著者
塚越 駿 笹野 遼平 武田 浩一
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.125-155, 2023 (Released:2023-03-15)
参考文献数
39

自然言語文をベクトルとして表現する文埋め込みは,深層学習を用いた自然言語処理の基礎技術として盛んに研究されており,特に自然言語推論 (Natural Language Inference; NLI) タスクに基づく文埋め込み手法が成功を収めている.しかし,これらの手法は大規模な NLI データセットを必要とすることから,そのような NLI データが整備された言語以外については高品質な文埋め込みの構築が期待できないという問題がある.本研究ではこの問題を解決するため,NLI データと比べて多くの言語において整備が行われている言語資源である辞書に着目し,辞書の定義文を用いた文埋め込み手法を提案する.また,標準的なベンチマークを用いた評価実験を通し,提案手法は既存の NLI タスクに基づく文埋め込み手法と同等の性能を実現すること,評価タスクの性質や評価データの抽出方法により性能に差異が見られること,これら2手法を統合することでより高い性能を実現できることを示す.
著者
山田 康輔 笹野 遼平 武田 浩一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.B-K22_1-12, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
20

It has been reported that a person’s remarks and behaviors reflect the person’s personality. Several recent studies have shown that textual information of user posts and user behaviors such as liking and reblogging the specific posts are useful for predicting the personality of Social Networking Service (SNS) users. However, less attention has been paid to the textual information derived from the user behaviors. In this paper, we investigate the effect of using textual information with user behaviors for personality prediction. We focus on the personality diagnosis website and make a large dataset on SNS users and their personalities by collecting users who posted the personality diagnosis on Twitter. Using this dataset, we work on personality prediction as a set of binary classification tasks. Our experiments on the personality prediction of Twitter users show that the textual information of user behaviors is more useful than the co-occurrence information of the user behaviors and the performance of prediction is strongly affected by the number of the user behaviors, which were incorporated into the prediction. We also show that user behavior information is crucial for predicting the personality of users who do not post frequently.
著者
金山 博 武田 浩一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.840-849, 2011-06-15

2011年2月14日〜16日、米国のTVクイズ番組においてIBM の質問応答システムWatsonと当番組の2人のクイズ・チャンピオンとの対戦が実現し、Watson が勝利を収めた。本システムの成功には長年の質問応答技術の研究、インターネット上などにある膨大なデジタル情報の蓄積、並列処理と機械学習を利用して解答とその確信度を計算する新たな手法などが寄与している。また、高い相互運用性をもつ自然言語処理のプラットフォームの採用や、米国の8大学との共同研究なども効果をあげた。本稿では、問題の設定、研究開発の過程、その結果と将来の展望を追う形式で、挑戦の概要と技術的内容の両面を紹介していく。
著者
鈴木 惠美子 武田 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.1402-1412, 1989-11-15
被引用文献数
17

ワードプロセッサが大量に普及し 日本語文書を電子的に作成 配布 印刷することが日常的になってきた.しかし 計算機上でできあがった文書の校正・推敲を行うといった高度のテキスト処理は 最近になってやっと研究が盛んに行われはじめたところで まだ実用化の段階には至っていない.我々従来より 機械可読な日本語文書を対象として入吾中の誤りや用語の不統一 言い替えた方がよい表現などを検出し 文書の校正支援を行うシステムについて研究してきたが 構造化された文書表現(構造化文書)とその上でのルール形式の校正知識表現を用いることが有効であるという結果を得た.すなわち 1)文書前処理段階でモデル化することにより 日本語文書のための応用プログラフ実行時には字句解析を行うことなく 単語や文節 段落や文書全体といった単位を扱うことができる 2)校正知識は構造化文書上の高レベルの述語として記述できる 3)文書校正知識を複数の段階(入力時と作成時)で利用できるように 対話的文書校正とパッチ的校正が提供できる といった特長を実現できた.本報告では 我々の開発したシステムとその校正知識 ワードプロセッサを使用した実験により得られた誤りの分類およびその検出可能性について述べる.また 構造化文書の応用として重要語を検出する機能についても検討している.
著者
武田 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.723-728, 2006-07-15
参考文献数
8

