに対して,いくかの層を追加した,即ち,構造的に成長させたネットワークの出力に体組成値を設定し,ネットワークのファインチューニングを行うことで,限られた体組成の学習データからでも効果的に学習可能なことを示す.実験では,体組成の学習データのみを用いた,サポートベクター回帰や CNN による推定手法と比較して,提案手法が高い精度を得られることを確認した.
著者
柳川 由紀子 越後 富夫 宮崎 祐太 武村 紀子 八木 康史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.C-I33_1-12, 2018-11-01 (Released:2018-11-01)
参考文献数
51

Tracking precisely of abnormalities in the gastrointestinal tract is useful for preparing sample image sequences on educational training for medical diagnose on endoscopy. While the gastrointestinal wall deforms continuously in an unpredictable manner, however, abnormalities without distinctive features make it difficult to track over continuous frames. To address this problem, the proposed method employs Convolutional neural networks (CNN) for tracking lesion area. Conventionally, CNN for tracking requires a large amount of sample data for preliminary learning. The state-of-arts tracking methods using CNN are premised on preliminary learning on data similar to target images given a large number of correct answer labels. On the other hand, the proposed method are not required preliminary learning using similar data. The image components in the marked region at the starting frame is similar to components at the only same position, but different between them depending on the degree of overlapped area. Furthermore, in the successive frame, the components in the previous region is similar to them in the identified area. Therefore, similarity can be learned in the previous frame, called it as an intra-frame training. This paper describes the method for tracking an abnormal region by using CNN based on training overlap rates between the abnormal region and local scanning one with the same size on the starting intra-frame. Furthermore, network parameters are transformed from training the similar regions on the continuous frame additionally. We demonstrate the efficiency of the proposed approach using eight common types of gastrointestinal abnormality.
著者
岩間晴之 村松大吾 槇原靖 八木康史
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.3, pp.1-10, 2013-03-07

近年,歩容に基づく人物認証技術の犯罪捜査応用が注目を集め,実際に活用されはじめている.監視カメラ映像で観測された犯人の歩容特徴から対象人物を鑑定するためには,当該分野の専門的知識及びスキルが必要となるため,従来の犯罪捜査においては,歩容認証を専門とする研究者などの歩容の専門家にそれを依頼してきた.しかし,より迅速かつ効率的な犯罪捜査を行うためには,歩容の専門家ではない犯罪捜査員が,手元で即時に人物鑑定結果を得ることが望ましい.そこで本研究では,そのような歩容の非専門家による使用を前提とした,世界初の歩容に基づく人物鑑定システムを構築した.本システムは,最先端の歩容認証技術が実装されているだけでなく,GUIに基づく簡易な操作インタフェースを備え,非専門家であっても,専門家と同様の人物鑑定結果を,簡易な操作手順によって得ることができるよう設計されている.実験では,一人の歩容の専門家及び10人の非専門家を被験者とし,本システムによる模擬鑑定実験を行った.結果として,非専門家が行った合計50組の鑑定のうち,46組の鑑定で専門家と同様の結果を得ることができ,本システムの有用性を確認することができた.
著者
奥村 仁 八木 康史 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.2263-2276, 1995-10-15
参考文献数
17
被引用文献数
5

人は道路などを歩く時、環境中のすべてのものに詳細な注意を払うのではなく、環境に対する自已位置推定や障害物の発見など歩行のために必要な情報を環境全体から大まかに把握する(大局視と呼ぶ)。一方、興昧ある物体(作業対象、障害物、道しるべ、近づいてくる物体等)に対しては、人は興味部分を注視し、その部分についての詳細な情報を収集する(局所視と呼ぶ)。人と同様に自律移動ロボットにおいても、目的地までの安全な誘導および目的地での作業など作業内容により、必要とされる観測情報の性質は異なる。本報告では、ロボットにとって必要とされる大局視と局所視との機能を持つ複合視覚センサMISS(Mu1tip1e Image Sensing System)を提案し、試作したプロトタイプの構成について報告する。さらに注視対象の発見からその物体の3次元情報獲得までの一連の処理を両視覚機能の情報を統合することで行う一方法について報告する。大局視では周囲360度を一度に観察できる全方位視覚センサを用い、得られる全方位画像とあらかじめ与えられた周囲環境のモデルとの照合を行い、注視すべき物体(作業対象、障害物等)を発見する。一方、局所視ではその物体を注視しながらいくつかの位置から観測し、注視物体の3次元形状を認識する。
著者
山添大丈 満上育久 八木康史
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2013-CVIM-188, no.15, pp.1-6, 2013-08-26

