著者
菅波 盛雄 斉藤 仁 廣瀬 伸良 中村 充 林 弘典 増地 克之
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-12, 2005

IJFは2001年までは「判定方式」,2002年からは「ゴールデンスコア方式」を採用している。本研究は,2000年から2003年までの4年間に国際柔道連盟が主催した4大会を対象として,試合終了時に両試合者のスコアが同一であった試合の分析を試みた。<br>2000年世界Jrナブール大会と2001年世界選手権ミュンヘン大会,全1,356試合の中で「判定」によって勝敗が決したのは73試合(5,4%)であった。2001年世界Jr済州島大会と2003年世界選手権大阪大会,全1,285試合の中で「GS」によって勝敗が決したのは42試合(3.3%)であり減少がみられた。<br>「判定」によって勝敗が決した73試合を施技ランクB,Cおよび組み手主導権の3項目で比較した結果,審判員の判定が3対0の時にプラスポイントが確認された選手が勝ちとなったのは73,8%であった。一方,2対1の時はプラスポイントでの勝ちが41.9%と減少がみられたことから,全員一致の判定の困難さが窺える。<br>同様の手法で「GS」に入る前の試合分析から,「GS」への移行が妥当と判断されたのは11試合(26.2%)であり,残りの31試合(73.8%)は項目比較によって優劣に差がみられた。「GS」導入によって試合時間は「判定方式」に比べて長くなるが,「判定」に対する「GS」の試合時間比は4分の試合で1.43倍増に対して,5分では1.28倍と減少が認められた。<br>「GS方式」の導入によって,試合終了時に同一スコアとなる試合が激減した。また,実質上の試合時間を抑制する傾向が窺え,延長時間の問題も許容範囲であると言える。「GS」による試合は,罰則よりもポイント取得によって勝敗が決する方向にあり,勝負判定の客観化を推進するためには有効な改正であった。
著者
田村 昌大 廣瀬 伸良 中村 充 齊藤 仁 山内 直人 田中 力 鈴木 桂治 菅波 盛雄
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.143-149, 2012

本研究では、2009年1月に改正されたIJF試合審判規定が柔道競技に及ぼした影響を分析・検証を行なった。その上で、試合審判規定改正の世界柔道の戦術内容に関する最新の動向を探ることを目的とした。<BR>研究方法は、収録された映像を基に2008年フランス国際柔道大会及び2009年グランドスラム・パリ国際柔道大会の競技内容を比較した。試合数は両年合わせて476試合であった。競技分析を行う上で、項目を作成した。作成した項目については、「競技分析シート2009」に競技内容を入力するものとした。<BR>組み手については、釣り手・引き手ともに持った状態で施技を行う「充分」が0.1%水準で有意な増加が認められた。また、「ズボンを直接握る」ことへの反則適用から、施技者及び相手も施技時に「脚」を持つという戦術は有意な減少が認められた。さらに、施技する際の姿勢も前傾姿勢状態からの施技は5%水準で有意な減少が認められた。<BR>ポイント取得の技術内容や組み手戦術において改正前と比較した結果では、「脚」を持つ戦術に依存しないことで「襟」「袖」を持った状態で施技可能な技術に移行するという望ましい傾向となった。<BR>今回の改正によって懸案事項となっていた点が改善される傾向にあり、IJF試合審判規定改正が影響のあるものであったと考えられたが、「肩車」にみられるような「脚」を持つ技に対する依存は未だ存在している。そのため、2010年にさらなる試合審判規定の改正につながったものと推察する。
著者
菅波 盛雄 斉藤 仁 廣瀬 伸良 中村 充 林 弘典 増地 克之
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-12, 2005-07-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
20

