著者
見須 裕香 加藤 雅子 種村 留美 岡村 仁 山本 大誠
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.380-384, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
14

作業療法では,対象者が行いたいことや必要としていることと実際に行っていることとの間に生じる作業ギャップを把握することが重要となる.本研究の目的は,作業ギャップを測定するOccupational Gaps Questionnaire日本語版(OGQ-J)を作成し,言語的妥当性を検討することである.方法は,標準化された手順に従いOGQ-Jを作成した.その結果,原版との内容的な整合性を保ちつつ,日本の文化において使用可能な30の活動項目で構成されるOGQ-Jの言語的妥当性が確認された.今後は,高齢者や心身機能の低下を伴う人々を対象に含め,信頼性および妥当性の検証を実施する必要がある.
著者
小嶌 麻木 岡橋 さやか 種村 留美 長野 明紀 羅 志偉 関 啓子
出版者
日本言語聴覚士協会
雑誌
言語聴覚研究 (ISSN:13495828)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.80-88, 2012-07-15

われわれは,日常場面における失語症者の高次脳機能の問題を評価するためにvirtual reality(VR)買い物課題を開発した.本研究の目的は,本課題が失語症者の多様な神経心理学的症状を評価できるかどうかを検証することである.対象は失語症群17名(男性12名,女性5名)と,非失語症群11名(男性4名,女性7名)である.両群のVR課題の成績比較と,失語症群におけるVR課題とRCPM,標準注意検査法内のSDMT,SRT,Cognitive Linguistic Quick Test内のSymbol Cancellation,Symbol Trails,Design Memory,Mazes,SLTA(読む)との関連を調べた.結果,失語症群はヒントを有効活用できないが全員課題を遂行した.VR課題との相関から言語機能の影響は否定できないが,注意や遂行機能を評価できる可能性が示唆された.
著者
鈴木 雄介 種村 留美
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.38-46, 2012-03-31 (Released:2013-04-02)
参考文献数
22
被引用文献数
1

外傷性脳損傷患者の多くは神経行動学的変化を生じ, そのために家族介護者の多くが抑うつや不安などの心理学的苦痛を抱えている。本研究の目的は外傷性脳損傷患者の家族介護者の心理学的苦痛の軽減を図るための介入プログラムの効果を検証することである。16 名の参加者に週 1 回, 1 回4 時間で全 5 回の介入プログラムを実施した。内容は外傷性脳損傷の基礎知識, 高次脳機能障害への対応方法, アサーティブネストレーニングを応用したコミュニケーション技法訓練を中心に構成した。効果判定は GHQ-30, SDS, STAI, RAS を評価尺度とし, 介入前後およびフォローアップ (3 ヵ月後と 6 ヵ月後) の時点で分析した。介入前後およびフォローアップの分散分析では SDS は介入前とフォローアップ 6 ヵ月後に, STAI (状態不安) は介入前と介入後における平均値の比較で統計学的に有意な減少を認めた。
著者
石原 裕之 穴水 幸子 種村 留美 斎藤 文恵 阿部 晶子
出版者
認知リハビリテーション研究会
雑誌
認知リハビリテーション (ISSN:24364223)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.17-25, 2015 (Released:2022-05-26)
参考文献数
8

我々は左側頭葉と後頭葉の境界部と頭頂葉,右後頭葉外側部の主に皮質下白質の梗塞により,健忘失語,仮名に強い失読,漢字の失書など様々な神経心理学的症状が認められる症例を経験し,その症例に対して複数の認知リハビリテーション介入を行った。その中でも今回は,読み書きの障害や前向性健忘に対する補助手段およびquality of life(QOL)の向上を目的に導入された,タブレット型端末用アプリケーションである高次脳機能障害者の日常生活支援ツール『あらた』の効果を中心に考察した。本例はこのツールを習得して使いこなしたが,これは残存していた能力をうまく利用したためと考えられた。使用開始後は行動範囲が広がる等のQOLの向上や,このツールの読み書きの訓練的意義等が示唆された。認知リハビリテーションには,個々の症状をターゲットにするだけでなく,様々な面からの統合的なアプローチが有効であると考えられた。
著者
相良 二朗 見明 暢 田頭 章徳 種村 留美 長尾 徹 野田 和恵 Jiro SAGARA Nobu MIAKE Akinori TAGASHIRA Rumi TANEMURA Toru NAGAO Kazue NODA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2013
巻号頁・発行日
2013-11-25

少子高齢化が進行している我が国において、認知症者の増加は予想をはるかに上回り、2012年時点で高齢者人口の15%にあたる約462万人が認知症を発症していると発表された(朝田隆、厚生労働省研究班、2013)。一方、2010年現在、高齢者のいる世帯は全体の4割を占め、独居高齢者は男性140万人、女性346万人と推計されている(平成24年版高齢者白書、内閣府)。加齢に伴う生活不安の一つは自身あるいは家族が認知症になることであり、認知症が進行すれば在宅生活をあきらめざるを得ない。アルツハイマーに代表される認知症は進行性の疾患であり、数年間に及ぶ初期症状の段階を経て要介護状態となる。この初期段階における日常生活上の困難や混乱によって生じる「問題行動」は生活行為を縮小させ、認知機能の廃用を引き起こし、認知症の進行を早める危険性がある。著者らは、生活環境とりわけ日常生活で使用する家庭電化製品等(以下家電等と略記)が認知機能の低下に配慮していないことに起因していると仮定し、独居もしくは日中独居の高齢者がどのような家電等を継続使用しているのか、使用を中断したものはないか、といった調査を行い、その結果から認知力が低下しても継続使用が可能な家電等のデザイン方法について7つの知見を得た。In 2013, a research unit of Ministry of Health, Labor and Welfare announced that more than 4.62 million are dementia and around 4 million are MCI (Mild Cognitive Impairment), extremely exceeding expectation. On the other hand, households which have elderly counted 42% in 2010 in Japan. The cabinet estimated 1.3 million men and 3.5 million women of over 65 live alone.One of the fears of aging people is to be a dementia. People must move to institute when the stage of dementia goes deep. The dementia like an Alzheimer's disease become worth in several years, after intermediate stage so called MCI. In this intermediate stage, if some kind of problems happens, family member tend to take his/her independent activities. This makes dementia worth.The authors interviewed 91 elderly who live alone to find what kind of everyday technology are still used or quite using. Finally we found seven items of knowledge to design those elderly friendly.
著者
種村 留美 長尾 徹 野田 和惠 相良 二朗
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.384-391, 2016-09-30 (Released:2017-10-05)
参考文献数
5
被引用文献数
5 1

