著者
松田 宙 岩瀬 和裕 藤井 眞 西川 和宏 島田 和典 田中 康博
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2687-2691, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

患者は40歳,女性.人間ドックで後腹膜腫瘤を指摘され,当センターを受診した.腹部CTでは膵体部頭側に38×25mm大で石灰化を伴った造影される腫瘤を認めた.腹部MRIで腫瘤はT1で低信号,T2で淡い高信号を呈し,比較的濃染された.以上より腫瘤は血流豊富で石灰化を伴う後腹膜腫瘍であり,後腹膜原発神経原性腫瘍や悪性腫瘍の可能性も否定できないため,腹腔鏡下腫瘍摘出術を行った.術中腫瘍後面の剥離に難渋し出血も認めたため,開腹に移行して腫瘍を摘出した.肉眼所見では4×3cm大で被膜に覆われ,割面は淡褐色で一部石灰化による灰白色部分の混在を認めた.組織学的にはhyaline vascular型Castleman病と診断された.リンパ増殖性疾患であるCastleman病は腹部領域に石灰化を伴って発生することは極めて稀であり報告した.
著者
西尾 正輝 田中 康博 新美 成二
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.6-13, 2009 (Released:2010-03-17)
参考文献数
49
被引用文献数
5 7

健常成人発話者262例(青年群200例,老年群62例)を対象として,青年期以降の加齢に伴う音声の変化について音響学的に解析し,主に以下の結果を得た.男性では,基本周波数に関する計測ではT0が短くなりF0が上昇し,周期のゆらぎに関する計測ではJitt,RAP,PPQで上昇し,振幅のゆらぎに関する計測では,ShimとAPQを含めて全体的に上昇し,雑音に関する計測ではSPIで上昇し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.女性では,基本周波数に関する計測ではT0が延長しF0が低下し,周期と振幅のゆらぎに関する計測ではほぼ変動が乏しく,雑音に関する計測ではNHRで上昇しVTIで低下し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.今回得られた知見ならびに正常範囲に関するデータは,加齢による生理的変化の範囲内の音声と病的音声との識別上臨床的に意義のあるものと思われる.
著者
西尾 正輝 田中 康博 新美 成二
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.6-13, 2009-01-20
参考文献数
49
被引用文献数
7

健常成人発話者262例(青年群200例,老年群62例)を対象として,青年期以降の加齢に伴う音声の変化について音響学的に解析し,主に以下の結果を得た.男性では,基本周波数に関する計測ではT<SUB>0</SUB>が短くなりF<SUB>0</SUB>が上昇し,周期のゆらぎに関する計測ではJitt,RAP,PPQで上昇し,振幅のゆらぎに関する計測では,ShimとAPQを含めて全体的に上昇し,雑音に関する計測ではSPIで上昇し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.女性では,基本周波数に関する計測ではT<SUB>0</SUB>が延長しF<SUB>0</SUB>が低下し,周期と振幅のゆらぎに関する計測ではほぼ変動が乏しく,雑音に関する計測ではNHRで上昇しVTIで低下し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.今回得られた知見ならびに正常範囲に関するデータは,加齢による生理的変化の範囲内の音声と病的音声との識別上臨床的に意義のあるものと思われる.
著者
田中 康博
出版者
京都学園大学
雑誌
京都学園法学 (ISSN:09164715)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.59-109, 1999-07-25
著者
出口 幸一 西川 和宏 岩瀬 和裕 川田 純司 吉田 洋 野村 昌哉 玉川 浩司 松田 宙 出口 貴司 田中 康博
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.1186-1190, 2013 (Released:2014-12-25)
参考文献数
18

症例は85歳,男性.2006年に胃癌に対し幽門側胃切除術を施行された.術後補助療法としてUFTを1年間施行した.2009年7月に左副腎転移,傍大動脈リンパ節転移が判明し,化学療法を開始し一旦は腫瘍縮小を認めた.しかし徐々に腫瘍が進行し2011年7月には右副腎転移が出現した.2012年1月に誤嚥性肺炎を発症し入院した.入院後倦怠感悪化,食欲不振,難治性低Na血症,高K血症,好酸球増多症を認めた.当初癌性悪液質による症状を疑ったが,副腎不全も疑われたため,迅速ACTH負荷試験を施行し,Addison病と診断した.hydrocortisonの投与を開始したところ,症状の著明な改善を認めた.癌末期に副腎不全が発症した場合,症状が癌性悪液質によるものと酷似するため鑑別が困難である.両側副腎転移を有する担癌症例では,副腎不全を念頭におき,積極的に内分泌的検索を行うことが重要である.
著者
出口 幸一 吉田 洋 梅田 聡 野口 侑記 田中 康博
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.81-85, 2014-02-20 (Released:2014-02-20)
参考文献数
11

