著者
谷出 康士 田坂 厚志 甲田 宗嗣 長谷川 正哉 島谷 康司 金井 秀作 小野 武也 田中 聡 大塚 彰 沖 貞明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P1368, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】イメージトレーニングによる運動学習や運動習熟に関する研究は数多く報告されている.しかし,イメージトレーニングの筋力増強効果についての研究は少ない.そこで本研究では大腿四頭筋を対象とし,イメージトレーニングによる筋力増強効果を検討した.また,イメージ能力の高い被験者群とイメージ能力の低い被験者群との2群を設け,イメージ能力の差が筋力増強効果にどのような影響を与えるかを調べることとした.【方法】研究の実施にあたって対象者には十分説明を行い,同意を得た.対象は健常学生24人とし,筋収縮を伴う筋力増強運動群(以下,MS群),イメージ能力の低いイメージトレーニング群(以下,Ns群),イメージ能力の高いイメージトレーニング群(以下,PT群)に分類した.Biodexを用いて,膝関節屈曲60°での膝関節伸展筋力を計測した.MS群には大腿四頭筋の等尺性最大収縮をトレーニングとして行わせた.一方Ns群とPT群にはトレーニング前に運動を想起させる原稿を読ませ,上記のトレーニングをイメージさせた.4週間のトレーニング実施前後に等尺性収縮を5秒間持続し,最大値を記録した.また,全被験者に自己効力感についてのアンケート調査を実施した.統計は各群内の筋力差にt検定を,3群間の筋力上昇率の差に一元配置分散分析を行い,有意差を5%未満とした.【結果】1)筋力測定の結果:初期評価と最終評価における筋力平均値の変化は,MS群(p<0.01),Ns群(p<0.05),PT群(p<0.01)で有意に増加したが,各群間での筋力上昇率に有意差は認められなかった.2)アンケート:「トレーニングにより筋力は向上したと思うか」という問いと筋力上昇率との間に,MS群は正の相関が認められたのに対し,Ns群およびPT群では負の相関が認められた.【考察】筋力測定の結果,3群全てにおいて筋力が向上した.イメージトレーニングのみ行ったNs群とPT群においても筋力増強が認められた理由として,運動イメージを繰り返すことにより筋収縮を起こすためのプログラムが改善されたためと考える.次に,Ns群・PT群間の筋力上昇率に有意差は認められない理由として,イメージの誘導に用いた原稿が影響したと考えられる.この原稿によってイメージ能力が低いと想定したNs群でも,一定の水準でイメージを持続できていたと考えられる.原稿によるイメージのし易さは,PT群に比べてNs群で高く,Ns群は原稿の誘導を頼りにイメージを想起し,PT群とのイメージ能力の差を補った可能性が示唆された.最後に,MS群では筋力上昇率と自己効力感との間に正の相関があったが,Ns群・PT群では負の相関が認められた.イメージトレーニングのみ行ったNs群・PT群では,フィードバックが無いことで,「この練習で筋力は向上するのか」という懐疑心が強くなったと考えられる.
著者
谷出 康士 沖 貞明 田坂 厚志 甲田 宗嗣 長谷川 正哉 島谷 康司 金井 秀作 小野 武也 田中 聡 大塚 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P1368, 2009

【目的】イメージトレーニングによる運動学習や運動習熟に関する研究は数多く報告されている.しかし,イメージトレーニングの筋力増強効果についての研究は少ない.そこで本研究では大腿四頭筋を対象とし,イメージトレーニングによる筋力増強効果を検討した.また,イメージ能力の高い被験者群とイメージ能力の低い被験者群との2群を設け,イメージ能力の差が筋力増強効果にどのような影響を与えるかを調べることとした.<BR><BR>【方法】研究の実施にあたって対象者には十分説明を行い,同意を得た.対象は健常学生24人とし,筋収縮を伴う筋力増強運動群(以下,MS群),イメージ能力の低いイメージトレーニング群(以下,Ns群),イメージ能力の高いイメージトレーニング群(以下,PT群)に分類した.Biodexを用いて,膝関節屈曲60°での膝関節伸展筋力を計測した.MS群には大腿四頭筋の等尺性最大収縮をトレーニングとして行わせた.一方Ns群とPT群にはトレーニング前に運動を想起させる原稿を読ませ,上記のトレーニングをイメージさせた.4週間のトレーニング実施前後に等尺性収縮を5秒間持続し,最大値を記録した.また,全被験者に自己効力感についてのアンケート調査を実施した.統計は各群内の筋力差にt検定を,3群間の筋力上昇率の差に一元配置分散分析を行い,有意差を5%未満とした.<BR><BR>【結果】1)筋力測定の結果:初期評価と最終評価における筋力平均値の変化は,MS群(p<0.01),Ns群(p<0.05),PT群(p<0.01)で有意に増加したが,各群間での筋力上昇率に有意差は認められなかった.2)アンケート:「トレーニングにより筋力は向上したと思うか」という問いと筋力上昇率との間に,MS群は正の相関が認められたのに対し,Ns群およびPT群では負の相関が認められた.<BR><BR>【考察】筋力測定の結果,3群全てにおいて筋力が向上した.イメージトレーニングのみ行ったNs群とPT群においても筋力増強が認められた理由として,運動イメージを繰り返すことにより筋収縮を起こすためのプログラムが改善されたためと考える.次に,Ns群・PT群間の筋力上昇率に有意差は認められない理由として,イメージの誘導に用いた原稿が影響したと考えられる.この原稿によってイメージ能力が低いと想定したNs群でも,一定の水準でイメージを持続できていたと考えられる.原稿によるイメージのし易さは,PT群に比べてNs群で高く,Ns群は原稿の誘導を頼りにイメージを想起し,PT群とのイメージ能力の差を補った可能性が示唆された.最後に,MS群では筋力上昇率と自己効力感との間に正の相関があったが,Ns群・PT群では負の相関が認められた.イメージトレーニングのみ行ったNs群・PT群では,フィードバックが無いことで,「この練習で筋力は向上するのか」という懐疑心が強くなったと考えられる.
