著者
松本 恵子 多田 雄一 清水 浩 澁澤 栄
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.79-85, 2009-06-01 (Released:2009-09-04)
参考文献数
36
被引用文献数
4 3

カイワレダイコン(Raphanus sativus L. ‘Kaiwaredaikon (Japanese radish sprout)’)の生育および抗酸化活性に与える給水量の影響について検討した.3水準の給水量すなわち300 ml,500 ml,700 ml(栽培試験終了時の土壌含水率はそれぞれ60%,70%,80%)の試験区を設定し,カイワレダイコンを栽培した.そして,それぞれの試験区における胚軸長,新鮮重,含水率,新鮮重1gあたりの抗酸化活性,総ポリフェノール含量を測定した.その結果,給水量が少ない区ほど胚軸長は短くなり,新鮮重および含水率は低下した.一方,新鮮重1gあたりの抗酸化活性は上昇し総ポリフェノール含量も増大した.また,新鮮重1gあたりの抗酸化活性と新鮮重1gあたりの総ポリフェノール含量との間には正の相関があることが認められ,給水量が少なくなるにつれてカイワレダイコンの新鮮重1gあたりの抗酸化活性が増大したのは,新鮮重1gあたりの総ポリフェノール類含量が増したためであることが示唆された.本研究により,給水量を制限して栽培することは,カイワレダイコンの新鮮重1gあたりの抗酸化活性を高めることに有効であることが明らかとなった.
著者
澁澤 栄
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.790-793, 2017-08-15

ICTの農業への利活用場面をひもといていくと,農業技術の核心である「農作業判断」という技術要素の転換に直面する.そこで架空の若い農業者に登場してもらい,農業情報の収集と共有,作業判断に必要な情報と合意形成のプロセス,知的財産の共有など,コミュニティベース精密農業の具体的な展開の様子をフィクションにして解説した.
著者
澁澤 栄
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.259-273, 2003
被引用文献数
3 2

本稿は,精密農業研究の枠組みと課題について総括したものである.ほ場ばらつきの記述と解析およびその農学的解釈に関わる科学の論理,ほ場ばらつきのセンシングや可変作業機械の開発に関わる技術の論理,そして農産物の販売戦略や利益に関わるビジネスの論理にわたる俯瞰的な研究アプローチ群をもつことが精密農業研究の特徴である.このような研究の枠組みは,欧米諸国をはじめとした世界各国の多様な農業立地条件を基礎にして,多年にわたる研究・開発・普及の蓄積により形成された.<br>精密農業研究モードは過去に5回の大きな変化を遂げ,最後に登場した米国モデルと日本モデルは,農業イノベーションを展望したビジネスモデルであり,その発展には社会実験が求められる.情報技術を軸にした横断的な研究分野の創出が,精密農業ビジネスモデルの発展にとって切実な課題となりつつある.
著者
ロイ スワパン クマル 澁澤 栄 ラヒム アノアール アドゥル 下保 敏和
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.88-95, 2004-07-01
参考文献数
31
被引用文献数
1

西マレーシアの水田において2000年に土壌特性と収量を格子状に取得した。ジオスタティスク解析の結果, 土壌特性と収量には強い相関があり, レンジは土壌特性より収量の方が短かかった。代用データ (土壌特性) を用い, 収量の空間的ばらつきをコクリギングにより推定したが, このほ場ではそれほど精度を高める効果がなかった。クリギングにより得られた収量マップでは, プロット値の中央部は長辺方向両端に対して低収量 (3.5t/ha未満) であった。5t/ha以上の高収量を得るために, 低収量領域への特別な処置として, 土壌中のN及びP含有量を増加させる必要性が示唆された。
著者
梅田 大樹 澁澤 栄 高柳 正夫 岡山 毅 平子 進一
出版者
The Spectroscopical Society of Japan
雑誌
分光研究 = Journal of the spectroscopical research of Japan (ISSN:00387002)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.245-251, 2006-08-15
被引用文献数
1

A new technique applying polarized near-infrared spectroscopy is proposed for precise measurements of moisture content in soil. Diffuse reflectance spectra of seven kinds of soil samples were measured. Linear relation between the moisture content and the signal intensity due to water is lost when the moisture content of the soil is high, presumably because intense direct reflection at the sample surface interferes measurements. Application of polarized light was found to improve the precision of quantitative measurement. In the scheme, by using a polariz-ing plate for each of the incident and reflected light, p-polarized light was irradiated on a soil sample, while only the s-polarized light from the sample was detected. The technique is expected to be applicable not only for precise measurements of moisture content but also for diagnosis of texture of soil with high concentration moisture.
著者
澁澤 栄
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.259-273, 2003 (Released:2013-03-31)
参考文献数
48
被引用文献数
3 2