IJFは2001年までは「判定方式」,2002年からは「ゴールデンスコア方式」を採用している。本研究は,2000年から2003年までの4年間に国際柔道連盟が主催した4大会を対象として,試合終了時に両試合者のスコアが同一であった試合の分析を試みた。2000年世界Jrナブール大会と2001年世界選手権ミュンヘン大会,全1,356試合の中で「判定」によって勝敗が決したのは73試合(5,4%)であった。2001年世界Jr済州島大会と2003年世界選手権大阪大会,全1,285試合の中で「GS」によって勝敗が決したのは42試合(3.3%)であり減少がみられた。「判定」によって勝敗が決した73試合を施技ランクB,Cおよび組み手主導権の3項目で比較した結果,審判員の判定が3対0の時にプラスポイントが確認された選手が勝ちとなったのは73,8%であった。一方,2対1の時はプラスポイントでの勝ちが41.9%と減少がみられたことから,全員一致の判定の困難さが窺える。同様の手法で「GS」に入る前の試合分析から,「GS」への移行が妥当と判断されたのは11試合(26.2%)であり,残りの31試合(73.8%)は項目比較によって優劣に差がみられた。「GS」導入によって試合時間は「判定方式」に比べて長くなるが,「判定」に対する「GS」の試合時間比は4分の試合で1.43倍増に対して,5分では1.28倍と減少が認められた。「GS方式」の導入によって,試合終了時に同一スコアとなる試合が激減した。また,実質上の試合時間を抑制する傾向が窺え,延長時間の問題も許容範囲であると言える。「GS」による試合は,罰則よりもポイント取得によって勝敗が決する方向にあり,勝負判定の客観化を推進するためには有効な改正であった。
著者
三宅 恵介 竹澤 稔裕 伊藤 潔 佐藤 伸一郎 廣瀬 伸良
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.103-113, 2022-03-31 (Released:2022-04-07)
参考文献数
36

The purpose of this study was to clarify the tactical actions of nage-waza that are effective in scoring in judo by using a notational match performance analysis, and to provide useful knowledge in the practical field of coaching. For this purpose, we examined the relationship between (1) the type of nage-waza, (2) whether there was a renraku-henka in the nage-waza, and (3) the combination of the tori and the uke’s kumite and whether an athlete scored any points. Data from a total of 441 matches in the −60kg, −81kg, and +100kg weight classes in international competitions held in 2020 were used.The tactical actions associated with whether points were scored or not were the type of nage-waza and whether they included a renraku-henka. The combination of tactical actions that influenced the points scored was a combination of henka-waza and te-waza, and in some weight classes, combinations of henka-waza and other techniques were also effective. The combination of henka-waza and sumi-otoshi, which is classified as a te-waza, showed the highest scoring ratio in all weight classes.This study suggests for the first time that henka-waza, especially sumi-otoshi, applied during or after the opponent’s attack, is an effective tactical action for scoring regardless of weight class. These new findings indicate that in current judo competitions it is important to not only pursue single techniques but to construct tactical actions relative to the opponent. They are also expected to be useful for specific guidance in coaching.
著者
中村 充 菅波 盛雄 廣瀬 伸良
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.26-34, 1999-05-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
27

The purpose of this research is to do the detailed game analysis of the 45th all-Japan kendo championship.As the method, we made a new program, to collect information by using a personal computer and video. We collected the movement of the contents and player of all the techniques in the games as data by utilizing this system. And we analyzed the trend and present condition of the convention.We got the following result by this research.1. Such time when gets IPPON was long more before.2. Way of attacking which used the movement of the straight line furthermore and make the movement of small of a/the bamboo sword in, the present game is effective.3. The trend that attacks by the shock action like that and strike KOTE, this research was observed.4. The result that does and watch important that many players defend the shock of a partner even from that responds was seen.5. The game analysis program that we made was effective to do data input in detail and quickly. And, we think that we are effective in the comparison of the data and convention in terms of contestants.
著者
伊藤 潔 廣瀬 伸良 前川 直也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.246_2-246_2, 2016