著者
原口 脩平 白根 歌織 沖 貞明 積山 和加子 梅井 凡子 高宮 尚美 小野 武也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.489-492, 2015 (Released:2015-09-03)
参考文献数
14

〔目的〕温熱療法直後における拘縮関節の可動性増加の有無を検証した.〔対象〕Wistar系雌ラット(8週齢)12匹とした.〔方法〕ラットの右側後肢足関節を,最大底屈位で1週間ギプス固定した.温熱療法群とコントロール群に分け,前者に対しては渦流浴を実施した.その後,両群のラットの足関節に対して,他動的に最大背屈させる際の最大抵抗力を測定した.〔結果〕最大抵抗力の中央値は温熱療法群で2.8N,コントロール群は3.0Nであり,両群間に有意差は認められなかった.〔結語〕温熱療法直後において,拘縮関節の可動性増加は認めないことから,温熱療法によるコラーゲン線維の伸張性増加は不十分であると考えられる.
著者
岡村 和典 金井 秀作 沖井 明 江川 晃平 山本 征孝 沖 貞明
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.177-182, 2017-01-30 (Released:2017-04-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

【目的】本研究の目的は,足部内在筋が歩行中の足関節モーメントを変化させる機能を有しているか検証することである。【対象と方法】健常成人男性11名を対象とした。歩行立脚期における足部内在筋の収縮力を電気刺激によって強化し,それに伴う足関節モーメントの変化を測定した。測定には三次元動作解析装置と床反力計を使用した。【結果】足部内在筋への電気刺激は,歩行立脚期における最大内部足関節回内モーメントを有意に増加させた(p<0.05)。一方,底屈および外転モーメントに有意差は確認されなかった。【結語】本研究の結果からは,回内作用を持つ足関節底屈筋の活動の増加だけでなく,回外作用を持つ足関節底屈筋の活動の低下も推察される。これは,足部内在筋に歩行場面における足部外在筋の活動を軽減させる機能が備わっていることを示唆している。
著者
島谷 康司 田中 美吏 金井 秀作 大塚 彰 沖 貞明 関矢 寛史
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.721-725, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

[目的]本研究の目的は,くぐり動作を用いて,発達障害児と健常児の障害物への身体接触を比較検証することであった。[対象]5~6歳の健常児と発達障害児,各9名を対象とした。[方法]課題は7種類の遊具と高さの異なる6つのバーを交互に設置したコースを通り抜けることであった。障害物との接触回避に関する注意喚起を与えない条件,接触回避を与える条件,そして接触回避および早く移動することを促す条件の3条件を設け,それぞれ1試行ずつ行わせた。[結果]発達障害児は健常児に比べて,条件に関わらず接触頻度が高かった。また,発達障害児は腰部の接触頻度が高かった。[結語]発達障害児の接触の多さは,注意の欠陥が原因ではないと考えられる。また,視覚フィードバックを随時利用して,接触しないようにくぐり動作を行うことが困難な状況において身体接触が多いことから,身体特性情報に基づく行為の見積もりの不正確さが,発達障害児の身体接触の多さの原因であることを示唆した。
著者
田坂 厚志 沖 貞明 田中 聡 島谷 康司 長谷川 正哉 金井 秀作 小野 武也 大塚 彰 坂口 顕
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.577-580, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕超音波療法の客観的な有効性を明らかにするために,動物実験を行った。〔対象〕実験には10週齢の雌Wistar系ラットを16匹用いた。〔方法〕右足関節をギプス固定し,1日1回固定を除去して超音波照射後にトレッドミルで走行を行わせる超音波群(8匹)と1日1回固定を除去し超音波を照射せずにトレッドミル走行を行わせる対照群(8匹)の2群に分けた。〔結果〕個々のラットにおける実験開始前と実験開始1週間後の足関節背屈角度の変化をもって2群を比較したところ,超音波群では42.5±6.0度,対照群では51.2±11.7度となり,超音波群は角度変化が有意に少なかった。〔結語〕関節拘縮発生抑制効果に関する超音波の有効性が確認できた。
著者
相原 一貴 小野 武也 石倉 英樹 佐藤 勇太 松本 智博 田坂 厚志 梅井 凡子 積山 和加子 沖 貞明
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.41-44, 2016-04-30 (Released:2016-07-29)
参考文献数
16
被引用文献数
1

[目的]本研究は身体の柔軟性の評価である指床間距離(Finger-Floor Distance:以下FFD)を用いて,睡眠前後でのFFD の変化を明らかにするために行った。[対象と方法]健常大学生34名(男性14名,女性20名)を対象とした。朝と夜のFFD と睡眠時間を3日間測定した。なおFFD は,①夜の入浴前と②朝の起床後に測定した。[結果]FFD の値は朝の方が夜よりも有意に高値であった。[結語]睡眠後に身体の柔軟性が低下していることが明らかとなった。
