著者
野口 博光 仲 弥 西尾 和倫 松田 哲男 中野 眞 比留間 政太郎
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.583-592, 2022 (Released:2022-09-22)
参考文献数
12
被引用文献数
1

ホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物(ネイリン®カプセル,以下ホスラブコナゾール)は,日本で開発され,2018年より爪白癬治療に使用されている新規トリアゾール系抗真菌薬である.実臨床におけるホスラブコナゾールの有効性,安全性および治療継続率を検討する目的で,多機関共同後ろ向き観察研究を実施した.2019年6月から2020年4月までにホスラブコナゾールで治療を開始した350例の患者が登録された. ホスラブコナゾールの治療継続率は12週後で83.4%,48週後で32.6%であった.ホスラブコナゾール投与開始48週後の臨床的治癒率は78.9%,完全治癒率は57.8%であった.ホスラブコナゾール投与開始36週以降に臨床的治癒する症例が多かった.臨床的治癒までの期間の中央値は41.9週であった.副作用は350例中64例(18.3%)に76件認められ,そのうち15例がホスラブコナゾールの投与を中止した.重篤な副作用はなかった.臨床検査はホスラブコナゾール投与開始10週後までに実施された症例が多かった. 本研究の結果,実臨床におけるホスラブコナゾールの高い有効性と忍容性,および治療継続率の高さなどが確認された.ホスラブコナゾールによる治療は,患者のコンプライアンス・アドヒアランス維持に貢献すると思われる.
著者
貞政 裕子 池上 望 康井 真帆 矢口 均 比留間 政太郎 鶴野 寿一 篠永 哲
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.249-252, 2008

69歳,女性。平成19年2月に中米のコスタリカ共和国へ旅行し,帰国後より左側腹部に小結節が出現し徐々に大きくなった。4月3日近医で粉瘤の診断のもと切開術を施行され,翌日同部からハエ幼虫が圧出された。幼虫はヒトヒフバエ(<I>Dermatobia hominis</I>)と同定された。中南米からの帰国者に粉瘤様の紅色結節をみた場合は本症も考慮する必要があると思われる。
著者
比留間 政太郎
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.36, 2005

足白癬が難治である理由として、治療開始 1 から 2 週間後に、かゆみなどの軽減に伴い治療を中断し、再発を繰り返すためといえる。足白癬の治療効果促進のためには、患者コンプライアンスを向上させ、治療期間を短縮しても十分な効果を示す薬剤の開発が求められる。ルリコナゾールは、新規イミダゾール系抗真菌剤で、広域な抗真菌スペクトルと強力な抗真菌活性をもち、皮膚角層中で優れた薬物貯留性を示す。本薬の臨床試験は、外用抗真菌剤臨床評価法(日本医真菌学会)に基ずき、従来の薬剤塗布期間(4 週間)を半分に短縮して試験を実施した。第 III 相臨床試験では、ルリコナゾールクリーム 1% は 2 週間の薬剤塗布で対照薬(1% ビホナゾールクリーム)の 4 週間塗布に対して、真菌学的効果(76.1%)及び皮膚症状改善度(91.5%)の非劣性が検証され、塗布開始 2 週後の真菌培養成績では、対照薬に対して有意に高い消失率を示した。また、一般臨床試験、比較試験の短期間塗布試験でも、本クリームは、白癬及び皮膚カンジダ症・癜風に対して有効であり、液剤もクリームとの同等の臨床効果が得られた。副作用発現率は 2.5% であり、主なものは軽微な皮膚炎であった。ルリコナゾールクリーム 1%・液 1% は治療期間を短縮させ、患者コンプライアンスの向上が期待できる新しい外用抗真菌薬である。
著者
野田 俊明 川田 暁 比留間 政太郎 石橋 明
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.287-291, 1993
被引用文献数
1