<p> 柔道の投技により有効なスコアを取得するためには、施技者が最高のパフォーマンスを可能にするための組手の確保、すなわち如何に相手を両手でコントロールできるのか、が重要な鍵となる。柔道発祥の地である我が国においては、柔道着の「袖」と「襟」を両手で掴んでの施技が最も合理的であり有効とされ、それゆえスタンダードな組手戦術行動と考えられてきた。しかしながら、現在、柔道は国際化を遂げており、技術・戦術行動が急速に進歩している現状が、近年の国際大会における様々な国の選手のメダル獲得により推測される。そこで本研究ではオリンピックや世界選手権への出場選手と同等な競技レベルの選手が出場するGrand Slam Paris 2016の男子競技を研究データとし、組手戦術行動を1)施技時の組手部位、2)組替戦術の有無、3)クロスグリップ戦術の有無、の3項目を検討項目としてスコア取得に至る有効な組手戦術行動を解明し、我が国の柔道の組手研究およびコーチングの一助としたい。本研究の結果および考察については大会当日の発表とする。</p>
著者
廣瀬 伸良 菅波 盛雄 中村 充 菅原 秀二
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂大学スポーツ健康科学研究 (ISSN:13430327)
巻号頁・発行日
no.1, pp.36-50, 1997-03

The purpose of this study is to investigate the difference performance between European judo contests and Japanese judo contests. We try to analyze between Kodokan cup and Europe judo championships in the 95 kg category.Results are as follows; 1) Concerning detail of contests, Ippon or Yusei-gachi frequently found in Europe Judo Championships. On the contrary, Hantei-gachi which has no detail points, is frequently found in Kodokan Cup Judo Championships. 2) In competition, Te-waza and Ashi-waza are frequently found in Both Judo Championships. 3) Among Te-waza, the techniques of reaping, catching or scooping directly by own hands, were frequently found in Europe Judo Championship. In Kodokan Cup Judo Championship, Seoinage was the most famous techniques of all. 4) Among Ashi-waza, the Japanese competitors used the big-movement technique. On the contrary the small-movement techniques frequently found in Europe Judo Championship. 5) The European Competitors tried to attack with the circumstance of incompletely grips. 6) The numbers of infringements in Kodokan Judo Championships are 2.6 times as many as in Europe Judo Championships. Europe Judo Championships found serious infringements more than Kodokan Cup Judo Championships.
著者
菅波 盛雄 廣瀬 伸良 白木 祐美 比留間 政太郎 池田 志斈
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
日本医真菌学会雑誌 = Japanese journal of medical mycology (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.319-324, 2006-10-31
被引用文献数
11 17

<i>Trichophyton tonsurans</i> 感染症は, 高校, 大学生の柔道・レスリング選手を中心に拡大していることは知られているが, 中学校柔道選手へも感染が拡大しているか否かは不明である. 本研究では, 平成17年度の全国中学校柔道大会において調査を行った. 対象は全参加1,039名のうち, 本調査の検査に同意した男子218名, 女子278名の計496名であった. 調査は質問紙法とhairbrush法を用いた. 結果は, 496例中45例 (9.1%) がhairbrush法陽性で, 1陽性例あたりの陽性ブラシ棘の集落数は1~126集落 (平均36.1±48.9) であった. 陽性例が多いのは, (1) 男子選手, (2) 他校および高校, 近隣の道場などで頻繁に練習を行う者, (3) 友人に体部白癬「有り」との回答をした者, (4) 体部白癬既往「有り」との回答をした者であった. また, (1) 体重の軽いクラスの者, (2) 戦績上位入賞者, (3) 関東と九州地区在住者に陽性例が多い傾向があった. 次にhairbrush法で陽性であった45名に検査結果を通知し, 治療を受けるように指示した. 3ヶ月後のhairbrush法再検査では, ブラシを返却した者は45例中33例 (ブラシは返却してきたが未治療9例を含む) であった. 治療による菌の陰性化率は, ミコナゾールシャンプー治療群では12例中12例 (100%) で, 経口抗真菌剤治療群では12例中6例 (50.0%) であった. 以上より, 中学生柔道選手における<i>T. tonsurans</i> 感染者が確認された (9.1%) ことより, 本症の感染拡大の阻止が急務であると考えられた.