著者
原口 脩平 白根 歌織 沖 貞明 積山 和加子 梅井 凡子 高宮 尚美 小野 武也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.489-492, 2015 (Released:2015-09-03)
参考文献数
14

〔目的〕温熱療法直後における拘縮関節の可動性増加の有無を検証した.〔対象〕Wistar系雌ラット(8週齢)12匹とした.〔方法〕ラットの右側後肢足関節を,最大底屈位で1週間ギプス固定した.温熱療法群とコントロール群に分け,前者に対しては渦流浴を実施した.その後,両群のラットの足関節に対して,他動的に最大背屈させる際の最大抵抗力を測定した.〔結果〕最大抵抗力の中央値は温熱療法群で2.8N,コントロール群は3.0Nであり,両群間に有意差は認められなかった.〔結語〕温熱療法直後において,拘縮関節の可動性増加は認めないことから,温熱療法によるコラーゲン線維の伸張性増加は不十分であると考えられる.
著者
相原 一貴 小野 武也 石倉 英樹 佐藤 勇太 松本 智博 田坂 厚志 梅井 凡子 積山 和加子 沖 貞明
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.41-44, 2016-04-30 (Released:2016-07-29)
参考文献数
16
被引用文献数
1

[目的]本研究は身体の柔軟性の評価である指床間距離(Finger-Floor Distance:以下FFD)を用いて,睡眠前後でのFFD の変化を明らかにするために行った。[対象と方法]健常大学生34名(男性14名,女性20名)を対象とした。朝と夜のFFD と睡眠時間を3日間測定した。なおFFD は,①夜の入浴前と②朝の起床後に測定した。[結果]FFD の値は朝の方が夜よりも有意に高値であった。[結語]睡眠後に身体の柔軟性が低下していることが明らかとなった。
著者
佐藤 勇太 田中 聡 飯田 忠行 積山 和加子 古西 恭子 瀬尾 優奈
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
pp.JJCCPT22011, (Released:2023-08-01)
参考文献数
35

【目的】本研究の目的は,生きがい感の違いがシルバーリハビリ体操事業参加1年後の高齢者の心身機能に与える影響について明らかにすることとした.【方法】対象はシルバーリハビリ体操事業への参加者とし,初年度の高齢者向け生きがい感スケールの調査票(K-Ⅰ式)の得点を用いてK-Ⅰ式高得点群とK-Ⅰ式低得点群に分けた.評価項目は,初年度および次年度の握力,開眼片脚立位保持時間,うつや不安障害に対するスクリーニング調査票(K6 日本語版),K-Ⅰ式とした.【結果】対応のある二元配置分散分析およびBonferroni法の結果,両群の握力,開眼片脚立位保持時間,およびK6 日本語版は初年度と次年度間に有意差を認めなかった.K-Ⅰ式総得点や下位尺度「生活充実感」「生きる意欲」「存在感」の得点は,K-Ⅰ式低得点群にて初年度より次年度が高い結果であった.【結論】本研究において,シルバーリハビリ体操事業への参加は,生きがい感が低いとしても参加1年後の高齢者の身体機能の維持および健康心理面の維持・改善に効果を有する可能性があることが明らかとなった.