著者
長谷川 正哉 島谷 康司 金井 秀作 沖 貞明 清水 ミシェルアイズマン 六車 晶子 大塚 彰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.437-441, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
32
被引用文献数
6 2

〔目的〕浮き趾が歩行中の足底圧に与える影響について調べることを目的とした。〔対象〕健常成人女性104名に対し静止立位時の足趾接地状態の評価を行った結果から,浮き趾群20名および完全接地群15名を実験対象として抽出した。〔方法〕浮き趾群および完全接地群に対し歩行中の足底圧の計測を行い,足趾および前足部の荷重量,足底圧軌跡の軌跡長を抽出し比較検討した。また軌跡の特徴を分類し比較検討した。〔結果〕完全接地群と比較し浮き趾群では,足底圧軌跡長,足趾荷重量が小さく,足底圧軌跡が足趾まで到達しないことが確認された。〔結語〕浮き趾群では足趾による安定した支持基底面の形成ができず,歩行中の重心の前方移動が困難であること,および中足骨頭部に荷重が集中し,足部のアライメント異常につながる可能性があることが示唆された。
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 清水 ミシェルアイズマン 島谷 康司 田中 聡 沖 貞明 大塚 彰
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.75-80, 2007-03-22 (Released:2010-09-09)
参考文献数
29
被引用文献数
5

靴着用が原因と考えられる扁平足、外反母趾等の障害が増加している。これら足部障害の予防には、靴等の環境要因の改善および足部内在筋強化等の身体要因の改善が重要である。本研究では履物着用中の歩行が足部に及ぼす影響について調査し、その中で下駄着用歩行の有効性について検討する事を目的とした。実験は裸足、靴着用、下駄着用の3条件とし、足趾MP関節運動及び内側縦アーチの動態を計測した。関節角度の計測には三次元動作解析装置であるOxford Metrics社製VICON512を用いた。結果、裸足と比較して靴着用中におけるMP関節運動範囲、Arch運動範囲が有意に減少した。また、靴着用中と比較して下駄着用時にはMP関節運動範囲、Arch運動範囲が改善する傾向が認められた。足趾の積極的な使用が足部障害発生予防に有効であると報告されており、下駄着用による歩行の有効性が示唆された。
著者
梅井 凡子 小野 武也 十河 正典 沖 貞明 大塚 彰 大田尾 浩 梶原 博毅 武藤 徳男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.191-195, 2011 (Released:2011-06-07)
参考文献数
17
被引用文献数
4 3

〔目的〕虚血再灌流後の骨格筋の状態を経時的に確認すること.〔対象〕8週齢のWistar系雌性ラット41匹を7群に振り分けた.群わけは正常群と再灌流時間の異なる6群とした.〔方法〕駆血圧300 mmHg,駆血時間90分間で右大腿に駆血を行い異なる時間再灌流を行った.筋萎縮評価にはヒラメ筋相対体重比とヒラメ筋線維横断面短径を用いた.〔結果〕正常と比較し,ヒラメ筋相対体重比は再灌流時間が96時間群で,ヒラメ筋線維横断面短径は再灌流時間が72時間群で,それぞれ有意に減少していた.〔結語〕骨格筋において虚血再灌流後には浮腫が発生するとともに筋萎縮も発生していることが確認できた.
著者
梅井 凡子 小野 武也 大塚 彰 沖 貞明 大田尾 浩 積山 和加子 田坂 厚志 石倉 英樹 相原 一貴 佐藤 勇太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100050, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】虚血再灌流後の骨格筋は浮腫により運動障害を引き起こす。運動障害の原因は浮腫に付随する炎症反応と疼痛であると推察される。先行研究により抗酸化物質により炎症反応が軽減することを確認した。しかし,その際の行動観察が不十分であったため,今回,虚血再灌流後にラット後肢への重量配分を測定することで鎮痛評価を行った。本研究においては抗酸化物質投与と運動負荷が,虚血再灌流後の骨格筋に与える影響を検証することを目的とした。【方法】対象は8 週齢のWistar系雌性ラット20 個体である。これらを5 個体ずつ無作為に「再灌流のみ群」「運動群」「アスコルビン酸群」「トコフェロール群」の4 群に振り分けた。すべての群は麻酔下にて右後肢に対し駆血を行った。駆血圧は300 mmHgで駆血時間は90 分間である。「アスコルビン酸群」「トコフェロール群」は12 時間毎にそれぞれを投与した。運動負荷はトレッドミルにて再灌流開始24 時間後より4 日間行った。運動負荷は1 日2 回とし,運動時間は20 分間とした。トレッドミルの速度は10 m/secより開始し20 m/secまで増加させた。