著者
橋本 裕子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.433-438, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
11

こじれた痛みには原因がそれなりにある. 現状では患者の訴えは理解しがたいと受け止められており, 医療者にとっては負担になる場合がある. 理解されることを切実に望んでいるが上手に表現できず, 「過剰な説明」に追われ, 空回りしながら説明に疲れ果てる患者. 一方で静かな患者がいる. 社会生活の中で「常態化」, 「pacing」, 「持ちこたえ」, 「身体の作り変え」を行って, 痛みとの折り合いをつけ, さらには「知覚・認識の作り変え」まで行われているのではないかと筆者は考える. しかしそのことで疾患をよりわかりにくくし, 治療者にもみえなくする. 「沈黙の患者」となってしまうのだ. どの患者も痛みのバックグラウンドを理解され, 一つひとつ改善して, 快方に向かっていることを実感できれば, 希望をもてると思う. そんな試みが始まっていることは患者にとって心強い. こじれた痛みと悩みを患者の相談事例の中から紹介し, どのようにひもとけばよいのか, 一緒に考えていただければと思う.
著者
川久保 善智 大野 憲五 岡崎 健治 波田野 悠夏 竹下 直美 鈴木 敏彦 橋本 裕子
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

1907年、京都市三玄院で石田三成の墓が発掘され、頭蓋の石膏製のレプリカが作成されたが、その直後に紛失していた。このレプリカが2014年、約100年ぶりに再発見された。本研究では、このレプリカの表面形状をレーザースキャンで3Dデータ化し、破損箇所の補修や皮膚形状のシミュレーション等を行い、それらの結果を加味し、3Dプリンターで出力した頭蓋の復顔を行う。
著者
橋本 裕子
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-40, 2017-12-25 (Released:2019-04-19)
参考文献数
9

線維筋痛症患者を理解するのは難しいと言われることが多々あるが,その原因の一つは,医療現場では時間がないこと,もう一点は,医療者と患者の立場,目指すものの違いであろう.患者は一刻も早く「この痛みから解放されたい」「今度こそこの医師に分かって欲しい」と強く思っている.「治るのか,一生治らないのか」「特効薬はないのか」「誰なら治せるのか」などの性急な相談がたくさんある.患者の気持ちとしては当然だろう.耐え難い痛みと不安,早く職場に復帰しなければ失職する,長期間医療費を負担する困難,家族に対する遠慮.発症に至る経緯,話したいライフストーリーが積もり積もっている.これを紐解くにはかなりの時間と聞き出す側のゆとりが必要である.治療には長期間かかるが,じっくり取り組む環境をまず作らなければならない.患者が現実に直面する困難や不安,治りたいと苦悩する気持ちを日頃の電話相談から紹介したい.
著者
松村 博文 大貫 良夫 加藤 泰健 松本 亮三 丑野 毅 関 雄二 井口 欣也 橋本 裕子
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series D, Anthropology (ISSN:03853039)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-28, 1997
被引用文献数
2

Fourty seven human skeletons dating Formative Period (2,000 B. C. A. D 0) were recovered from the Kuntur Wasi, Loma Redonda, Huacaloma and Kolgitin sites in Cajamarca region, Peru. The artificial cranial deformities, which can be classiffied into the tabular erect type, were observed in nine skulls from these sites excepting the Kolgitin site. The dental caries was frequently found in the Kuntur Wasi people though less frequently than in the recent Peruvians. The facial morphology is not homogeneous, and the aristocratic features are found in some skulls from the Kuntur Wasi and Roma Ledonda sites. The sexual difference of estimated stature is great in the Kuntur Wasi and Huacaloma people. The squatting facets are present in all tali examined, suggesting that the inhabitants customarily sat in the squatting position or walked up and down rocky mountains.
著者
橋本 裕子
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.51-57, 2016-12-25 (Released:2019-04-19)
参考文献数
17