我々は,人の歩き方 (歩容) からその人の意図を推定することを目指し,研究を進めている.本稿では,歩き方からの意図推定手法の実現可能性について検討するため,人は,歩く様子を撮影した映像から,その人の意図を推定できるのかどうかを調査する.また,歩き方から意図を推定するにあたって,どういった部分に着目しているかについても分析を行う.3 種類の意図 (「ついていく」,「向かう」,「逃げる」) を含む映像列を用いて被験者実験を行い,a) 歩き方からの意図推定は可能,b) 約 70% 程度の正解率,c) 歩き方のうち,形状 (シルエット) やテクスチャが意図推定に重要,d) 頭部以外にも意図推定に有用な情報が含まれることが分かった.これらの結果は,我々の目指す,歩き方からの意図推定手法の実現可能性を示すものといえる.
著者
柳生 智彦 八木 康史 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.23, pp.1-7, 1994-03-10
被引用文献数
2

情報処理の対象は、数値情報から文字情報、さらに感性情報へと次第に人間的なものへと拡大してきた。感性情報は、デザインや芸術といった人間の高度な機能を支援したり、人とマシンとのインターフェイスを円滑にするための重要な情報である。そのため、コンピュータが感性情報を処理し理解できることは有意義なことである。本報告では、視覚情報から受ける暑そう、寒そうと言った温度印象(以下、画像温度印象度と呼ぶ)と周囲の温度変化との関係を解明し、画像温度印象度をモデル化することで人と同じような感性を計算機上で実現することを試みた。Described here are the results of analyzing and modeling visual impressions of human being. Generally, visual impressions of human being vary according to conditions of environment; the weather, the season, the time and so on. For instance, red and blue images are usually felt warm and cool, respectively. However, blue image is felt not so cold in the warm room. Therefore, for estimating themodel, we have to observe temporal changes of visual impressions. In this paper, we analyze and model the visual impressions of human being with temperature change. Parameters of model such as the temperature of a room and the differential of the temperature are estimated by a regression analysis method.
著者
谷内田 正彦 石黒 浩 八木 康史
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

平成6年度には双曲面鏡をテレビカメラの前に設置した新たな全方位視覚センサの試作,全方位視覚センサからの情報を用いた環境の大局モデルの作成,大局モデルを用いた移動経路の計画と更新について研究を行った.平成7年度には以下の研究を行った.[1]注視物体の発見:局所視で注視すべき物体を発見する方式の研究を行った。注視物体としては、(1)作業対象となる物体、(2)目的地に移動するときの経路の目印(道しるべ)となるもの、(3)通行を妨げる障害物(狭い通路)、(4)不審物、(5)衝突の危険のある移動体(人など)である。それぞれを発見する専門家モジュールを作成した。これらの専門家モジュールが常に大局モデルを監視し、候補が見つかれば局所視を起動して検証するという方式をとった。[2]局所視による注視物体の詳細な立体形状の認識:発見された注視物体の候補を局所視で注視しながら移動し、その詳細な立体形状を認識する研究を行った。注視すべき物体の3次元位置と形状は大局視により概略分かっているので、物体がカメラの中心にくるようにカメラを回転し、画面いっぱいに写るようにズ-ムを制御し、また鮮明な画像が得られるように焦点調節する。いくつかの視点から対象が観測されるので、三角測量の原理から対象の3次元形状を求めた。[3]統合視覚システムの試作と実環境での評価:大局視、局所視を一体化した視覚システムを作成した。また、大学の廊下や実験室などの実験境下で実験を行ない、良好な結果を得た。
著者
八木 康史 森島 繁生 金子 正秀 原島 博 谷内田 正彦 原 文雄 橋本 周司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.26, pp.65-72, 1998-03-19
被引用文献数
4