著者
宮下 広大 金井 秀作 長谷川 正哉 積山 和加子 高宮 尚美
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0655, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】患者の動作・運動指導において言語教示の重要性が唱えられている一方で,運動を促す際の指導者と学習者の言語認識の一貫性については,今日のリハビリテーション分野での研究は十分であるとは言えない状況にある。そこで,本研究では異なる言語表現が筋収縮に与える影響と言語を用いた筋収縮感覚を他者と共有可能であるか調査する。【方法】健常男性12名を対象とした。2人1組とし両者をフィットネスチューブの両端を把持した状態で向き合わせ,言語教示を提示し,肘関節屈曲運動を5秒間行う牽引側,閉眼にて開始肢位を保つ受け手側とした。教示内容は形容詞表現「速く・強く」,「遅く・強く」,擬態語表現「びゅんっと」,「ぎゅーっと」,比喩的表現「綱引きでピストルの合図と同時に綱を引くように(以下,綱引き)」,「何とか持ち上がるくらいの重いダンベルを手前に引くように(以下,ダンベル)」の6種類とした。各施行終了後,速度・強度を(Visual analogue scale:VAS)を用いて主観的感覚を調査した。また受け手側には9種類の教示を提示し,筋運動感覚から牽引側の教示内容を予測させた。なお,表面筋電図の測定は右上腕二頭筋,右上腕三頭筋長頭,右上腕三頭筋外側頭とした。統計解析は,各教示間における筋出力の比較にKruskal-Wallis testを用いた。有意差を認めた場合にSteel-Dwass testによる多重比較を行った。比較する際の教示は受け手側の予測に合わせて牽引側,受け手側それぞれ行った。【結果】受け手が回答した予測教示について,一致した正答率は「綱引き」の67%が最も高く,対照的に「びゅんっと」の25%が最も低かった。各教示間のVAS速度,VAS強度,上腕二頭筋平均振幅の牽引側においては,VAS速度で各教示間に多くの有意差が認められたが,VAS強度において,有意差は認められなかった。また,客観的指標である上腕二頭筋平均振幅においては,「遅く強く」「綱引き」間,「ぎゅーっと」「綱引き」間でのみ有意差が認められた(p<0.01,p<0.05)。受け手側においては,VAS速度に,「びゅんっと」「綱引き」間,「びゅんっと」「ダンベル」間を除き,牽引側と同様の有意差が認められた。VAS強度においては,形容詞・擬態語間,擬態語・比喩間に有意差が認められたが,形容詞・比喩間で有意差は認められなかった。上腕二頭筋平均振幅においては,「綱引き」「ダンベル」間で有意差が認められた(p<0.05)。【結論】治療意図による言語の使い分けの必要性が示唆された。また適切な比喩的表現は牽引側,受け手側,両者にとって最も統一した筋収縮活動を起こした。このことから,運動指導を担う理学療法士には他者と共有しうる多彩な比喩表現の必要性が示唆された。
著者
梅井 凡子 小野 武也 大塚 彰 沖 貞明 大田尾 浩 積山 和加子 田坂 厚志 石倉 英樹 相原 一貴 佐藤 勇太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100050, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】虚血再灌流後の骨格筋は浮腫により運動障害を引き起こす。運動障害の原因は浮腫に付随する炎症反応と疼痛であると推察される。先行研究により抗酸化物質により炎症反応が軽減することを確認した。しかし,その際の行動観察が不十分であったため,今回,虚血再灌流後にラット後肢への重量配分を測定することで鎮痛評価を行った。本研究においては抗酸化物質投与と運動負荷が,虚血再灌流後の骨格筋に与える影響を検証することを目的とした。【方法】対象は8 週齢のWistar系雌性ラット20 個体である。これらを5 個体ずつ無作為に「再灌流のみ群」「運動群」「アスコルビン酸群」「トコフェロール群」の4 群に振り分けた。すべての群は麻酔下にて右後肢に対し駆血を行った。駆血圧は300 mmHgで駆血時間は90 分間である。「アスコルビン酸群」「トコフェロール群」は12 時間毎にそれぞれを投与した。運動負荷はトレッドミルにて再灌流開始24 時間後より4 日間行った。運動負荷は1 日2 回とし,運動時間は20 分間とした。トレッドミルの速度は10 m/secより開始し20 m/secまで増加させた。