また,すべての運動負荷時には歩行状態を観察するとともに 鎮痛評価は右後肢の重量配分を測定した。すべての群は実験終了時に対象肢からヒラメ筋を摘出した。摘出したヒラメ筋は,液体窒素で急速冷凍させ凍結ヒラメ筋標本を作製した。凍結ヒラメ筋標本はクリオスタットを使用して,10 μm厚のヒラメ筋筋組織横断切片を作製し,H&E染色を施した。顕微鏡デジタルカメラを使用して標本毎に組織学的検索を行った。重量配分の統計処理は実験開始前と比較し,対応のあるt検定を行った。危険率5%未満をもって有意差を判定した。【倫理的配慮、説明と同意】本実験は,動物実験モデルであるために演者所属の動物実験倫理委員会の承認を受けて行った。【結果】重量配分は実験開始前「再灌流のみ群」48.3%,「運動群」51.6%,「アスコルビン酸群」47.0%,「トコフェロール群」48.2%であった。虚血再灌流翌日には「再灌流のみ群」33.6%,「運動群」32.0%,「アスコルビン酸群」28.9%,「トコフェロール群」41.3%と変化し,実験最終日には「再灌流のみ群」25.8%,「運動群」35.0%,「アスコルビン酸群」33.1%,「トコフェロール群」36.2%であった。「トコフェロール群」以外の3 群において実験開始前に比較して虚血再灌流翌日,実験最終日ともに重量配分は有意差に減少していた。運動負荷時の歩行状態は,運動1 日目では「運動群」は5 個体,「アスコルビン酸群」「トコフェロール群」はともに3 個体で右下肢が十分背屈できずに足関節底屈位のまま歩行をしていた。運動2 日目は「運動群」は3 個体,「アスコルビン酸群」2 個体,「トコフェロール群」3 個体で右下肢が十分背屈できず,「運動群」2 個体,「アスコルビン酸群」2 個体,「トコフェロール群」1個体に擦過傷による出血を認めた。運動3日目は「運動群」は1個体,「アスコルビン酸群」2個体,「トコフェロール群」2 個体で右下肢が十分背屈できず,「運動群」2 個体,「トコフェロール群」3 個体に擦過傷を認めた。「アスコルビン酸群」2 個体は途中休憩を入れていた。運動4 日目は「運動群」,「アスコルビン酸群」,「トコフェロール群」それぞれ1 個体で右下肢の背屈が弱く,途中休憩を入れていた。筋線維の組織学的検索において「再灌流のみ群」は正常に比較し細胞間が広く,細胞自体も丸みを帯びていた。「運動群」「アスコルビン酸群」は「再灌流のみ」に比較して細胞間は狭い。核の膨化を認めるとともに中心核が存在した。「トコフェロール群」多数の炎症細胞の増加と壊死した筋線維の痕跡を認めた。【考察】虚血再灌流障害により発生する浮腫及び炎症反応により虚血肢への重量配分が減少する。しかし,「トコフェロール群」においては虚血再灌流翌日の重量配分の減少が抑制された。トコフェロールには血流改善,細胞膜保護作用があるため虚血再灌流後に発生する浮腫を減少させ,浮腫に伴う疼痛を減少させることが出来たものと考える。また,運動負荷により重量配分は増加していた。このことは運動負荷により浮腫が改善したものであると推察される。筋線維の組織学的検索においても「再灌流のみ群」に比較してその他の群では細胞間が狭かった。虚血再灌流後の浮腫の抑制には抗酸化物質の投与および運動負荷が有効であると示唆された。【理学療法学研究としての意義】虚血再灌流後の浮腫の抑制に抗酸化物質投与と運動負荷が効果的であり,早期から運動療法を施行する裏付けとなると考える。
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 島谷 康司 大田尾 浩 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 田中 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101851, 2013

【はじめに,目的】転倒予防や足部障害の発生予防,パフォーマンスの維持・向上には適切な靴選びが重要である.一般的な靴選びは,まず自覚する足長や靴のサイズに基づき靴を選び,着用感により最終的な判断を行うものと考える.しかし,加齢による足部形態の変化や過去の靴着用経験などから,着用者が自身の足長を正確に把握していない可能性が推測される.また,靴の選択基準はサイズや着用感以外にも,デザイン,着脱のしやすさ,変形や疼痛の有無など様々であることから,自覚している靴サイズと実際の着用サイズが異なる可能性が考えられる.そこで,本研究では地域在住の中高齢者を対象とし,自覚する靴サイズおよび実際に着用している靴サイズ,足長や足幅の実測値から抽出したJIS規格による靴の適正サイズを調査し,比較検討することを目的とした.【方法】独歩可能な中高齢者68名(男性20名,女性48名,平均年齢64.0±6.5歳)を対象とした.調査項目は左右の足長および足幅の実測値,足幅/足長の比率,実測値を基に抽出したJIS規格による左右別の適正サイズ,2Eや3Eなどで表わされる適正ウィズ,自覚する靴サイズ(以下,自覚サイズ),および現在着用中の靴の表示サイズ(以下,着用サイズ)とした.なお,各項目間の比較にはフリードマン検定およびScheffe法による多重比較を行い,統計学的有意水準は5%とした.また,自覚サイズと着用サイズの一致率,適正サイズと着用サイズの一致率,および適正サイズおよび適正ウィズの左右の一致率を求めた.【倫理的配慮、説明と同意】実験前に書面と口頭による実験概要の説明を行い,同意と署名を得た後に実験を実施した.