著者
片野 修
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.441-449, 1994-02-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
21
被引用文献数
6

京都市の二河川でカワムツとオイカワが同所的に生息し, 同種内と同様に二種間でも攻撃行動を行った.両種において大型個体は小型個体より頻繁に表層部を利用し, 種内及び種間の干渉において優位であった.カワムツとオイカワの両種とも雑食性であったが, オイカワの方がカワムツよりも付着藻類を摂食する頻度が高かった.両種の摂餌場所には大きな違いはなく, その周辺で多くの種間攻撃が起こった.両種とも攻撃的干渉と付着藻類摂餌行動の頻度との間に有意な相関関係がみとめられた.両種の個体の行動圏は多くの場合互いに重複していたが, 同種及び他種に対して縄ばりが形成されることも観察された.
著者
片野 修
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.425-431, 2009-05-15
被引用文献数
1 5

オオクチバスの釣られやすさに見られる個体差について実験池で調べた。1 日おきに 10 回調査したところ,1 回に釣られるバスの数は日ごとに減少した。個々のバスが実験期間を通して釣られた回数には 0~8 回と大きな差があり,同じ個体が 1 日に 2 回釣られることも 3 例認められた。釣られた記録から,65 尾のオオクチバスのうち 34 尾は,用心深い個体(8 尾),学習する個体(10)尾,釣られやすい個体(16 尾)に分けられた。オオクチバスでは,釣られる危険に対する学習と用心深さや釣られやすさの個体差の両方が認められる。<br>
著者
中村 智幸 片野 修 山本 祥一郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.745-749, 2004-09-15
被引用文献数
3 2

コクチバスとオオクチバスの成長に対する流水と水温の影響を実験的に検討した。給餌下では,両種ともに流水池と止水池との間で成長率に有意差は認められなかった。しかし,オオクチバスに対するコクチバスの成長比は,水温の低い時期に大きかった。無給餌下では,オオクチバスの体重の減少率は止水池に比べて流水池において大きかったが,コクチバスでは両池の間で体重の減少率に有意差は認められなかった。以上の結果は,コクチバスのほうがオオクチバスに比べて,流水と低水温に対する適応能力において優れていることを示している。
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎 阿部 信一郎
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.115-119, 2005-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
15
被引用文献数
3

外来魚ブルーギルは日本全国の湖沼や河川に拡まっており, 水産有用魚種や生態系への影響が危惧されている。しかし日本の河川上中流域におけるブルーギルの生態についてはほとんど報告がない。著者らは長野県の千曲川の1支流である浦野川のAa-Bb移行型の河川形態区間で, 2003年の6月及び7月に75個体のブルーギルを電気ショッカーによって採捕した。すべてのブルーギルは岸から1m以内で採捕され, その空胃個体は75個体中8個体にすぎなかった。胃内容物充満度は平均0.63%で, 最大で2.86%に達した。ブルーギルは主にユスリカ科の幼虫を摂食し, そのほかカゲロウ科やトビケラ科の幼虫及び陸生昆虫を捕食していた。ブルーギルの食性は浦野川の在来魚の何種かといちじるしく重複していた。ブルーギルは河川の魚類群集に負の影響を与えると考えられ, 根絶される必要がある。
著者
片野 修
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.773-776, 2012 (Released:2012-09-08)
参考文献数
2
被引用文献数
2
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎 阿部 信一郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.902-909, 2004-11-15
被引用文献数
4 9

浦野川において魚類の種組成,個体密度,成長率および食物関係について調査した。合計で14種,7,052個体の魚類が採集された。オイカワがもっとも優占し40%以上の個体数を占め,ついでドジョウ,ウグイ,カマツカが多かった。これらの魚種は6月から8月にかけて正の成長を示した。大半の魚はユスリカなどの水生昆虫を捕食していたが,オイカワだけは底生藻類を主食としていた。浦野川の調査区においてはナマズなどの魚食性魚類がほとんど生息しておらず,その生態的地位が空白となっている。したがって,オオクチバスなどの外来魚食魚の侵入が危惧される。
著者
片野 修
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

河川群集において,魚類は藻食性の水生無脊椎動物を捕食することによって,栄養カスケードを介して底生藻類を増加させる。この栄養カスケードの強さに影響する要因を実験的に解析した。栄養カスケードの強さは環境の異質性や撹乱によっては影響されなかった。しかし,水面に飛来する成虫と底部の餌の両方を摂食する昼行性の魚種は強い栄養カスケード効果をもたらした。これらの結果は河川で主に藻類を摂食するアユ資源の増大に資するほか,藻類の制御に役立つと期待される。