- 著者
-
永井 孝志
- 出版者
- 農業情報学会
- 雑誌
- 農業情報研究 (ISSN:09169482)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.4, pp.120-130, 2023-01-01 (Released:2023-01-01)
- 参考文献数
- 14
年次的な収量変動に関するリスクマネジメントの手法の一つとして,複数作物の栽培や気候条件の異なる土地での栽培によるリスクの分散がある.しかしながら,作物や地域の網羅的な収量変動リスクの解析事例は報告がない.本研究では,農林水産省による作物統計の長期的な収量データを解析し,47都道府県における160作物の収量変動リスクをそれぞれ定量化した.各年の平年収量と実際の収量の差(平年を100とした場合の作況指数として示す)は,ある確率分布の下でランダムに発生すると仮定し,その分布の平均値と変動の大きさ(標準偏差)をリスク指標とした.また,作況指数の変動パターンとして,気温などの気象要因との関係や,都道府県別の水平分布,水稲の年次変動パターンとの類似性,ハイリスク・ハイリターン度合いなどの観点から整理した.さらに,収量の年次変動パターンに差がある作物や地域を複数組み合わせて栽培することによるリスク分散効果のシミュレーションを行った.その結果,2作物もしくは2地域での作況指数の相関係数が低い場合にリスク分散効果が得られる事例を示すことができた.