著者
神田 幸彦 佐藤 智生 吉田 晴郎 小路永 聡美 熊井 良彦 高度~重度難聴幼小児療育GL作成委員会
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.8-17, 2022 (Released:2022-07-31)
参考文献数
13

昨年「小児人工内耳(以下CI)前後の療育ガイドライン(以下GL)」が発刊され,先行の厚労省研究結果を抜粋して解説した。全国の調査で,新生児聴覚スクリーニング(以下新スク)を受けたCI小児は2,358名中59.3%未満であり,地域格差が見られた。また,低年齢の両耳装用児が増加していた。補聴器装用開始平均年齢が1歳未満である小児の割合は新スクを受けたCI児(約75%)がそうでないCI児よりも10倍近く多かった。通常小学校に在籍する小児の療育方法では,聴覚活用療育が約70%であり,聴覚活用をすることで通常学校により進学しやすい。新スクにより早期に難聴が診断されることで,難聴児が聴覚を活用できる方向性が明らかになっていた。CI難聴児の療育格差改善のため厚生労働省研究が採択されその成果の一つである「CI装用前後の療育のGL」は,多数のエビデンスレベルの高いCQと解答で構成され,信頼性のある重要な今後も活用できるGLと考えられた。
著者
日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会 守本 倫子 益田 慎 麻生 伸 樫尾 明憲 神田 幸彦 中澤 操 森田 訓子 中川 尚志 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.9, pp.1173-1180, 2018-09-20 (Released:2018-09-29)
参考文献数
29
被引用文献数
6

背景: ムンプスワクチンは副反応である無菌性髄膜炎が注目を集め, 任意接種となっているため, 接種率は40%近くまで低下し, 周期的に流行が繰り返されている. ムンプス難聴は難治性であり, ワクチンで予防することが唯一の対策であるが, そのことは広く知られていない. そこで, 本調査では近年のムンプス難聴患者の実態を明らかにすることを目的とした. 方法: 2015~2016年の2年間に発症したムンプス難聴症例について全国の耳鼻咽喉科を標榜する5,565施設に対してアンケート調査を行い, 3,906施設より回答を得た (回答率70%). 結果: 少なくとも359人が罹患し, そのうち詳細が明らかな335人について検討した. 発症年齢は特に就学前および学童期と30歳代の子育て世代にピークが認められた. 一側難聴は320人 (95.5%), 両側難聴は15人 (4.5%) であり, そのうち一側難聴では290人 (91%) が高度以上の難聴であり, 両側難聴の12人 (80%) は良聴耳でも高度以上の難聴が残存していた. 初診時と最終聴力の経過を追えた203人中, 55人 (27%) は経過中に聴力の悪化を認め, うち52人 (95%) は重度難聴となっていた. 反対に改善が認められたのは11人 (5.0%) のみであった. 結論: ムンプス流行による難聴発症は調査された以上に多いものと推測され, 治療効果もほぼないことから, 予防接種率を高めるために定期接種化が望まれる.
著者
日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会 守本 倫子 益田 慎 麻生 伸 樫尾 明憲 神田 幸彦 中澤 操 増田 佐和子 森田 訓子 中川 尚志 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.9, pp.1221-1228, 2019-09-20 (Released:2019-10-02)
参考文献数
11

乳幼児の自覚的聴力検査から得られる情報は重要であり, 可能な限り信頼性の高いデータを短時間に得る必要がある. これらの検査技術の困難度, 信頼度が年齢 (3歳未満, 3~6歳, 6歳以上の3群に分類) や発達レベル (定型発達, 発達障害, 知的発達障害の3群に分類) から受ける影響を, 聴力検査にかかった時間および検者が声かけなどに対する反応などから感じた聴力検査結果との整合性を「検査信頼度」として評価, 検討を行った. 研究参加施設は大学病院, 総合病院, クリニックなど15施設である. 検査の信頼度は, 3歳未満では知的発達障害児で41%, 定型発達児58%, 発達障害児50%と知的発達障害児が有意に低かった. 3~6歳では定型発達児88%, 発達障害児75%, 知的発達障害児73%であり, 6歳以上では発達障害児と定型発達児はどちらも90%以上であったが, 知的発達障害児のみ77%であった. 検査にかかる時間も3歳未満では, 発達による差異は認められなかったが, 3~6歳未満および6歳以上においては, 発達障害児と定型発達児に比べて知的発達障害児の検査時間は有意に長かった. 6歳未満の児への聴力検査には技術と時間がかかること, 発達障害・知的発達障害があるとさらに検者の検査にかける時間や高度な技術が必要となることが明らかになった.
著者
神田 幸彦 原 稔
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.105-112, 2019

<p>日本における人工内耳小児の実態調査から人工内耳小児症例は増加し,両側人工内耳症例も増加傾向にある.両側人工内耳の効果は初回人工内耳よりも静寂時,雑音下においても語音明瞭度が優位に改善され,また方向性の改善や逐次人工内耳側からの聴取の改善,耳鳴の改善など有効な報告が多い.一方で一側ろうの症例のハンディキャップも近年クローズアップされ,海外では一側ろうへの人工内耳も開始され有効性も報告されるようになってきた.また,人工内耳術後の聴覚活用教育も重要であり,聴覚活用教育を強化する意味での音楽療法も効果的である.早期発見や,早期診断,早期補聴,ガイドラインのより良い方向への変遷,検査機器の進歩,補聴器や人工内耳の進歩,教育の進歩などより,難聴児にかかわる聴覚専門の言語聴覚士はさまざまな将来性豊かな可能性を秘めている.</p>
著者
神田 幸彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.8, pp.703-712, 2011 (Released:2011-12-01)
参考文献数
3

