著者
金山 博
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.791-801, 2013-02-01 (Released:2013-02-01)
参考文献数
7

自然言語処理の技術が盛んに研究されており,検索・翻訳・自動応答・校正など,さまざまな分野での実用化が進んでいる。IBM Research(基礎研究部門)における当分野の取り組みとして,2011年に米国のクイズ番組において人間と対戦した質問応答システム「Watson」のほか,大量の文書からビジネスに有用な知識の発見を補助するテキストマイニング技術「TAKMI」などがある。これらの成功に共通する点は,人間が苦手とする処理をコンピューターに代替させたこと,人間が持つ言語に関する知識をコンピューターに与える手段を確保したこと,そして人を驚かせる結果を出したことである。情報が日々増大する中で,どのような技術を研究開発し,また活用していくべきか,計算言語学の研究者の観点から論じる。
著者
浅原 正幸 金山 博 宮尾 祐介 田中 貴秋 大村 舞 村脇 有吾 松本 裕治
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-36, 2019-03-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
40
被引用文献数
2 3

Universal Dependencies (UD) は,共通のアノテーション方式で多言語の構文構造コーパスを言語横断的に開発するプロジェクトである. 2018 年 6 月現在,約 60 の言語で 100 以上のコーパスが開発・公開されており,多言語構文解析器の開発,言語横断的な構文モデルの学習,言語間の類型論的比較などさまざまな研究で利用されている. 本稿では UD の日本語適応について述べる.日本語コーパスを開発する際の問題点として品詞情報・格のラベル・句と節の区別について議論する.また,依存構造木では表現が難しい,並列構造の問題についても議論する.最後に現在までに開発した UD 準拠の日本語コーパスの現状を報告する.
著者
金山 博 武田 浩一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.840-849, 2011-06-15

2011年2月14日〜16日、米国のTVクイズ番組においてIBM の質問応答システムWatsonと当番組の2人のクイズ・チャンピオンとの対戦が実現し、Watson が勝利を収めた。本システムの成功には長年の質問応答技術の研究、インターネット上などにある膨大なデジタル情報の蓄積、並列処理と機械学習を利用して解答とその確信度を計算する新たな手法などが寄与している。また、高い相互運用性をもつ自然言語処理のプラットフォームの採用や、米国の8大学との共同研究なども効果をあげた。本稿では、問題の設定、研究開発の過程、その結果と将来の展望を追う形式で、挑戦の概要と技術的内容の両面を紹介していく。
著者
武村 政彦 井﨑 博文 小森 政嗣 仙崎 智一 布川 朋也 山本 恭代 山口 邦久 中逵 弘能 高橋 正幸 福森 知治 金山 博臣
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.91-95, 2013-02

A 61-year-old woman was referred to our department with a diagnosis of left solitary adrenal metastasis from cervical cancer in September 2011. She presented with postmenopausal bleeding in September 2010. The patient received seven courses of paclitaxel (175 mg/m2) and carboplatin (6 mg/GFR+25) for stage IV cervical cancer with paraaortic, bilateral common iliac, mediastinal lymph node metastases and left adrenal metastasis from October 2010 to April 2011. Paraaortic radiation (50.4 Gy) was subsequently administered from May 2011 to July 2011. Abdominal nonenhanced computed tomography (CT) revealed a left 26×21 mm adrenal mass with regular margins (attenuation values 53 HU). On enhanced CT, the mass showed heterogeneous enhancement. F fluoro-2-deoxy D-glucose (FDG) positron emission tomography/CT images showed moderately increased FDG-avid uptake in the left adrenal tumor which was high enough to be suspicious of malignant tumor (standardized uptake value max : SUVmax 6.8). There were no other foci of pathologic uptake of FDG in the whole body. The plasma endocrinological examinations was all normal. Left laparoscopic adrenalectomy was performed. The final pathologic evaluation revealed adrenal cortical adenoma.
著者
金山 博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.117, pp.61-66, 2005-11-21