本稿は,精密農業研究の枠組みと課題について総括したものである.ほ場ばらつきの記述と解析およびその農学的解釈に関わる科学の論理,ほ場ばらつきのセンシングや可変作業機械の開発に関わる技術の論理,そして農産物の販売戦略や利益に関わるビジネスの論理にわたる俯瞰的な研究アプローチ群をもつことが精密農業研究の特徴である.このような研究の枠組みは,欧米諸国をはじめとした世界各国の多様な農業立地条件を基礎にして,多年にわたる研究・開発・普及の蓄積により形成された.精密農業研究モードは過去に5回の大きな変化を遂げ,最後に登場した米国モデルと日本モデルは,農業イノベーションを展望したビジネスモデルであり,その発展には社会実験が求められる.情報技術を軸にした横断的な研究分野の創出が,精密農業ビジネスモデルの発展にとって切実な課題となりつつある.
著者
澁澤 栄 ROY Swapan Kumar
出版者
東京農工大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,試作中のリアルタイム土中光センサーを用いて複数ほ場における土壌分光反射スペクトルを収集し,地力推定アルゴリズムと精密な土壌マップの作成,及び作物生育・収量マップと合わせて,投入量削減・品質向上のための土壌管理モデルを提案することにある。平成15年度には,すでに収集してあるマレーシアの大規模水田における土壌マップデータと収量マップデータを用いてマネジメントユニットマップを作成し,土壌窒素マップによる収量マップ推定アルゴリズムと少数収量データより水田全体の収量マップ推定アルゴリズムを用い,新たに土壌管理に関する短期的処方箋(可変施肥)と長期的処方箋(土壌改良)を区別して提案した。カリ分布と連動したコクリーギングによる収量分布推定を行い,推定精度の若干の向上が得られた。これらの成果は,精密農法ヨーロッパ会議等で発表したほか,農業機械学会誌へ論文として投稿中である。ArcViewを基本にしたGISシステムを用意し,データベース蓄積を開始した。特に,東京農工大学付属農場の長期栽培実験畑地(クロボク土)において,リアルタイム土中光センサーで収集した土中カラー画像による画像マップデータにつき,画像テキスチャ解析を行い,化学肥料のみで管理した土壌と牛糞堆肥を用いた土壌の評価分類が可能なこと,さらには土壌有機物含量や水分分布の推定が可能なことを確認した。さらにこれらの傾向が地表面勾配と相関の高いことを見いだし,水分移動や作業管理の長期にわたる影響を受けている可能性が示唆された。以上の成果は,農業機械学会関東支部において発表したほか,学術論文として投稿準備中である。
著者
澁澤 栄 荻原 勲 千葉 一裕 南石 晃明 小島 寛明
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

土壌情報及び農作業の記録データに基づき,農家の判断プロセスを模倣した農業AIシステムと知農ロボットスキームを提案した。農産物流通プロセスの記録技術を基礎にして,情報付き農産物の新流通スキームとアグロメディカルフーズの生産構想を提案した。本庄PF研究会が生産出荷する「本庄のトキメキ野菜」のブランド化に成功した。生産者と仲買・卸および小売の役割や利害関係の裏付けを入手するのが困難であった。
著者
小平 正和 澁澤 栄 二宮 和則 加藤 祐子
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.110-121, 2009
被引用文献数
2

リアルタイム土壌センサ(RTSS)を用いて大規模畑作地の効率的な圃場マッピング手法の開発を行った.</br>具体的には,土壌観測ラインと圃場マップの表示に注目した.一筆管理は慣行法の対角線とし,局所管理は定幅散布機の走行間隔として圃場全面を観測した.圃場マップは,営農者が理解し易いグリッドマップとした.グリッドマップの特徴は,グリッド内に平均値と最大値および最小値を表示した.</br>RTSSの主な改良点は,土壌観測速度を慣行の2倍(0.56 m/s)にした.高速化による検量線の感度変化をPLS回帰分析により解析した.得られた決定係数(R <sup>2</sup>)は,土壌水分(0.77),有機物含有量(0.49),pH(0.53),硝酸態窒素(0.09),全窒素(0.86)および全炭素(0.95)であった.硝酸態窒素は,分析ミスにより土壌試料数が減ってしまったので,参考として記載した.</br>RTSSの高速化により,4圃場で11 haの大規模畑作地に対して1 ha約1時間の観測作業速度を得た.</br>本研究の最大の成果は,営農者が過去の経験として圃場内にライムケーキを多量に溢した場所があることを,圃場マップから正確な位置情報として,確認できたことである.そして,RTSSが意思決定支援の1つとして,営農者に認められたことである.<br>