著者
田谷 修一郎
出版者
大正大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

観察者の両眼間距離(右眼と左眼の水平方向の離れ具合)が立体視(網膜像差に基づく奥行きの知覚)に及ぼす影響について検討した。約50名の観察者について,ランダムドットステレオグラムの観察時に知覚される奥行き量を測定した。刺激はPCディスプレイ上に呈示され,アナグリフを通して観察された。観察者の両眼間距離は瞳孔間距離計を用いて計測された。実験の結果,知覚奥行き量の平均値と両眼間距離,および知覚奥行き量のばらつきと両眼間距離の間に負の相関関係が認められた。この結果は,視覚系が網膜像差に基づいて奥行き量を復元する際に両眼間距離情報を利用していることを強く示唆する。
著者
田谷 修一郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々の身体が視覚の情報処理過程においてどのように用いられているか,一連の心理物理実験によって検討した。この結果,網膜像差に基づいて外界の奥行きを復元する際には両眼(瞳孔)間距離の情報が利用されていること,身体の可動範囲が身体の見えかたに影響することなどが明らかとなった。これらの結果は,本質的に曖昧である網膜像を解釈する際の枠組みとして観察者自身の身体が用いられていることを示し,視知覚の研究においても身体の影響を考慮に入れることが重要であることを示唆する。
著者
田谷 修一郎
出版者
九州大学
雑誌
九州大学心理学研究 (ISSN:13453904)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.105-116, 2004-03-31
被引用文献数
1

Prolonged inspection of a stimulus in a 3-D space produces an aftereffect in the depth dimension. This paper has two aims: (1) to review the previous studies on the depth aftereffects focusing on the level at which adaptation occurs, and (2) to propose a new model of the depth aftereffects. Conventionally, the depth aftereffects have been explained by adaptation of the lower level mechanisms specialized to each depth cue (e.g. ,binocular disparity or monocular depth cue) . However, recent studies suggest that the depth aftereffects are due to adaptation of the higher level mechanisms sensitive to 3-D shape rather than that of the lower level mechanisms. Author proposes a new model integrating both the conventional- and the recent theories.
著者
前原 吾朗 田谷 修一郎 小島 治幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.328, pp.53-56, 2006-10-19
被引用文献数
2

後側頭部における形状マッチング課題、位置マッチング課題遂行中のヘモグロビン濃度変化を計測した。形状マッチング課題では、実験参加者は最初に呈示された刺激の形状を記憶し、その後に呈示される刺激の形状が記憶したものと同一であるかを判断した。位置マッチング課題では、最初に呈示された刺激の位置を記憶し、その後に呈示される刺激の位置が記憶したものと同一であるかを判断した。後側頭部における酸化ヘモグロビン濃度は、位置マッチング課題よりも形状マッチング課題遂行中の方が高かった。このことから、後側頭部の領野において形状認識に関る脳活動が存在したことが示唆された。本研究の結果は、fMRIやPETを用いた研究の結果と一致しており、近赤外分光分析が認知機能の計測に有用であることを示している。
著者
田谷 修一郎 前原 吾朗 小島 治幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.328, pp.49-52, 2006-10-19
被引用文献数
1

視覚刺激呈示中の後頭部の血流変化を近赤外分光分析(NIRS)によって計測した.刺激は7.5Hzで明暗が反転する直径12度の放射状チェッカーパターンであり,視野全体,もしくは上下左右に4分割した視野に呈示された.1計測セッションでは15秒の刺激呈時と30秒の休息を5回繰り返し,この間の後頭部の血流変化を3cm間隔で正方形状に配置した4×4のプローブによって計測した.呈示視野条件別にそれぞれ2セッションの計測を行った結果,下半視野に刺激が呈示される場合にのみ,刺激呈時視野に対応した領野で酸化ヘモグロビン濃度の上昇と脱酸化ヘモグロビン濃度の減少が認められた.