日本語の統計的構文解析において、自立語の語彙の違いが統計モデル上で充分に反映されず、語彙運択を必要とする係り受けの解析誤りの原因となっている。本稿では、「既存の統計的構文解析器は、読点に過剰に依存している」という仮定に基づき、読点を無視して学習を行う統計モデルを構築して、用言に係る助詞句の係り受けの改良を図る。提案手法により、語彙を区別する素性の効用が増すとともに、不自然な読点が打たれている文に対しての頑健性が高まった。In Japanese statistical syntactic parsing, the selection of content words does not have much effect on dependency decision between bunsetsus mainly because of the data sparseness. To overcome parsing errors caused by this lack of lexical information, this paper proposes a statistical learning method that ignores commas in sentences, drawing on the observation that the existing statistical parsers rely too much on such punctuation. This method increases the effect of features that distinguish among content words, and the model is robust for sentences where commas are not used properly.
著者
那須川 哲哉 金山 博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.73, pp.109-116, 2004-07-16
参考文献数
15
被引用文献数
12 5

組織・製品などに関して好不評を示す表現,及びそれが好評を示すか不評を示すかの極性を,文書データから教師なし学習で獲得する手法を示す.ある対象に関して評価を述べる内容を記述する際には,好評もしくは不評の意見を列挙することが多く,好不評の極性を反転させる際には「けれども」「しかし」といった接続表現で明示することが多い.本手法では,この『評価表現の文脈一貫性』を利用し,「満足する」「不満だ」などの種表現の周辺文脈から評価表現の候補とその極性を抽出し,各候補の文書データ全体における分布から評価表現としての妥当性を判定する.得られた評価表現を種表現に追加する操作を再帰的に実行することで,好不評の極性付きの語彙を,少数の種表現から自動構築することが可能になる.デジタルカメラと映画に関する掲示板のデータで実験したところ,各々の分野に特徴的な評価表現を高い精度で抽出することができた.This paper presents an unsupervised learning method to acquire sentiment expressions that indicate either favorable or unfavorable opinion toward a specific subject. Our approach is based on a characteristic of sentiments that multiple sentiment expressions often appear near each other in texts with the same polarity of favorability, unless the change is explicitly indicated by a clue term such as an adversative conjunction. By taking advantage of this characteristic, our unsupervised method extracts sentiment expressions and their polarities from a corpus starting from a very small set of seed expressions and analyzing their neighboring expressions in the corpus. In our experiment on discussion board messages about digital cameras and movies, we could acquire a good set of sentiment expressions relevant to each domain.
著者
伊勢田 徳宏 横山 雅好 金山 博臣 大本 安一 香川 征
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.514-519, 2000-05-20
参考文献数
19

(目的)腎細胞癌におけるinterferon receptorの発現の有無,発現量,発現部位ならびにその意義は検討されておらず,同様に細胞核内からの伝達により産生されている酵素や蛋白等なども検討されていない。今回,抗体を用いたELISA法による細胞膜外部分の可溶性interferon-α/β receptor(s-IFN-receptor)の測定系が確立されたので腎細胞癌患者血清を用い臨床的意義を検討した。(対象・方法)1990年から1995年までに愛媛大学医学部泌尿器科を受診した腎細胞癌患者27例の血清中s-IFN-receptor値の測定を行った。採決は治療前空腹時とし,血清分離した後測定するまで-80度で凍結保存した。また徳島大学医学部で測定した健常者22例の血清中s-IFN-receptor値と比較した。(結果)腎細胞癌患者では健常者に比し,血清s-IFN-receptor値は有意に高値であった。(p<0.003)。High risk群のs-IFN-receptor値は高かった。生存率について,今回の腎細胞癌患者のs-IFN-receptor平均値の2.7±1.7ng/ml以上と未満で検討したところ,高値群では4年の累積生存率は53.3%,低値群では78.7%であった(Logrank検定,p=0.4289)。High risk群とlow risk群の4年生存率では有意さはあったが(Logrank検定,p=0.0342),high risk群およびlow lisk群においてs-INF-receptor値と生存率に相関がなかった。s-IFN receptor値は,一般的に腎細胞癌の予後因子と言われているCRP,赤沈とは相関していなかった(Spearman Rho値,0.33,0.31)。(結論)今回,s-IFN-receptor値と予後との関連を明らかにすることはできなかったが,腎細胞癌治療前において,一般的に予後因子とされるCRP,赤沈とは相関しておらず,今後,これらとは独立した因子である可能性を含め,さらに症例数を増やして検討する必要があると考えられる。
著者
中逵 弘能 金山 博臣 高橋 正幸 福森 知治
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