補聴器 (右耳) と人工内耳 (左耳) を装用する医師として243名の人工内耳手術を執刀医として経験したこと, 10年前に開業し人工内耳・聴覚リハビリ医療機関で行ってきた補聴器適合, 人工内耳と補聴器の聴覚リハビリテーションを通して筆者自身の難聴の経験と医療の現場を通して得られたことを振り返って報告した. 医学生時代の24歳から20種類以上の補聴器を装用, アナログからデジタル, そして最近では第3世代のデジタルも出現, ISP (統合信号処理) やFMなども進歩している. 使用してきた補聴器の利点を報告した. 一方, 人工内耳は2004年に補聴器非装用側に「より良い聴覚の獲得」を目的として, 以前留学していたドイツ・ビュルツブルグ大学で人工内耳手術を受けてきた. 現在6年が経過したが, 補聴器との両耳聴により, 騒音下・離れたところからの会話・早口の会話・音楽の聴取などがより改善された. 現在は左の人工内耳だけでも会話可能で装用閾値は20-30dB, 語音明瞭度 (67-S) は左人工内耳のみで95%, 騒音下 (S/N=0, 70/70) で90%である. 両耳聴では50, 60, 70dBSPLすべての提示音圧, 騒音下で100%となった. 人工内耳も最新の器機では聴取能アップが進んでいる. 筆者自身の難聴の経験, 聴覚の回復の過程, 患者としての心理, 補聴器・人工内耳の近来の進歩と人工内耳の未来について考察を加え報告する.
著者
神田 幸彦
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.121-128, 2017-04-28 (Released:2017-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
3

要旨: 難聴者にとってこれまでの大きな問題だったのは, 何だったのか? それはどう解決されていったのか? 補聴器の歴史と変遷は正に難聴患者に寄り添いながら発展, 進歩を重ねてきた。最近では雑音抑制, 音声強調に加え音楽も聴きやすく, 10kHz~12kHz まで増幅可能な補聴器も出現してきた。補聴器の歴史と進歩, 問題点の解決, これまでの筆者の補聴器外来 2,468名で扱ってきた主要なメーカーの歴史的変遷, 補聴器外来の年代別外来統計ヒストグラムの変遷なども踏まえ, 補聴器の進歩により生ずる新たな問題についても考察を加えた。
著者
神田 幸彦
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.8, pp.703-712, 2011-08-20
参考文献数
3

補聴器 (右耳) と人工内耳 (左耳) を装用する医師として243名の人工内耳手術を執刀医として経験したこと, 10年前に開業し人工内耳・聴覚リハビリ医療機関で行ってきた補聴器適合, 人工内耳と補聴器の聴覚リハビリテーションを通して筆者自身の難聴の経験と医療の現場を通して得られたことを振り返って報告した. 医学生時代の24歳から20種類以上の補聴器を装用, アナログからデジタル, そして最近では第3世代のデジタルも出現, ISP (統合信号処理) やFMなども進歩している. 使用してきた補聴器の利点を報告した. 一方, 人工内耳は2004年に補聴器非装用側に「より良い聴覚の獲得」を目的として, 以前留学していたドイツ・ビュルツブルグ大学で人工内耳手術を受けてきた. 現在6年が経過したが, 補聴器との両耳聴により, 騒音下・離れたところからの会話・早口の会話・音楽の聴取などがより改善された. 現在は左の人工内耳だけでも会話可能で装用閾値は20-30dB, 語音明瞭度 (67-S) は左人工内耳のみで95%, 騒音下 (S/N=0, 70/70) で90%である. 両耳聴では50, 60, 70dBSPLすべての提示音圧, 騒音下で100%となった. 人工内耳も最新の器機では聴取能アップが進んでいる. 筆者自身の難聴の経験, 聴覚の回復の過程, 患者としての心理, 補聴器・人工内耳の近来の進歩と人工内耳の未来について考察を加え報告する.
著者
神田 幸彦
雑誌
Audiology Japan (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.55-59, 1996-02-29
被引用文献数
3
著者
菊地 俊彦 高村 博光 藤山 大佑 須賀 美奈子 石丸 幸太郎 高野 潤 神田 幸彦 小林 俊光 吉見 龍一郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.251-255, 2001-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
16

アンギオテンシン変換酵素阻害剤 (ACE阻害剤) およびアンギオテンシンII受容体拮抗薬の重大な副作用として血管性浮腫の存在が知られている。今回、われわれは、ACE阻害剤の一つであるマレイン酸エナラプリルを内服後、重篤な喉頭浮腫を来した1症例を経験した。患者は62歳、男性で、マレイン酸エナラプリルの投与開始後、約1週間で発症しており、舌、喉頭および顎下部に高度の浮腫性病変を呈していた。ステロイドの投与およびマレイン酸エナラプリルの投与中止により治癒せしめることができた。現在、ニフェジピンにより血圧のコントロールを行っているが、血管浮腫の再発もみられず、経過良好である。このように、ACE阻害剤およびアンギオテンシンII受容体拮抗薬の投与により、時に致死的な高度の浮腫性病変を来すことがあるため、われわれ耳鼻咽喉科医も本疾患の存在を十分に理解しておく必要があろう。