顔画像処理に対する様々な分野での関心の高まりや、工学分野における顔画像処理技術の研究成果の蓄積を背景にして、顔画像処理に関する共通ソフトウェアのツールの作成に向けた活動が進められている。この活動は、「感性擬人化エージェントのための顔情報処理システムの開発」(略称、アドバンストエージェントプロジェクト)と呼ばれ、情報処理振興技術協会(IPA)における独創的情報技術育成事業に関わる開発テーマの一つとして、平成7年度より3年間の計画で精力的に活動を行ってきた。擬人化エージェント技術はさまざまな技術要素から構成されているが、本プロジェクトでは、この中で特に『顔』の役割に着目し、顔画像の認識・合成に関わる顔情報処理システムの開発に主眼をおいた。これと同時に、本システムでは工学のみならず心理学や医学などの分野も含めた顔関連分野における共通の実験用ツールを広く提供することも目標としている。本稿では、平成10年3月で終了するこのプロジェクトの概要と、共通ソフトウェアの紹介を行う。The aim of Advanced Agent Project, supported by Information Technology Promotion Agency (IPA), is to develop the image processing environment for analysis and synthesis of human facial images. This report is mainly concerned with an introduction of an overview of the project and the developed environment for the facial image processing.
著者
羽下 哲司 鷲見 和彦 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.1104-1111, 2004-05-01
参考文献数
6
被引用文献数
23

木の揺れや,水面の乱反射等の背景変動のある屋外情景から,歩行者を検出する画像処理アルゴリズムを提案する.従来より,人のようにほぼ等速直線運動する対象は時空間的パス内での局所的な動きが強め合い,他の背景変動では弱め合うことに着目して,歩行者のみを検出する手法が提案されている.しかしこのような,時間平均した動きの強さを用いた判定では,移動対象の誤った関連付けや,高コントラスト領域の一時的な動きが平均値を引き上げ,誤報となるケースが見られる.本手法では,動きの特徴量として,時間平均した動きの強さに加えて,空間平均した動きの強さ,時間的な動きの一様性という特徴量を定義し,これら三つの特徴により構成される特徴空間で歩行者と他の背景変動とを識別する.実画像による評価で,提案手法は時間平均した動きの強さにのみ着目した従来手法に比べて誤検出率,未検出率ともに約1/3に低減できることを確認した.更に提案手法をオンラインで実現するシステム構築し,実環境で2週間にわたる評価試験を行った結果,失報率1%未満,誤報発生1日平均3件以下の性能を得ることができた.
著者
中澤 満 満上 育久 波部 斉 山添 大丈 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CNR, クラウドネットワークロボット (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.233, pp.15-20, 2012-10-04

本稿では環境中に複数台のKinectを配置することで,人物を含む広域な環境全体を三次元計測するシステムを提案する.環境全体を密に計測するためにはKinectを密な間隔に配置する必要がある一方,密に配置するとKinect相互の投影光の干渉によって計測データが欠損する.本システムでは,計測データが欠落しないようKinectの間隔を空けた配置においてもKinectの位置姿勢パラメータを高精度に推定する手法を適用することで,広域での三次元計測を可能としている.
著者
万波 秀年 槇原 靖 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.1373-1382, 2009-08-01
被引用文献数
6

本論文では歩容における性別・年齢の分類を決定し,その分類に現れる歩容特徴の解析を行う.まず全25台のカメラからなる多視点同期歩容撮影システムを構築し,広い年齢層の被験者の歩容を撮影することで大規模歩容データベースを構築した.性別,年齢それぞれに関して識別実験を行い,その結果に基づき,性別・年齢識別に適した分類として,子供,成人男性,成人女性,高齢者という四つのクラスを求めた.それらのクラス,及び特定の2クラスに対して,観測方向による識別性能への影響を実験を通して確認した.また,各観測方向においてクラスに特有な特徴がどの部位に現れるかを解析した.結果として,コンピュータビジョンの観点から次のような知見が得られた.(1)クラスを象徴する歩容特徴はクラスによって異なり,またそれがよく観測できる方向も異なる.(2)そのため,識別するクラスによっては,真横といった典型的に用いられる観測方向より効果的な観測方向が存在する.