著者
大浦 弘樹 池尻 良平 伏木田 稚子 安斎 勇樹 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.41085, (Released:2018-01-12)
参考文献数
48

一般の人々に大学の公開オンライン講座を提供するMOOC (Massive Open Online Course) が急速に拡大している.MOOCは講義動画を中心とした学習コンテンツで構成され,受講者は掲示板上で他の受講者と交流できるが,なかには講師による直接の指導や他の受講者との対面学習を希望する受講者もいる.本研究では,日本史がテーマの一般向けMOOCで,講師の指導のもと他の受講者と議論を通した対面学習を希望する受講者に対し,MOOCコンテンツを事前学習に位置づけ,グループ演習中心の対面学習と連動させた反転学習の実践データから反転学習の効果を評価した.具体的には,修了合否と知識の活用力としての歴史的思考力に対する反転学習の効果を,受講者属性やオンライン学習行動による効果も踏まえ,それぞれの効果の大きさを比較して検証した.その結果,修了合否に対しては反転学習の有意な効果は確認されず,動画視聴と掲示板活動の効果がより大きく,高齢者や非大卒の受講者に修了率がやや低い傾向が示唆された.一方,歴史的思考力に対しては本講座の修了者を対象に反転学習のより大きな効果が示され,動画視聴と掲示板活動の効果は小さく,年齢や学歴の効果も限定的であった.
著者
池尻 良平 山本 良太 仲谷 佳恵 伏木田 稚子 大浦 弘樹 安斎 勇樹 相川 浩昭 山内 祐平
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.31-44, 2020 (Released:2020-09-17)
参考文献数
16

近年の高校の歴史教育では,ある時代の因果関係を多面的に分析する歴史的思考力の育成が重視されている。しかし,歴史的思考力の程度が多様な中堅高校において,各生徒の思考力や関心に合わせて柔軟に歴史的思考力を育成できる授業モデルは確立されていない。そこで本研究では,中堅高校における生徒の多様な関心に対応できる動画を複数用意して事前に学習させ,その学習内容をグループで組み合わせることで,ある時代の因果関係を多面的に分析する歴史的思考力を育成するアラカルト型反転授業を開発した。授業実践を通した評価の結果,事前に比べて事後で歴史的思考力が有意に向上し,中程度の効果があることが示された。また,事前ではクラス内での歴史的思考力にばらつきがあったのに対し,事後では26名中25名が中レベル以上の歴史的思考力を身につけていることも示された。さらに,生徒の関心の多様性についても対応できた上で,該当時代の関心が事後で有意に向上し,小~中程度の効果があることが示された。
著者
宮島 隆一 藤淵 俊王 宮地 優介 立石 哲士 宇野 善徳 天川 一利 大浦 弘樹 折田 信一
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.326-334, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
16
被引用文献数
3 8

Medical staffs like radiological technologists, doctors, and nurses are at an increased risk of exposure to radiation while assisting the patient in a position or monitor contrast medium injection during computed tomography (CT). However, methods to protect medical staff from radiation exposure and protocols for using radiological protection equipment have not been standardized and differ among hospitals. In this study, the distribution of scattered X-rays in a CT room was measured by placing electronic personal dosimeters in locations where medical staff stands beside the CT scanner gantry while assisting the patient and the exposure dose was measured. Moreover, we evaluated non-uniform exposure and revealed effective techniques to reduce the exposure dose to medical staff during CT. The dose of the scattered X-rays was the lowest at the gantry and at the examination table during both head and abdominal CT. The dose was the highest at the trunk of the upper body of the operator corresponding to a height of 130 cm during head CT and at the head corresponding to a height of 150 cm during abdominal CT. The maximum dose to the crystalline lens was approximately 600 μSv during head CT. We found that the use of volumetric CT scanning and X-ray protective goggles, and face direction toward the gantry reduced the exposure dose, particularly to the crystalline lens, for which lower equivalent dose during CT scan has been recently recommended in the International Commission on Radiological Protection Publication 118.
著者
望月 俊男 チン A. クラーク 山口 悦司 大浦 弘樹
出版者
教育システム情報学会
雑誌
教育システム情報学会誌 (ISSN:13414135)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.17-34, 2022-01-01 (Released:2022-01-01)
参考文献数
73

In today’s “post-truth” era, lay citizens have difficulty trusting and judging what is true based on their integrated comprehension of various information. The amount, diversity, and complexity of information has increased dramatically causing rampant conflicting information originating even from reliable sources in topics such as vaccines, diets, educational methods, and so on. This paper reviews research in epistemic cognition that explores new ways of information literacy in order to improve the abovementioned situation. Based on the AIR model for epistemic cognition, which places particular emphasis on evidential practices, we explain the Grasp of Evidence framework which captures competencies that include evaluation, interpretation, and integration of evidence, as well as evaluation of testimonies of experts who provide such information. Our three projects that explore innovative forms of information literacy education based on the framework are also described in this paper.
著者
伏木田 稚子 大浦 弘樹 吉川 遼
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.44054, (Released:2020-09-07)
参考文献数
39

本研究では,統計の基礎とデータ分析を扱う反転授業において,受講生の理解度と講義動画の視聴行動を検討した.実践では,講義動画と対面学習の内容に関連があり,真正性の高い問題解決を要するゲームを用いて,動画視聴の前に認識的準備活動 (EPA) を行った.EPAの実施単位として個人EPA群と協調EPA群を設定し,受講前,中間,受講後の理解度テストの得点を比較した後,動画視聴の比率やスタイルを分析した.その結果,(1) 個人EPA群と協調EPA群の違いにかかわらず,受講生全体の理解度が向上する,(2) 協調EPA群の方が,対面での演習活動前に理解度がより向上しやすい,(3) 個人EPA群の方が講義動画を選択的に反復視聴する傾向がみられる,などの示唆が得られた.
著者
西森 年寿 望月 俊男 椿本 弥生 山内 祐平 久松 慎一 中原 淳 大浦 弘樹
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.309-316, 2014-12-25 (Released:2016-08-11)

