著者
梅本 雅 大浦 裕二 山本 淳子 清野 誠喜 櫻井 清一
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

農産物直売所と地域スーパーにおける、それぞれ約20名の消費者モニターの視点軌跡、発話記録、記憶の状況等に関するデータの解析から、商品購買の際に被験者が記憶している属性数は限られており、特定の属性が基準を満たしているかどうかを確認する方式で商品選好が行われていることや、消費者は商品とPOPとを短時間にチェックしており、両者を交互に頻繁に確認しつつ商品選好を行っていることを確認した。また、29名の消費者モニターに対して視点軌跡把握計測装置を用いた実験を行った。具体的には、Cスーパーの野菜売り場などのスライドを15枚提示するとともに、店舗標準POPと試験POP(機能性やレシピなどの情報を付加したものをレタスやぶなしめじなど4種類の野菜に設置)、さらに、事前の被験者への話しかけ(スライド表示直前に「レタスがお買い得だそうです」や、「夕飯の献立を意識して店舗の様子を見てください」と説明)を行った場合と行わない場合の合計4つの試験区を設定し、被験者のPOP及び商品への注視時間を比較した。その結果、試験用POPでは、POP及び商品に対する注視時間が有意に多かったが、話しかけ有りと無しでは、注視時間の有意な差はなかった。但し、後者については、レタスについては効果がなかったが、ぶなしめじでは注視時間が有意に多かった。このことは、POP内容の工夫や、献立を考えるなど想起購買をもたらすような消費者への働きかけが、商品への消費者の注視を得る上で有効となることを示唆している。この点で、これらの分析結果は、産地マーケティングとして、消費者の注目を得やすいPOP内容や情報提供方法の構築に活用できると考えられる。
著者
嘎納斯 櫻井 清一
出版者
日本農業市場学会
雑誌
農業市場研究 (ISSN:1341934X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.51-58, 2014

中国内モンゴル自治区は総面積の70%強が草原で占められ、畜産業を主産業とする地域である。草原の大半は放牧に利用されている半自然草原だが、無計画な開墾、過度の放牧など不合理な生産活動によって、生態の悪化、砂漠化が深刻である。こうした状況の中で、中央政府は破壊された草原を取戻し、牧草地を保護し、牧畜民たちの生活水準を向上させるために、2001年より「生態移民」、「退耕還林還草」、2003年より「退牧還草」事業を実行している。2001年、内モンゴル自治区政府は「生態移民及び開発移民試行プロジェクト実施に関する意見」を公表した。これに基づき内モンゴル全地域において生態移民政策が全面的に実施され始めた。本論文の研究対象地域にある達茂旗政府は2008年1月から2,357万ムー(1ムー=6.67a)の牧草地をすべて封鎖し、牧畜民6,620世帯に対し10年間の全面禁牧政策を実施し始めた。移住の際、牧畜民は移住先を自由に選ぶことができるし、禁牧期間、牧畜民は生計維持と生活保護に関連して達茂旗政府から牧草地面積に基づく牧草地補助金支給などの優遇政策を受けることができる。本論文は対象地域の禁牧前後牧畜民の生活実態を収入、家畜頭数、経営費だけでなく、生活満足度や出稼ぎ意欲の視点も加えて分析をし、これに基づき生態移民政策の実施が牧畜民の生産、経営、生活面にもたらした影響、変化を明らかにし、今後の課題について検討する。
著者
立川 雅司 三上 直之 櫻井 清一 山口 富子 大山 利男 松尾 真紀子 高橋 祐一郎
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、食品安全におけるゼロ・トレランスを消費者に訴求する傾向がみられ(「不使用」「検出ゼロ」など)、消費者もこうした情報に敏感に反応する傾向がある。ゼロトレ対応は様々な問題を生じさせており、その実態解明と対応方策が求められている。本研究の目的は、こうした対応、言説に着目し、複数の事例を比較分析しつつ、その背景と影響、関係者間での合意基盤を明らかにすることである。本研究では、食品安全に関してゼロトレ対応の諸問題に関して、多角的に分析するとともに、政府による情報発信の課題を明らかにした。またゼロトレ志向の消費者の特徴を明らかにすると共に、模擬的討議を通じて合意基盤の可能性について検討した。
著者
櫻井 清一 霜浦 森平 新開 章司 大浦 裕二 藤田 武弘 市田 知子 横山 繁樹 久保 雄生 佐藤 和憲 高橋 克也
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

農村経済多角化に資する経済活動の運営方式と、地域レベルの経済活動を下支えする社会的成立基盤との関係性を分析し、以下の諸点を明らかにした。(1)農産物直売所が開設されている農村社会では、高齢出荷者の社会活動レベルの低下および出荷活動の停滞がみられる一方、後発参入者が広域的な社会ネットワークを広げ、出荷活動にも積極的である。(2)多角化活動の実践は地域社会における経済循環を形成している。(3)政府による農商工等連携事業において、農業部門の自主的な参画・連携がみられない。(4)アイルランドで活発な地域支援組織LAGはプロジェクト方式で自主的に運営され、地域の利害関係者間に新たな協働をもたらしている。(5)アメリカの消費者直売型農業にかつてみられたオールタナティブ性が変化し、対面型コミュニケーションが希薄化している。