著者
砂原 庸介
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.2_98-2_121, 2011 (Released:2016-02-24)
参考文献数
24

As for the relationship between Diet members and local assembly members in Japan, previous empirical researches mainly focus on their clientelistic relations among them and upward political career move from local assembly to the Diet. In this article, the author presents a different perspective from these previous researches, and elaborates the tendency that Diet members try to change their career to local politicians, especially governors and mayors of local governments. Two political reforms in the 1990s affected the ambition of Diet members; the electoral reform changed patterns of political competition in electoral districts, and the decentralization reform enhanced the attractiveness of the position of mayors.   In this article, the author investigates the cases that Diet members / former Diet members, who stood as a candidate in the five elections before and after the electoral reform, challenge governor / mayor / local assembly elections. The results show that more Liberal Democratic Party members challenge to local elections after the electoral reform, and the more leading opposition members, who were affiliated with Japan Socialist Party or New Frontier Party or Democratic Party, challenge to local elections than LDP members. Besides, this article reveals that by measuring the effective numbers of candidate the patterns of political competitions in governor / mayor elections are different before and after the electoral reform.
著者
加茂 利男 阿部 昌樹 砂原 庸介 曽我 謙悟 玉井 亮子 徳久 恭子 待鳥 聡史 林 昌宏 矢作 弘
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、現代の先進諸国に共通してみられる「縮小都市」という現象に注目し、その政治的および政策的意味を解明することを目的とする。少子高齢化や経済のグローバル化により、先進国の多くの都市は縮小を余儀なくされているが、そのことが衰退を意味するとは限らない。むしろ、縮小は政治的アクターや政策提唱者にこれまでにない方法で都市を再構築する好機を提供する。そこで本研究は、日独仏米4カ国の港湾都市を対象にして、縮小に対する地方政府の政策対応に相違をもたらす要因の特定を試みた。その結果、選挙制度、執政制度、政府間関係、地理的な分節や機能的分節の程度が多様性をもたらすことを明らかにすることができた。
著者
砂原 庸介
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.115-127, 2010 (Released:2017-05-08)
参考文献数
25
被引用文献数
5

1990年代の選挙制度改革が,国政における政党システムや政党と候補者の関係を再編しつつあることはしばしば指摘される。しかし再編は国政だけで起こったのだろうか。本稿では,1990年代に進展した重要な制度変化である選挙制度改革と地方分権改革が地方政治にどのような影響を与えるのかについて,先行研究を概観しながら検討していく。そのうえで,1990年代以降に44の道府県で続けられた統一地方選挙における道府県議会議員選挙の結果を記述的に分析する。この分析から,選挙制度改革後に国政レベルで自民党に対抗することになった民主党が二大政党の一翼として地方政治を国政と同様に分極化させつつも,地方分権改革の進展とともに地方政治が実質的な意味を持つようになる中で,地方議会における選挙制度や地方政府の二元代表制という地方政治レベルの要因が存在するために,選挙区の集合体としての地方政治レベルでは国政に連動した再編成が必ずしも進んでいないことを指摘する。
著者
松浦 正孝 保城 広至 空井 護 白鳥 潤一郎 中北 浩爾 浅井 良夫 石川 健治 砂原 庸介 満薗 勇 孫 斉庸 溝口 聡 加藤 聖文 河崎 信樹 小島 庸平 軽部 謙介 小野澤 透 小堀 聡
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