なお,本研究は全てヘルシンキ宣言に基づいて実施した.【結果】左右足型の実測値は右足足長22.6cm (21.8-23.85),左足足長22.7cm (21.75-23.7),右足足幅9.5cm (9.0-9.9),左足足幅9.3cm (8.9-9.9)であり,足幅/足長比率は右足41.5%(39.8 -42.5),左足41.0%(39.5-42.6)であった.また, JIS規格により抽出した右足適正サイズは22.5cm (22.0-24.0),左足適正サイズ22.5cm (21.5-23.5)であったのに対し,自覚サイズは23.5cm(22.5-24.5),着用サイズは23.5cm (23.0-25.0)となった(結果は全て中央値および四分位範囲).着用サイズおよび自覚サイズと比較し左右適正サイズ(p<0.001),左右足長実測値は(p<0.001)は有意に小さい結果となった.次に各項目の一致率について,まず自覚サイズと着用サイズの一致率は37%であり,被験者の63%は自身で認識する足サイズとは異なる靴サイズを選択し着用していた.また同様に,右足適正サイズと着用サイズの一致率は7%,左足適正サイズと着用サイズの一致率は4%と極めて低い結果となった.なお,適正サイズの左右の一致率は52%であり,これに適正ウィズの結果をふまえた場合,左右の靴の一致率は4%に低下した.【考察】中高齢者が実際に着用している靴サイズおよび自覚する足のサイズは,JIS規格に基づく適正サイズや足長の実測値より大きいことが確認された.また,自覚サイズと着用サイズ,適正サイズと着用サイズの一致率が極めて低く,中高齢者では自身の足の大きさを自覚していないだけではなく,自覚する足サイズに基づく靴選びをしていないものと考えられた.中高齢者の靴の選択基準には装着感や着脱の容易さ,デザインなど複数の要因が関与することが過去に報告されており,本研究でもこれらが影響した可能性が示唆される.次に,実測値から抽出した左右の靴適正サイズの一致率が極めて低いことが確認された.これは,左右同一サイズの靴を購入した場合,いずれか一方の靴が足と適合しないことを意味している.先行研究により靴の固定性の低下が動作時の不安定性や靴内での足のすべりを増加させ運動パフォーマンスの低下を引き起こすことが報告されており,靴の不適合が中高齢者の転倒リスクを増加させる可能性が示唆された。これらの靴の不適合に対し,靴内部での補正や靴紐などによるウィズの調整,片足づつ販売する靴を選択するなどの対応が必要になるものと考える.また,本研究の被験者の多くが自身の足サイズについて適切に認識しておらず,正しい評価や知識に基づく靴選びが重要と考える.【理学療法学研究としての意義】適切な靴の選択は転倒予防や障害発生予防,パフォーマンスの維持・向上を考える際に重要である.また,インソールの処方時や内部障害者のフットケアなどの場面では適切な靴の着用が原則となる.そのため理学療法士は対象者の足型と靴のフィッティングについて理解を深め,適切な靴の着用について啓発していく必要がある.
著者
積山 和加子 沖 貞明 髙宮 尚美 梅井 凡子 小野 武也 大塚 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】遠心性収縮は筋力増強や筋肥大効果が高く,かつ運動中の心拍数や血圧が低く保てるとの報告がある。そのため遠心性収縮を用いれば従来よりも運動強度を低く設定しても筋肥大が図れる可能性があり,我々はラットに対して乳酸性作業閾値50%以下の強度の遠心性収縮運動を長時間負荷することにより筋肥大を起こすことができることを確認した。しかし我々が用いた運動方法は低負荷ではあったが長時間の連続運動を行う必要があるという問題点を有しており臨床応用に向けての課題が残った。臨床において連続した運動を行うことが難しい場合に対して運動の合間に休息を挟むインターバル運動を行うことがある。そこで,本研究では遠心性収縮を用いた有酸素運動において,運動の合間に休息を挟むインターバル形式の運動であっても,連続運動と同程度の筋肥大効果があるのか,さらに筋力増強効果も認めるのかについて検討を行った。【方法】10週齢のWistar系雌性ラット21匹を対象とし,7匹ずつ3群に振り分けた。各群は,運動負荷を行わず60日間通常飼育するコントロール群,トレッドミル走行を90分間連続で行う連続運動群,総走行時間は90分として走行の合間に休息を挟むインターバル形式で行うインターバル運動群とした。連続運動群とインターバル運動群のトレッドミル傾斜角度は-16度,走行速度は16m/minにて3日に1回,計20回(60日間)の運動を行った。なお,トレッドミル下り坂走行は,ヒラメ筋に遠心性収縮を負荷できる方法として,動物実験で用いられている運動様式である。今回連続運動群に用いた運動負荷の条件は,筋肥大が確認できた我々の先行研究と同じ条件を用いた。実験最終日に麻酔下にて体重を測定し,両側のヒラメ筋を摘出した。右ヒラメ筋を,リンゲル液を満たしたマグヌス管内で荷重・変位変換機に固定し,筋を長軸方向へ伸張し至適筋長を決定した。その後電気刺激装置を用いて1msecの矩形波で刺激し,最大単収縮張力を測定した。強縮張力は最大単収縮張力の時の電圧の130%で,100Hzの刺激を1秒間行って測定した。次に左ヒラメ筋を,重量測定後に急速凍結した。