- 著者
-
砂原 庸介
- 出版者
- 日本公共政策学会
- 雑誌
- 公共政策研究 (ISSN:21865868)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.132-144, 2008-01-25 (Released:2019-06-08)
- 参考文献数
- 13
本稿では,失敗に終わったと評価される地方分権改革推進会議の議論を参照しなから,三位一体改革を包含する地方財政制度改革の特徴を関係するアクターの「利益」の観点から明らかにする。小泉政権において行われた地方財政制度改革は,経済財政諮問会議においてマクロでの地方財政のスリム化を行う一方で,関係省庁の合意を元に地方税・交付税・補助金の三位一体の改革を行うことで,国・地方を通じた緊縮財政の実現を目指すものであった。しかし,地方財政制度改革が持つ「中央政府の財政再建」「地力分権改革」という側面を強調することは,関係者の合意に亀裂をもたらす可能性を秘めていた。交付税を縮減しつつ地方への一方的な負担転嫁を避けた改革の方策として,地方分権改革推進会議は補助事業の改革を含めた包括的な改革をふ志向したものの,関係するアクターの信認を獲得することがてぎず,同会議は改革への説得的な提案を行うことができなかった。その結果,2005年に一応の決着を見た三位一体改革は,補助事業の改革を伴わず,中央と地方の税財源の配分を変更する漸進的な改革であったと結論することができる。地方財政制度改革が漸進的なものに終わった原因は,分権会議が関係するアクターの信認を獲得できなかったことに加えて,改革に関係するアクターの信認を可能にする装置であるはずの経済財政諮問会議が一貫した意思決定を行うことができなかったことに起因すると考えられる。