会陰部杭創は転落・転倒などにより生じる稀な鈍的外傷である.我々は2 例の小児会陰部杭創を経験したので報告する.〈症例1〉9 歳男児.入浴中風呂の湯かき棒(樹脂製)が肛門に刺入した.自ら抜去したが,出血,腹痛が持続するため翌朝当科受診した.CT 検査で腹水,遊離ガス像を認め,会陰部杭創による穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹すると直腸前壁が穿孔していた.穿孔部は縫合閉鎖し,S 状結腸に人工肛門を造設した.〈症例2〉3 歳女児.箸(木製)を持って転倒した際,箸が右会陰部に刺入した.CT 検査で異物を骨盤腔内に認めたが,明らかな臓器損傷は認めなかったため,X 線透視下に異物を抜去した.折れた箸先端が7 cm 刺入していた.創部を縫合閉鎖し第5 病日に退院した.会陰部杭創では症例により損傷臓器とその程度がさまざまであり,受診後速やかにそれらを把握したうえで,治療方針を決定することが重要である.
著者
田中 康博 瀬尾 龍太郎 永井 雄也 森 美奈子 戸上 勝仁 藤田 晴之 倉田 雅之 松下 章子 前田 明則 永井 謙一 小谷 宏行 高橋 隆幸
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.71-75, 2008 (Released:2008-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

症例は58歳の女性.31歳より全身性エリテマトーデス(SLE)および抗リン脂質抗体症候群(APS)のためprednisoloneとazathioprineを内服しSLEとAPSは安定していた.2004年10月,発熱を伴う感冒様症状が出現したので近医に入院.抗生剤は無効で血小板減少が出現したので,SLEの増悪との診断のもとステロイドパルス療法が施行された.しかし,汎血球減少へと進展したので当院へ転院となった.骨髄穿刺で血球貪食像が認められ,胸部CTで肺門部を中心とするスリガラス影が認められた.同日のcytomegalovirus (CMV) antigenemiaが陽性であった.以上より,CMV関連血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome ; HPS)およびCMV肺炎と診断.azathioprineを中止しprednisoloneを減量してgancyclovirを開始.これにより解熱し汎血球減少は改善した.現在,外来通院中でCMV感染の再発を認めていない.SLEなどの膠原病にCMV関連HPSを併発することは稀であるため報告する.
著者
田中 康博 坪井 崇 レビット 順子 田中 まゆ 田中 教義 渡辺 宏久 勝野 雅央
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.80-88, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)
参考文献数
30
被引用文献数
1

要旨: パーキンソン病(PD)に対する言語療法はLee Silverman Voice Treatment®が嚆矢となり,その後に病態解明や治療法の開発が進んできた.本稿では,米国のParkinson Voice Project(PD 専門の言語治療クリニック)で行われている治療法を中心に紹介する.本施設ではPDにより低下した発声・発話機能の回復を目的とした個別療法と,改善した発声・発話機能の維持を目的とした集団療法の2つの治療プログラムが提供されている.いずれの治療法においてもPD患者が日常生活で良好な発話が保てるよう緻密に構想化されたアプローチのみならず,患者のモチベーションを高めるための創意工夫が随所に施されていた.
著者
西尾 正輝 田中 康博 阿部 尚子 島野 敦子 山地 弘子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.215-224, 2007-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
76
被引用文献数
3

dysarthria263例 (言語治療実施群187例と言語治療を実施しなかった対照群76例) を対象とし, 言語治療成績について検討し以下の結果を得た.1.脳血管障害, 脊髄小脳変性症, パーキンソン病に起因する言語治療実施群では言語治療前後で比較して有意に明瞭度が改善したが, 対照群では有意差は認められなかった.2.脳血管障害に起因する言語治療実施群では, 重症度にかかわりなく有意な明瞭度の改善が認められ, 重症化するほど, 改善の程度が大きくなる傾向が認められた.また, 病期にかかわりなく有意な明瞭度の改善が認められた.3.ALSに起因する言語治療実施群では言語治療前後で比較して有意差は認められなかった.軽度例は経時的に明瞭度がほぼ確実に低下し, 重度例のほとんどは最重度の段階で停滞した.以上の結果に基づいて, dysarthriaの臨床において有効な言語治療手法について検討を加えた.