凍結横断切片に対しHE染色を行い,病理組織学的検索を行うとともに筋線維径を測定した。体重,筋湿重量,筋線維径については1元配置分散分析を行い,有意差を認めた場合にTukey法を用いた。強縮張力についてはKruskal-Wallis検定を行い,有意差を認めた場合にScheffe法を用いた。有意水準は5%とした。【結果】筋湿重量,筋線維径および強縮張力において連続運動群とインターバル運動群はコントロール群に対して有意に大きく,連続運動群とインターバル運動群では有意差を認めなかった。組織学的検討では,各群において異常所見は認めなかった。【考察】連続運動群では筋湿重量と筋線維径はコントロール群に比べ有意に増加した。これは我々の先行研究の結果と同様であり,遠心性収縮を用いた有酸素運動によって筋肥大効果を認めることが改めて示された。さらに強縮張力においてもコントロール群に比べ連続運動群では有意差を認めた。この結果から遠心性収縮を用いた有酸素運動は,ヒラメ筋の筋肥大に加え筋力増強効果もあることが分かった。次にインターバル運動群においても,筋湿重量,筋線維径および強縮張力はコントロール群に比べ有意に増加し,さらにインターバル運動群とは有意差を認めなかった。これらの結果から,遠心性収縮を用いた有酸素運動において,運動の合間に休息を挟むインターバル形式の運動であっても,連続運動と同程度の筋肥大および筋力増強効果があることが分かった。遠心性収縮は収縮に伴い筋長が延長する収縮様式のため,求心性収縮に比べ筋線維への機械的刺激が大きい。また,骨格筋は筋線維損傷後の修復過程において損傷前の刺激にも適応できるように再生し,遠心性収縮運動は繰り返して行うと筋節の増加によって徐々に筋長が延長した状態でも力を発揮できるようになるという報告もある。本研究において20回の遠心性収縮運動を繰り返すことによって適応が生じ,筋肥大や筋力増強が図れた可能性がある。今後は運動時間や頻度等についてさらに検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】これまで筋力増強や筋肥大が起きないとされてきた低負荷の有酸素運動でも,長時間の遠心性収縮運動により筋力増強と筋肥大が可能であり,さらにはインターバル形式で運動を行っても同様の効果があることを明らかにした。
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 尾前 千寿 大塚 彰 沖 貞明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.A1031, 2005

【はじめに】<BR>足底圧(以下COP)や足底圧軌跡(以下COP軌跡)に関する研究は計測機器の発展により容易に可能になった.中村らによると裸足歩行では立脚期におけるCOPは踵部中央から出発して足底のやや外側に片寄って小趾球に達し,ここから内側に向かって母趾球を通り母趾に抜けるとされている.さらにCOPやCOP軌跡は杖の使用や,靴の着用により変化する事が多く報告されている.しかし,健常人の裸足歩行におけるCOPの研究においても,正常パターンから逸脱したものを散見する.そこで本研究では,健常人のCOPに影響を及ぼす因子を検討する.第一報として足趾機能および歩行速度がCOP,特に母趾荷重量に及ぼす影響を報告する.<BR>【方法】<BR>対象は足趾や足部に既往の無い健常成人12名とした.足趾機能の評価には足趾によるジャンケン(グー=全趾屈曲・チョキ=母趾と他趾の独立した運動・パー=外転)を指標として用い,全て可能なものをN群,一つでも不可能なものをP群とした.10mの歩行路を通常速・高速にて歩行させ,Nitta社製F-scanを使用しCOPの計測を行った.母趾部分のCOPピーク値を計測し,歩行速度およびN群P群における比較を行った.また歩行中の重複歩距離,歩行速度,歩数をデジタルビデオカメラにより計測し,各群間における比較を行った。<BR>【結果】<BR>N群における母趾荷重量は通常速時9.69±4.78kgf,高速時15.4±7.64kgfとなり,P群における母趾荷重量は通常速時10.07±3.67kgf,高速時11.53±4.71kgfとなった.歩行速度の上昇に伴いN群における母趾荷重量に有意な増加を認めた.P群における有意差は認められなかった.N群およびP群における比較では有意差は見られなかったが,高速時における母趾荷重量に増加傾向を認めた.重複歩距離は通常速時に比べN群では平均130%,P群では平均107%増加した.歩数および歩行速度における有意差は認められなかった.<BR>【考察・まとめ】<BR>P群では歩行速度が増加しても母趾荷重量はわずかな増加しか認められなかったが,N群では顕著な増加が認められた.母趾荷重量のピーク値はいずれも踵離地以降に計測されており,母趾荷重が蹴り出しに影響を及ぼす可能性が示唆された.加えて,母趾荷重量の増減が重複歩距離に影響を及ぼす可能性が考えられた.牧川らは蹴り出し時の母趾の重要性を指摘しており,今回の実験においても同様の結果が得られたと考えられる.N群では母趾荷重量に増加傾向を認めており,その結果大幅な重複歩距離の延長につながったと考えられる.一方,P群では蹴り出し期の母趾荷重が不十分な為に,強い蹴り出しが行えずN群より重複歩距離の伸び率が少ないと考えられた.足趾機能が踏み返し期の母趾荷重量を通して重複歩距離に影響を与えるというメカニズムが考えられた.