また,すべての運動負荷時には歩行状態を観察するとともに 鎮痛評価は右後肢の重量配分を測定した。すべての群は実験終了時に対象肢からヒラメ筋を摘出した。摘出したヒラメ筋は,液体窒素で急速冷凍させ凍結ヒラメ筋標本を作製した。凍結ヒラメ筋標本はクリオスタットを使用して,10 μm厚のヒラメ筋筋組織横断切片を作製し,H&E染色を施した。顕微鏡デジタルカメラを使用して標本毎に組織学的検索を行った。重量配分の統計処理は実験開始前と比較し,対応のあるt検定を行った。危険率5%未満をもって有意差を判定した。【倫理的配慮、説明と同意】本実験は,動物実験モデルであるために演者所属の動物実験倫理委員会の承認を受けて行った。【結果】重量配分は実験開始前「再灌流のみ群」48.3%,「運動群」51.6%,「アスコルビン酸群」47.0%,「トコフェロール群」48.2%であった。虚血再灌流翌日には「再灌流のみ群」33.6%,「運動群」32.0%,「アスコルビン酸群」28.9%,「トコフェロール群」41.3%と変化し,実験最終日には「再灌流のみ群」25.8%,「運動群」35.0%,「アスコルビン酸群」33.1%,「トコフェロール群」36.2%であった。「トコフェロール群」以外の3 群において実験開始前に比較して虚血再灌流翌日,実験最終日ともに重量配分は有意差に減少していた。運動負荷時の歩行状態は,運動1 日目では「運動群」は5 個体,「アスコルビン酸群」「トコフェロール群」はともに3 個体で右下肢が十分背屈できずに足関節底屈位のまま歩行をしていた。運動2 日目は「運動群」は3 個体,「アスコルビン酸群」2 個体,「トコフェロール群」3 個体で右下肢が十分背屈できず,「運動群」2 個体,「アスコルビン酸群」2 個体,「トコフェロール群」1個体に擦過傷による出血を認めた。運動3日目は「運動群」は1個体,「アスコルビン酸群」2個体,「トコフェロール群」2 個体で右下肢が十分背屈できず,「運動群」2 個体,「トコフェロール群」3 個体に擦過傷を認めた。「アスコルビン酸群」2 個体は途中休憩を入れていた。運動4 日目は「運動群」,「アスコルビン酸群」,「トコフェロール群」それぞれ1 個体で右下肢の背屈が弱く,途中休憩を入れていた。筋線維の組織学的検索において「再灌流のみ群」は正常に比較し細胞間が広く,細胞自体も丸みを帯びていた。「運動群」「アスコルビン酸群」は「再灌流のみ」に比較して細胞間は狭い。核の膨化を認めるとともに中心核が存在した。「トコフェロール群」多数の炎症細胞の増加と壊死した筋線維の痕跡を認めた。【考察】虚血再灌流障害により発生する浮腫及び炎症反応により虚血肢への重量配分が減少する。しかし,「トコフェロール群」においては虚血再灌流翌日の重量配分の減少が抑制された。トコフェロールには血流改善,細胞膜保護作用があるため虚血再灌流後に発生する浮腫を減少させ,浮腫に伴う疼痛を減少させることが出来たものと考える。また,運動負荷により重量配分は増加していた。このことは運動負荷により浮腫が改善したものであると推察される。筋線維の組織学的検索においても「再灌流のみ群」に比較してその他の群では細胞間が狭かった。虚血再灌流後の浮腫の抑制には抗酸化物質の投与および運動負荷が有効であると示唆された。【理学療法学研究としての意義】虚血再灌流後の浮腫の抑制に抗酸化物質投与と運動負荷が効果的であり,早期から運動療法を施行する裏付けとなると考える。
著者
積山 和加子 沖 貞明 髙宮 尚美 梅井 凡子 小野 武也 大塚 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】遠心性収縮は筋力増強や筋肥大効果が高く,かつ運動中の心拍数や血圧が低く保てるとの報告がある。そのため遠心性収縮を用いれば従来よりも運動強度を低く設定しても筋肥大が図れる可能性があり,我々はラットに対して乳酸性作業閾値50%以下の強度の遠心性収縮運動を長時間負荷することにより筋肥大を起こすことができることを確認した。しかし我々が用いた運動方法は低負荷ではあったが長時間の連続運動を行う必要があるという問題点を有しており臨床応用に向けての課題が残った。臨床において連続した運動を行うことが難しい場合に対して運動の合間に休息を挟むインターバル運動を行うことがある。そこで,本研究では遠心性収縮を用いた有酸素運動において,運動の合間に休息を挟むインターバル形式の運動であっても,連続運動と同程度の筋肥大効果があるのか,さらに筋力増強効果も認めるのかについて検討を行った。