著者
林 岳彦
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.289-299, 2009 (Released:2017-04-20)
参考文献数
59
被引用文献数
4

性的対立とは、繁殖にかかわる事象を巡るオスメス間での利害の対立を指す。性的対立は繁殖形質における軍拡競争の原因となり、その結果として集団間の急激な繁殖隔離(種分化)を引き起こす可能性が示唆されている。本総説では、まず性的対立説についての概説を行い、次いで性選択理論としての性的対立説の特徴について古典的性選択理論(ランナウェイ説、優良遺伝子説)との比較をしながら整理を行う。さらに、性的対立説が引き起こす進化的帰結について理論的な観点から整理し、性的対立説と種分化の関係について議論する。
著者
村澤 昌崇 椿 美智子 松繁 寿和 清水 裕士 筒井 淳也 林 岳彦 宮田 弘一 中尾 走 樊 怡舟
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究は,因果推論の勃興を契機とし,社会科学の半ば慣習的な統計分析が再考を迫られると認識した.そこで,従来は因果分析とされたが,厳密には因果推論ではない分析を仮に“説明”とし,その再定義,モデル評価,係数の解釈に関する新たな理論を構築する.この取組について、社会科学の方法論について深遠な議論を展開している専門家、心理学、経済学、統計科学、データサイエンスを代表する専門家と共同し議論を深めていく。併せて、新たな実験的調査を実施し、得られた情報に関して、新たな"解釈"の可能性を検討する。
著者
竹下 和貴 林 岳彦 横溝 裕行
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.69-79, 2022 (Released:2022-02-09)
参考文献数
33

回帰分析は,説明変数の変動から目的変数の変動を定量的に説明しようとする統計手法である.回帰分析には,目的変数と説明変数の関係の記述,説明変数による目的変数の予測,目的変数に対する説明変数の介入効果の推定という3つの目的が存在するが,それら3つの目的の間で説明変数の選択基準が異なることに対して,国内の哺乳類研究者の理解はあまり進んでいないように思われる.また,哺乳類研究では,集団(例えば個体群)の平均だけでなく,平均から外れたもの(低順位個体など)も,重要な研究対象となり得る.しかし,これまでの国内の哺乳類研究では,目的変数の条件付き期待値に着目した回帰分析が半ば無自覚的に選択される傾向があり,それ以外の値に対する回帰分析は行われてこなかった.本稿では,記述,予測,そして介入を目的とした回帰分析における統計学的な留意点を整理するとともに,分位点回帰と呼ばれる,任意の分位点に対する回帰直線を推定することができる統計手法の導入による哺乳類研究の今後の発展性を記した.
著者
日置 恭史郎 渡部 春奈 林 岳彦 岩崎 雄一 山本 裕史
出版者
日本環境毒性学会
雑誌
環境毒性学会誌 (ISSN:13440667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.22-37, 2020-07-20 (Released:2020-07-21)
参考文献数
63

Adverse outcome pathway (AOP) is a conceptual framework that organizes existing knowledge concerning the causal linkage between a molecular-level perturbation of a biological system and the resulting adverse outcomes. AOP is currently gaining attention as a potential pragmatic tool in the fields of ecotoxicology and chemical risk assessment. The present paper provides an outline of the AOP framework and discusses the history and current status of studies related to AOP by analyzing available information from published literature and AOP knowledgebase (AOP-KB).
著者
林 岳彦 岩崎 雄一 藤井 芳一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.327-336, 2010-11-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
49
被引用文献数
5

欧米では「ecological risk assessment」という用語は「化学物質の生態リスク評価」のことを指すことが多い。その理由は、歴史的に「生態リスク」という概念が元々「化学物質のリスク評価」の中から誕生し発展してきたことにある。本稿ではまず前半において、「生態リスク」という概念が生まれてきた歴史的な経緯についての概説を行う。また、その歴史的な経緯から「生態リスク」という概念が帯びている「行政の意思決定に寄与する」「不確実性の存在を前提とする」「人間活動との兼ね合いを調整する過程の一端を担う」という特徴的なニュアンスについての説明を行う。本稿の後半においては、現在実務レベルで行われている「初期リスク評価」および「詳細リスク評価」の解説を行う。さらに、生態リスク評価における現状の取り組みと課題について「生態学的に妥当なリスク評価・管理へ」「漏れのないリスク評価・管理へ」「総合的なリスク評価・管理へ」という3つの観点から整理を試みる。
著者
岩崎 雄一 林 岳彦 永井 孝志
出版者
日本環境毒性学会
雑誌
環境毒性学会誌 (ISSN:13440667)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-19, 2013-06-30 (Released:2014-10-23)
参考文献数
27
被引用文献数
5
著者
林 岳彦
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.289-299, 0000
被引用文献数
4

