著者
富田 正弘 湯山 賢一 永村 真 杉本 一樹 綾村 宏 田良島 哲 増田 勝彦 髙橋 裕次 池田 寿
巻号頁・発行日
1995-07

古代中世の文書料紙の歴史的変遷について、文献史料によって検討を加えてみると、檀紙・引合・杉原紙・鳥の子等の紙種が観察される。平安時代の文書料紙は、重要な公文書には紙屋紙が公紙として用いられていた。他方、軽微な文書や私文書などの料紙には、地方産の楮紙である檀紙が使用されていた。平安後期になると、檀紙が粗悪な紙屋紙を駆逐し、重要な公文書の料紙となるのである。鎌倉時代にはいると、京都においては、檀紙が公紙として発展し、大きく高檀紙と普通の檀紙とに分化する。後期には、普通の檀紙のうちから良質のものが引合と呼ばれ、上級貴族・僧侶の書状料紙として用いられた。鎌倉においては、幕府の下文・下知状等には御下文紙(後の鎌倉紙)が用いられ、他方幕府の御教書や武士の書状などには杉原紙が盛んに使用された。建武新政以後、関東武士が京都に大挙常住すると、鎌倉の紙使いが京に持込まれ、また武家が京都の紙使いの影響を受け、互いに混淆し合う。公家・寺社においては、高檀紙から大高檀紙・小高檀紙の種別が現れ、近世の大鷹檀紙・小鷹檀紙への繋がり見えてくる。武家では、幕府文書の料紙の主役から鎌倉紙が消え、その地位は普通の杉原紙に取って代られる。後期には、書礼様文書の料紙としては、公武ともに引合や鳥の子を使用し始める。高檀紙は、秀吉の朱印状・判物の料紙に繋がっていき、また、この時期に現れる奉書紙は、引合の系譜を引く文書と言われる。また、古代中世の現存の文書料紙から検討すると、料紙の縦寸法・横寸法・縦横比率・厚さ・密度・簀目本数・糸目巾の時代的変遷を跡付けることができた。また、これらの共通の画期が室町時代と確認され、杉原紙の普及との関係が浮き彫りにされた。これらの研究成果は、まだ中間報告の域を出ないが、今後もこの研究体制を維持し、別の形で研究を続けていくことにより、この試論的成果を検証・訂正したいと思う。
著者
横内 裕人 須田 牧子 池田 寿 藤田 励夫 山口 華代 荒木 和憲 一之瀬 智
出版者
京都府立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

東アジアにおける日本・朝鮮・中国の文化交流を考える基礎情報を得るため、長崎県対馬市に所在する渡来経巻を悉皆調査した。具体的には、豆酘・多久頭魂神社に所蔵される高麗再雕版大蔵経の詳細な目録を作成し、他の寺院等に所蔵される再雕版大蔵経との比較検討を通じて、本経巻の成立・伝来を考察した。その結果、本大蔵経は、おそらくは15世紀頃に印刷され、江戸時代までに対馬に伝来した経巻であり、李氏朝鮮と対馬との緊密な関係の中でもたらされた文化財であることが確認された。
著者
富田 正弘 湯山 賢一 池田 寿 吉川 聡 大藤 修 本多 俊彦 大川 昭典
巻号頁・発行日
2010-04

本研究は、作成年代の明記のない紙を素材とする文化財(文書・典籍・聖教・絵図)の年代推定について、非破壊調査である光学的観察によって行う方法論を確立することである。そのため、これらの文化財特に文書の原本の料紙を所蔵機関に出向いて調査を行った。その主なものは、東寺百合文書(京都府立総合資料館)・上杉家文書(米沢市上杉博物館)・東大寺文書(東大寺図書館)・醍醐寺文書(醍醐寺)・東福寺文書(東福寺)・津軽家文書(国立国文学研究資料館)で、合計1万点ほどの調書を採った。また、前近代の文書等の料紙について、本研究グループが推定した製法で実際にその紙ができるのか確かめるために、高知県紙産業技術センターの協力を得て、大高檀紙の吊り干し製作等、前近代文書料紙の復元製作実験を行った。さらに、中国唐代以前の紙と日本の奈良時代のそれとの繋がり、宋代以降の紙と日本のそれとの関わりを考えるため、中国・韓国を訪問し、文書・聖教の料紙を調査した。その結果、まず成果として確認できたことは、前漢時代の紙は文字を書く素材としては未熟であるが、繊維を水中に拡散させ簀で漉き上げるという製法は製紙と同じ技法であること、蔡倫以後の紙は筆記用の素材として優れたものであること、宋代以降の宣紙・竹紙の白さと滑らかさは江戸期の製紙に与えた影響が大きいと思われること、等を確認できた。日本の文書等料紙の変遷としては、奈良時代の麻紙・楮紙、平安時代から南北朝時代の檀紙・引合、室町時代の杉原紙・強杉原、桃山時代から江戸時代の大高檀紙・奉書紙・美濃紙、南北朝時代と戦国時代の斐紙、戦国時代以降の椏紙等のそれぞれの時代の特徴的な料紙を捉えることができた。また、戦国時代の関東武士の発給文書の料紙は前時代に対し特異であり、それが江戸時代の製紙に与えた影響については、改めて考える必要があることが分かってきた。これらの成果は、料紙の時代判定の基準として充分に使えるものである。
著者
池田 寿
出版者
大正大学史學會
雑誌
鴨台史学 (ISSN:13490893)
巻号頁・発行日
no.5, pp.27-42,図巻頭2p, 2005-03
著者
谷内 仁 池田 寿昭 池田 一美 須田 慎吾
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.397-400, 2011-07-01 (Released:2012-01-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1