浸潤性膀胱がん細胞株、組織において、mRNAレベル、タンパクレベルでactinin-4の高発現が認められた。siRNA actinin-4を用いたノックダウンにより、浸潤能が抑制されたが、増殖能は抑制されなかったことより、actinin-4は浸潤能への関与が示唆された。Actinin-4が細胞膜ヘリクルートされず、細胞質に集積することが、腫瘍の浸潤、転移に関与していることが示唆される。
著者
金山 博
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.791-801, 2013

自然言語処理の技術が盛んに研究されており,検索・翻訳・自動応答・校正など,さまざまな分野での実用化が進んでいる。IBM Research(基礎研究部門)における当分野の取り組みとして,2011年に米国のクイズ番組において人間と対戦した質問応答システム「Watson」のほか,大量の文書からビジネスに有用な知識の発見を補助するテキストマイニング技術「TAKMI」などがある。これらの成功に共通する点は,人間が苦手とする処理をコンピューターに代替させたこと,人間が持つ言語に関する知識をコンピューターに与える手段を確保したこと,そして人を驚かせる結果を出したことである。情報が日々増大する中で,どのような技術を研究開発し,また活用していくべきか,計算言語学の研究者の観点から論じる。
著者
山口 邦久 岡 夏生 井崎 博文 高橋 正幸 福森 知治 金山 博臣 菅 政治
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.493-496, 2008-07
被引用文献数
1

31歳男。腎不全末期の状態で緊急入院し, 同日血液透析導入となり, 腎生検よりnephrosclerosisであった。約8ヵ月後に父をドナーとする生体腎移植を施行し, 急性尿細管壊死は認めず, 血流直後より初尿を認め, 免疫抑制剤に拒絶反応もなく経過した。術後3週間頃より10000ml前後の1日尿量が続き, 体重減少, 皮膚乾燥, 血清クレアチニン値の上昇を認め, 尿崩症を疑った。MRIでは下垂体の形態異常は認めず, T1強調画像で下垂体後葉の高信号は保たれ, 尿検査で低張尿は認めなかった。高濃度食塩水テストを施行してのバソプレシン分泌の変化の検討では, 血漿浸透圧は上昇したが血漿バソプレシン濃度の上昇は鈍く, 正常バソプレシン分泌範囲を下回り, 不完全型中枢性尿崩症と診断した。デスモプレシン点鼻の開始により尿量は減少し, 体重, 血清クレアニチン値も安定した。現在もデスモプレシンの点鼻投与を継続し, 経過順調であった。A 31-year-old man was sent to hospital for urgent treatment. He was in the terminal state of chronic renal failure, and was placed under hemodialysis immediately. Proteinuria and hypertension had been notified since adolescence, had been left untreated, and there was no record of his conditions, was. Living kidney transplantation was conducted 8 months later. The donor was his father. After the operation, rejection was not recognized, but urine volume per day was not reduced and maintained the level around 10.000 ml. At the same time, the decrease of body weight and the rise in the serum creatinine concentration were noted. The results of magnetic resonance imaging and the hypertonic saline test (Hickey Hare Test) have formed diagnosis of incomplete diabetes insipidus. Immediately after the administration of desmopressin (rhinenchysis), the decrease of urine volume was recognized, and the body weight and serum creatinine concentration became stable.