性的対立とは、繁殖にかかわる事象を巡るオスメス間での利害の対立を指す。性的対立は繁殖形質における軍拡競争の原因となり、その結果として集団間の急激な繁殖隔離(種分化)を引き起こす可能性が示唆されている。本総説では、まず性的対立説についての概説を行い、次いで性選択理論としての性的対立説の特徴について古典的性選択理論(ランナウェイ説、優良遺伝子説)との比較をしながら整理を行う。さらに、性的対立説が引き起こす進化的帰結について理論的な観点から整理し、性的対立説と種分化の関係について議論する。
著者
村上 道夫 坪倉 正治 鳥居 寛之 Yuliya Lyamzina 林 岳彦 宇野 賀津子
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.259-263, 2023-05-15 (Released:2023-05-16)
参考文献数
8

Social networking services (SNS) such as Twitter play an important role in the collective knowledge, consensus of citizens and decision making regarding various countermeasures. In particular, since SNS have great power to communicate information in the context of disasters and pandemics, scientists and administrators are required to understand how people’s collective knowledge and trust are formed through SNS and how to communicate risk and scientific information using SNS. Therefore, a special session entitled “Considering the state of scientific information dissemination during crises in the age of social networking” was held at the 35th Annual Meeting of the Society for Risk Analysis Japan. Risk and scientific information dissemination using SNS regarding the Fukushima disaster was discussed: characteristics related to information diffusion on Twitter, the evaluation and fact check of information that influenced the evacuation behavior in Fukushima, and recommendations for scientific information dissemination in the age of SNS derived from these research findings. This paper introduces the contents of the presentations and discussions at the session.
著者
林 岳彦 岩崎 雄一 藤井 芳一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.327-336, 2010-11-30
被引用文献数
5

欧米では「ecological risk assessment」という用語は「化学物質の生態リスク評価」のことを指すことが多い。その理由は、歴史的に「生態リスク」という概念が元々「化学物質のリスク評価」の中から誕生し発展してきたことにある。本稿ではまず前半において、「生態リスク」という概念が生まれてきた歴史的な経緯についての概説を行う。また、その歴史的な経緯から「生態リスク」という概念が帯びている「行政の意思決定に寄与する」「不確実性の存在を前提とする」「人間活動との兼ね合いを調整する過程の一端を担う」という特徴的なニュアンスについての説明を行う。本稿の後半においては、現在実務レベルで行われている「初期リスク評価」および「詳細リスク評価」の解説を行う。さらに、生態リスク評価における現状の取り組みと課題について「生態学的に妥当なリスク評価・管理へ」「漏れのないリスク評価・管理へ」「総合的なリスク評価・管理へ」という3つの観点から整理を試みる。
著者
斎藤 和義 日高 裕敏 品川 準輝 小林 岳彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.193, pp.119-126, 2000-07-12
被引用文献数
2

セルラネットワークを計画・設計・運用する上で、移動通信トラヒック特性の把握は重要である。従来よりトラヒック特性を予測するために移動特性モデルの開発が行われてきた。本報告では、大都市、及び小都市を移動範囲とするタクシーの移動特性をGPSを用いて実測した結果から、仮想的なセルラシステムにおけるセル滞在時間分布、移動方向確率を推定した。また、その推定結果を用いたシミュレーションからセルラシステムにおけるハンドオフ頻度や回線ブロック率等のトラヒック特性を評価した。その結果、大都市と小都市ではセルサイズが小さい場合は特性の差がほとんどないが、セルサイズが大きい場合は平均的な移動範囲の違いから移動方向確率に差が生じることを明らかにした。
著者
関和 裕介 小林 岳彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.277, pp.7-12, 2009-11-05
被引用文献数
1

携帯通信端末の高性能化・低価格化,および通信・放送インフラストラクチャの高度化・大規模化により,携帯インターネット,位置情報サービスや電子マネーサービスなどのモバイルマルチメディアサービスは飛躍的な進歩と普及を遂げている.しかしながら,実用化されたサービスの全てがビジネスとして成功し広く普及しているわけではないし,順調にサービスが提供されているとは限らない.本報告では,(1)2009年3月にサービス終了となったモバイル衛星放送サービス;(2)2009年から2010年にかけて相次いでサービス終了となる携帯電話のPTT(プッシュ・ツー・トーク)サービス;および(3)日本における携帯電話サービスで頻発したエラーに焦点を当て,失敗に至る経緯,海外との比較ならびに失敗要因の分析を示す.