著者
廣田 照幸 佐藤 晋平 森 直人 二宮 祐 丸山 和昭 香川 七海 冨士原 雅弘 長嶺 宏作 太田 拓紀 小野 方資 末冨 芳 神代 健彦 田中 真秀 徳久 恭子 岩田 考 宇内 一文 荒井 英治郎 金子 良事 筒井 美紀 布村 育子 古賀 徹 植上 一希
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、日本教職員組合(日教組)の1950年代から1980年代末までの期間を研究対象に据え、日教組が所蔵する非公開史料の特別な利用、日教組幹部OBのヒアリングや私文書の活用により、それぞれの時期に日教組内部でどのような論争や対立があり、それが結果的に日教組の運動にどういう方向性を与えたのかを、労働運動と教育運動の両面から分析する。保守対革新、文部省対日教組という単純な2項対立の図式で描かれることが多かった日教組運動史を、多様なイデオロギーのグループ間のダイナミックな相互作用過程としてとらえ直していく。
著者
神代 健彦
出版者
一橋大学
雑誌
一橋社会科学 (ISSN:18814956)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.215-239, 2009-08

本稿は、近代日本における勤労青少年の教育訓練機関であった青年学校(一九三五~四七)について、そこで教育を遂行する教師たちに焦点を定め、その教育にかかわる認識論について考察することを目的としている。本稿では、研究史上で蓄積の薄い商業青年学校である東京市日本橋区第三青年学校を対象事例とし、そこで実行された生徒の生活・心理調査(以下『調査』)に通底する教師の認識枠組みを検討した。なお、分析に際しては、社会学者ニクラス・ルーマンのシステム論を援用しており、よって本稿は、この一般理論の個別具体的事例への適用という側面を備えている。得られた結論は、以下の通りである。一、二段構えの認識枠組み『調査』は、社会科学的・心理学的分析枠組みに加え、それを実践へと繋ぐための媒介として、哲学的、あるいは形而上学的な認識枠組みが同居して遂行されていた。そこには、<単純化>、<本質化>、<時間化>と本稿で名づけた、矛盾や飛躍、誤謬が存在した。二、教育の可能性の条件としての矛盾、飛躍、誤謬しかし、その矛盾や飛躍、誤謬は単なる偶発的な事象として理解すべきものではなく、むしろ、生徒=勤労青少年に対する教育が可能であり、且つ必要であると教師が考えうるための条件であった。これは換言すれば、ルーマンが言う<複雑性の縮減>や<媒質>などのキーワードに符号するものであり、まさに、彼が想定する教育システムなるものの、第三青年学校の教師たちによる教育の営為における個別具体的顕現であったと言える。
著者
神代 健彦
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、戦後日本の教育研究をリードした教育学者勝田守一(1908-1969)について、彼の主張した教育学説の詳細を明らかにするとともに、現代教育学における勝田教育学の意義を検討することを目的としていた。勝田教育学は、1990年代以降、ポストモダン思想の影響を背景に厳しく批判されてきたが、本研究はその批判に耐えうる勝田教育学の今日的意義について明らかにした。とくに、2018年度より完全実施となった「特別の教科 道徳」について考える上で、勝田守一の教育学が極めて有効な視座を提供することが明らかとなった。