【方法】10週齢のWistar系雌性ラット21匹を対象とし,7匹ずつ3群に振り分けた。各群は,運動負荷を行わず60日間通常飼育するコントロール群,トレッドミル走行を90分間連続で行う連続運動群,総走行時間は90分として走行の合間に休息を挟むインターバル形式で行うインターバル運動群とした。連続運動群とインターバル運動群のトレッドミル傾斜角度は-16度,走行速度は16m/minにて3日に1回,計20回(60日間)の運動を行った。なお,トレッドミル下り坂走行は,ヒラメ筋に遠心性収縮を負荷できる方法として,動物実験で用いられている運動様式である。今回連続運動群に用いた運動負荷の条件は,筋肥大が確認できた我々の先行研究と同じ条件を用いた。実験最終日に麻酔下にて体重を測定し,両側のヒラメ筋を摘出した。右ヒラメ筋を,リンゲル液を満たしたマグヌス管内で荷重・変位変換機に固定し,筋を長軸方向へ伸張し至適筋長を決定した。その後電気刺激装置を用いて1msecの矩形波で刺激し,最大単収縮張力を測定した。強縮張力は最大単収縮張力の時の電圧の130%で,100Hzの刺激を1秒間行って測定した。次に左ヒラメ筋を,重量測定後に急速凍結した。凍結横断切片に対しHE染色を行い,病理組織学的検索を行うとともに筋線維径を測定した。体重,筋湿重量,筋線維径については1元配置分散分析を行い,有意差を認めた場合にTukey法を用いた。強縮張力についてはKruskal-Wallis検定を行い,有意差を認めた場合にScheffe法を用いた。有意水準は5%とした。【結果】筋湿重量,筋線維径および強縮張力において連続運動群とインターバル運動群はコントロール群に対して有意に大きく,連続運動群とインターバル運動群では有意差を認めなかった。組織学的検討では,各群において異常所見は認めなかった。【考察】連続運動群では筋湿重量と筋線維径はコントロール群に比べ有意に増加した。これは我々の先行研究の結果と同様であり,遠心性収縮を用いた有酸素運動によって筋肥大効果を認めることが改めて示された。さらに強縮張力においてもコントロール群に比べ連続運動群では有意差を認めた。この結果から遠心性収縮を用いた有酸素運動は,ヒラメ筋の筋肥大に加え筋力増強効果もあることが分かった。次にインターバル運動群においても,筋湿重量,筋線維径および強縮張力はコントロール群に比べ有意に増加し,さらにインターバル運動群とは有意差を認めなかった。これらの結果から,遠心性収縮を用いた有酸素運動において,運動の合間に休息を挟むインターバル形式の運動であっても,連続運動と同程度の筋肥大および筋力増強効果があることが分かった。遠心性収縮は収縮に伴い筋長が延長する収縮様式のため,求心性収縮に比べ筋線維への機械的刺激が大きい。また,骨格筋は筋線維損傷後の修復過程において損傷前の刺激にも適応できるように再生し,遠心性収縮運動は繰り返して行うと筋節の増加によって徐々に筋長が延長した状態でも力を発揮できるようになるという報告もある。本研究において20回の遠心性収縮運動を繰り返すことによって適応が生じ,筋肥大や筋力増強が図れた可能性がある。今後は運動時間や頻度等についてさらに検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】これまで筋力増強や筋肥大が起きないとされてきた低負荷の有酸素運動でも,長時間の遠心性収縮運動により筋力増強と筋肥大が可能であり,さらにはインターバル形式で運動を行っても同様の効果があることを明らかにした。
著者
佐藤 勇太 小野 武也 石倉 英樹 相原 一貴 松本 智博 田坂 厚志 沖 貞明 梅井 凡子 積山 和加子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.409-412, 2015 (Released:2015-07-07)
参考文献数
33
被引用文献数
5 4

〔目的〕関節固定により発生する関節拘縮に下肢への非荷重がおよぼす影響を検討した.〔対象〕Wistar系ラットとした.〔方法〕関節固定と後肢懸垂の実施の有無により,対象の後肢を,無処置の対照群,関節固定のみ行う固定群,後肢懸垂のみ行う懸垂群,両方行う固定懸垂群に分けた.実験開始前と1週間後において,足関節背屈角度を測定した.〔結果〕1週間後において,足関節背屈角度の減少は,固定群と固定懸垂群に生じており,固定懸垂群の方が,固定群と比較して著明であった.〔結語〕下肢への非荷重は,関節固定により発生する関節拘縮の進行を著明にさせる.