著者
島谷 康司 島 圭介 菴原 亮太 長谷川 正哉 金井 秀作 田中 聡 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 Psiche Giannoni Pietoro Morasso Paolo Moretti
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1228, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】我々は,初期歩行直後の乳幼児にヘリウムガス入り風船(浮力:約2g)の紐を把持させると歩行時の身体動揺が減少し,そのために歩行距離が延長することを報告した。この現象は,Jekaらが報告した「指尖でカーテンに軽く触れることによって姿勢制御に有効に働くこと(Light Touch Contact)」に類似していると考えた。本研究では,初期歩行期の乳幼児に対してヘリウムガス入り風船の紐を把持(以下,風船把持)させることにより姿勢制御を最適化する支援方法を提案するために,まず風船把持の静止立位姿勢制御について検証することを目的とした。【方法】対象は,健常成人60名(男性:30名 女性:30名)であった。重心動揺計測には,アニマ社製重心動揺計(GP-6000)を使用した。また,全対象者のうち無作為に抽出した30名に対して頭部,風船を把持した右手部,仮想身体重心を想定した腹部の位置関係を検証するために,KINECT for Windowsを用いて3次元画像解析を行った。計測条件は,何も把持しない条件(以下,把持なし条件),風船を右手で把持する条件(以下,風船条件)の2条件を設定し,被験者ごとにランダム化して60秒間の計測を行い,データを比較した。計測肢位は閉眼タンデム立位とし,把持なし条件の右上肢はあたかも風船を把持しているかのような肢位とした。計測は被験者が十分に安定したと感じた際に「はい」と合図をさせて開始した。統計処理には,総軌跡長,実効値面積(以下,RMS),外周面積,左右軌跡長,前後軌跡長について,把持なし条件と風船条件の2群間で対応のあるt検定を行った。また,頭部・右手部・腹部の3次元座標から変動係数を算出し,2群間比較には対応のあるt検定を,群内比較にはKruskal Wallis検定および多重比較にはSteel-Dwass検定を行った。なお,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り,対象者には本研究の趣旨を十分に説明し,書面にて同意を得た後に実験を行った。【結果】重心動揺については,把持なし条件と比較して風船条件は,総軌跡長(p<0.01),左右軌跡長(p<0.01),前後軌跡長(p<0.01),RMS(p<0.05)で有意に低値を示した。外周面積に有意差は見られなかった。各身体部位の変動のばらつきについては,把持なし条件・風船条件ともに頭部と右手部は腹部よりも有意にばらつきが大きく,頭部と右手部に有意差は見られなかった。また,把持なし条件と風船条件の群間比較をした結果,すべての身体部位間に有意差は見られなかった。【考察】本研究の結果,風船把持によって前後・左右の重心動揺速度が減少し,動揺のばらつきを抑えて身体重心を一定範囲内に収めていることが示唆された。しかし,風船の有無によって身体部位の位置関係に有意差が見られなかったことから,風船把持による静止立位姿勢制御の機序までは明らかにすることができなかった。しかし,山本らは,ヒトは各身体部位を前後・左右に微妙に動かしながら立位姿勢を制御すると述べており,本研究では風船把持によってフィードバック制御を賦活し,各身体部位を微動させることによって,より重心動揺を減少させる立位姿勢制御が行われているものと推察した。風船把持の立位姿勢制御が固定点に指尖で軽く触れるLight Touch Contactとは異なるため,今後は風船特有の揺らぎが静止立位姿勢制御に与える影響について詳しく解析し,初期歩行期の乳幼児に対する歩行支援の可能性について検証していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】現在,初期歩行発達遅延の乳幼児に対する確立した歩行支援方法はない。風船は口頭指示が難しい乳幼児にとって歩行練習を行う動機づけに有用な歩行支援用具となりうる可能性があり,健常成人においては,風船把持による静止立位姿勢制御が重心動揺を減少させることが示唆された。
著者
陳之内 将志 小野 武也 沖 貞明 梶原 博毅 金井 秀作 長谷川 正哉 坂口 顕 島谷 康司 清水 ミシェル・アイズマン 大塚 彰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.169-173, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
15
被引用文献数
5 5

本研究は,関節可動域制限発生の予防に必要な持続的伸張運動時間を関節角度と筋の形態学的な変化から検討した。実験動物には9週齢のWistar系雌ラット35匹を正常群7匹と足関節を最大底屈位で1週間ギプス固定した固定群7匹,1日1回ギプスを除去し持続的伸張運動を実施した伸張群21匹に振り分けた。さらに伸張群は10分,30分,60分の伸張時間の違いによって7匹ずつ振り分けた。結果は,関節角度の変化から見ると,30分の持続的伸張運動が最も効果的に関節可動域制限の発生を抑制することができた。また筋の形態学的な変化から見ると,30分を超える持続的伸張運動では筋線維を脆弱化させる可能性が示唆された。
著者
小野 武也 富田 瑛博 沖 貞明 梅井 凡子 大田尾 浩 吉永 龍史 大塚 彰