プロカルシトニン(procalcitonin, PCT)は全身性細菌感染症のバイオマーカとして有用であり,敗血症の重症度ともよく相関するとされる。今回,感染症を伴わない高PCT血症を呈した悪性症候群(neuroleptic malignant syndrome, NMS)疑いの一例を経験したので報告する。症例は66歳,男性。中咽頭癌の根治術後,摂食不良となり胃瘻を造設した。3日後より発熱し,血液生化学検査ではCRP,PCT,CKの上昇を認めたため,敗血症および横紋筋融解症が疑われ,ICU入室となった。入室時バイタルサインは安定し,理学所見上感染巣は認めなかった。胃瘻造設後ハロペリドールが増量されていたことから,向精神薬増量によるNMSが疑われた。輸液管理のみでCRP,PCTは低下した。本症例においてPCTが上昇した原因は特定できなかったが,細菌感染症を伴わない悪性症候群の疑い例で,炎症に付随しPCTが上昇する可能性があることに注意する必要がある。
著者
菅野 裕臣 菅原 睦 柳田 賢二 池田 寿美子 ムハメ フセーゾヴィチイマーゾフ ラシド ウマーロヴィチユスーポフ アリ アリーイェヴィチジョン マネ ダヴーロヴィチサヴーロフ マハンベト ジュスーポフ アジズ ジュラーイェフ ブルット インノケンチイェヴィチキム 劉 勲寧
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

クルグズスタンとウズベキスタンのドゥンガン人計4名を日本に招聘してドゥンガン人に関する国際集会を持ったが,これはドゥンガン人研究者の初めての日本訪問であり,これを基礎に日本ドゥンガン研究会が発足することになり,その論集を作成することが出来た.さらに研究組織は上記2国を訪れ,またウズベキスタンのウズベク人,カザク人,高麗人研究者を招聘して,中央アジアの多言語状況についての研究・報告を行った.
著者
中道 勇 谷川 文紹 水越 弘 原田 修成 池田 寿人 得能 昭夫 立浪 徹 斎藤 進 原田 昭博 清田 築 富山 悟
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.200-210, 2003-07-30
被引用文献数
5

富山県歯科医師会成人・産業歯科保健部では,昭和63年に会員の約7割で構成する「事業所健診協力医制度」を発足させ,歯科健診と歯科保健指導を通じて,事業所における口腔保健の向上と健康管理を推進することを目的として,歯科保健活動を本格的に行ってきた.14年間継続的に歯科保健活動を実施してきた大規模事業所における歯科保健行動および口腔保健状況などの継時的推移について検討を加えたところ,以下の結果が得られた.1.歯科保健活動の長期実施事業所では,1日の刷掃回数2回以上,1回の刷掃時間3分以上行う者の割合が増加するなど,14年間に歯科保健行動の変容がみられた.2.1人平均現在歯数,歯周疾患の処置の必要度は変わらないものの,1人平均未処置歯数と喪失歯数が減少し,1人平均処置歯数が増加するなど,口腔内状況が改善した.3.歯科医療費や受療件数は,歯科保健活動を実施すると一時的に増加するものの,長期的には医療費全体に占める歯科医療費の割合は4〜6%程度減少した.以上のことから,事業所における歯科保健活動を継続的に実施することによって,歯科保健行動や口腔保健状況が改善されることが示唆され,歯科医療費の節約ができることが推測された.