家電などの Everyday Technology (以下ET) の進化は著しく, 高機能, 多機能, 利便性に長けている。一方で, 高次脳機能障害や認知症などによる認知機能の障害は, これら ET の恩恵にあずかることは少なく, 目ざましく変化する ET に戸惑い, かえって家人等の実際の介護負担や介護負担感をも増やす結果となっている。  筆者の研究グループは, 元気健常高齢群, デイサービス利用群, 認知症群の在宅を訪問調査し, Nygård らが作成した Everyday Technology Use Questionnaire (以下ETUQ) 等を用いて, ET の使用状況を調査した。  その結果, 健常高齢者でも使用困難なET は最新の機器であること, ET 使用中止の理由は, 生活様式の変化によるものと認知機能低下によるものであった。認知症例における ET 使用は, 徐々に機器の手順がわからなくなり, 昔の道具を使用していることが多かった。さらに ETUQ を用いて, 発症後4 年経過した Gerstmann 症候群の ET 使用の調査を行い, 数字や文字を識別する必要のある機器の使用が最後まで困難であった。  これらの高次脳機能障害者や認知症者の在宅訪問調査の結果明らかとなった生活上の諸問題に対し, 当事者の諸問題の解決や家族の介護負担を軽減する, 簡単テレビリモコン, 徘徊予防センサー, 記憶補助アプリなどの Assistive Technology (AT) を紹介した。
著者
高原 世津子 野間 俊一 種村 留美 上床 輝久 種村 純
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.251-258, 2005 (Released:2007-03-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

欧米で広く推奨されている学習方法であるPQRST法は, Preview, Question, Read, Self-Recitation, Testからなり, 他の記憶ストラテジーに比べ有効であることが示されている。今回われわれは, 両側側頭葉前下部, 前頭葉眼窩面に広範な脳内出血を認め, 受傷後7ヵ月半を経過した健忘症患者にPQRST法を用いた記憶訓練を施行し, 良好な結果を得たので報告する。PQRST法は本来言語的手がかりを使用するが, 今回は, 症例に相対的に残存していた視覚性記憶もあわせて利用した。PQRST法は記憶障害患者に深い情報処理を促し, 文章の理解と保持を促進したことが示唆された。また, Baddeleyらによってその有効性が確認されている, 誤りなし学習法についても検討し, それが追認された。また, 学習時にのみ示していた軽度保続に対しても, 誤りなし学習が有効であることが示唆された。約2ヵ月の治療的介入の結果, 検査成績の向上とともに, 実際の生活場面においてもエピソード記憶が改善し, 症例は社会復帰を果たした。
著者
山下 円香 田原 旭 武内 康浩 片倉 律子 種村 留美
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.363-371, 2014-09-30 (Released:2015-10-01)
参考文献数
20

左角回の陳旧性梗塞に加え新たに生じた右中心後回から上頭頂小葉の一部に及ぶ梗塞により失計算を呈した 1 症例を報告した。患者は当初 Gerstmann 症候群を呈したが, 構成失書と失計算以外の症状は早期に消褪した。Calculation process は発症後1 ヵ月, arithmetical fact の再生は 4 ヵ月までに回復したが, transcoding の障害のうちsyntactic error としての「0」の位どりの障害は 22 ヵ月後も残存した。構成失書は発症後 4 ヵ月までに大幅に回復した。本例の失計算の病態とその回復過程を working memory のサブシステムの観点から検討し, 右中心後回の損傷に関連したvisuo-spatial sketch pad の機能低下による心内表象の形成・操作障害, および, 同損傷による対側の機能解離 (diaschisis) と陳旧性の左角回損傷に関連した一過性の phonological loop の機能低下による音韻処理障害や言語性短期記憶障害が失計算をもたらしたものと考察した。
著者
相良 二朗 種村 留美 長尾 徹 野田 和恵 田頭 章徳 見明 暢 ペイター ボンジェ
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

認知症者を含む独居高齢者(日中独居を含む)91名を対象に、スウェーデンのカロリンスカ研究所が開発したETUQ(日常生活機器使用状況調査表)を用いて訪問調査を実施した。その結果、高齢になり、家族環境の変化や認知力の低下などから、使用が中断された家電製品等の存在や、継続的に使用されている家電製品等が抽出され、それらの特徴が明らかとなった。また、認知力が低下した独居高齢者が抱えている日常生活上の問題が明らかとなった。これらの問題に対し、継続使用が可能な家電製品のインタフェース・デザインについていくつかの知見を得ることができ、適切な使用を促す音声ガイドの有効性が試作を通して明らかとなった。また、音声ガイドのあり方についての知見も得ることができた。