サンスクリーン剤の紫外線防御効果を従来のsun protection factor(SPF)の測定に加え, 遅延型黒化(delayed tanning, DT), 即時型黒化(immediate pigment darkening, IPD)の防御効果により検討した。被験試料: ECRAN TOTAL UVA-UVB-IR(RoC S. A., France)。実験方法: 健康成人男子10名を対象とし, 被験部位は背部, 塗布面積50cm<SUP>2</SUP>, 塗布量2mg/cm<SUP>2</SUP>とした。光源にはsolar simulator WXL-50 C-5-UV(WACOM, Japan)を用い, 照射波長域はUVA+B, 照射率は34.8mW/cm<SUP>2</SUP>とした。結果: 試料非塗布部位のminimal erythema dose(MED), minimal delayed tanning dose(MDTD), minimal immediate pigment darkening dose(MIPDD)は, それぞれ132.8KJ/m<SUP>2</SUP>, 146.7KJ/m<SUP>2</SUP>, 16.7KJ/m<SUP>2</SUP>であった。試料塗布部位のMED, MDTDは最大照射量でも測定できなかったが, MIPDDは1422.8KJ/m<SUP>2</SUP>であった。試料塗布部位のMED, MDTDをその最大照射量で計算したprotection factor(PF)値は, それぞれ15以上, 12以上と算定され優れた効果を示した。IPDより計算したPF値は85.3であったがさらに検討が必要と思われた。
著者
比留間 政太郎
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.116, no.9, pp.1295-1302, 2006

皮膚糸状菌症(白癬)の臨床像は,菌種,病変部位,宿主の免疫状態などに影響され,微妙に異なる.診断で大切なことは,真菌症を疑ってみることで,次に直接鏡検によって菌を証明することである.頭部白癬は,菌が硬毛に寄生して生ずるので,毛の寄生形態を観察する.体部白癬は,多種の菌が分離され,それに伴い当然多彩な臨床像を呈する.足白癬は,全人口の4分の1を占めるとこが明らかにされ,その治療の大切さが再認識されている.爪白癬は,新しい経口抗真菌薬が開発され治療が容易となった.今後爪白癬のより良い臨床評価基準が作られることが望ましい.治療は,白癬の病型・病態また個々の症例によっても治療方針は異なる.治療薬剤の特徴を考慮して決定する.治療期間は,表皮,毛,爪のターンオーバーの期間を考慮して決める.生活指導は大切で,その感染経路を考慮して指導する.
著者
菅波 盛雄 廣瀬 伸良 白木 祐美 比留間 政太郎 池田 志斈
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.319-324, 2006-10-31
被引用文献数
11 17

<i>Trichophyton tonsurans</i> 感染症は, 高校, 大学生の柔道・レスリング選手を中心に拡大していることは知られているが, 中学校柔道選手へも感染が拡大しているか否かは不明である. 本研究では, 平成17年度の全国中学校柔道大会において調査を行った. 対象は全参加1,039名のうち, 本調査の検査に同意した男子218名, 女子278名の計496名であった. 調査は質問紙法とhairbrush法を用いた. 結果は, 496例中45例 (9.1%) がhairbrush法陽性で, 1陽性例あたりの陽性ブラシ棘の集落数は1~126集落 (平均36.1±48.9) であった. 陽性例が多いのは, (1) 男子選手, (2) 他校および高校, 近隣の道場などで頻繁に練習を行う者, (3) 友人に体部白癬「有り」との回答をした者, (4) 体部白癬既往「有り」との回答をした者であった. また, (1) 体重の軽いクラスの者, (2) 戦績上位入賞者, (3) 関東と九州地区在住者に陽性例が多い傾向があった. 次にhairbrush法で陽性であった45名に検査結果を通知し, 治療を受けるように指示した. 3ヶ月後のhairbrush法再検査では, ブラシを返却した者は45例中33例 (ブラシは返却してきたが未治療9例を含む) であった. 治療による菌の陰性化率は, ミコナゾールシャンプー治療群では12例中12例 (100%) で, 経口抗真菌剤治療群では12例中6例 (50.0%) であった. 以上より, 中学生柔道選手における<i>T. tonsurans</i> 感染者が確認された (9.1%) ことより, 本症の感染拡大の阻止が急務であると考えられた.