著者
正井 博之 菅野 幸一 円谷 悦造 柴田 邦彦 蓑田 泰治
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.167-172, 1982-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

酢洗いによる魚の鮮度保持効果を科学的に立証することを目的とし, 魚体を酢洗いした場合のVBN, TMA-N, ヒスタミン, pH, 一般生菌数, 官能検査評点の変化を対照区のそれと比較した.その結果以下の知見が得られた.1) アジを用いた実験より, VBN, TMA-N, 一般生菌数, 官能検査評点の変化からみて, 酢洗いは, 魚の鮮度保持方法としてきわめて有効であることがわかった.2) アジを用いたすべての試験区のうちで, ドレスの酢洗い, 0℃保存区が最も鮮度保持効果が大きかった.3) pHの測定は, アジの腐敗の判定方法として適当ではなかった.4) サバを用いた実験より, 酢洗いはアレルギー様食中毒の原因物質であるヒスタミンの蓄積を著しく抑制することがわかった.これは醸造酢が魚体に付着したヒスタミン生成細菌類の増殖を抑制したためと推定された.
著者
清水 雅俊 奥野 恵子 島 尚司 正井 博之 三輪 陽一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.53-58, 2006-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
13

症例は41歳女性.20歳代後半で退職してから午前4時に入眠し,12時に起床するという生活が続いており,また,同時期からストレスや寒冷時に動悸を自覚していた.24時間心電図検査における心拍数の平均は97/分であり,覚醒時には大半が100/分以上で睡眠中には70台にまで減少するという日内変動を呈していた.さらに,強い動悸を自覚した際には心拍数200/分の発作性上室性頻拍が認められ,この出現と停止は突然であり,基本調律である洞性頻脈との間に連続した心拍数の増減は認められなかった.各種精査の結果,洞性頻脈は二次性のものではなく,起立試験で体位性頻脈も否定された.本症例はinappropriate sinus tachycardiaに発作性上室性頻拍の合併したものと診断された.電気生理学的検査において内因性心拍数は113/分と予測値95/分より増大しており,発作性上室性頻拍は左室側壁部の潜在性ケント束による房室回帰性頻拍と判明した.同束に対してはカテーテル心筋焼灼術がなされ,ベラパミル120mg/日の開始によって心拍数は平均90/分に減少(最低67,最大120)し,房室回帰性頻拍の再発は認められていない.明け方前に入眠して昼頃に起床するという概日リズム障害は睡眠相後退症候群と診断され,ビタミンB12投与が開始された,inappropriate sinus tachycardiaや睡眠相後退症候群は,社会適応に重大な障害を起こし得るものである.どちらも,比較的新しい疾患概念であるので,広く認識されて適切な治療がなされることが望まれる.
著者
円谷 悦造 柴田 邦彦 川村 吉也 正井 博之
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.387-392, 1981-07-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
7

細菌類,11菌株,酵母類,4菌株,カビ類,4菌株を用いて食酢の試験管内での殺菌力に及ぼす,糖類,糖アルコール類,無機塩類の効果を調べ,更に,合せ酢(甘酢,二杯酢,三杯酢)の殺菌力を比較した。その結果以下の知見が得られた。(1) 細菌類,酵母類,カビ類各々に対して異った結果が得られた。すなわち,食酢の殺菌力は,細菌類に対しては,ブドウ糖により弱められ,塩化ナトリウムにより強められ,酵母類に対しては,ブドウ糖及び塩化ナトリウムにより弱められ,カビ類に対しては,ブドウ糖により強められ,塩化ナトリウムにより弱められる傾向があった。(2) 一部の例外を除き,試験した糖類,糖類アルコールはブドウ糖と同様に,また,無機塩類は塩化ナトリウムと同様に作用した。(3) 合せ酢の細菌類に対する殺菌力も(1)の結果と一致した傾向を示し,その殺菌力は二杯酢,三杯酢(食酢),甘酢の順で弱まった。一方,醤油を使用した合せ酢では,pHの上昇が一要因となり,その殺菌力は(食酢),甘酢,二杯酢,三杯酢の順で弱まった。
著者
正井 博之
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.403-408, 1984-06-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
41

調味料として古い歴史をもつ食酢の生産に関与する醸造微生物について, 本稿では酢酸菌を中心に最近十年前後の研究の進歩に重点をおいて解説していただいた。 前号までの清酒に関する微生物学についての解説同様, 醸造微生物学の進歩を正しく理解する手掛りになるものである。
著者
藤野 安彦 伊藤 精亮 正井 博之 藤森 正宏
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.917-925, 1978-06-20
被引用文献数
5

1.Acetobacter Mから脂質成分を抽出し,ケイ酸カラムクロマトグラフィーとケイ酸薄層クロマトグラフィーで各脂質クラスを分離した。これらを薄層クロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィー,マススペクトロメトリーに供し,構造解析を行った。2.全脂質の構成脂肪酸は,約90%がシス-バクセン酸から成っていた。3.全脂質を薄層クロマトグラフィーに供すると,少なくとも15個のスポットが検出された。この主成分はリン脂質で,ホスファチジルコリンが最も多く,ついでホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールであった。4.この菌体脂質の著しい特徴として,比較的多量のテルペノイドおよびアミノ脂質が検出されたほか,少量のセラミドが検出された。5.テルペノイドの主成分は,ホーパン-22-オールとC_<35>-ペンタサイクリックテルペンアルコールであった。6.アミノ脂質の主要タイプは,オルニチルタウリン脂質3-(パルミトイル)-オキシパルミトイル-オルニチル-タウリン,オルニチン脂質3-(パルミトイル)-オキシパルミトイル-オルニチンおよびリゾオルニチン脂質3-オキシパルミトイル-オルニチンであった。7.遊離セラミドは単一の分子種N-2-オキシヘキサデカノイル-スフィンガニンから成っていた。