ビジネス・インテリジェンス(BI)とは,企業が持つ社内外の情報を活用し,ビジネスにおけるよりよい意思決定を迅速・確実に行うための活動や手法に関する包括的な概念(conceptual umbrella)である.BIという用語は,Howard Dresnerが1989年に命名したとされており,最近のインタビュー☆1で,DresnerはBIが技術的な内容にフォーカスしたものではなく,企業内の人材とプロセスを統合してビジネス目的を達成することが主眼であると明確に述べている.Dresnerはさらに,BIが情報の民主化(information democracy)といえる方向に進んでおり,少数のアナリストによる高度な情報分析から,ビジネスの現場で誰もが意思決定や行動につながる知見(insight)の獲得のためのインフラとして普及すると予見している.このためには,たとえば重要業績評価指標(key performance indicator KPI)の目標達成や改善を可能にするBIや,BIツールの標準化と理解,業務プロセスへの統合といった諸問題について言及されなければならないが,ここでは技術的な側面を中心に,人工知能技術を応用した最近のBIについて解説する.特にテキストマイニングを利用して,従来のデータベースに含まれる数値・コード化された項目を中心とする構造化情報と,フリーテキストで記述される非構造化情報を統合することで可能になったBIの応用について詳しく紹介する.
著者
末廣 徹 武田 浩一 神津 多可思 竹村 敏彦
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.49-58, 2018 (Released:2018-11-03)
参考文献数
15

In this paper, we analyze the current inflation perceptions, the formation mechanism of the 5-year inflation expectations, and their heterogeneity by gender and age with Structural Equation Modeling (SEM) based on “Survey on consciousness of individual investors” conducted in February 2016. We find that 1) if the current anxiety, which is a latent variable related to anxiety about the current Japanese economy and the state of household, is higher, the current inflation perceptions become higher; 2) the current inflation perceptions also affect the 5- year inflation expectations; and 3) “future anxiety” doesn't directly affect inflation expectations. 4) If the “future anxiety” become stronger, the inflation expectations are boosted through “current anxiety” and inflation perceptions. 5) Young people and elderly people have higher inflation perceptions. This U-shaped tendency could be explained by their strong “current anxiety.” 6) Inflation expectations tend to be higher in the 50s and 60s regardless of their strong future and current anxiety. 7) Male's inflation perceptions tend to be low, but another analysis shows that there is no gender difference in inflation expectations.
著者
山田 康輔 笹野 遼平 武田 浩一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.B-K22_1-12, 2020

<p>It has been reported that a person's remarks and behaviors reflect the person's personality. Several recent studies have shown that textual information of user posts and user behaviors such as liking and reblogging the specific posts are useful for predicting the personality of Social Networking Service (SNS) users. However, less attention has been paid to the textual information derived from the user behaviors. In this paper, we investigate the effect of using textual information with user behaviors for personality prediction. We focus on the personality diagnosis website and make a large dataset on SNS users and their personalities by collecting users who posted the personality diagnosis on Twitter. Using this dataset, we work on personality prediction as a set of binary classification tasks. Our experiments on the personality prediction of Twitter users show that the textual information of user behaviors is more useful than the co-occurrence information of the user behaviors and the performance of prediction is strongly affected by the number of the user behaviors, which were incorporated into the prediction. We also show that user behavior information is crucial for predicting the personality of users who do not post frequently.</p>
著者
末廣 徹 武田 浩一 神津 多可思 竹村 敏彦
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学
巻号頁・発行日
vol.13, pp.S5-S7, 2020