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.947-949, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

〔目的〕本研究の目的は,関節の動きを維持するために30分/日の持続伸張がラット足関節拘縮の発生予防に与える影響を検討することである。〔対象・方法〕対象は8週齢,Wister系雌ラット20匹である。実験期間は7日間である。ラットを無作為に各10匹の2つにわけた。10匹は,右足関節を最大底屈位でギプスを用いて7日間固定する固定肢とし左足関節は介入を加えない無介入肢とした。残り10匹は,右足関節を最大底屈位で固定し,実験2日目から6日目まで毎日ギプスを外し背屈方向へ伸張を加える伸張肢とした。効果判定の関節可動域テストは,無介入肢,固定肢,伸張肢ともに実験最終日の7日目に行った。なお,伸張肢の7日目の持続伸張は実施していない。〔結果〕実験開始前の背屈角度は3肢間に有意差を認めなかった。実験最終日には固定肢と伸張肢はともに無介入肢との間に有意差が見られ,また,固定肢と伸張肢との間には有意差が見られなかった。〔結語〕これまで関節拘縮の発生予防に有効であるといわれた30分/日の持続伸張時間では関節拘縮の発生が予防できないことが示された。
著者
長谷川 正哉 大塚 彰 金井 秀作 沖 貞明
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.71-74, 2007-01-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

靴が原因と考えられる足趾および足部の障害が多発しており, 予防法として足趾の運動が重要であることが報告されている. 本研究では足趾MP関節運動および内側縦アーチの運動, 足部内在筋の筋活動を促進させるためのトレーニングシューズの開発を目的に実験を行った. 実験1では, 裸足, 足趾トレーニングシューズ, 足甲固定サンダルの条件下に, 10m歩行中のMP関節および内側縦アーチの角度変化を計測した. その結果, 今回試作した足趾トレーニングシューズ着用下におけるMP関節運動および内側縦アーチ角度の変化が足甲固定サンダルより増大し, 裸足に近似した関節運動が発生することが確認された. 実験2では, 同様の条件下にて, 母趾外転筋における筋電活動を計測した. その結果, 裸足歩行時および足甲固定サンダルと比較し, 足趾トレーニングシューズにおける筋電活動が増加した. 実験結果より, 今回試作した足趾トレーニングシューズの特徴として, 十分な足趾関節運動が発生し, 足部内在筋の筋電活動を増大させることが確認された.
著者
島谷 康司 沖 貞明 大塚 彰 関矢 寛史 金井 秀作 長谷川 正哉 田坂 厚志 前岡 美帆 遠藤 竜治 星本 諭 小野 武也
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.B1154, 2008

【目的】理学療法臨床場面においてジャングルジムなどの遊具をくぐる時に身体をぶつけることが観察されるが,軽度発達障害児が健常児と比較してどの部位をどのくらい多くぶつけるのかについて実証した報告は見当たらない.そこで今回,軽度発達障害児は健常児と比較して遊具などに身体がぶつかることがあるのかどうかを量的・質的に検証することを目的にくぐり動作を用いて実証実験を行った.<BR>【対象】 対象は健常幼児9名(男児3名,女児6名),軽度発達障害と診断されている幼児9名(男児6名,女児3名)であった.年齢は健常児・軽度発達障害児ともに6歳前半が2名,5歳後半が7名であった.なお,本研究は本大学の倫理委員会の承認を得た後,研究協力施設と被験児の保護者に研究内容を説明し,同意を得たうえで実施した.<BR>【方法】実験環境の設定は 7種類の遊具と高さの異なる6つのバーを設置した.また,遊具とバーの距離は約1mになるように一定に配置した.6種類のバーは各被験児の頭頂・肩峰・胸骨剣状突起・上前腸骨棘・膝蓋骨上縁に設定した.実験はスタート位置から7種類の遊具と6種類のバーを往復させ,「教示をしない(以下,教示なし条件)」,「ぶつからないようにバーをくぐること(以下,ぶつからない条件)」,「ぶつからないようにバーをくぐり,ゴールに速く帰ってくること(以下,ぶつからない+速く条件)」の3条件を各1試行実施した.検証は3台のビデオカメラを用いてくぐり動作を記録し,身体の一部が接触したバーの種類(6種)とその接触回数,接触した身体部位を抽出した.バーに接触した身体部位分けは頭部・肩甲帯・腰部・臀部・下肢の5箇所とした.なお,1種類のバーのくぐり動作で身体部位が2箇所以上接触した場合はその総数を記録した.<BR>統計学的処理については,各条件の比較は一元配置分散分析およびSceheffeの多重比較,軽度発達障害児と健常児間の比較はt-検定(Welchの検定)を用いた.なお,有意水準は5%とした.<BR>【結果】各条件ごとに接触回数を軽度発達障害児と健常児で比較すると,教示なし条件については有意差が認められた(p<0.05).また,身体が接触したバーの高さを比較すると,膝高の間には有意差が認められた(p<0.05).<BR>【考察】くぐり動作において教示しなければ軽度発達障害児は健常児と比較してバーに接触する回数が有意に多いということが実証され,普段遊具で遊ぶ時には健常児に比べて身体をぶつけることが多いという臨床上の観察と一致した.軽度発達障害児が接触するバーの高さは膝高が多く,身体部位は教示がない条件下では下肢,ぶつからないようにしかも速くという条件下では腰部・臀部をぶつけることが多かった.これらの原因として注意機能,知覚や運動能力,自己身体像の問題が考えられたため,今後検証していく予定としている.