- 著者
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益田 理広
秋山 祐樹
- 出版者
- 地理空間学会
- 雑誌
- 地理空間 (ISSN:18829872)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.1-26, 2020
本研究は近年顕著に関心の高まる空き家に関する研究の動向について,特に和文文献に焦点を絞り,その展望を試みたものである。本研究では,まず空き家研究全体の盛衰を探るべく空き家に関連する論文の発表数の経年推移を追い,次いで研究対象となる地域,主として空き家を研究する学術領域,および各個の研究の使用する統計の種類についてそれぞれ分析した。更に,各個の研究の採用する調査と分析の手法について,その採用数と採用率を明らかにした上で評価を行った。その結果,2019年現在において空き家研究は質,量の両面に最盛期を迎えており,研究方法の面では計算機による特定指標の緻密な分析に重きが置かれ,建築学や都市工学の長所を有する一方で,自然環境から社会条件に及ぶ総合的分析の不足が指摘された。そこで,本研究は,地域のような総合的対象の分析に適する地理学的観点の導入によって,研究状況の学際的補完を提言するものである。