著者
積山 和加子 松尾 剛 田中 聡 沖 貞明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>ソーシャルメディア(Social Media;以下SM)とはインターネットを利用して誰もが手軽に情報を発信し,相互のやりとりが出来るメディアを指すが,近年,医師や看護師等がインターネット上に患者情報を掲載した事案や他者を誹謗中傷した事案など,守秘義務違反や個人情報漏洩の問題が数多く取り挙げられている。本来SMの私的利用は個人の自覚と責任で自由に行うべきものであるが,これまでの不適切投稿による事案から鑑みると懲戒解雇や停職等,個人に対する処分だけでなく,所属する組織にも影響を与える。そこで今回,リハビリテーション専門職に対しSMの私的利用に関する意識調査を行い,その実態について検討を行った。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は国立病院機構中国四国グループの理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の計440名とした。無記名自記式調査票を2016年6月に同グループの25施設に対して各職員数分を発送した。</p><p></p><p>本調査票の質問項目は,総務省が平成27年にSM利用に関して一般市民に行ったアンケートを参考に,①私的に利用している端末,②SM利用状況,③SM利用目的,④SMでの情報発信・拡散の程度,⑤情報拡散の基準,⑥SM利用時のトラブル経験,⑦SM利用時のリスクに関する認識,⑧SMトラブルに関する事例(報道)への意見,⑨SM利用時の留意事項の認知度の9項目とした。9項目の各回答は多肢選択法を用い,設問によって該当するものを1つまたは複数選択する形式とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>本調査では395名から回答があり,回収率は90%だった。①私的利用の端末は,全員がスマートフォンやPC等を使用していた。②SMの利用状況はLINEの利用者が最も多く86%で,SMを利用していないと回答した者は11%だった。③SMの利用目的は,「知人や家族とのやりとりや通話をするため」が65%で最も多かった。④SMの情報発信・拡散の程度では,「発信よりも他人の書き込みを閲覧することの方が多い」が57%で最も多く,拡散経験があると回答した者は40%だった。⑥SM利用時トラブルを経験したことがある者は7%で,トラブル件数は41件だった。⑦SM利用時のリスクに関する認識は,「非常に気をつけている」,「気をつけている」と回答した者が80%を超えていた。⑧SMトラブルに関する事例への意見としては,「情報モラルの低下」が60.8%で最も多かった。⑨SM利用時の留置事項の認知度は,60%以上が「知っている」と回答した。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>平成26年度の総務省調査によると,SM利用に関する情報リテラシー教育の受講経験について,本邦では20%程度であり諸外国の状況に比べ低いと報告している。本調査ではSMを利用していない者も1割程度いたが,SMを利用していなくても投稿者と一緒に写っていた写真によって投稿者以外の個人情報が流出する可能性もある。そのため,インターネット利用の頻度やSMの利用に関わらずSMの私的利用における情報リテラシー教育の機会を設ける必要性があると考えられる。</p>
著者
