著者
相崎 守弘 隅田 茜
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.535-540, 2005-09-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1

木枠と遮水シートを組み合わせて作った水槽を使い,薄層緑化に対応する湿地型屋上緑化を施工した。1つの水槽面積は4.5m2とし4つの水槽を使って水位変化と水温変化を測定した。水位変化から蒸発速度と蒸発散速度を求めた。2つの水槽は植物を入れずに雨水だけとし,1つには水生植物を他の1つには陸生植物をゼオライト水耕法で植栽した。2003年夏期における平均蒸発速度は4 .5mmd-1で,水生植物を入れた水槽では7.2mmd-1,陸生植物を入れた水槽では6.Ommd-1であった。日最高水温は植物を入れない水槽ではしばしば40。C を超え60。Cに達する日も見られた。そのような日でも水生植物を入れた水槽では30。Cをわずかに上回る程度までしか水温は上昇せず,顕著な温度制御効果がみられた。陸生植物を植栽した水槽では水生植物ほどの顕著な水温制御効果はみられなかったが無植栽水槽に比べ水温変化は少なかった。1日の最高水温と最低水温の差も,水生植物を入れた水槽では5~10。C と植物を入れない水槽の15~20。C の変化に比べて著しく小さかった。
著者
国井 秀伸 瀬戸 浩二 野中 資博 森 也寸志 相崎 守弘 石賀 裕明 野村 律夫
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

高度汚水処理法・直接浄化法の開発と,底質処理法(無害化・資源化)の開発を行い,流域統合管理の視点を加えて,流域の管理の違いが水文循環過程に与える影響を評価した.さらに,科学的・普遍的な立場もふまえて,汽水域生態系モニタリングのシステムを研究・開発・構築し,さらに地域と一体となった汽水域の生態系保全活動を行うことを目的に,地域住民との連携による汽水域長期モニタリング法を検討した
著者
清家 泰 奥村 稔 三田村 緒佐武 千賀 有希子 矢島 啓 井上 徹教 中村 由行 相崎 守弘 山口 啓子 日向野 純也 山室 真澄 山室 真澄 中野 伸一
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

実験区(高濃度酸素水導入窪地)の他に、対照区(高濃度酸素水導入の影響の及ばない窪地)を設け、比較検討した。湖底直上1m層への高濃度酸素水の導入による改善効果として、明らかになった研究成果の概要を以下に示す。(1)対照区では底層水中に高濃度の硫化水素(H_2S)が観測されたのに対し、実験区ではH_2Sが消失した(H_2S+1/2O_2→H_2O+S^0↓)。(2)対照区では底層水中の溶存酸素(DO)濃度が無酸素に近い状態で推移したのに対し、実験区では窪地全域のDOが増大した。また、対照区では底層水中の酸化還元電位(ORP)が負の領域で推移したのに対し、実験区では正の領域まで上昇した。(3)湖底堆積物中のH_2S濃度を鉛直的にみると、対照区では表層部のみでH_2S濃度の減少が観られたのに対し、実験区では表層から5cm程度の深度まで濃度が激減した。また、メタンCH_4(温暖化ガス)もH_2Sの鉛直分布と同様の傾向を示した。(4)対照区に比べ実験区では、底層水中PO_4^<3->に明瞭な減少傾向が観られた。実験区の湖底泥表面に酸化膜の形成が観られたことから、湖底泥界面における共沈現象及び湖底からのPO_4^<3->の溶出抑制が示唆された。(5)対照区に比べて実験区では、底層水中の無機態窒素(NH_<4+>+NO_<2->+NO_<3->)に減少傾向が観られた。酸素導入により、湖底泥界面における窒素除去機能(硝化・脱窒)が活性化したことを示唆する。湖底堆積物の深度別脱窒活性を観ると、対照区では表層部のみ活性を示したのに対し、実験区では表層から5cm程度の深度まで顕著な活性を示した。この結果は、高濃度酸素水の供給により、脱窒部位が大きく拡大したことを意味する。(6)対照区ではベントス(底生生物)が皆無であったのに対し、実験区では、アサリやサルボウガイのような二枚貝の加入は認められなかったものの、多毛類を中心とするベントスの棲息が確認された。以上のように、松江土建(株)社製の気液溶解装置を用いるWEPシステムは、無酸素水塊への酸素供給を起点に、生物に有毒なH_2Sの消失、温室効果ガスであるCH_4の消失、栄養塩(N,P)の減少及びベントスの復活等に絶大な効果を発揮した。通常、還元的な湖底堆積物に対する自然任せの酸素供給では、その効果は、精々、湖底泥表層部の数mmまでと云われていることを考えると、本システムによる底質改善効果(泥深約0~40mm)は絶大である。このようにWEPシステムは、本研究で対象としたような比較的広範囲の窪地に対して有効であり、特に湖底の底質改善に極めて有効であると云える。今後、ランニングコストの低減が図れれば、有用性はさらに高まるものと考えられる。