痛みに捉われずに生活することは可能だろうか.他人には理解されず,死ぬしかないと思うほど苦しんでいるのに,捉われない方法などあるのだろうか.こじれた痛みには原因がそれなりにある.しかし患者の訴えは医療者にも周囲の人にも理解しがたいと受け止められがちだ.理解されるために「過剰な説明」に追われ,空廻りしながら説明に疲れ果てる患者.一方で静かな患者がいる.社会生活の中で「常態化」「pacing」,「持ちこたえ」,「身体の作り変え」を行って,痛みとの折り合いを付け,更には「知覚・認識の作り変え」まで行われているのではないかと筆者は考える.黙々と耐える患者はどのように痛みと折り合っているのだろうか.どの患者も痛みのバックグラウンドを理解され,快方に向かう希望を持てる,そんな試みが始まっていることは患者にとって心強い.こじれた痛みと悩みを患者の相談事例の中から紹介し,痛みに捉われない方法を発見するにはどうしたらよいのか,一緒に考えていただければと思う.
著者
橋本 裕子 高田 真希 坂巻 たみ 久保 暢宏 村嶋 恵 大堀 菜摘子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.293-294, 2011
参考文献数
1

東北大震災により引き起こされた原子力発電所の放射線漏れに対し,関東地方でも子育て中の母親を中心に不安が蔓延した.連日報道される科学情報の量は非常に多いことから,このような漠とした不安や被災者に対する風評被害の原因は,科学情報の量ではなく,それらに対する理解の不足であると仮定し,理解の深まりが不安の解消あるいは軽減につながることを目的に大人向けイベントを開発・実施した.本イベントでは,放射線の基礎知識を理解するために,放射線の観察や計測の体験,不安や疑問の質問時間を設けるなど,体験性と双方向性を重視したプログラムとなるよう工夫した.約一ヶ月間で,関東地方の児童館を中心に15回開催し,311名の参加者があった.そのうち約200名のアンケートを解析した.その結果,参加者の中心は20〜30代の女性であり,印象に残った内容は,会場の放射線量の測定,簡易実験,基礎講義,Q&Aの順に続き,観察や体験の重要性が示唆された.また,本イベントにより,放射線の基礎理解が進み,不安はある程度軽減されたものの,子どもを対象とした同様のイベントと比較すると,軽減量は少なく,大人に対する科学教育において,変化や影響を促すためには,知識習得以外にも必要な要素があることが,課題として明らかになった.
著者
橋本 裕子
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.46-53, 2019-03-25 (Released:2019-05-09)
参考文献数
1

医療が進んでも永遠のテーマであり続ける身体と心の痛み.線維筋痛症患者の痛みはなぜ理解されにくいのか.患者であろうとなかろうと,人は身体を使っての表現者である.患者はまず自分が表現者であること,そのためにはまず自分について知らなければならない.これまで,「1:患者の本音」「2:患者と医療者とのミスコミュニケーション」「3:患者の実態」について調べてきた.それらを踏まえ,本稿では「患者力」の要諦を以下の5つに分け,それぞれの段階について考察したい.1:表現者としての自分について学ぶ力.大事な情報(事実・Fact)と物語は当事者が持っていること,複雑性,多様性である以上,正解はないということを理解する.2:自分の症状を医師に伝えるコミュニケーション能力.3:周囲の人に自分の状況を伝え,助けを求める力.4:自分の状況を判断して,自分で乗り越える力.セルフマネジメント力と成長モデル.5:持続的に自分の状況を把握し,実存的意義を見失わずに生きる力.レジリエンス.
著者
脇田 玲 常盤 拓司 橋本 裕子 竹内 恵 楠見 春美 佐倉 統
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.105, pp.23-28, 2006-09-29
被引用文献数
1

近年、オープンなカフェ空間で科学の話題についてコミュニケーションを行う科学カフェが注目を集めている。我々はインタラクションデザインの要素を科学カフェに用いることで、議論の円滑進行支援と、議論の定量的かつ定性的ロギング、及びコミュニティの活性化を実現するためのシステム mumbleを開発した。秋葉原と表参道の2つの地域において、mumbleを用いたサイエンスカフェを運用し、その有効性を検証した。Recently, science cafe where communications of the science topics are done at cafe spaces calls large attentions. We have developed a system, called "mumble", supporting smooth and natural communication in the cafe. We have used mumble in real science cafes and verified the effectiveness of the system.