「戦後体制」の何が戦前・戦時と異なり、どのような新たな体制を築いたのか。それはその後どのような変遷をたどり、どこでどう変わって現在に至ったのか。本研究は、その解明のために異分野(政治史、外交史、政治学、憲法学、経済史)の若手・中堅の最先端研究者を集めた多分野横断による問題発見型プロジェクトである。初めの2年度は、各メンバーの業績と学問背景をより深く理解し「戦後」についての問題を洗い出すため、毎回2名ずつの主要業績をテキストとする書評会と、その2名が それぞれ自分野における「戦後」をめぐる 時期区分論と構造について報告する研究会を、年4回開くこととした。しかるにコロナ禍の拡大により、第2年度目最後の2019年3月、京都の会議施設を何度も予約しながら対面式研究会のキャンセルを余儀なくされた。しかし20年度に入ると研究会をオンラインで再開することとし、以後、オンライン研究会を中心に共同研究を進めた。コロナ禍による遅れを取り戻すべく、20年7月・8月・9月と毎月研究会を行い、与党連立政権、貿易・為替システム、消費者金融などのテーマについてメンバーの業績を中心に討議を行った。オリジナル・メンバーの間での相互理解と共通認識が深まったため、12月にはゲスト3名をお招きして、戦犯・遺骨収集・旧軍人特権の戦後処理問題を扱うと共に、メンバーによる復員研究の書評会を行った。「家族」という重要テーマの第一人者である倉敷伸子氏にも、新たにプロジェクトに加わって頂いた。この間、メンバーの数名を中心に今後の研究方針案を調整した上で、21年3月には3日間にわたり「編集全体会議」を開催した。後半2年間に行うべき成果のとりまとめ方針を話し合うと共に、憲法・経済史・労働史・現代史の新メンバー加入を決め、各メンバーが取り組むテーマを報告し議論した。また、各メンバーは各自で本プロジェクトの成果を発表した。
著者
砂原 庸介
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.43-56, 2011 (Released:2017-07-03)
参考文献数
92

政党システムの分析において,これまで注目されてきたのは,基本的には社会的亀裂と政党システムの存続・変化との関係であり,地方の多様性や新党の存在は,必ずしも注目されてこなかった。しかし,近年の研究においては,地方の多様性や新党の参入を政党システムの存続・変化と結びつけた議論が進められている。本稿では,そのような議論を整理した上で,地方の多様性や新党の参入を含めて政党システムを包括的に捉える政党システムの制度化というアプローチを紹介し,今後の研究においては中央レベルと地方レベルの政党間競争を動態的に捉える観点が重要になることを指摘する。
著者
砂原 庸介
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.9-24, 2020 (Released:2023-11-16)
参考文献数
89

本稿では,政府間関係の議論として,地方政府間関係に焦点を当てる。欧米で蓄積されてきた地方政府間の連携についての先行研究を参考にしながら,「なぜ地方政府が他の地方政府と連携を行うか」について,地方政府間の集合行為に注目した説明を行う。次に,日本において地方政府内の対立・地方政府間の競合・国と地方の関係という三つの点について規定する政治制度から,日本における地方政府間関係の特徴について整理する。それを踏まえて,集合行為に注目した説明が,地方政府間の競争を基調として,国が必要に応じて合併を促すという,これまでの実証的な分析が示してきた特徴について整合的に説明できることを示す。さらに地方分権改革以降国と地方の関係が変わる中で,これまでの政治制度の特徴を考慮すれば,今後は都市の中心をめぐる競争と近年の住民投票による民意の表出が制度の議論にとって重要な論点になることを論じる。
著者
品田 裕 大西 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 山田 真裕 河村 和徳 高安 健将 今井 亮佑 砂原 庸介 濱本 真輔 増山 幹高 堤 英敬 平野 淳一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、国会議員を主とする政治家と有権者の関係、あるいは政治家同士の関係がどのように変容しつつあるのかを調査し、その変化の要因を実証的に解明することを目的として開始された。その結果、本研究では、選挙区レベルの詳細な観察・データを基に、実証的に現代日本の選挙政治の変容を明らかにすることができた。取り上げた研究対象は、集票活動・有権者と政治家の関係・政治家同士の関係・議員活動・政治家のキャリアパス・政党下部組織など、多岐にわたった。これらの分析から得られた成果を基礎に、さらに、国会のあり方や選挙制度にまで分析を進めることができ、現代日本の選挙政治理解に一定の貢献を果たすことができた。
著者
砂原 庸介
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.2_237-2_257, 2008 (Released:2012-12-28)
参考文献数
18

This article analyzes how Japanese local governments decide to terminate policy programs, by examining the experiences of terminating dam construction in prefectural governments. Though Japanese local governments are commonly regarded as subordinate to the central government, they are granted considerable autonomy to implement investment programs. In fact, after the last half of 1990s, many prefectural governments have decided to terminate investment programs, such as dam construction programs which this article deals with.   The author advances several hypotheses that the election system of local governments affects the motivations of politicians to implement dam construction programs, and examines those hypotheses by using the techniques of Event History Modeling. The empirical results of this article suggest that a change of local governor is the most important factor of policy termination and that the local assemblies which tend to oppose to the governor become substantive resistance force against termination. These findings demonstrate that the policy termination is not only economical or technical decision, but highly political decision.
著者
待鳥 聡史 砂原 庸介 竹中 治堅 浅羽 祐樹 MCELWAIN KENNETH
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

