著者
石井 啓豊
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.387-399, 2011 (Released:2011-10-01)
参考文献数
18

情報環境が激変しているなかで,情報専門家の養成とその基礎となる図書館情報学の発展のあり方は,実務現場にとっても大きな関心事である。本稿の目的は,図書館情報学の本質的なあり方を検討して,その発展的な方向性を明らかにすることである。米国における新しい潮流を確認した上で,図書館情報学は「社会のあらゆる活動の基盤としての『記録による知識共有』に関わる,人間の行為と制度と技術を扱う領域」であると規定した。さらに,対象世界を捉える枠組みとして知識情報空間(モデル)を提示し,図書館情報学の新しい構成を検討した。以上によって,図書館情報学は「知識情報学」として発展する可能性を持つことを示した。
著者
溝上 智惠子 清水 一彦 歳森 敦 池内 淳 石井 啓豊 逸村 裕 植松 貞夫 宇陀 則彦 永田 治樹 長谷川 秀彦 石井 夏生利 呑海 沙織 孫 誌衒 松林 麻実子 原 淳之 井上 拓 佐藤 翔
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、大学教育の実質化を進展させるための学習支援サービスの1つとして、大学生の主体的学習を促進させる実空間「ラーニング・コモンズ」 (Learning Commons)に着目し、その現状と課題を明らかにした。1990 年代に、北米地域から導入・整備が始まったラーニング・コモンズは、現在各国の高等教育改革や大学図書館の状況を反映して、多様な形態で展開しつつあること、学習成果の視点からの評価はいずれの国でもまだ不十分な段階にあることが明らかになった。
著者
根本 彰 石井 啓豊 吉田 右子 原 秀成
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、(1)戦前から戦中にかけてのアメリカの文化外交政策に着目し、(2)アメリカ図書館協会(ALA)やロックフェラー財団が占領政策の背後でいろいろな働きかけをしていたこと、(3)アメリカ図書館学がこの時期に制度化され社会的に一定の位置づけを獲得していたこと、の3点を新しい視点として、在米の資料の発掘をしながら、占領期の図書館政策についての新しい研究領域の開拓を行ったものである。まず、3年間で、イリノイ大学、ミシガン大学、カリフォルニア大学、メリーランド大学、国立公文書館、議会図書館などにおいて資料調査を行い、多数の未紹介の1次資料を発掘し、コピーして持ち帰った。これらの資料のうちかなりの部分を整理して、目録化して報告書に掲載することができた。これらの資料分析の結果、わが国の戦後の図書館政策がアメリカ政府の戦中/戦後の国際的な文化戦略の影響下にあったGHQ/SCAPの教育文化政策に位置づけられることが明らかになった。米国の戦時体制において連邦政府情報一元化政策がとられるなかで、図書館界においても全米的なプログラムが重視された。その延長で戦後の国際的な教育文化戦略においてユネスコがつくられるが、それにも図書館関係者が深く関与する。こうした国際情勢のなかで、陸軍省とアメリカ図書館協会が背後からバックアップしながら、GHQ/SCAPの図書館政策が展開されようとしていた。しかしながら、冷戦体制の顕現化、教育文化の再編より経済的な復興を重視する政策により、制度的な改革は中途半端なものに終わったということができる
著者
石井 啓豊
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、図書館が担ってきた社会的共有のための知識資源基盤としての役割をネットワーク上で実現する知識資源コモンズに注目し、特に、ピアプロダクションに基づく知識資源コモンズ(KRCP)と伝統的図書館の成立に関する組織論的、経済学的な理論枠組みを明らかにすることである。本年度は21年度末に実施した市民による資料アクセス行動の調査結果の分析を行い、リアル書店や図書館、ネットワーク上の書店や情報源へのアクセスなど多様な側面に関する行動実態が明らかにした。また、一般市民がネットワーク上で知識資源を共有できる代表的なサイトについて、提供内容、方法、知識資源の形成、サイトの経済的裏付け等に関する調査を行った。この2調査と公共図書館のサービス展開に関する調査(21年度)、および文献調査に基づいて図書館とKRCPに関する多面的な検討を行い、論点整理と理論的枠組みの可能性を探った。主な論点と検討事項は、(1)図書館の機能特徴と組織的位置付けの分析、(2)図書館サービス展開の構図の検討、(3)コモンズの視点からみた図書館協力活動の分析、(4)ネットワーク利用者の資料アクセス行動、(5)経済制度の理論を援用した図書館制度成立の理論化の検討、(6)知識資源コモンズに関して、知識資源共有過程と機能、目的領域と活動領域、参加者、コミュニティ、コモンズ成立の組織論、知識資源の社会的配分などの論点と問題構造の検討などである。その結果、伝統的図書館成立の理論化の基本的構図と図書館によるコモンズ的活動の構図を得ることができた。その構図は必ずしも図書館の社会的機能としての知識資源共有を担うネットワーク上のコモンズの可能性を示唆するものではなかったが、一方、それを知識資源の社会的配分問題として理論化することの可能性が明らかになった。
著者
石井 啓豊
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.387-399, 2011

情報環境が激変しているなかで,情報専門家の養成とその基礎となる図書館情報学の発展のあり方は,実務現場にとっても大きな関心事である。本稿の目的は,図書館情報学の本質的なあり方を検討して,その発展的な方向性を明らかにすることである。米国における新しい潮流を確認した上で,図書館情報学は「社会のあらゆる活動の基盤としての『記録による知識共有』に関わる,人間の行為と制度と技術を扱う領域」であると規定した。さらに,対象世界を捉える枠組みとして知識情報空間(モデル)を提示し,図書館情報学の新しい構成を検討した。以上によって,図書館情報学は「知識情報学」として発展する可能性を持つことを示した。
著者
石井 啓豊
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.378-386, 1999-08-01
被引用文献数
1

電子文献の増加と図書館経営におけるアクセス・ポリシーの採用等によって, 資源共有活動は大きく変化した。近年の資源共有の諸活動は, 伝統的資料とともに電子文献も含めた幅広いものを意図している。ILL/DDサービス開発の多くのプロジェクトも進行中である。新しいILL/DDサービスは利用者による直接依頼と利用者への文献直送という特徴を持つ。図書館経営においてILL/DDサービスの重要性が増大しつつあること, ILLサービスの合理性, 及びILLネットワークの一貫性について論じた。この議論とILLサービスの機能分析に基づき, わが国の状況を取り上げてサービス開発の方向性について検討し, ILLサービスに関する全国的な戦略的計画の重要性を指摘した。