著者
渡部 信一
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.217-226, 1987-10-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
30

1健忘失語例の語想起障害に対して, 認知心理学的観点から考察した結果, 以下の点が明らかになった.1) 本症例は再生に著しい障害を示したが, 再認は全く障害されていない.これは言語情報の検索過程に限局した障害であり, 検索過程と再認過程を独立した別の過程であるとする二重過程説を支持していると考えた.2) 語想起困難に陥った場合でもTOT現象が全く出現せず, 本症例の語想起困難時の検索は非常に低い検索レベルにとどまり, かつ部分的検索も行われていないことが明らかになった.3) 「しんかんせ」のヒントで「新幹線」が想起できないことから, 本症例はひとつの単語をひとつのパターンとして記憶していると考えられた.4) 手がかり効果がなかったことなどから, 本症例の語検索は自動的検索が主であり, 語想起困難に陥った場合の制御的検索は非常に困難であることが明らかになった.
著者
渡部 信一
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.33-39, 1996-03-30 (Released:2017-07-28)

今回筆者は、それまで全く指導を受けたことのなかった「指書」をコミュニケーション手段として突然使い始めたひとりの音声言語を持たない自閉症児を経験した。本事例は幼児期から文字に対しては著しい興味を示し、「指書」出現以前にも単語(ひらがな、カタカナ)の書字はある程度可能であったが、それをコミュニケーションに用いることは全くなかった。初めて「指書」が出現してから3ヵ月後には30単語、6ヵ月には100単語以上が観察され、その後も2単語の連続や品詞の拡大(形容詞、動詞、助詞、感情語)などの発展が認められた。従来、自閉症児に対し音声言語以外のコミュニケーション手段を意図的・系統的に指導した報告は多数あるが、本事例では事例自らが「指書」という新たなコミュニケーション手段を使い始めたという点で従来の研究とは異なった意味を持つと考える。
著者
佐藤 克美 海賀 孝明 渡部 信一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Suppl., pp.145-148, 2011-12-20 (Released:2016-08-08)
参考文献数
4

神楽継承用教材として立体視CGにどれほど効果があるかを明らかにするため,フレームシーケンシャル方式の3D眼鏡を採用したプロジェクタ用およびパララックスバリア方式を採用した裸眼立体視モニター用の2方式の立体視CGを評価した.予備調査として高校生に立体視CGを視聴してもらったところ,3D眼鏡をかけた立体視の方がよいとの回答が多く,没入感やリアリティーの高さが教育に役立つと考えれた.また神楽の師匠と弟子たちに調査をしたところ全員が裸眼立体視がよいと答えた.明るく,はっきりしていることがその理由だった.立体視CGは複雑で理解が難しいものに対して学習者の理解を助ける役目が期待されていると思われた.
著者
伊勢 只義 塩野目 剛亮 渡部 信一
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.J267-J270, 2012 (Released:2012-06-25)
参考文献数
12

Recently, video footage has been used for motion observation of primary players for sports instruction. In this paper, we analyze motion observation of an expert javelin thrower at several frame rates of attempt movie. We obtained an interview with an expert javelin instructor to investigate the effectiveness of high speed movies on motion observation with frame rates of 30, 60, 120, and 240 fps. As a result, (1) playback times, (2) pause times, (3) fast-forward or rewind times, and (4) playback order were measured. In addition, 57 of the meaningful units for instruction were obtained from the interview analysis. The results also show that the high speed movie is effective for figuring out a player's conscious of bodymotion and setting an agenda to adjust motion in dynamic postures for motor learning. The differences of the tendency of motion observation between each frame rate were also discussed.