相原 一貴 松下 和太郎 小野 武也 石倉 英樹 佐藤 勇太 松本 智博 田坂 厚志 積山 和加子 梅井 凡子 沖 貞明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】整形外科的手術で出血量抑制のために使用されるターニケットは,虚血再灌流障害を引き起こし骨格筋の浮腫や炎症,萎縮を発生させる可能性が報告されている。我々は先の動物実験において,圧力300mmHgで90分間ターニケットを使用すると,虚血再灌流後に筋収縮力の低下が生じ,その低下は再灌流後7日目においても完全回復に至らないことを明らかにした。しかし,7日目以降の筋収縮力の変化に関しては不明である。そこで,虚血再灌流後の筋収縮力の変化を明らかにする目的で,虚血再灌流後14日目における筋収縮力の測定,および歩行動作との関係について検討した。【方法】10週齢Wistar系雄ラット12匹(体重360.1±14.2g)を6匹ずつ正常群(以下C群)と虚血再灌流群(以下IR群)に分けた。IR群は,まず麻酔下で後肢にターニケットカフを巻き,圧力300mmHgで90分間の駆血を実施した。そして14日後に,両群の筋収縮力の測定と歩行観察を実施した。歩行観察は傾斜0°のラット用トレッドミル上を分速10m/minで歩行させ,その様子をビデオカメラで撮影し,その動画から足指伸展角と踵骨高を測定した。足指伸展角は爪先離地時に踵骨と第4中足骨を結ぶ線と床に平行な線がなす角度とし,値が小さい程伸展していることを示す。また踵骨高は足底接地時の踵骨と床の垂直距離とした。筋収縮力の測定は,ヒラメ筋を摘出し95%酸素および5%二酸化炭素の混合ガスを常時通気しているリンゲル液で満たしたオーガンバス内へ入れ,電気刺激を加え測定した。測定後のヒラメ筋は,凍結させHE染色し筋横断面短径を測定した。統計学的解析は,対応のないt検定を用い,危険率5%未満をもって有意差を判定した。【結果】筋収縮力はC群116.5±7.4g,IR群69.2±13.3g,筋横断面短径はC群58.6±2.8μm,IR群46.3±4.2μmであり,どちらもC群に比べIR群に有意な低下が認められた(P<0.05)。一方,歩行に関する測定項目である足指伸展角および踵骨高では,両群間に有意差は認められなかった(P<0.05)。【結論】本研究結果にて,筋収縮力や筋横断面短径はC群よりもIR群が有意に低下していたが,歩行に関する評価項目に有意差は認められなかった。一般的に筋収縮力は,筋横断面積と比例関係にある。また,虚血再灌流障害の症状として浮腫や炎症,筋萎縮が報告されている。そのため,IR群では虚血再灌流により低下した筋収縮力が完全回復していないことが推測できる。一方で,歩行に関して差がなかったことについては,歩行自体は低負荷の運動であるため,運動から筋機能の状態を評価するには,より負荷の高い運動に対する反応から判断する必要性が示唆されたと推測する。よって,虚血再灌流後14日では,歩行が正常であっても,筋機能の回復は完全ではない可能性があることを明らかにした。
著者
梅野 朋美 積山 和加子 岩根 美紀 安心院 朗 武居 光雄
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.145, 2004

【はじめに】<BR> 質の高い在宅生活を継続するには、家族と安定した日常生活を送るだけでなく、心身機能及び活動度の維持や向上を図りながら、個々の役割を分担し社会参加を実現することも重要である。しかし実際には、屋外に外出する機会は少なく自宅内の活動にとどまる場合が多い。そこで当通所リハビリテーション(以下、通所リハ)では、自立支援は当然のことながら、趣味や社会参加へのきっかけ作りを目的に、個別的な目標を掲げチームで取り組んでいる。今回、屋外レクレーション(以下、屋外レク)を積極的に行うことにより、在宅での屋外活動が拡大し、IADLのみならずQOLの向上が認められた症例を経験した。