- 著者
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目黒 強
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本年度は、明治から昭和にかけて広く読まれた雑誌である『日本少年』(実業之日本社)を取り上げ、大衆青少年雑誌における不良少年像を検証した。『日本少年』を検証するに際して、二つの理由から、ジャンル小説に注目することにした。第一の理由は、青少年像が典型的に表現されていることが予想されるからである。第二の理由は、「物語」という形式が読者に対する青少年像の伝達を補助していると考えられるからである。そこで、『日本少年』におけるジャンル小説を検証したところ、「立志小説」(「悲哀小説」を含む)・「冒険小説」・「探偵小説」・「滑稽小説」の四つのジャンルにおいて、青少年像の傾向に違いが認められた。とりわけ、上述のジャンル小説のうち、「立志小説」(「悲哀小説」を含む)と「探偵小説」において、本研究の目的である「学歴社会から疎外された青少年像」が提示されていることが判明した。「立志小説」(「悲哀小説」を含む)においては、苦学型の立身出世が描かれる傾向にあった。とりわけ、有本芳水の「悲哀小説」では、主人公の置かれた境遇が学歴社会から疎外された者の悲哀として強調されていたことからもうかがえるように、明治中期までのような楽観的な立身出世物語からの変容を指摘することができる。「探偵小説」においては、犯罪者が成人として描かれることが多いことに加えて、未成年者が犯罪者集団に含まれる場合には外国人として描かれていたことから、日本人の不良少年を描くことに消極的であったことが指摘することができる。