政府の運営の基本原則、すなわち統治の制度やルールがいかに定められ、変更されるかについては、今日国際的な関心が高まっている研究課題である。本研究は、このような研究動向に棹さしつつ、統治の制度やルールの変更が憲法典の改正に拠らない場合を含む多様なものであることに注目し、その帰結として変更に際する多数派形成の過程にも著しい多様性があることを、理論モデルの構築、国際比較可能なデータセットの作成、さらに計量分析と事例分析による検証から解明し、それらの作業を通じて国際的な研究発展に貢献することを目指している。
著者
砂原 庸介 藤井 康平
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.233-251, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
15

本稿では,地方政府における産業廃棄物税と森林税という2つの新税導入の意思決定要因について,都道府県レベルの地方政府における知事・地方議会という政治的アクターの選好と両者を選出する選挙制度を結びつけたうえで,その選好が新税の導入にどのような影響をもたらすかについて議論する。 本稿の分析からは,産業廃棄物税・森林税という2つの税が持つ性質が,首長または地方議会という選挙に直面する地方政治のアクターの選好と対応し,各地方政府における首長の再選可能性や地方議会自民党の優位性などの特徴が新税導入の意思決定に影響を与えていることが示される。このような新税導入の実証分析からは,地方分権改革によって地方政府の自律性が向上することで,同時に地方政府における政治的アクターにとっても,自らの利益につながる戦略的行動をとる余地が広がりつつあることが示唆される。
著者
砂原 庸介
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.161-178, 2006 (Released:2022-07-15)
参考文献数
13
被引用文献数
3

本稿では,都道府県を対象として,地方政府における知事-議会関係と中央政府と地方政府の制度的な関係に注目しながら,地方政府が政策をどのような政治的要因によって決定しているかについて,その影響を計量的な手法で分析することを試みた。具体的な政策として開発政策(インフラ整備・農林水産)と再分配政策(教育・福祉)に焦点を当て,その支出水準に対して議会における保守・革新といった党派性,知事の支持基盤・経歴,知事の再選動機という3つの政治的要因がどのような効果をもたらしているかを検証する。本稿の分析から得られた主要な結論として,特に冷戦期を中心に政党の党派性が地方政府の政策決定に一定の影響を与えており,地方政府が自らの議会の選好に応じてある程度自律的な意思決定を行うことが可能であったこと,知事のような人的ルートを通じて中央政府の意向が地方政府の政策に反映される経路がありうることが示された。
著者
砂原 庸介
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.132-144, 2008-01-25 (Released:2019-06-08)
参考文献数
13

本稿では,失敗に終わったと評価される地方分権改革推進会議の議論を参照しなから,三位一体改革を包含する地方財政制度改革の特徴を関係するアクターの「利益」の観点から明らかにする。小泉政権において行われた地方財政制度改革は,経済財政諮問会議においてマクロでの地方財政のスリム化を行う一方で,関係省庁の合意を元に地方税・交付税・補助金の三位一体の改革を行うことで,国・地方を通じた緊縮財政の実現を目指すものであった。しかし,地方財政制度改革が持つ「中央政府の財政再建」「地力分権改革」という側面を強調することは,関係者の合意に亀裂をもたらす可能性を秘めていた。交付税を縮減しつつ地方への一方的な負担転嫁を避けた改革の方策として,地方分権改革推進会議は補助事業の改革を含めた包括的な改革をふ志向したものの,関係するアクターの信認を獲得することがてぎず,同会議は改革への説得的な提案を行うことができなかった。その結果,2005年に一応の決着を見た三位一体改革は,補助事業の改革を伴わず,中央と地方の税財源の配分を変更する漸進的な改革であったと結論することができる。地方財政制度改革が漸進的なものに終わった原因は,分権会議が関係するアクターの信認を獲得できなかったことに加えて,改革に関係するアクターの信認を可能にする装置であるはずの経済財政諮問会議が一貫した意思決定を行うことができなかったことに起因すると考えられる。