著者
湯田 厚司
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.113-117, 2020-02-20 (Released:2020-03-07)
参考文献数
13
被引用文献数
1

スギ花粉の舌下免疫療法は2019年春に発売後5年目の花粉飛散期を迎えた. また, 2018年には11歳以下の小児に適用を有するシダキュア® も発売された. 筆者は2018年末までに730例のスギ花粉舌下免疫療法を行っており, 保険適用以前の臨床研究を加えると1,100例を超える経験がある. 筆者の実臨床経験に基づく舌下免疫療法について概説した. われわれはシダトレン® (2,000JAU) 発売以降で毎年の臨床効果を報告しており, 花粉飛散数にも影響されるが, 効果は既存の薬物治療より高く, 治療年数とともに増強した. 高アレルゲン量を含有する新規のシダキュア® (5,000JAU) でも初年度に69例で検討したが, シダトレン® 治療2年目とほぼ同等の効果があった. また, アレルゲンが高用量になると副反応が若干増えたが, 治療スケジュールに影響する程度ではなく, 全例が最大維持量で治療できた. 舌下免疫療法が低年齢の小児にも適用となったが, シダキュア® で成人と同じプロトコールで治療した小児例において, 成人と副反応発現率は変わらず, 1年目の効果も同等に認めた. スギ花粉症に効果的な舌下免疫療法であるが, ヒノキ花粉への効果はまだ限定的である. ヒノキ花粉症への薬物治療併用などを考慮すべき例も多い. スギ花粉とダニの両方を抗原とするアレルギー性鼻炎例の合併は多く, 両アレルゲンでの併用舌下免疫療法が望まれる. われわれはシダトレン® とミティキュア® を併用した53例の経過を初めて報告し, 安全に併用ができることを示した. その後に, 少数例の前向き試験でも安全性が報告され, さらにはシダキュア® とミティキュア® を併用した104例の多施設共同前向き試験でも安全性が示された. これらのエビデンスにより今後は併用例が増えてくると予想される. 舌下免疫療法の課題はまだ多く, 今後もその克服に重点を置く必要がある. 基礎と臨床を結びつける研究が必要であり, 質の高い検体と患者背景を提供すべく, 多くの医療機関と共同研究を進めている.
著者
湯田 厚司 鵜飼 幸太郎 坂倉 康夫 谷 秀司 松田 ふき子 楊 天群 間島 雄一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.577-582, 2002
参考文献数
7
被引用文献数
6

基準木のスギ雄花着生状況から津市のスギ花粉飛散予想を行った.方法は三重県津市郊外の三重県科学技術振興センター敷地内に1964年に植樹された23種のクローンからなる69本を基準木に選定した.この69本の東西南北4面(合計276面)の雄花着生状況を目視法で0から3点に点数化した.その平均点数とスギ花粉飛散数を1988年より2000年まで検討した.その結果,1995年と2000年の大量飛散年以外は基準木雄花着生平均点数とスギ花粉飛散数の実数は一次関数で高い正の相関(r=0.914)を認めた.大量飛散年は前年の飛散状況に影響をうけていたため,前年より飛散の多い年を検討すると,基準木雄花着生平均点数から前年の平均点数を減算した値と,スギ花粉飛散数は極めて高く正に相関した(r=0.994).以上の結果より,基準木雄花着生状況から花粉予想が可能と考えた.
著者
福山 智子 湯田 厚司 山田 弘之 原田 輝彦 坂倉 康夫
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.462-466, 1994-12-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

We report a case of esophageal perforation caused by a piece of glass in a 34-year-old woman suffering from sudden severe pharyngeal pain. We found a foreign body lodged at the esophageal wall 4cm below from the first esophageal constriction upon X-ray and flexible fiberscopic examination. The foreign body was removed using a rigid esophagoscope 39 hours after swallowing. The foreign body was an equilateral triangular piece of glass whose side was 30mm. Immediately after the foreign body was removed, we found an esophageal perforation, subcutaneous emphysema and pneumomediastinum. The perforation was closed using an external approach. The patient showed improvement after the operation.
著者
鵜飼 幸太郎 坂倉 康夫 竹内 万彦 増田 佐和子 湯田 厚司 大川 親久 緒方 俊行
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.447-458, 1999