<p>本論文では,心理学的概念である個人のグリット(やり抜く力)をWebアンケート調査によって調査し,個人のグリットの高さと金融行動の関係を分析した.その結果,グリットが高い(やり抜く力が強くて忍耐力がある)ほど,(1)収入が多く,(2)金融資産の保有額も多いことが分かった.また,(3)目的を持って貯蓄をしている(セルフコミットメントを行っている)個人にとってグリットは一段と効果を発揮する(金融資産の蓄積を促す)ことを示した.グリットは後天的に誰もが獲得可能な「やり抜く力」とされ,ビジネスやスポーツにおける個人のパフォーマンスの高さと関係があることから注目されている.日本では老後の金融資産が不足している個人が多数存在することが社会問題となっており,後天的に獲得可能なグリットが金融資産の蓄積を促すという本稿の結論は金融教育や政策運営に資するものである.</p>
著者
山田 康輔 笹野 遼平 武田 浩一
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2020-NL-244, no.5, pp.1-6, 2020-06-26

本研究では,大規模コーパスからのフレーム知識獲得において,コーパスから収集された動詞の文脈を考慮することの有用性を検証する.具体的には,FrameNet および PropBank において 2 種類以上のフレームを喚起する動詞に着目し,それらの動詞が喚起するフレームの違いを ELMo や BERT に代表される文脈化単語埋め込みがどのくらい捉えているかを,各用例の文脈化単語埋め込みのクラスタリング結果とそれらに付与されたフレームを比較することにより調査する.
著者
松本 裕治 武田 浩一 永田 昌明 宇津呂 武仁 田代 敏久 山下 達雄 林 良彦 渡辺 日出雄 竹澤 寿幸
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.48(1998-NL-125), pp.1-8, 1998-05-28

近年,電子化テキストの急激な増加,および,インターネットによる一般利用者の電子媒体への日常的なアクセスに伴って,言語処理研究と言語に関する実用技術の間のギャップが徐々に狭まってきており,実用的な自然言語処理研究という言葉が真に現実的な意味を持ち出してきた.本報告では,そのような実用的言語処理技術の事例のいくつかを「ここまでできるぞ言語処理技術」というタイトルで紹介する.
著者
武田 浩一 住田 一男 那須川 哲哉
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.394-405, 2016-10-15

「デジタルプラクティスの読者の方には,自分の専門をちょっと壊してほしい!」.人工知能の父と呼ばれるMarvin MinskyやAlan Kay等との親交が深い静岡大学教授の竹林洋一氏を迎え,これまでの人工知能技術の研究開発を俯瞰するとともに,「ディープラーニングには何が足りていないのか」,「将来を見据えて研究開発のターゲットを設定することの大切さ」,現在精力的に取り組まれている「人工知能の医療介護への応用」といったテーマで大いに語っていただきました.
著者
斎藤 昭 菊地 臣一 矢吹 省司 武田 浩一郎
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.231-236, 2002-03-25

抄録: 変形性股関節症が仙腸関節に与える影響を明らかにすることを目的とした.対象は変形性股関節症の男性7例,女性130例の合計137例である.変形性股関節症の罹患側は,右側が46例,左側が50例,そして両側が41例であった.これらの症例に対し,仙腸関節痛,変形性股関節症の罹病期間,肥満度,出産回数,そして股関節可動域を調査した.さらに,単純X線像から仙腸関節部の骨硬化像,脚長差,および骨盤輪不安定性の有無を検討した.その結果,仙腸関節痛を認めた症例は27例(19.7%)であった.仙腸関節痛は,比較的若年者や骨盤輪不安定性を有する症例に出現しやすい.仙腸関節部の骨硬化像は78例(56.9%)に認めた.この所見は比較的若年者や変形性股関節症の罹病期間が長い症例に認めやすい.また,脚長差が大きい症例や下肢長の長い側に骨硬化像が出現しやすい.しかし,仙腸関節部の骨硬化像の存在が疼痛を直接反映するとはいえない.