筆者らは,大学教育での学生によるレポート課題などにおける問題設定の支援を目的として,映像資料閲覧を支援するための視聴プレイヤーMEET Video Explorerを開発した.教育現場での映像アーカイブ利用が普及し,一人一台環境が実現されるなかで,こうしたツールの利用可能性が高まっている.本研究では実験授業においてこのツールを用い,問題設定に対して映像アーカイブの個別視聴が与える効果と,ナレッジマップ機能の持つ効果について検討を行った.個別視聴活動と講師が説明を行う一斉視聴活動を行った群の比較から,個別視聴群では一部の問題に凝集しない問題設定が行えていることが分かった.また,ナレッジマップの作成により,複数の情報を統合しようとする独創性の高い問題設定が支援できる可能性が示唆された.
著者
池尻 良平 大浦 弘樹 伏木田 稚子 安斎 勇樹 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.53-64, 2017-05-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
20

MOOC(大規模公開オンライン講座)の普及によって遠隔地であっても無料で大学の講義を受講できるようになっている.しかし,講座の学問領域において何が学習されているかを実証的に評価している研究は少ない.そこで本研究では,MOOC の歴史学講座の受講による学習効果を評価した.講義内容を視聴し課題に取り組んだ実質的な受講者を分析した結果,歴史領域の知識の獲得を要する各週課題の平均得点率はどれも80%以上,歴史的思考力を要する講義課題の平均得点率は68%であることが確認された.一方,事前事後の質問紙・テストで測定した歴史的思考力は事前に比べて事後で有意に向上したものの,効果量としては小さいということが示された.これらの結果を踏まえ,講義映像と掲示板で構成されるMOOC に対し,より歴史的思考力を育成する方法として,対面学習と組み合わせたり,CSCL 研究の知見を踏まえた機能を追加したりする改善方法も示した.
著者
大浦 弘樹
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は,統計的思考の育成を目標に「データ分析と論証活動を支援する探究型学習環境」を開発することである.平成28年度は「未来の学習のための準備(Preparation for Future Learning: PFL)」の支援原理をもとに,学習者が講義などの説明を受ける前に学習者が他の学習者とデータ分析と論証を通した統計的問題解決を体験できるノベルゲーム型の学習環境を構築し,小規模の評価実験を実施した.29年度の研究計画として,1)学習コンテンツの制作と2)学習環境(システム・コンテンツ)の評価の2つがあった.まず1)について,28年度の実験結果の詳細な分析から既存のシステムではにPFLに必要な足場かけが十分でなかったと判断し,システムとコンテンツの仕様を変更して修正を行った.具体的には,既存のシステムでは統計的問題解決を体験できるものの,サンプリング(対象とサイズの選択)と収集したデータに対する統計量の選択のうち,サイズの決定しか学習者側で指定できない仕様だった.そこで,サンプリングの対象や統計量の選択も学習者側で指定できる仕様に変更してシステムとコンテンツを修正した.これにより,学習者は問題解決型シナリオの中での意思決定機会が増え,統計的問題解決のプロセスをより深く体験できるようになった.一方,2)については,修正したシステム・コンテンツで評価実験を実施した結果,想定した人数の被験者が集まらなかったため,実験計画を練り直し30年度に評価実験を再実施することにした.
著者
大浦 弘樹
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、学習者自身のデータまたはシミュレーションによって生成したデータから統計的表象を生成可能なWebベース学習支援システムを開発した。本システムでは専門的な知識やスキルがなくとも平均値や標準偏差といった代表値の計算や、ヒストグラムや箱ひげ図といった統計的表象を生成することができ、パラメタを指定することで理論分布からデータを生成することも可能である。本システムの評価実験の結果、被験者は自ら生成した図表の解釈やその比較をしながらデータの解釈に向けた会話が起きることが確認された。
著者
栗原 一貴 望月 俊男 大浦 弘樹 椿本弥生 西森 年寿 中原 淳 山内 祐平 長尾 確
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.391-403, 2010-02-15
被引用文献数
3

本論文では,現在一般的に行われているスライド提示型プレゼンテーション方法論について,その特徴を表す新しい定量的指標を提案する.提案指標は,「準備した順に発表資料を提示しているか」および「発表者と聴衆がどれくらい離れたところを表示しているか」を数値的に表現するものである.この指標を用いることで,プレゼンテーションの改善を図る様々な拡張手法を定量的に評価することが可能となる.さらに,提案手法を算出可能なプラットフォームシステム,Borderless Canvasを開発する.大学院講義における運用を通じて提案指標の算出と可視化例,解釈例を示し,指標の有効性と限界,適切な適用方法を議論する.In this paper we propose quantitative metrics to enable discussing the effectiveness and the limitations of extended methods of slide-based presentation methodology, which is widely used and studied today. We define metrics to estimate such as "how the presenter follows the prepared sequence of topics" and "how the presenter's behavior and every member of the audience's behavior differ." Then we develop a ZUI multi-display discussion software, Borderless Canvas, as a platform for calculating the metrics. The result of a situated datataking in a graduate school class for a semester shows an example usage of the metrics and their interpretation. Based on this, we discuss their effectiveness and limitation to apply them to evaluate extended methods of slide-based presentation methodology.