スギ花粉症の患者30例を対象に, 甜茶ポリフェノール含量を高めた飲料 (甜茶エキス80mg/日) をスギ花粉飛散前に投与を開始する初期投与群 (15例) と発症後投与群 (15例) に投与し, スギ花粉飛散前期における鼻症状, 眼症状および併用薬剤使用状況を調査し, その有効性, 安全性および有用性について検討を行った。<BR>初期投与群と発症後投与群を比較したところ, 花粉症発症1週目, 2週目ともsymptom scoreには差が認められなかったが, medication scoreおよびsymptom-medication scoreには, 統計学的に有意な差が認められた。<BR>試験終了時の医師による最終総合評価では, 初期投与群で「中等度改善」以上が53.3%を占め, 発症後投与群の6.7%に比べて有意に高い症状改善率を示した。<BR>副作用は全例に認められず, 臨床症状改善率と副作用を考慮した有用度は初期投与群において「やや有用」以上が60%を占め, 発症後投与群の33.3%と比較して有意に高い有用性を示した。<BR>以上の結果より, 甜茶飲料をスギ花粉飛散前から飲用することにより, スギ花粉症症状を予防的に抑制し治療薬の低減に有用であることが確かめられた。
著者
湯田 厚司 宮本 由起子 服部 玲子 荻原 仁美 竹内 万彦 間島 雄一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1366-1371, 2007
被引用文献数
7

【背景・目的】スギ花粉症に対する免疫療法の直接医療経費を検討し,スギ花粉飛散数の違いによる影響を検討する.【方法】免疫療法および対照の初期療法の各18例で,スギ花粉大量飛散(2005)年,中等度飛散(2003)年,少量飛散(2004)年に同一患者が支払った医療費,薬剤費をレセプトおよび診療録から算出した.また,大量飛散年に無記名で症状と治療満足度のアンケート調査をVAS法で行った.【結果】免疫療法群は維持期の医療費を加えても総医療費が低く,処方薬剤費も少なかった.また,大量飛散年でも免疫療法群は処方薬剤費が増加せず,医療費が増さなかった.アンケート調査でも免疫療法群の満足度が高く,くしゃみ,鼻みず,眼のかゆみの症状が有意に良かった.【結論】免疫療法は直接医療経費の面からは医療経済上も有用で,特に花粉飛散数が多い程顕著になる.
著者
湯田 厚司 石永 一 山中 恵一
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

スギ花粉症の次世代治療に期待される舌下免疫療法を本邦で初めて小児例で検討し、安全性と有効性を確認した。同法は小児でも安全に施行でき、成人よりも効果的であった。本研究の遂行で様々な課題もわかり、特に本法が有効であったスギ花粉症例で、合併するヒノキ花粉症に無効な例が半数近く存在した。治療と同時に作用機序解明に免疫学的変化の検討も行った。治療により、誘導性制御性T細胞の増加、治療有効群でスギ花粉特異的IgG4の増加、治療無効群で血清IL-33の増加が確認できた。血清L-31, IL17Aには変化がなかった。
著者
湯田 厚司 宮本 由起子 荻原 仁美 服部 玲子 大久保 公裕
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.124-132, 2009

【背景】花粉症に対する舌下免疫療法は,本邦では試験段階として成人例での有用性が報告されている.本法は痛みがなく,通院回数が少ないので,特に小児例で利点が多いと考えられるが,小児スギ花粉症での検討はない.【方法】スギ花粉症患児10例(男児4例,女児6例,平均8.5±2.2歳)に標準化アレルゲンエキス「スギ花粉」(トリイ社製)で舌下免疫療法を行った.投与方法は成人例と同じとし,2000JAUで週1回維持した.初年度の臨床症状を検討した.【結果】全例で安全に在宅投与ができた.初年度スギ花粉飛散期の症状は,全期間で軽症であり,スコアの最大は鼻閉の1.3点であった.救済薬の使用は少なく,10例中3例が無投薬無症状で,2例が5日以内の頓服服用であった.5cm尺度のvisual analog scaleも1cm程度と極めて良好であった.アンケートによる治療の印象は全例良好であった.【結論】少数例でのpilot open studyであるが,小児スギ花粉症にも舌下免疫療法が有効である可能性が示唆された.