この症例を通し、質の高い在宅生活の実現に向けた通所リハの個別的な関りの重要性を考える機会を得たので報告する。<BR>【屋外レクレーションの取り組み】<BR> 利用者の屋外活動のニーズや自宅周囲の環境を評価した上で、目標を設定し実施している。ショッピングセンターでの買物、園芸活動及び公園の散歩等を、利用者に対して月平均3回行っている。活動度に合った介助法を職員間で統一し、実施状況について家人に情報提供を行い、個別的な対応を心がけている。<BR>【症例紹介】<BR> 症例1:53歳、女性、脳出血左片麻痺。要介護1、日常生活自立度(以下、自立度)A2。プラスチック短下肢装具装着し、杖歩行屋内自立レベル。自宅周囲の環境により外出は困難であるが、「外を歩きたい」という要望を持っていた。まず通所リハ内で、自宅周囲の環境を考慮し砂利道や坂道といった不安定な場所での歩行獲得に対するアプローチを開始した。屋外レクでは、目的をもった外出及び主婦としての役割の再獲得を視野にいれ、スーパーでの買物を開始した。屋外レクを継続する中で、店内の杖歩行が安定して行えたことで自信を獲得し、「自宅近所のスーパーへ買物に行きたい」と具体的なニードにつながった。「屋外歩行自立と買物動作の獲得」を目標に、カート押し歩行での移動の獲得、計画性を持った買物の実施を促した。実際のスーパーでの買物は通路が狭く、人や障害物で混雑していることが多い。そのため安定した移動をしながら、購入品目、値段及び所要時間等の状況判断をする必要がある。当初は課題設定を行い買物を実施した。見守り、独力での実施と段階を経ていくうちに、楽しみとしての買物から生活の一部としての買物に変化していった。1ヵ月後、自立度J2、坂道の移動も安定し自宅周囲の歩行が自立した。IADLとして買物や銀行での金銭管理も実施できるようになり、主婦としての役割が確立した。現在は買物が日課となり忙しい毎日を過している。<BR> 症例2:69歳、女性、脳出血両片麻痺。要介護4、自立度B2。ADLは車椅子介助レベル、立位動作は手すり等を使用し介助を要していた。本人は外出に対して意欲的だったが、車椅子座位の耐久性低く車の移乗動作や外出先での排泄の経験がないため、外出に対して不安が強かった。「日中は車椅子で過し家人同伴での屋外活動」を目標に、立位動作訓練や移乗動作訓練を行い日中は車椅子での活動を促した。1ヶ月後、通所リハ内では車椅子座位の耐久性が向上し、車の移乗動作も軽介助にて可能になった。屋外レクでは外出先の身障者用トイレでの排泄動作が安定し、「また外出したい」と前向きな感想が聴かれた。一方で、通所リハでの活動度は向上したものの、家人の「車への移乗等の介助方法が分からない」という不安により、自宅での屋外活動は行われることなく、依然活動度の低い状況であった。この乖離を埋めるために積極的に情報交換を行い、家人へ適切な介助法について指導を実施した。2ヵ月後、自立度B1。車の移乗動作や屋外での車椅子駆動は介助を要すが、IADLとして週末は家人と共にスーパーでの買物や公園に外出を行うようになった。本人は家族との週末の外出を楽しみにしている。<BR>【まとめ】<BR> 今回、屋外レクを通し利用者の真のニーズを見出すことができ、また家族との情報交換によりADLに介助を要していても、アプローチによりIADLの拡大だけでなくQOLの向上が認められた症例を経験した。IADLの拡大に向けては、利用者の生活様式が様々なため、画一的な関りでは不十分で、個々の利用者の実用的な活動を想定し、アプローチを行うことが大切である。利用者の生活背景が多種多様である中で、今後もニーズに応じた、個別性を重視したプログラム及び通所リハの提供に取り組んでいきたい。